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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第829堀:海の夜

海の夜



Side:霧華



「みな、先ほどのユキ殿の話、どう感じた?」


そう下問するのは、シーサイフォ王国の女王、エメラルド・シーサイフォ。

先ほど、主様と会談をされた方だ。

主様は侮れないとの感想を持たれたため、私を会議の監視に派遣している。

と、私たちは空母がゲートでつながった時点でスティーブたちに紛れてすぐに空母に移り、そのまま水上を走って城に忍び込んだわけです。

すでに城内の把握は完全に済ませており、どのような任務でもこなして見せましょう。

それも主様を守るため当然のことです。


「私は信用できるかと思います。まだ隠された目的はあるとは思いますが、あれだけの船を作り出す技術を持つ国です。同じく問題に見舞われていたハイデン、フィンダール、ハイレ教を見ても害になるようなことはない様子ですし、協力頂いてもよろしいかと」


そういうのは、アクアマリン宰相。

最初は主様方の外見に騙されて侮りがあったそうですが、私が見たのは空母を見て真っ青になった彼女だったので、そこまで警戒心を抱けません。

おそらく、聡明であるが故に、力の差を理解してしまったのでしょう。

おかげで、この場においてもウィードを認める発言をしているのですから、いいことですね。


「しかし、宰相。魔物の被害の話だが、ウィードが仕組んだ自作自演だという線は考えられないか? レイク将軍もその目で見たのだろう? 魔物を操る彼らを。それを会議の場では言わなかったのは、何か後ろめたいことがあるからではないか?」


その宰相の言葉に反論するのは、謁見の時にもみんなを代表して異議を述べたルイ王子。

この人は状況を見るに、反論役を担っているようです。

王子の発言に誰も顔をしかめてはいませんから。

でも、後継ぎが女王と対立するような言動をとっていていいのかと疑問には思います。


「王子のお考えもわからなくないのですが、それならばそもそもこちらに魔物を操れるなどと教える必要はなかったでしょう。魔物とは無関係を装ったほうが楽なはずです」

「むう、確かにそうだな。策であるなら、わざわざ魔物との関係性を示して疑われるなど愚かでしかないな」


レイク将軍の言う通りです。

主様が隠蔽を図ったのであれば、尻尾を掴ませるようなことなんてあるモノですか。


「そもそも、あの船を見ればわかると思いますが、全部が鉄でできている驚異の船です。あれを以てすれば、我が国を滅ぼすのはたやすいでしょう」

「うむ、それは私にもよくわかる。あれだけ巨大な船を自壊させることなく作り上げるなど、私たちの造船技術をはるかに超えておる。あれだけの造船技術をもっていて、武器の方は進んでいないなどというのはあり得ないだろう」


ふむ、本当にこの女王は聡明ですね。

先の読みが素晴らしい。だからこそやりにくいですね。

主様の意図を暴こうとしています。まあ、そもそも暴けるはずもありませんが、万一にでも主様の足を引っ張るようなら対処も考えないといけませんね。

そんな風に思っていると、議席についていない、立場が低いであろう軍服の男が口を開きます。


「そんなことはございません。あの船はただ単に大きいだけです。どこにも銃や弓、槍での攻撃に使えるような場所はありませんでした」

「ほう。発言を許した覚えはないが? 5番艦隊指揮官」

「失礼いたしました。しかし、皆々様方が過剰に恐れているのではと思い、軍人として言わずにはいられませんでした」

「こら、貴様!! 陛下や重臣の皆になんと失礼な!!」

「まあ、まて、レイク。しかし、貴官はあの船の航行速度に追いつけなかったようだが?」

「……それはあの船がただ足が速いだけのことに過ぎず、それが戦闘に役に立つというわけではございません!!」


……なんという大馬鹿者でしょうか。

手加減されていると己でもわかったでしょうに、それでもまだ虚勢を張っても仕方ないでしょう。

それはこの場にいる全員がわかっているようで、冷たい視線を5番艦隊指揮官とかいう男に向けている。

というか、あの程度の男が指揮官などとは部下が可哀想ですね。


「ふむ。確かに、戦闘に役に立たなければ意味がないのは事実だな」

「では!」

「とはいえ、他国からわざわざ来てくれたのだ、しかも我々に協力をするためにだ。それを追い返すのは失礼にあたる。ならば、実力を見せてもらうしかあるまい」

「陛下、それは……」

「まあ、必要経費だ。あの船の戦闘能力は私たちも知りたいところだ。ただ漠然と強いらしいだけでは、この5番艦隊指揮官隊のように納得のいかない軍人は多いだろう。向こうとて、こちらがどれだけの力を持つかや、どれだけ魔物対処に対して真剣なのかを確認したいだろう」

