またね
【夜の心の奥底みたいな所】
「うおおお!どうすんだよ!夜が壊されたぞ!?」
「うわぁぁぁ!どうしようどうしよう!」
「……よし、一旦落ち着け。」
「うわぁぁぁ!うわぁぁ!」
「落ち着けェ!」
「…そ、そうだね…ズズッ…」
「飲んどる場合かぁぁ!」
ガシャァァン!
「どうすりゃいいのさ!」
「真ん中が出来んのか真ん中がぁ!」
「真ん中ってなんだよ!」
「………落ち着こう。自分同士で漫才やっててもどうしようもねぇ。」
「正確には、僕、君じゃないけどね?」
「離れられないなら一緒だろ。…で?どうするよ。夜がいなきゃお前表に出られねぇんだろ?」
「そうなんだよねぇ。僕単体でも出れればいいんだけど…」
「夜を叩き起こすってのは?」
「うーん…多分ちょっと時間かかるよ。その間に色々進んじゃうかも…」
「…よし、俺が表に出るか」
「えっ…まぁ、いいけど…分かってる?今の夜には『魔力が無い』んだよ?」
「分かってる。」
「そうかぁ…じゃあ頑張ってね?…はぁ、僕暇になっちゃうなぁ。」
「暇するなよ。夜を叩き起こせっつってんだろ。」
「あっ。」
「あっ。じゃねぇ。よし…行くか。」
あーあ。2年ぶりくらいか…?そろそろ消えようと思ってたのになぁ…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……ぬぐ…」
「…おお!?夜!気がついたか!」
「……あぁ、真司か。悪いな、俺はお前の愛しの彼女さんじゃねぇ。」
「……まさか、健一…か?」
「Yes!I’am!」
「…どういう事だ?」
「んー…なんか、いつの間にか人格の交代みたいなのが起こってたらしくてな…俺と夜は…まぁ、あれだ。二重人格みたいなもんになってた訳だな。俺は必要ないからそろそろ消えようかと思ってたんだが…夜が壊れちまったんでな。戻ってきた」
「そ、そうなのか…」
「さて、2年ぶりの親友と語り合いたいのはともかくとして…今は、あいつら止めねーとな?」
「…そ、そうだな…」
「よーし…行くぜ〜…『シルバーアップ』!」
ガシャァン!
「うおっ!?まぶしっ!」
「はははっ!今の俺の力は夜の比ではない!」
「どうなってんだ…?魔力は奪われたはずじゃ…」
「……まぁ、気にすんな。ところでだ。真司、これから俺は行ってくる訳だが…帰ってくんのは、夜だ。お前が、しっかり受け止めてくれよ?」
「…OK、任せろ」
「おし!じゃあぱっぱとやっつけるか!………3、2、1…GO!」
キュウン!
「…驚いたな…まさか人格が変わってたなんて…あれは、確かに健一だ…」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「いよっと!」
「くっ…ちょこまかと…!ぐうっ!?」
「いや…マジで皆さん強いなぁ…ここまでやられるとは…」
「…何がここまでやられるとは…だ…ほとんど無傷じゃねぇか…」
「ふざけてるわね…!4人の攻撃がまったく効かない…なんて…」
「いや、光の魔物さんのは効いてますよ?痛くて仕方ない…それっ!」
「きゃあ!」
ゴオオオオ…
「よ、よけ切れな…」
バシュウ!ドゴン!
「……?」
「…ん?なんか轢いたか?」
「………夜!?大丈夫なの!?」
…えっと…そうだ!光だよな?…ここは夜の振りをしておくか…ていうか、轢いた奴はノックアウトでいいのかな?完全にのびてるけど。
「…うん。大丈夫だよ。むしろ具合はいいくらいさ…そこの奴、どっかに持ってってくれないかな?僕は先に行くから」
「…わ、わかった…頑張ってね!」
「うん…!」
…バレてないよな?うん。大丈夫大丈夫。
さて…あの野郎をぶっ飛ばしに行きますかね。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…よ、よし。完成だ!なんとか…間に合った!」
ドゴン!
「…なにが間に合ったって?」
「…お前は…何故だ?魔力は全て絞りとったはzぐほぁ!?」
右ストレート!
「バカが…俺は相手がいい終わるのを待つほど優しくねぇんだよ…」
「…ぐ…ならbぐがっ!?」
右回し蹴り。
「ふん!立たせるわけないだろ!」
「ぐ…こnぐあっ!」
俺の攻撃方法は夜とは違い、技なんて使わない。魔力を身体能力に変え、ただ、殴る。蹴る。踏みつける。それだけだ。だから、スキなんてないし、攻撃を緩める気もない。
「おらっ!」
ドム!
「ぐがっ!」
「どおりゃ!」
ゴキッ!
「ごがっ!」
…こいつもここまでするからにはするだけの理由があったのかもしれない。だが、俺はそんな事に興味は無いし、何があろうと同情はしない。
…こいつをやるのが、俺で良かったかもな。
「ぐ…ぐ…」
「やめとけ。こんだけぶん殴ったんだ。動けねぇよ」
バキッ!
「ぐはっ!」
「…な?」
ドゴォ!
「…流石にもう動かないか…まぁ、全力で殴り続けたからな…」
ドン!
「…まぁ、念には念をってやつだ。もう少しいっとくか!」
ドガッ!バキッ!ゴキッ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…やり過ぎたか…?」
ま、まあいい。多分死んでないし!OK!セーフ!俺は殺されかけたし!正当防衛!
ガチャ!
「夜!大丈夫か?」
「おー真司!終わったぜ?なんだ見に来たのか。」
「まぁな…てか、やり過ぎだろ…」
「死んでねーから大丈夫!」
「そういう問題じゃ…」
ポチッ
「……てめぇ何押しやがったぁ!」
くそっ!まだ動けるとは!目を離すんじゃなかった!
