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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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落とし穴141堀:最近の町と意外な一面

最近の町と意外な一面



Side:カヤ




「行ってきます」

「はーい。行ってらっしゃい。あ、僕のお菓子わすれないでねー」

「カヤ、リエルにお菓子買って帰らなくていいよ」

「えーなんでー」

「リエルがお菓子ばっかり食べてるのを見て、サクラたちが真似してたでしょう? だめだってば」

「いいじゃん。たまには子守りから解放されたいよー。あ、別にサクラたちは大好きだよ?」

「もう、昨日休んだばかりでしょう」


そんなやり取りを背後に聞きながら、私は自宅を出ていく。


「……今日はお買い物。という名の息抜き」


私は今日がみんなで決めたお休み日。

最近、私たちは超が付くほど忙しい。

ユキたち、新大陸組はシーサイフォ王国の問題。

セラリアたち、ウィード組は大陸間交流の調整。

そして私たちは、キルエとサーサリの代わりに家事チームということになっている。


「……なかなか、家事や子守りは大変」


家事に関しては、ユキが用意してくれた地球の色々な道具あって楽なんだけど、リエルが出がけに言ったように子守りだけは大変。

サクラたちはいつも全力で遊ぶから片時も目を離せない。

なぜかちょっと目を離したすきに、転んだりして泣く。

食事にも気を使わないといけないし、さらには旦那のお世話まであるんだから、今更のように主婦っていうのはすごいんだと実感しているところだ。

いつも頑張ってくれてるキルエとサーサリがお休みがてら新大陸にいくから、家事に子供の世話を引きうけたけど、ここまで大変で、疲れるものだとは思わなかった。

まあ、それはみんなわかっているようで、私が今してるみたいにシフト制で休みを取ることになっている。


「……もうちょっとできると思ったんだけど、メイドさんは大変」


キッカが生まれてからは特にそう思う。

キッカが夜泣きとかしていると、生みの親としてやっぱりあやしたくなる。

だけど、大体泣き出すと全員つられて泣き出すからさあ大変。それが最近は毎日のことだから疲れているわけ。

リエルの泣き言もわからなくはない。あと2日3日休みがあればとは思う。

とはいえ、子供たちが嫌いなわけじゃないけど。


「と、いけない。今日は息抜きの日なんだから久々に町でも歩いてのんびりしよう」


そう決めて、私はとりあえず、商業エリアへと向かうことにする。

目的は、リエルのお菓子とかみんなに渡せる何かいいプレゼントでも探してみようという魂胆から。



そういうわけで、ウィードの商業区にたどり着くと……。


ワイワイ、ガヤガヤ……。


「……相変わらず人が多い。いや、さらに増えた」


大陸間交流宣言後、ウィードへの観光客が圧倒的に増えた。

そして、トラブルも増えて、トーリやリエルも忙しくなったって言ってた。

まあ、警察の仕事はポーニに引き継いでいるからそこまではないんだけど。


「でも、活気があっていいかな」


私がこのダンジョンに来た時はこの階層すらなくて、この階層を作って整備を始めた時は、あっちに冒険者ギルド、こっちにスーパー銭湯とずいぶん離れた場所にポツンポツンとあるだけだった。

それが今では色々な建物が立ち並び、笑顔の人々であふれている。

これを見ると、私たちも頑張ってきた甲斐があると言うものだ。


「さて、ウィードの発展に喜ぶのはいいとして、みんな何がいいかな」


まずはプレゼントだ。

何か面白いモノはないかなとお店を覗いていると……。


「あら? カヤじゃないかしら?」


背後から声を掛けられて振り向いてみるとそこには……。


「ん? ああ、駄狐とクロウディア」


聖剣使いの2人が立っていた。


「誰が駄狐よ、誰が!!」

「落ち着きなさい。カーヤ。カヤもからかわないでよ。普通に声を掛けただけでしょう」

「ごめん。カーヤはからかいやすいからつい」

「くぉら!?」

「だから、カーヤも一々反応しないで。はぁ、あなた達2人って本当に顔を合わせるたびにこんな感じよね……」


それは、そこの駄狐がかつて私の夢に介入なんかしてきたのが原因なのだが、それを言っても不毛なので、黙っておく。

それよりも……。


「で、話をかけてきたのはなんのよう?」


まずは、私に声を掛けたわけを聞くべきだろう。

聖剣使いは基本的にイフ大陸の諜報活動を行っているはずだ。

なので忙しいはずの2人がここにいるということは何かあったから?


