第834堀:その力は何のために
その力は何のために
Side:ヒイロ
「ということで、今日からみんなと一緒にこの空母にいることになったコメットだ。みんなよろしく!」
そう元気よく挨拶したのは、コメお姉だ。
「「「……」」」
でも、みんなは訳が分からず、沈黙で返す。
まあ、仕方ないよね。だって……。
「いや、なんでコメットがこっちにいるのよ。ユキ、コメットはアンデッドでしょう? 大丈夫なの?」
「大丈夫だぞ。霧華だって普通に活動しているだろう?」
「ああ、そういえば」
「でも、なんでコメットさんがわざわざ空母に来ているんですか? いつもこもって研究が大好きで、お外にはあまり出て来ないようなイメージがありましたけど?」
「ぐはっ!?」
ヴィリお姉の容赦ない口撃に思わず胸を押さえるコメお姉。
天然で急所をえぐってくるから怖いよねー。
普通に怒っても怖いけど。
「まあ、そういじめてやるな。コメットも空母に興味津々なのは知っているだろう? その関係だよ」
「「「ああー」」」
「うわっ、ものすごく納得された!? いや間違ってないけど」
……?
一見普段のコメお姉に見えるけど、なんか違う。
いつもの元気がない? なんでだろう?
そんなことを考えているうちに、周りでは話が進んでいって……。
「……ということで、コメットは魔術障壁発生機の調整と観測のために来たってわけだ」
「納得ね。エージルには他の設備の整備もしてもらっているし、防御の要である魔力障壁発生機にだれか専門家がついてほしいとは思っていたわ」
「コメットさんなら安心ですね」
「……うん。そうだね」
そう喜ぶ2人に対し、ヒイロは素直に同意できなかった。
なんか、やっぱり違うんだ。
「じゃ、コメット頑張れよ」
「おっけー。任せてよ。ちゃんとやってみせるよ」
ほら、なんかやる気をわざわざ出している。
興味の対象に興奮、没頭しているって感じじゃない。
何かを無理に頑張ろうとしている。
コメお姉らしくない。そんな好きでもないことに頑張るとかするタイプじゃないから。
でも、なんでそこまでしてここに来たんだろう?
そんなことを考えているうちに、お兄たちはでていっちゃって、CDCにはヒイロたちが残る。
「ねえ。ドレお姉。これからどうするの?」
「今日は空母で待機よ。ユキたちはシーサイフォ王城でこれからのことで会議ね。まあ、昨日あれだけやったんだし、もう一度改めて話し合って、具体的な作戦を決めるはずよ」
「となると、時間がかかるわけですね」
「つまり、お休み? やったー」
お船でのお休みは初めてだ。と思っていると……。
「何言っているのよヒイロ。今日も普通に仕事よ仕事」
「えー」
なんということ。
待機なのにお休みではなく、今日もおしごと!?