「…ぐ…く…私は…お前には勝てん…だが…お前の魔力で…魔物も…道ずれに…!」
ゴゴゴゴゴゴ…
ビルの最上階が開き、中から砲台のような物が出てくる
「…どこのビックリ屋敷だよ…って…やべぇ!真司!また後でな!」
「お、おう!」
ドオオオオオ!
まさかもう充填が終了してるとは…だが、まだ大丈夫だ!あれは一旦上に行ってから世界に拡散するタイプ…上空で拡散する前にケチらせれば…
んっ?
「……ぷはっ!も、戻ってこれた!」
お疲れ様、『俺』後は…『僕』に任せろ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【夜の心の奥底みたいな所】
「なんだ。もう起こせたのか」
「まーね!」
「ところで、どうだったよ!俺の戦いっぷり」
「…やり過ぎだよ…あぁいうの抑える為に女の子にしたのに…」
「……はっ?」
「あっ」
「……ほーう。そんじゃあれか。俺が女になったのは俺の性格が荒っぽいからって事か?」
「い、いや、ちゃんと、魔力の消費量を抑える為、とか、そういう理由も…」
「…はぁ、まぁいい。後は…夜に任せるか…」
頑張れよ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
キュゥゥゥン…
「よし!ここまでくれば被害も少ないよね!…よーし。さっさと迎え撃つぞ…皆!力を貸して!」
シュン!
『どうやら、ふざけられる状況じゃないようですね…全力で行きます…!』
「「「キキキキッ!」」」
「「「コオオオオ…」」」
「うおっ!?俺も実体化されんのかよ!?くそっ!最後の大仕事って奴か!」
「シルバースパーク…準備」
「よし!俺らが時間を稼ぐから、その間にお前はシルバースパークを限界まで貯めとけ!」
「わかった…!」
ボボボボボボッ…
無数の魔法陣が夜の周りに発生する。
「ようし!俺らも行くぞっ!」
『まずは私から…【夜月・三閃】!」
ザザザッ!……グググ…
『続けぇぇ!我ら蝙蝠の力を見せてやるのだぁぁぁ!【夜羽・輪撃】!』
ガガガガッ!
『生物でないからといって舐めてもらっては困るのぅ…いくぞ!【聖十字の逆十字!】』
ドドドドド!
「おおっ!?皆必殺技持ってる!お、俺もなんか…よ、よし!【ショットガン・ストレート】!」
ドガガガガガ!
ジジ…ジジジ…
(…腕がっ!砕けるっ!)
「おい!まだか!?これ、そんなにもたねぇぞ!」
「……………大丈夫。今…終わった」
「よ、よし!お前ら、離れろ!」
「行くよ…【シルバースパーク】!」
ゴウッ!
ドカァァァン!
「…拮抗してる…いや、押してるな…だがあと一歩足りん…仕方ない。」
(最後の大仕事だ!派手にやってやる!)
「うおおおお!ぶっ潰れろぉ!」
ゴオオン!
ピキ…ピキピキッ!……バキバキバキバキ…!
「……ヒビが入って…」
「壊れてく…終わったか…」
ぐらり…
ひゅぅぅ…
「…限界かぁ…」
…このまま落ちたら…死んじゃうよね。もう、魔力なんて出ないし。
「…………」
あ、あれは…『俺』…
「……じゃーな。」
スゥ…
…消えちゃった……さよなら…『俺』…お疲れ様…。
…そろそろ地面近いかな…
パシッ
「……?真司…?」
お姫様抱っこ……
「…お前は…夜か?」
「うん…夜だよ。『俺』は…消えちゃった。疲れたってさ…僕も疲れちゃった…」
「そうか…まぁいい。魔力は散った。あいつらも捕まった。…もう、終わったんだ。家に帰ろうぜ?疲れてるだろ?今日はゆっくり寝て…明日、どっかいこうぜ。奢ってやるよ。あぁ、久しぶりにゲームでもするか?」
ふふ。真司に奢って貰えるのか…そりゃいいや。
…でも
「…ごめんね。真司。……無理、みたい。」
シュウゥゥゥ…
「…どうした?…お前…足が…!?」
「…足…だけじゃない…もう、体を保ってられない…魔力…無いから…生命力…使ったんだ…でも、それも…もう…」
「お、おい。嘘だろ?折角終わったじゃないか!帰ろうぜ!家に…!」
…あはは。帰りたいなぁ…
「…真司…『またね』…」
これでお別れなんて、寂しいから。また会う為の言葉。
「…また、会おうね…真司…大好き。」
パシュッ
「おい…夜…!?夜っ!!くそっ!くそっ!!なんで…なんでだぁぁぁぁっ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夜が文字通り消えてから、一週間がたった。夜は、謎の行方不明とされている。警察も、魔物達も、縦ロールのお嬢様の部隊や、クラスメート。皆、ずっと探してる。
…だが、見つかる訳がない。だって、夜は俺の目の前で消えたんだから。
夜が居なくなった場所は、どんどん暗くなっていった。クラスに笑い声は消え、俺の家からも、夜の家からも、沈んだ空気だけがただよっていた。
…よく、皆に言われる。『辛いなら泣いていい』と。
だが、俺は泣かない。
もし、俺が泣いていたら、『親友』は笑い飛ばすだろう。『彼女』は、心配し過ぎて、あっちに行けないかもしれない。
だったら泣く訳にはいかない。
俺の『親友』が、『彼女』が。命懸けで守ってくれたこの世界を
「…今日もいい天気だな。」
ガチャ
俺は、上を向いて、生きていく。それが、あいつらへの恩返しになると信じて。
「いってきます!」
『いってらっしゃい』
ーーENDーー