ひかりせんせいのとくべつじゅぎょう。
「…ふっ…」
何度目か分からない欠伸を噛み殺しながら、必死に目を開けようと努力する。
…が。努力は虚しく睡魔に負け、僕の意識は失われ、視界は暗転する…
その瞬間。
「ちゃんと聞きなさいっ!」
「…起きろ。」
べしっ!ばしっ!
「…痛い…」
光と真司から同時に突っ込みが入る。
何度目かすらもう覚えていないやりとりを繰り返しながら、僕は真司にこれまた何度目か分からない質問を繰り返す。
「…まだ終わらないの?」
「…もう少しだ。…多分。頑張れ」
…僕は今、光に魔物についての講義を受けています。
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始まりはちょっと前、『宿題が終わらないっ!』と涙目になっていた真司を
『気晴らし気晴らし♪』
と半ば強i…じゃなくて、双方の合意の上連れてきた喫茶店での事だった。
珍しく光が居たので声をかけたのです…それが悪夢の始まりでした。
僕達は最初、対戦ゲームで楽しく遊んでいました。そこで僕は1つの疑問を口にしたのです。
「…光ってさ、このキャラみたいに物を変形させたり出来ないの?魔物でしょ?」
「…なんですって…?」
ここで会話をやめれば良かった…そんな後悔はもう役に立ちません。
「…いや、光だって魔物なんだから…このキャラと一緒でしょ?」
「…どうやら夜は全く私達の事を理解してないようね…よし分かった。少し勉強しなさい…私が教えてあげるから!」
「…いや、いいよ…」
「…ダメ。しなさい」
ズリズリ…
僕は引きずられながら、奥の部屋へと連れ込まれます。
「…なにやってるの?佐々木君もするのよ?」
「…あ?」
こうして、僕達の勉強が始まったのです…
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「…夜。寝てたって事はもう全部覚えてるって訳だよね?言ってみ?」
眠くて覚えてないよ〜…大体光は長すぎるんだよ…話…
「えっとね…魔物には色々種類があって…その種類によって出来る事が違って…真司、パス。」
「…実際の魔物は、大抵が1種族1体で、種族名が付いてる方が珍しいし、強力な力を持ってる…だろ?」
「よくできました。」
…僕達が言えば1分もかかんないじゃないか…もう1時間は越してるぞ…これ言うためだけに…
「で、こっからが重要なのよ。」
はぁ…また長い…
「魔物を人に害する物として、排除しようとしている組織があるのね?それが、『ホーリークロス』ってとこなんだけど…そこの力はかなり強くて、数々の私達の仲間が殺されてるわ。…表の世界でも権力を持っていて、人が何人死のうが揉み消せるの。」
…ふ〜ん…
あ!?小林君達はそれか!?…むー。
「因みに、魔物も人である。という考えの元活動してる人達も居るんだけど…数も少ないし、はっきり言ってあまり意味ないわ。」
ほー。…いや、結構大事な事は分かるんだけど…眠い…
「で、これとは別に『アンチ』っていう存在があるのよ。アンチっていうのは、その魔物に対して絶大なダメージを与えられる人の事で…
例えば、『吸血鬼アンチ』の特徴を持ってる人が居たとすると、吸血鬼はその人にダメージを与えられないけど、逆にアンチは吸血鬼に大ダメージを与えられるの」
…怖いなぁ…僕にもアンチとかいるんだろうか?
「…伝説上に出てくる、英雄や勇者なんかは、このアンチである事が多いわね。…もちろん、才能と努力の末に…って人も居るけど。何かの種族が力を増すと、必ずその種族に対するアンチが誕生するの。
…なんでなのかはまだ分かってないわ。」
中々興味深い話ですな。
「でも、この世界は広いし、極近くにアンチが居るって可能性はかなり低いわ。そもそもその種族のアンチがまだ誕生してないって事もあるしね。
それに、全てのアンチが魔物の敵かって言ったらそうでもないの。あくまでアンチは普通の人間だから…とはいえ、私達にとって脅威なのは変わりないわ」
ふ〜…そろそろ終わりかな…
「まぁ、これくらいでいいでしょ…分かった?」
「…ふぁい…」
眠い…光は校長先生とか向いてると思うな…話の長さ的に。
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「…やれやれ。光の話長かったねぇ。」
「なぁ。お前も多分魔物の1人だろ?なんで話してないんだ?」
「だってー。組織とかめんどくさいじゃん?僕はフリーが好きなんだよ。」
「だけどよ…青山さんの話じゃ、魔物は命を狙われてるんだろ?…やっぱ仲間が居た方がいいんじゃないか?」
「…心配ご無用。今までバレてないし、僕強いしね。」
「…そうか。」
「なになに?そんなに僕が心配?僕うれしーなー。真司がそんなに僕の事考えてくれてたなんて〜」
「心配しない訳がないだろ?」
「…あ、そうですか…ありがとうございます…」
ちょっと予想外の答えが返ってきて戸惑ってしまいました…