表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

第3話 ヒロイン、逃走する


 その日の夜。


 学園から割り当てられた寮の一室では。

 ベッドに転がりながら、ほう……とセーラが息を大きくついていた。


 おそらく前世に遊んでいた乙女ゲーム。その登場人物だった彼らと会話し、興奮さめやらぬといったところだ。


 悪役令嬢──もといナタリアは悪い人ではなさそうだった。窓から飛び降りてきたのはさすがに驚いたけれど、なんとなく親しみやすい気もするし、転生のよしみで仲良くなれたらいいなと思う。


 それにしても、とセーラは再び息をつく。

 現実で目の前にいた彼は想像していた何倍も素敵だった。

 何度となく見た貴族名鑑を思い返すと、たしか実家は侯爵家だったような。身分も顔も性格も(そしておそらく能力も)ハイスペックなんて、この世に存在してもいいの?

 いや、もちろん買ったりはしないけれど。


 王子様とか騎士様とか天才魔法使いとか。

 庶民からしてみれば雲の上、普通に生活していれば会うことはない存在だ。でも学園に通っていれば、遠くから見る機会もあるよね──。


 入学初日に心配していたことが片付き、ほっとしたセーラは楽しい学園生活を想像しながら眠りについた。






 翌日の昼休み。


 セーラはうきうきと廊下を歩いていた。

 ああ、なんて学園生活って素晴らしいんだろう。


 資金が潤沢にあるため、新鮮で贅沢な素材を惜しげもなく使った食堂のごはん。元王城勤めだというシェフが作った料理はどれも美味しい。しかも食べ放題だというからパンを4つも食べてしまった。あのフワフワ加減は一体どうやったら再現できるものか……。


 考えごとをしていたセーラは、角を曲がったところで──ポスン。


 あ、いい香り。

 すっと爽やか、それでいて上品な──


「いつまでそうしているつもりかな?」


 頭上から落とされた声に我に返った。


「す、すみません!」


 身体を預けていた誰かの胸元からガバッと顔を上げたセーラは固まった。



 彼女を面白がるような目で見ていたのは、いかにも身分が高そうな男子生徒。

 この滲み出る貫禄はおそらく上級生だろう。


 上級生どころか、もしや。もしや──夢にまで見た王子様ではあるまいか?

 ……その王子様に自分は今、何をしていた?


 不敬罪という言葉が彼女の頭をよぎった。


「ご、ごめんなさいいいいーーっ」


 セーラは思わず逃げ出した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