「えーじゃないわよ。ここは敵地とまでは言わないけど、海の魔物がいつ襲ってきてもおかしくないところよ。常に警戒の兵士が出ているように、ヒイロたちも準戦闘待機よ。まあ半舷休息とかはとるけど、まずはちゃんと仕事をこなしてから休みよ」
「うえー」
「そんな声ださないの。別に全力で働けってわけじゃないわ。今日はエージルやコメットに協力して艦の装備の整備をお願い」
「はい。わかりました」
「……はーい」
仕方ないから、ヒイロはとりあえず返事をしておく。
まあ、コメお姉のことも気になったし、そういう意味ではちょうどいいから。
「はぁ、一応船の装備の整備だから油断してると怪我するからね? ヴィリア、ヒイロをお願い」
「はい。任せてください。厳しくいきます」
「が、がんばります!!」
「いまさら遅いわよ。じゃ何かあれば連絡頂戴。私はここで書類仕事をしてるわ」
ヴィリお姉が厳しくとか、もー最悪。
本当に厳しいんだもん。
ということで、艦内をエーお姉、コメお姉と一緒に移動することになった。
「まあ、ドレッサはああいってたけど、のんびりとやろうか。まずはこっちだよ」
「そうだねぇ。装備の整備は早くやればいいってわけでもないからね」
「そうなんですか?」
「どういうこと?」
エーお姉やコメお姉の言うことがわからずにヒイロたちが首を傾げていると、説明をしてくれる。
「ヴィリアたちも自分の武器や鎧の手入れぐらいはするだろう?」
「はい」
「うん。する」
そうしないとダメだって言われているし、魔物退治とかで血が付いたままだとなんかすごく使いづらくなるから。
それは命に関わる。
だからちゃんと毎日手入れは欠かさない。
「それと同じさ。機械も同じように手入れが必要なんだ。それで、手入れを素早くやってしまえるのはいいことだけど、見落としがあっちゃいけない」
「剣とか槍、鎧なんかより複雑だからね。ちょっとした油断やミスで機械は動かなくなるからね」
「そんなに難しい物なのですか?」
「ヒイロたちに整備できるのかなー?」
2人の説明を聞くと、ちゃんとした知識が無い人が下手に触っちゃいけないような気がする。
「やってほしいのは整備というより点検だね。一ヶ所でも異常があれば、僕やコメットに即時報告ってことさ」
「そうそう。専門的な修理をしろなんてことは言わないさ。まあ、簡単なやつは出来るに越したことはないけどね」
「今は、状況が状況だから、こういう精密機械の調整や修理は僕たちがやるけど、僕たちだけで故障箇所がないかまで一個一個点検して回っていたら、時間がいくらあっても足りないからね」
「そういうところを手伝ってほしいわけさ」
「なるほど。でも、そもそも故障しているかとかは私たちにはさっぱりわかりませんが?」
「うん。ヒイロも全然わかんない」
機械の整備とかしたこともないから。
あ、でも目覚まし時計の電池を入れ替えるぐらいはできる。
「そこは簡単だよ。各セクション、まあ、機械の保管場所には診断装置があってね。そこを見れば一発ってわけさ」
「ま、実際はオンラインでも確認はできるんだけど、目視も大事ってことだね。オンラインの方は私たちがCDCから確認する。そして、ヴィリアたちが目視で確認する。っていう二重チェックだね。あとお願いしたいのは、オンラインになっていない武器や装置の確認だね」
「オンラインになっていない物って何ですか?」
「たとえば銃器だね。銃器の保管庫のセクションは、出入り口だけはオンラインでセキュリティがかかっているけど、中身の有る無しまでは判定が無いんだ」
「えー? 重さで判断できるんじゃないの?」
ヒイロは体重計とかを利用すればできるんじゃないかと思うんだけど。
でも、2人は苦笑いをして……。
「その場合は部屋全体を改装する必要があるからね。扉だけにセキュリティをかけているのが現状かな」
「ま、でもヒイロの意見はいいかなーとは思うね。管理は楽そうだし。あ、いやまてよ。同じ重さのダミーと置き替えればいいってことになるか?」
「そう言う場合はICチップでも組み込んでってなるけど、そこまでするなら目視ってことだろうね」
おー、なんか難しい話になっているけど、なんとなく実現が大変そうなのは分かった。
「と、銃器管理の改善方法はまたあとにするとして、今はそういう理由で目視による管理が必要ってわけさ」
「なるほど。分かりました」
