第836堀:拠点確保合流
拠点確保合流
Side:クリーナ
「相変わらず、しれっととんでもない要求をねじ込んでいるわね」
セラリアがそう言うのに、私たちも同時に頷く。
それも当然。だってユキがシーサイフォ王国を助ける代償として要求した対価が……。
「大陸間交流同盟の参加、ウィードのシーサイフォの滞在許可、最後に技術者との面会許可。単純に考えれば何を当たりまえなことをと思いますが……」
「解釈、やり方次第では、シーサイフォ王国は丸裸になりますわね」
ジェシカが現状を言ったのに加え、サマンサがその結果をいう。
全員、否定の言葉一つ出てこない。
きっとサマンサの言う通りになる。
「はぁ、相変わらずユキさんは頼もしいというか、怖いというか。もし、このことをわかっていて受け入れたのならエメラルド女王が素晴らしいというべきでしょうか?」
「分かっていないと思いますよ。まあ、お兄さんは悪いようにはしないですけど。この世界の常識から考えれば、あまりに最先端過ぎる考え方ですからねー」
エリスの言うようにユキの意図がわかっていて受け入れてたならすごいけど、私はラッツの意見に賛成。
ユキのというか地球の外交の方法はこちらの貴族たちに想像や理解できるものじゃない。
視野というか、先を見る力が違いすぎる。
「シーサイフォの女王の意図がどこにあるかはまだわかりませんが、シーサイフォ王国にウィードが根を下ろすことはできました。あとは、何かあれば私たちが直接向かえばいいわけです」
「だね。難しいことはわからないけど。ルルアの言うように僕たちが助けに行けばいいんだもんね」
「リエルはもっと考えないとダメだよ。でも、ユキさんたちの助けに行くのは賛成かな」
「……当然、これでユキたちをすぐに助けに行けるようになったのはいいこと。空母だと所詮船の上だから」
「カヤの言うようにシーサイフォの拠点はこれまで空母だけだったから、何かあれば援護が遅れかねなかったけど、これで私たちは何かあればすぐに助けに行けることになった。それはいいこと」
私も同じように賛成する。
色々わからないことは多いけど、これでシーサイフォという国の防衛能力は飛躍的に上がった。
ゲートを通じて陸と海からの援護が受けられる状態。
これで何かあっても遅れを取ることはない。
「まあ、滞在もいいことだけど、それ以上に漁と海洋調査の許可はいいわね。海は資源の宝庫よ。海の魔物をどうにかしたあとは調べ放題ってことになるわ。もちろん、海の彼方へ向かうことも可能になるでしょう。大陸を沿岸沿いに進むのもありかもしれないわ」
「また、新たなる国や文化と出会うことになりますね。そうなれば、また色々な発見があるでしょうし、ユキさんの目的達成にまた近づくわけですね」
セラリアとシェーラの言うように、海への橋頭保を確保するということは、これまで以上に得るものがあるし、ユキの本当の目的である魔力枯渇現象の解決への一歩に違いない。
「しかし、先のことに夢を膨らませるのはいいですが、ひとまずの問題は海の魔物ですわね。銃の方は開発者と面会できると伺っていますし、そこは面会してからになるでしょうが、今後の予定はどうなっているのでしょうか?」
サマンサの言葉にセラリアへ視線が集まる。
一応皆報告書は持っているけど、こういう行動方針は女王であるセラリアが言うことになっている。
「報告書に目を通したとは思うけど、それに変更はないわね。当初の予定通り、遠洋に出て原因を探るチームと、近海の防衛をするチームと別れて出動することになっているわ。出港予定に関しては、シーサイフォの案内がいるのと、事前情報の収集が必要になるから、現在遠洋に調査に出ている第3艦隊が戻って話を聞いてからってことになっているわ。その第3艦隊の帰還が凡そ7日後。だから、その間に銃の開発者の面会も行う予定ね。今日はユキたちが午前中にシーサイフォと会談をしたあと、提供された住居の確認ね」
ふむふむ、今日はシーサイフォから住居が提供されるのか。
まあ、シーサイフォの方も、ユキたちをいつまでもお城の中に置いておくのは色々と政治的に問題あるのだろう。
……無駄な抵抗だとは思うけど。
と、私はそんな事を思っていると……。
「となると、私たちもお手伝いにいかないといけませんねー。何せお兄さんに提供された住居ってことは、私たち奥さんの住居でもあるんですから」
「「「!?」」」
ラッツの言葉で私を含み全員はっとしたような顔になる。
「ラッツの言う通りですね。私たちが住む場所になるのですから、お手伝いするのは当然ですね。町の規模なども調査しないといけません」
「エリスの言う通りですね。シーサイフォの町を調査することは大事なことです。ですので、私たちが旦那様の元に向かう必要があります」
エリスとルルアの言う通りだ。
私たちはシーサイフォの為、今後の大陸間交流の為、そして何よりユキの為にできることは全部やるべきなのだ。
「うん。僕もさんせー! 向こうの治安とか気になるからねー! というか、僕たちだけお留守番って嫌だったし!!」
「こらリエル。最後が本音になってるよ!? というか、子供たちがいるよ」
「……そこは、向こうにいるキルエやサーサリ、ミリー、ラビリスたちに交代してもらえばいい。向こうも子供たちと会えずにフラストレーションがたまっているはず」
リエルたちも治安の確認の為と、シーサイフォに行く気満々だ。
えーと、私は一体どんな理由で、向こうに向かえば……と思っていると、サマンサが口を開いて……。
「私たちもイフ大陸のその後の動きをユキ様に伝える必要がありますわ。ねえ、クリーナさん?」