「いえ、今日はオフなので、2人で商業区を見に来ただけですよ」

「ま、何かいい物があれば買って帰ろうとは思っていたけど」


心配して損した。

まあ、聖剣使いだって人とかわらないから、こうしてショッピングしててもおかしくないか。


「……そう。私も今日は休みで息抜き中。家族に何かいいプレゼントがないかと見ていたところ」


別に隠す理由もないので素直に答える。


「へえ。カヤもここで買い物とかするのね。必要な物は全部DPで揃うじゃないの?」

「別に万能というわけでもない。DPで購入できるのはあくまでも地球の品とユキが見聞きした物だけ」

「十分万能そうですけど。まあ、こういう商店がたくさんある中にはなにか特殊なものがあるかもしれないというのはわかります」

「ああ、宝探しみたいなものね」

「ニュアンスは間違ってない。そんな感じ」



こんな感じで聖剣使いの2人と雑談をしつつ、商業区を回ることになる。



「子育てって大変よね。私もよくわかるわ」

「私たちの場合は自分より年下の孤児のお世話でしたけどね」

「……そっか。2人もコメットが拾った孤児だったんだっけ?」


意外なことに子育ての話ができるのには驚いた。

まあ、コメットに孤児として集められたんだから、そういう子育てはしたことがあるのだろう。


「じゃあ、サクラたちにおもちゃでも買ってあげたらどう? まあ、ユキ殿の持ってくるものには及ばないだろうけど」

「別にDPで手に入るおもちゃが全てではない。こっちのものはこっちのものでいい。手作り感が特に」

「じゃあ、ぬいぐるみ屋とかどうですか?」

「へえ。そんなのがあるの?」

「なんだ。カヤも案外と知らないのね」

「最近は忙しいから。最近の商業区の店舗は知らない。そういう意味でもここに出てきた。というか、この通りは店の出入りが激しい」


この商業区の大通りの店舗は激戦区だ。

借りる料金も高ければ、買い取り価格もバカ高い。

まあ、全部買い取りを許すと金持ちによる買い占めが起こるので、買い取れるのは一部の店舗に決まっていて、残りは借りるようにしているのだが、続かずにつぶれるお店は多い。