「とりあえず、ヴィリアとヒイロに見て回ってほしいセクションを教えるよ。というか、君たちに行ってほしい場所は、上級士官やその場所の配属要員しか入れないようになっているからね」
「機密保持や破壊工作とかを避けるために、そうしている。まあ、それがヴィリアやヒイロたちにドレッサが仕事を頼んだわけさ」
「僕たちやゴブリンの整備班だけじゃ、今のシフトだとかなりきついのさ」
「スライムたちが表だって使えればいいんだけどね。まあ、いずれにしても上級士官の最終確認ってのは必要なんだ」
2人の話に納得。ドレお姉も最初から素直にそう言えばいいのに。
と、そんなことを話している内に、武器の第一保管庫に到着した。
この空母リリーシュは兵員第一武器庫、兵員第二武器庫、艦武装第三特殊武器庫というふうに武器庫が分かれている。
まあ、それらは武器庫だけで、他にも燃料保管庫、整備物資保管庫、食料保管庫など多数の倉庫が存在している。
なぜ細かく部屋を分けているのかというと、まず空母自体が大きいことと、保管庫が被弾した時、一気に全ての物資が喪失しないようにしているためってお兄が言ってた。
そんなことを考えている内に、2人が武器庫の詳細を説明し始める。
「まあ、知ってると思うけど、ここに魔力感知もかねたカードリーダーがあるから……」
エーお姉がそう言いながら、扉の横にあるカードリーダーにカードを通すとプシュっと音を立てて鉄の扉が開く。
その中には更に鉄格子が存在していて、その奥に銃器が置いてあった。
「で、中にはさらに扉があって、別の人物の認証でないと開かないようになっているのさ。1人だけでの持ち出しは不可能というわけだ」
「不正を防止するためだね。それだけ、この武器は強力で危険ってわけさ……」
そう言うコメお姉はなんか寂しそうだった。
それはヴィリお姉も感じたようで……。
「コメットさん? どうかしたんですか?」
「あ、いやー、なんというか、それでも、ヴィリアたちはこの武器を扱うんだよねって思ってね」
「どうしたの? コメお姉なんか変」
「君はわかりやすいんだよ。それでよくもまあ、ディフェスたちが気が付かなかったもんだね」
「あははは、まあ、あの時は色々細工してたからね。と、ところで、ヴィリアとヒイロは何のためにこの武器を、その力を使うんだい?」
ヒイロたちには2人の会話はよくわからないけど、この武器や力を何に使うかはちゃんと知っている。
「私はお兄様や、お姉さまたち、そしてみんなのために使います。いままでずっと守られているばかりだったから」
「ヒイロもそうだよ。今度はヒイロがみんなを、お兄を、コメお姉たちを守るんだ」
迷わずヴィリお姉とヒイロは答える。
そう、ヒイロたちはお兄やみんなを守るために強くなるんだ。
「そうだね。……誰にだって守りたいものがある。当然の話だ」
ヒイロたちの答えに、コメお姉はちょっと悲しそうな笑顔で頷き……。
「そんなことすらわかってなかったからなー。あの時の私は。彼女たちを守れればいいと思っていた」
「ま、そういう間違いは得てしてあるもんさ。まあ、規模は違うけどね」
「慰めになってないよ」
「今更過去を変えられるものじゃないからね。それに今、この状況を否定することも間違いだろう?」
エーお姉がそう言うと、コメお姉は頷いて……。
「そうだね。そうだ。私のやることはここでヴィリアたちのサポートをすることだ。なんのために私が研究し、道具を生み出しているかを、今度こそ見失わないようにしないとね」
「「?」」
やっぱりコメお姉が言っていることはわからない。
だけど、最初のころと違ってなんか元気が出てきたみたい。
「よーし、じゃ、次の場所を説明するよ。さあ、行こう」
そう言って、コメお姉はさっさと先に行ってしまう。
「なんか、元気が出たみたいでよかったね」
「そうね」
「ああ。コメットらしくて何よりだね」
ということで、ヒイロたちはそうこうしながら空母の設備の確認をしていくのだった。
「あれ? お休みは?」
「もうちょっと頑張りなさい」
「えー」
だけどヒイロのお休みはまだまだ先らしい。
こうして彗星は自分で答えを見つける。
そして生まれたばかりの星たちは頑張って輝く。
別に人生そんなもんさ。
勝手に頑張って勝手に解決して、そうして成長していくもの。
ということで、俺は勝手に小説が増殖することを祈って4月26日ゾンビゲーをやりたいと思っている!