「……そう。サマンサの言う通り。私たちは外交官として、ユキの妻としての職責を果たす必要がある」
「私も同じですね。外交官として、何より妻として、そして護衛として、このジェシカもシーサイフォへ向かいましょう」
私たちイフ大陸組もシーサイフォへ行く理由ができた。
で、それを見ていたセラリアは……。
「まあ、そうなるわよね。私も海は気になるし、同じ女王としてエメラルド女王に聞きたいことがあるわ。とはいえ、女王が公式に相手の女王に会いに行くにはちょっとあれだからお忍びってことになるでしょうね。でも、みんなも何日もシーサイフォに滞在はできないわよ。それだけは覚えておきなさい」
「「「はい」」」
それは流石に理解している。
未だに大陸間交流の調整なんかでとても忙しいのだ。
ずっとシーサイフォにいるわけにはいかない。
……ユキの隣でゆっくり本を読む生活はまだ遠い。
で、こうして訪問することが決まれば、あとは……。
「じゃ、順番で誰が行くかって話よね。一斉に家を空けるわけにもいかないし、どう決めたモノかしら?」
ということで、私たちはどういう順番でシーサイフォに向かうのかを決める事に、最も会議の時間を割いたのは当然の話だった。
「……で、じゃんけんの結果こっちに来たわけか」
「そうですわ」
「ん、勝った」
「ええ。勝ちました。では、リーア交代します」
「はーい。私もサクラたちに会いたかったんだよねー」
「うむ。ユーユとあってくるかのう」
「では、失礼をして一旦旅館の点検と子供たちの様子を見てきます」
ということで、私たちイフ大陸組が見事勝利を飾り、リーア、デリーユ、キルエが入れ代わりに戻って行った。
「で、サマンサ。ユミの様子はどう?」
「ユミはいい子で過ごしていますわ」
「そう、それは良かったわ」
こっちに残った皆は、ミリーの様にウィードのことを聞いている。
無論私にも同じで……。
「クリーナお姉ちゃん。学校の皆は元気?」
「ナールジアさんは元気なのです?」
「ん。学校の皆は元気。あ、でも1人校庭で転んで足を怪我をした子がいた。でも、直ぐに治った。ナールジアさんはいつものように元気一杯、相変わらずアイスを食べている。そして、ラビリスたちも元気そうでなにより」
「ええ。クリーナも元気そうで何よりだわ。どう、イフ大陸の方は?」
「相変わらず、際限なく要求がくる。とても面倒。あとでユキにも報告しないといけない」
「そっちもそっちで大変そうね」
私もラビリスたちと近況を話し合っている。
まあ、もともと毎日顔は合わせているからお互いそこまで懐かしいという感じはないのだけれど、こうして違う土地で顔を合わせるとこっちで頑張っているんだなーと思う。
「では、結構船上の行動はキツイということですか」
「はい。そうなります。ジェシカ殿。情けないことに、私も船酔いでダウンしてしまいました」
「ルース殿もですか。船というのは意外とつらいものなのですね」
隣では、生真面目なジェシカが船上でのことを聞いている。
そういえば、デリーユが船酔いして大変だったと聞いている。
船酔い……。船に酔うこと。私は経験したことがない。
「ねえ、ラビリス。船酔いってつらそう?」
「え? 何をいきなりって、ああ、報告書からね?」
「そう、隣でジェシカも話しているけど、タイキやルース、デリーユまでがダウンしたって聞いている。つまりそれだけすごい?」
「いえ、私たちは船酔いにならなかったし、人によるんじゃないかしら?」
「船が波に合わせて揺れて楽しかったよー」
「すごかったのです。木造船で小さいのも侮れないのです」
「ふむふむ」
つまり、船に酔ったのは船の揺れが原因。
確か、三半規管の誤認って聞いたことがある。
「……私も船酔いしてみたい」
「いや、人によりけりとは言ったけど、デリーユたちは嘔吐したりで動けなくなったから、かなりのレベルでキツイと思うわよ。おそらく二日酔いレベル」
「……ん。船酔いにはならない」
前に調子に乗ってお酒を飲んだ次の日は死ぬかと思った。
トイレがお友達になった。
「で、雑談は一旦やめて、提供してもらった家の整理をするぞ」
「「「おー」」」
ということで、提供してもらったシーサイフォの家の掃除と整理をすることになる。
とはいえ、普通だったら重たくてちょっと動かすのすら大変な家具も、私たちの力にかかればホイホイ片付けられるので、一時間ほどで、家の準備が整った。
「……そういえば、この家はシーサイフォ王都のどのあたりにあるの?」
「ああ、そういえば聞いていませんでしたわね」
「私たちは地下の倉庫から出てきましたからね。パッとみて海が見えるような場所はありませんでしたから、港からはそれなりに距離があるのでしょうか?」
「ジェシカの言う通りだ。津波などの被害を考えて、沿岸には貴族たちは家を構えていないようで、町の中央にある塀で囲まれている区域にある」
なるほど。
そうすることで被害を抑えるわけか。
海に住む人たちは、海の近くに住むというリスクを負っているのだと、改めて理解した。
やはり、知っているのと実際見て聞いてとなると違うものがある。
本の世界だけじゃわからないことばかりだ。
「時間もあるし、町の様子でも見てみるか。俺たちもこっちに到着して、町を見る暇はなかったからな」
やった。私はついている。このまま会議かと思えば、町を見るチャンスがやってきた。
私はわくわくしながら、シーサイフォの町に赴くのであった。
こうして拠点を確保、出入り口も確保。
それは、シーサイフォがゲート繋がったということ。
ユキの野望へ一歩を達成。
そして、シーサイフォの町はどうなっているのか?
新しい町に来たら探検が楽しみだよね。
まあ、リアルでは時間がないんだが。




