第10話 ピーちゃん
昨日は変な時間に寝たので変な時間に起きて夜ちゃんとした時間に寝る事が出来なかった、結局徹夜する事になったのだが身体の不調は全く無い。これもステータスの恩恵だろうか、それとも種族的な部分なのか、ただ単に若さというやつなのだろうか?まぁ、ちゃんと寝なくてもあんまり疲れないっていうのは冒険者としては有難い。
今日は普通に討伐系の依頼とお手伝いの依頼を受けようと思う。下手に俺tueeeして変な奴に目を付けられるのも面倒くさいし最初は地道に経験を積みながら情報を集めた方がいいだろう。俺がたまに読んでたラノベだと最初から飛ばす奴は碌な目にあってなかったもんな。
「おはようございます。この依頼をお願いします」
「おはようございます、グレンさん。昨日は初心者講習お疲れ様でした、監督官さんが筋がいいって褒めてましたよ。頑張ってくださいね」
「ははは、俺なんて大したことないですよ。地道に頑張ります」
「偉い!冒険者って強いモンスターを倒した人が偉いって思われがちですけど私はこうやってちゃんと地域の人の役に立つ仕事をする人だって偉いと思うんです。グレンさんみたいに若い子がちゃんと考えてくれてて嬉しいです」
またまた過大評価されてしまったようだが、その評価は有難く受け取っておきます。という事でギルドではセリさんからのお褒めの言葉と周りの数人の男からの妬みの視線を頂きました。セリさん綺麗だし人気だよね、怖い怖い。
まずはゴブリンの討伐に向かう。講習や自主練習によってある程度武器は振れる様になったし、模擬戦のお陰で戦闘にもある程度なれる事が出来た。後は実際にモンスターを相手にしてスキルや魔法、忍術を使っての戦闘を繰り返して経験を積むのみだ。ゴブリン自体は当然の様に練習相手にもならない評価なので経験値が入らないが、そこは依頼の為と割り切るしかない、経験値は自信が付いてから本格的に稼げばいいのだ。
「お、居た。2匹居るけど大丈夫だろう」
今日は忍術も使って行く予定にしている、宿屋で触媒の残数を確認したが大量にストックされてたし合成素材も王都で手に入りそうだったので気兼ねなく使える。
「まずは右から『風遁の術』」
風遁の術は対象1体に対してカマイタチで切断ダメージを与える事が出来る。今回狙ったのは左足、術の発動までに印を結ぶ為若干の溜め時間はあるが今のスキルなら最下級の術で0.5秒程なので殆ど気にならない。発動すると薄い緑色の風がゴブリンの左足を切り飛ばす、それと同時に『縮地』を使い左足が無くなったゴブリンの首を片手刀で刎ねる。
「よし、完璧。後はこいつだけだ」
魔法とスキルは上手くいった。残った方は物理攻撃のみで仕留める。錆びた剣の様なものを持ったゴブリンはいきなり相方が死に、更に敵が現れた事によって混乱している。大振りの攻撃が飛んでくるが落ち着いて左の刀で弾き、右の刀で胴体を切りつける。更に左の返す刀で顔面を切る、左足で蹴り飛ばして一旦距離を取って様子を見る。
この世界にHPのシステムはない。致命傷を受ければ一撃で死ぬ事もあるし、出血多量で死ぬ事だってある。そして俺の場合は相手が死んだ時は姿は消え、俺のログに倒した事が表示される、そしてドロップアイテムが自動的にアイテムボックスの中に入ってくるので生きているのか死んでいるのかを判断するのは容易だ。つまり目のゴブリンが蹴り飛ばされたまま消えたという事は倒したという事で間違いない。
「ふぅ、やっぱり命のやり取りってのは緊張感あるな。やっぱり模擬戦とは全然違うや」
その後もゴブリンやワイルドラビット等のモンスターを昼近くまで狩り続ける事にした、その結果この周辺であれば本気装備じゃない今の状態でも1撃、浅くしか切れなくても2発当てれば大体倒せる事が分かった。ちなみに風遁の最上位である『嵐龍遁の術』を使ったらゴブリンが微塵切りになってしまって焦った。もしあれが『炎龍遁の術』だったら大爆発して大惨事になっていたかもしれない。
「これは見せられるとしても最下級の忍術だけだな・・・最上位はちょっとやばすぎた」
ちょっと調子に乗って多く狩り過ぎたが討伐証明を出さなければ問題ない。それにワイルドラビットの肉は食べてもいいし、アイテムボックスにはまだまだアイテムが入るから大丈夫だろう。ちなみに俺のアイテムボックスは限界まで拡張したので999種類のアイテムがそれぞれ99個づつ入る。ただ、装備にもこの枠を使うのでそれぞれのクラスの装備と武器だけでも結構な数になってる。
「昼からは荷物の配達の仕事があるし、早めに戻ってメシ食ってから向かうか。初めてのお手伝いって何だか緊張するな」