そして、次のテナントが入ってくることになるのだ。

ユキがいうには切磋琢磨するための場所とのこと。

こうして、お店が次々と入れ替わるからこそ、楽しみが増える。

という話は分かるけど、いいなーと思った店が無くなっているとちょっとショック。


「あー、そういえばそうよね。この前のクレープ専門店もなくなったからね」

「いえ。あの店舗は二つ路地向こうに移動しただけですよ。無くなってはいません」

「でもさ、この大通りから移動したってことは、ここでの維持が出来なくなったってことでしょう?」

「……一概にそうでもない。宣伝のために一時大通りに出てきて、お客さんをたくさん作ったあとに、大通りから離れて路地でしっかりと経営してるところもけっこうある」

「はぁー、そういえば、そういうのは時々見るわね」

「皆さん色々考えているんですね」


まあ、こんな大通りで成功できるのは一握りの人たちだけだ。

でも、だれでも一度はこういうところで商売をと夢見るモノだから、ユキは誰にでもチャンスをということで、この場を提供している。

と、そんなことを話しているうちに、一本路地に入ったところにあるというぬいぐるみ屋にやってきた。


「……意外と人がいる」

「子供連れが多いわね」

「ぬいぐるみ屋ですからね。でも、可愛らしいから結構大人の利用者も多いんですよ」

「その気持ちはわかる。だって……」


お店の中は所狭しと、ぬいぐるみが並べられていて、とても楽しい。

ただ可愛いだけじゃない。服とかにも凝っていて、ぬいぐるみの着せ替えも想定していて、自分だけのぬいぐるみができると書いてある。

これなら、大人も十分に楽しめる。

と、思っていると……。


「はいはい。いらっしゃいませー……って、何やってるんですか、珍しい組み合わせですね」

「ラッツ」


なぜか、エプロンを着たラッツが普通の店員のように出てきたのだ。

だが、それだけでなく……。


「ラッツどうしたって。おや、ディアとカーヤ、それにカヤか珍しいな」

「「キシュア」」


そう、なぜかキシュアがいた。

正式名称キシュア・ローディ。

聖剣使いの一人だ。


「というか、キシュアは全然似合わない気がする」

「なんだとー!! 私だって可愛いモノは好きだよ! 文句あんのかー!!」

「いや、別に好きでもいいと思う」

「って、納得するのかよ。で、何しに来たんだ?」

「何しにって言われてね。私たちはカヤの案内ね」

「ええ。そうね」

「カヤの?」

「カヤ一体どうしたんですか? 何か入用ですか?」

「……今日はオフだからぶらっと商業区を覗きにきた。そしてら、ティアたちに会ってぬいぐるみ屋に案内された。そしたら、ラッツとキシュアがいた」

「あー、なるほど」

「とりあえず、2人はここで何をしているのかを聞きたい。不思議」


私はとりあえず、その謎をはっきりさせることにする。

ラッツがこんな店を構えているとは全く知らなかったから。


「ふむ。それを説明するには……」


ラッツはそう言って店の奥を見て、私たちもその視線を追ってお店の奥。

カウンター、レジがあるところを見ると……。


「さて、今日は何を作ろうかなー」


そう言って裁縫道具を一式持っているニーナがいた。


「……で、ニーナって誰だっけ?」

「いや、名前覚えてるじゃんか。忘れるなよ。私たちの仲間の一人だよ」

「……」


キシュアの言葉に奥深くに眠る記憶を何とか……思い出す。


「ああ、エナーリアで偵察していたへっぽこ聖剣使い」

「どういう覚え方してるのよ」

「幸い、本人には聞こえていないようですね」


ああ、確かに失礼なことを言ってしまった。

弱いのは仕方がない。

と、思っていると。

ニーナはこちらに視線を向けることなくぼそっと口を開いて。


「聞こえているわよ。別に影が薄いのは知っているわ。いいのよ偵察にはこのぐらいがいいんだから。で、私たちのお店になんの用かしら?」

「はい? 私たちの? どういう意味。ラッツいい加減に教えて」

「まあ、わかりにくいですかね。一応、ここは私とニーナの共同出資で運営しているお店なんですよ」

「はい? ぬいぐるみ屋を?」

「ええ。スーパーラッツとウィードの交易とで大きな商いは既にやっていますからね。なにより、お兄さんにいつかやってみては、と言われていましたから」


そう言って、ラッツはとてもうれしそうな笑顔になる。


「ユキに?」

「ええ。子供のおもちゃを作ってみたらどうだって。私にはいつも助けられてるから、好きなことを今度はやってみたらどうかって」

「むう。ラッツだけずるい」

「えへへー。とはいえ、カヤたちにもちゃんとそれぞれ優しくしてくれているはずですよ。それに、カヤにお店を開けといっても別にご褒美じゃないでしょう?」

「それは、確かに。お店の経営とかできる自信はない」


私はあくまでも自警団とか、あとは畑を作ることしかできない。

……裁縫は、あまり得意じゃない。


「ということで、お店をこの裏路地に構えようって構想まではできてたんですけど、店員がいなくてですね。まさか、私自身がこのお店を切り盛りするわけにもいかなくて」

「それはそう。ラッツがいなければ私たちが動けなくなる」

「だから、聖剣使いの皆さんに手伝ってもらっているわけですよ。まあ、皆さんも忙しいですけど、それでも暇といっては何ですが、休んでいる人は常にいますからね。それにコメットの孤児院にいましたからね。みんなぬいぐるみは得意なんですよ」

「あー、なるほど」


すごく納得。

そういえば、聖剣使いはみんなコメットに拾われたんだっけ?


「ふん。私なんかがぬいぐるみ作って、わるかったな」


そういってむくれるキシュア。

でも……。


「ううん。とてもいいことだと思う。かわいい」


そう。気持ちがこもっている。

そして技術も追いついている。

きっと、長い時間をかけてここまでになったのだろう。

コメットは普段あんな感じだけど、なんだかんだ言っても子供たちを大事にしてたんだなーと思えるひと時だった。




こうしてラッツたちは仕事の合間に、色々な夢を追っているのでした。

そして、また別の人たちの物語にもつながっている。


唐突な話だが今回は物語につながっているので要注意かな?


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