「……なるほど。そのようなお考えであるのでしたら、私は何も言いません。ですが、若者たちの命だけは無駄に散らさぬようにしていただきたいですな」

「ふむ、そこは当然だな。王配殿たちウィードの実力を知っている者たちが多いのに越したことはない。とはいえ、仲間を殺されては我が軍も協力はしにくいだろう。宰相」

「はっ」

「ウィードへの模擬戦の申し込みと、無用な殺傷はやめてほしい旨を伝えてくれ」

「かしこまりました」


そう言ってアクアマリン宰相が一礼を取ると、それで今夜の会議は終了という形になりましたので、私はさっそく、先ほどの一部始終を伝えるため、客室におられる主様のもとへと向かいました。

一応は警備の兵、いえ、ウィードを監視するための兵士はいますが、その程度の警備では私たちの行動を止めることはできません。

気絶させるなどの手荒なまねどころか、出入りに気付かれることすら無く、主様の部屋へと入っていきます。


「よう、お帰り。霧華」

「はい。ただいま戻りました。主様、皆様」


まあ、実際には主様に扉を開けて迎え入れてもらっただけなのですが。

光学迷彩で隠れた私たちをシーサイフォの兵は見つけられないというだけのことです。

もうちょっと気を配っていれば違和感に気が付いたでしょうに、まったく警備の兵士としては失格ですね。


「ん? どうした霧華?」

「いえ、兵士があまりに未熟だと思いまして」

「あー、まあ光学迷彩なんて念頭に置いてないだろうから、無理もない気がするがな」

「ま、こちらとしては仕事がやりやすい限りで助かります。では、エメラルド女王たちの会議の報告です」

「ああ、頼む」


私はさっそく、先ほどの会議の概要をコール機能の録画を見せつつ説明します。

もちろん、細かいところは飛ばして、要点や気になったところだけではありますが。



「5番艦隊の人と模擬戦か……」

「知っている我らからすれば、戦力的には何をバカなことを、というレベルじゃな。しかしその気持ち、わかる話ではある」

「とはいえ、向こうもそれがわかっていないようにはとても見えませんでしたね」

「んー。納得するために、一度試させてほしいって感じに見えましたね」


主様がそうつぶやくと、デリーユ様、キルエ様、サーサリ様が各々意見を言います。

私も模擬戦自体には納得しています。

あまりに隔絶しすぎていて、一般の兵には実感がないことが問題です。


「霧華はこの模擬戦、どう思っている?」

「私としては、この模擬戦は受けるべきかと」

「理由は?」

「相手の海戦能力は把握しておくべきかと。知らずにいきなり迷惑を被るのと、予測できている迷惑に対処するのは大いに違いがあるかと」

「なるほどな。一緒に肩を並べるんだ、お互いの力量は知っておいて損はないか。まあ、霧華は迷惑をかけられるだけと思っているんだな」

「ええ。主様や奥様たちに加えスティーブたちが船員として乗っているあの空母が、何世紀分も前の船に負けるとはそもそも思えませんね」


迷いなく私はそう言い切ります。

だって空母がシーサイフォの船に後れを取るなどということはあり得ないのだから。

もし空母より強いのであれば、そもそもシーサイフォは海の魔物に敗北を重ねることもなかっただろうし、船を見て驚きも、脅威に感じもしないはずですから。

状況的にも主様が後れを取ることはあり得ません。


「あまりシーサイフォ王国を下に見たくはないが、状況的には霧華の言う通りだな。ま、話はわかった。あとは、この地の人たちに意見を聞いてみようじゃないか」


そう言われて、私たちはカグラさんたちの方を向く。


「え? 私たちに何を聞くの?」

「ああ、模擬戦の申し出は受けるべきだと思うか?」


主様は常日頃こうして慎重に情報を集めてから判断しますからね。

地元とはいわないですが、この地に住む者ですから、何か知っているかや、どう感じるかを聞いているのでしょう。

些細なことが大事な情報になるというのはよくあることです。


「うーん、ミコスちゃんは賛成かな? まだウィードの力に疑問を持っている軍人もけっこういるみたいだし、そこを納得させるのは、ドレッサのためにもなるんじゃないかなーって思います」