街に戻って一番最初に教えて貰った食堂で昼食を食べる。予定の時間よりも少し早いが、初めてだし色々覚える事もあるだろうから早目に現場に向かう事にした。今回の依頼は冒険者ギルドが買い取った素材をそれぞれのギルドに配達するというもの。アイテムボックスや魔法の袋があればそれを使ってもいいが、基本的には手に持って運ぶような子供ではちょっときついけど、ギルド職員が持って行くような時間はないから冒険者に頼むっていう感じがする。
「おう、坊主が依頼を受けた冒険者か?その身体で持てるか?結構重いし量もあるぞ」
「大丈夫です、力と体力には自信がありますから!」
やはり見た目がショタの俺は冒険者に見えないらしい、折角ちゃんと防具も装備してるのにね。取り合えず今回は手に持って運ぶ予定だ、さすがに登録したばかりで魔法の袋持ってるとか怪しいからね、だから普段から背嚢を持ち歩くようにしている。
仕事自体は簡単なものですでに場所毎に大きな袋に入れて準備された素材を他のギルドの受付に届けるだけ。ただ、俺は王都の道に詳しくない。それを説明すると特別だと言って王都の簡単な地図をくれた、後は地図を見ながら素材を届ければ依頼完了という訳だ。
ただ、本当はシステムマップがあるので地図を貰わなくても場所は分かるのだが色々な都合があるので結果的に詳しくないと言うしかなかった、おっちゃん騙した様ですまない。真面目に仕事やるから勘弁してくれ。
「えっと、次は・・・」
意外と届ける量が多く時間が掛かってしまったが何とか指定の分は届ける事が出来た。なぜこんなに時間が掛かったかと言うと、行く先々でなぜか厚遇されたからだ。お菓子や果物、飲み物を出してくれる人まで居た。やはりイケショタの見た目は得をするんだろう、なぜか素直に喜べない俺がいる。
「全部終わりました。これで大丈夫ですか?」
「おう、お疲れさん。よく頑張ったな、大変だっただろう?坊主ならいつでも歓迎するから良かったらまた依頼を受けてくれよな」
そう言っておっちゃんは優しく俺の肩を叩き依頼票に完了のサインをしてくれた。この世界は本当に心優しい良い人ばかりだなぁ。
そのままギルドの受付に向かって完了の報告を済ませる。これで討伐と併せて1日の稼ぎが銀貨6枚。何とか銅貨2~3枚の黒字という所だろうか、こんな感じで駆け出しの冒険者は本当にやっていけるのか改めて心配になってしまった。
宿に戻ったらピーちゃんを呼び出す。今日は王都周辺をピーちゃんに索敵して貰うのだ。
「ピーちゃん。王都の回りに何があるか、どんなモンスターが居るか調べて来て貰ってもいいかい?」
ピーちゃんはピーピー鳴きながら首を縦に振り、窓から飛び出して行った。ちなみにピーちゃんは小鳥でもLv99なのでこの辺りなら無敵だろう。多分冒険者20人くらいに囲まれても無双出来ると思う。家の子達はチビ、ピーちゃん、ブルーノがLv99でアストラがLv200になっている。
「さて、ピーちゃんには悪いけどちょっと寝かせて貰おうかな・・・ふあぁ~」
目を瞑って横になる。ピーちゃん今何してるかなぁ?と考えながらウトウトしていると瞑っているはずの視界に森が映る。
「は?」
目を開けると宿屋の壁が見えた。気のせいかともう1度横になったが何も見えなかった。
「やっぱり気のせいだったんだな」
そのまま横になって目を瞑ったままピーちゃんの事を思い浮かべるとまた夜の森が映る。
「これ気のせいじゃないな・・・」
言葉を発しても視界は森のまま。考えられるのはピーちゃんの目に映ったものを見ているという事、そしてそれは間違いではないはずだ。
ゲーム時代だと索敵に出すと、ログに発見した対象の名前や名称と座標が表示されるようになっていた。そして今回もログを確認する限りは殆ど同じ仕組みだと思われる。ログには『ゴブリンを発見。ザワの森西。』という感じでモンスターの発見の通知とシステムマップへのマッピングが行われていた。
「つまり、実際にはパートナーの目を借りて索敵しているという設定にしてあるのかな?ちょいちょいゲームの設定とは違う部分があるし、もうこの際差異は全部神様補正って事にして無理矢理納得するか!そうしよう!神様有難う御座います!」
半ばヤケクソ気味に思考に決着を付けて神様にお礼をする。勿論不満なんてこれっぽっちもない、目線を借りれるのであればこれ以上便利な事はないだろう。勿論俺は紳士なので悪い事に使う予定はない!
「はぁ、便利だし有り難い事なんだけどね・・・取り合えず視線のON/OFFも出来るからこのまま寝てしまうか。ピーちゃん、ごめん先に寝るね。ある程度したら戻って来ていいからね、おやすみ」
どこからかピーと聞こえた気がするが気のせいだろう。今日も1日いい日だったな。明日も頑張ろう。
お読み頂き有難う御座います。
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