夢
ズズッ。
うんうん。この鼻に抜ける感じの香りと深みのある苦味が……苦味…が…
「うわぁぁぁ!やっぱりダメだぁ!にーがーいー!真司飴ちょうだいっ!」
「…もう諦めろよ…ほれ…」
レロレロレロレロっ!
……ふぅ。
「……うん。…ていうかね?コーヒーが大人っぽいっていう風潮は間違ってると思うんだよ。タバコがハードボイルドぽいっていう…ね?そういう間違った風潮だと思うんだよ…」
「じゃあ飲むな。」
「ごもっともで。」
…ぐすん。おばさんみたいな大人の魅力を出そうと思ったのが間違いだったよ…
「どうせお前の事だから大人っぽい雰囲気を出そうとか思ったんだろ?」
グサッ
「そして、やっぱりコーヒーはブラックが大人だよね!とかいう考えのもといきなりブラックに挑戦したんだろ?」
グサグサ!
「今まで甘いコーヒーしか飲んでこなかったのに、慣らしもせずにいきなり飲んだんだろ?」
グサグサグサッ!
「そういうところが逆に子供っぽい可愛さに繋がるって事がわからないのか?」
もうやめて…僕のココロはボドボドダー…
「ほら…砂糖とミルク沢山入れてやったから…これなら飲めるだろ?」
「ありがとう…」
ズズッ…
うんうん。このミルクの感じと砂糖の甘みと後に残る感じの…苦…味…
「苦いっ!真司飴っ!」
「まだ苦いのか!?ちょ、ちょっと待て!」
ズズッ
あ、そ、それって間接キスってやつでは…?い、いや。普通のキスはいつもしてるけど…けど…なんか恥ずかしい…
「…甘っ。お前…これ以上どうするんだよ…これ…」
「もっと!もっと砂糖とミルク入れてっ!」
「…いや…そろそろ飽和水溶液になりそうなレベルで入れてるんだが…」
「くぬぅぅ…」
ゴクゴクゴクゴクッ!
「あっ…バカ…」
「熱いぃぃ!」
「落ち着け!ほら、水だ!ゆっくり飲め!」
「うぅ〜…」
むぅ…大人の魅力大作戦失敗…
「…だからさ…お前に大人の魅力とか無理なんだって…俺はいいと思うぞ…妹的要素でも…好きだぞ?」
「むー…」
「この体で大人の魅力は無理があるって。」
ぺたぺたと僕の体を触る真司。
少し遠慮というものはないんだろうか。仮にも女の子なのだが。カップルとはいえいきなりしていい事と悪い事が…
「ふむふむ。うんうん。なっ?」
ぽんっ
「ふむふむうんうんなっ?ぽんっじゃないよ!なんだその哀れみに満ちた目は!怒るよ!」
「そういう所が既にさ…自分を偽る必要なんてないぞ?どんな夜も好きだ。」
「……むぅ…ならいい!お菓子買ってこーい!サイダー飲みたーい!だっこー!」
「ちょっとは遠慮しろ。」
ぽかっ!
「痛っ!」
こうなったら…甘え落としだよ!
いや、何を落とすんだって話なんだけどさ…やっぱりさ、主導権握りたいじゃない?ねっ?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「真司ーだっこー」
「ほれ。」
むふふふ…そう!押してダメなら引いてみろっ!アプローチの仕方を変えるのが重要!
前読んだ本にもギャップが大事だって書いてあったし!
という訳でどんどん甘えちゃうよ!
「真司〜お菓子ないのー?」
「あるが…ほれ。」
「……む〜!やだやだやだ!食べさせてくれないとや〜だ〜!」
「仕方ないな…ほれ。」
「あ〜ん…むぐむぐ…美味しいっ!おかわり!」
「ほれ、あ〜ん」
「あ〜ん…むぐむぐ。」
…あれ?もしかして結構成功?よし!次の一手!
ぎゅう!
「お?…いきなりどうした?」
「ぎゅう!真司もっ!」
「はいはい。」
…正直恥ずかしい。なんだよぎゅうって。牛かよ。……でも仕方ないのですよ…真司を落とす為だから…
…でも、この体制ってなんか…
「…なんかえっちぃね!」
「そういう事言うなら、もうやってやらん。」
「…真司顔真っ赤だよ?熱あるの?計ってあげるっ!」
コツン
「……ん〜…ない…かな!」
「なんで頭突きしてくんだよ。」
「違うよ!こうやって計るんだよ!」
あぁ、笑えよ。あざといって笑えよ。だからなんだというのだ。真司への気持ちに気付いたあの日から僕は女として生きるって決めたんだ。どんな事でもしてやるよ…
「…真司っ!チュウして欲しいな!」
「なんでそんな幼くなってんだよ…まぁいいや。いくぞ。」
ズキュゥゥン!
なんちゃって…別にそこまで劇的なキスではないです。
…あれ?なんか急に…眠…?
「…ふぁ…」
「眠いのか?ほれ、寝ていいぞ」
「うん…おやすみ…」
あー真司あったかいー
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あっぶねぇ…これ以上は俺の理性がもたん…」
キスの時に魔力流し込んでよかった…
しかしあれだな。俺、甘えられるの弱いな…いや!違うぞ!俺はロリコンじゃないっ!夜が可愛いのが悪いんだ!
…誰に言い訳してんだ俺は…
「しんじ……ろり…こん…」
「起きてんのか?」
「ねてる…」
「よるしっているか」
「しにがみ…」
「やっぱ起きてんだろお前。」
「…………」
「寝てる…か…」
なんの夢みてんだろうな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あれ?ここどこー?」
『夢の世界だよ!』
「……僕?あれ?でもなんか髪と目の色が…」
『俺もいるんだ。』
「うおお!?前の僕!」
『幸せな時間過ごしてるとこ悪い…っていうか羨ましい!僕も真司とイチャイチャしたい!』
『俺が恥ずかしいからその話題やめろ…』
『ごめんよ。時間もないから簡潔に説明するけど…あっ!やばっ!時間だ!えっと…えぇっと……こ、これからやばい事起こるけど君なら…いや、僕ならいける!がんばれ!』
『それ、簡潔ってか適当…まぁ、頑張れよ。』
「えっ?ちょっ!意味わかんない!どういうこと!?ねぇ!ねぇってば!」
『また会おう!』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ちゃんと説明してけー!」
「うお!?いきなりどうした…」
…あれ?なんだっけ…?
「なんか変な夢見てたっぽい」
「そうか。」
…うーん?まぁ、いっか
あ、ありのままさっき気付いた事を話すぜ!『夜を人として生活させているから夜を幼女にできない』
な、なにを言ってるか大体わかると思うが俺もなにをしでかしたのか大体わかる…!
シリアスだとか、そろそろ終わるだとか、そんなチャチな問題じゃあ断じてねぇ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…