「そうですね。ミコス先輩の言うように、ドレッサがシーサイフォ王国の人たちと揉めないためにはいいかなと思います」

「私も2人の意見に賛成ね。ドレッサのためってのはもちろんあるけど、力を示せば今後素直に協力を得られると思うわ。こういう大掛かりな行動を起こす時は、敵よりもまず味方に気を使わないといけないわ。別にシーサイフォの常識から外れているわけでもないから、風習的な問題もないはずよ」


カグラさんたちもちゃんと状況を把握しているようですね。

ここでガツンとやっておけば、ドレッサたちも含めてあとあと楽になるでしょう。


「スタシア殿下にエノラ司教は?」

「同じ意見ですね。味方の実力を測るとともに、こういう模擬戦は連帯感を生みます」

「まあ、私も同じ意見ではあるけど、殺してはまずいと思うわよ。だから、銃器はやめておいた方がいいわね」

「確かにな。訓練で味方を殺して恨みを買う必要はないな。じゃ、やっぱり、模擬戦には参加だな」


こうして、明日の方針は決まったのですが、そこでエノラさんが一言。


「というか、シーサイフォ製の銃器の話はどうなっているの?」


そう、エノラさんがシーサイフォに来たもう一つの目的を聞いてきます。


「ああ、そういえば、こっちに来て色々あって忘れてたな。霧華。そっちの方はどうだ?」

「はい。そちらの方も情報を集めていますが、まだ製作者にはたどり着いておりません」

「ま、こっちに来てまだ二日だしな。しかも霧華が来てから半日だ。そう簡単に情報は集まらないか」

「力及ばす申し訳ありません。しかし、シーサイフォの軍船に既に銃が積まれていることは部下により確認が取れています。私も武器庫でその存在を確認しております」


主様がシーサイフォを最大限に警戒していたのが銃器の存在だ。

それを優先的に調べないわけがない。

主様たちの安全のためでもある。

とはいえ、今のところ見つかっているのは、レイク将軍が率いた軍が持っていたものと同じで、主様を傷つけられるようなものではないので安心ですが。

と、そんなことを考えている間に主様はさらに先のことを考えていたようで……。


「銃が完全に量産されているってことだな。まあレイク将軍が率いていた軍にあったからそれはわかっていたことだが。だが、船はガレオンだろう? 大砲はないのか?」

「いえ、大砲は存在しておりません。並走していたガレオン船をご覧になったとは思いますが、そもそも砲口を出す窓が付いておりません」

「そういえばそうだったな。タイキ君はその手の物を何かみたか?」

「いやー。そういうのは見なかったですね。なんででしょう?」


タイキ様も首を傾げています。

私も銃の存在や船の建造技術から考えて、大砲も製造されていて不思議はないと思っていたのですが、意外なことに大砲は存在していませんでした。


「不思議だな。大砲を作ろうって発想はなかったのか?」

「何か技術的な問題があったんじゃないですか?」

「ま、そういうところも模擬戦の後にでもわかるかもしれないな。霧華。俺たちが模擬戦をやっている間、頼むぞ」

「はっ、お任せください。主様たちが注目を集めている間に、情報をできうる限りあつめてまいります」


こうして、私は明日の諜報活動のために再び下調べへと向かうため、夜の海を駆け抜けるのでした。



「霧華ちゃん。潮風でべたべただよ。お風呂はいらないと」

「えーと、アスリン姉様。それは、あとで……」

「いいわけはだめです。ほら髪を洗って、体も洗うよ」

「そうなのです。綺麗になるのです」


と、夜頑張ったご褒美は主様にお褒めをもらう以外にも、こうして嬉しいものがもらえるのでした。

シーサイフォはそういう意味ではいい国ですね。




霧華にとっての価値あるものは、ユキ、アスリンたちである。

まあ、そこはいいとして、シーサイフォの人たちは一応納得してはいる。

だけど、銃の問題もある。

一体そっちはどうなっているんでしょうね?


霧華の活躍に期待しましょう。



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