受け継がれる銀髪蒼目
ここはデパート
「ふーむむ…これいいなぁ、欲しいなぁ…」
「また引っかかってるよ…」
「そうだな…」
キラキラした目で商品を眺める女の子とそれを呆れ顔で見る男と女の2人組。
「…もー!夜!さっさと行くよ!」
「お母さんを呼び捨てとは何事ですか!?」
(えっ…お母さん…?)
通行人が二度見したという。
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私の名前は杉下愛。杉下夜と杉下真司(旧名佐々木真司)との子です。
今、私は中1ですが…よく、大人っぽいと言われます。
自分ではそんな思ってませんが、原因があるとしたらきっとこの人。
「真司ぃ!我が娘がいじめるよう!」
「あーよしよし。愛も、お母さんいじめちゃダメだぞ?」
「だっていつまでも引っかかってるんだもん。」
「…まぁ、こいつ昔からそうだし…分かるだろ?」
「分かるけどさ…もう少し大人にならない?お母さん?」
「大人なんですけど。まったく…私のお腹から生まれてきたくせに身長は真司に似ちゃって…」
私は中々成長が早い方なようで、すでにお母さんの身長を抜いています。そのせいか、私達家族が並んで歩いてたりすると、よく勘違いされます。
『妹さんですか?』
や、
『可愛い娘さんですね』
なんてよく言われます。その度にお母さんがお父さんに泣きつきます。
…そんな事してるから、子供に見られるんだよ…
「…愛、クレープ食べたかったりしない?」
「いや、別に…」
「……」
「あー…俺は食べたいなぁ、クレープ」
「だよね!食べに行こう!」
ぐいぐいと私とお父さんの服を引っ張るお母さん。
…40歳こえてるでしょ?あなた。って突っ込みたくなりますが、お母さんはまったくそんな風に見えません。授業参観の時に、同級生に、
『ねーねー、あれ愛の妹?かわいいね!』
と言われたりします。しかも、私がそっちを向いた瞬間ブンブンと手を振って、先生に怒られてました。
という訳で、外見と行動があいまってまったくもって大人に見えないのです。
でも、かっこいい時もあります。私が男子からのしつこいイタズラに悩んでいた時、お母さんに相談すると、
『大丈夫。私は愛の味方だよ…それに、明日からもうされないよ。』
と真剣な目で言ってくれました。その時はとてもキリッとした目で、かっこよかったです。
しかも、本当に明日からされませんでした。なんでかお母さんに聞くと
『ふふ。魔法を使ったの。』
と、詳しくは教えてくれませんでした。でも、きっと私の為にがんばってくれたんだと思います。
「真司…我が娘が空想の世界に浸ってるよ…」
「昔のお母さんみたいだな。」
「…そうかな?あ、クレープきたよ。食べさせて。」
「はいはい…ほれ。」
「あーん…うまうま。」
見てもらった通り、お父さんとお母さんはいまだにラブラブです。どのくらいラブラブかと言うと…
我が家には、私の分も含めて、ベッドが二つしかありません。
…どういう事か、わかりますよね?
「愛、食べないの?」
「食べるよ…」
「あーん」
「…いや、いいよ。」
流石に恥ずかしいです
「じゃあ私が食べるわ!あーん♪」
「きゃあ!?」
「うおっ!?」
「どっから出てきた光っ!」
「…び、びっくりしたぁ…」
「んー♪愛ちゃん可愛いなぁ…私も子供欲しいー!」
「結婚すればいいじゃないか…」
「うーん…いい相手が居なくて…それに…ね?」
「こっちみんな。」
この人は青山光さん。お母さんとお父さんの友達で…凄く綺麗なのに、まだ結婚してないんです。だから、よく家に遊びに来たりします。
「はぁ…そろそろ諦めなよ…」
「えー…まぁいいじゃない。高校の頃からの知り合いでしょー?」
「関係ないよ…」
お母さんも、お父さんも、光さんも、あんまり昔の事は話してくれません。
お母さんに聞くと、お父さんのかっこいい所。
お父さんに聞くと、お母さんの可愛いところ。
光さんに聞くと、お母さんの可愛い所しか話してくれな…あれ、私の周りマトモな大人が居ない。
「あ、愛じゃん!よぉ!」
「あ、健太…」
こいつは幼馴染の健太。うるさいけど、まぁまぁ頼りになる奴。
「なにしてんだ?」
「貴方には関係ないじゃない…」
「なんだよ…酷いな…」
「…親と買い物に来ただけ。それだけよ」
「なんだそっか。俺は遊びに来たんだ」
「…ふーん。」
「…愛。健太君と遊びにいってもいいよ?」
「いいの?…じゃなかった。別にいい。」
「…いってらっしゃい」
「……はーい。おーい健太ー!待ってー!」
「…ふふ。夜に似て可愛いわ〜」
「性格は真司似かなぁ…」
「…お前だろ。」
「…?」
「あ、なんかこっち振り返った。」
「聞こえたのかな?」
聞こえてるっての…!
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【数ヶ月後】
「………なに、これ。」
…え?銀髪…?え?目も…蒼い…!?ど、どうなってるの!?
ど、どうしよう!こんなの…誰にも見せられない…!お母さ…だ、ダメだ!今は誰も居ないし!
…こ、こうなったら…!
「け、健太!?ちょっと来てくれない!?」
『ど、どうした…?』
「お願い…助けて…」
『ど、どうしたんだ!すぐ行くからまってろよ!』
…うぅ…どう…しよう…
「ぐすっ…ううん。泣かない。どうにかしないと…!」
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「あー…やっぱり僕の娘だなぁ…なっちゃったかぁ…僕より早いけどさ。」
うーん…良かったのか悪かったのか…本当にやばかったら助けてあげよう。
さて…先代はゆっくり見守るとしようかな。頑張るんだよ。我が娘よ…まぁ、特になんもないかもしれないけどね。
ここからは、二代目の物語。初代銀髪蒼目の吸血鬼の物語は、これにてお終い。
なんだか凄い勢いでいろんな所を駆け抜けたような夜の物語はこれで本当にお終いです。
もしかしたら、何処かに出没してるかもしれませんが。