第820堀:意外な対応?
意外な対応?
Side:カグラ
「おおっーー!? 物凄い魔道具ですね。この様な素晴らしい物がハイデンには存在するのですか! 流石は魔術大国ハイデンですね」
「は、はぁ、どうも」
なぜか私の隣には、車に乗り込んできたシーサイフォ王国宰相であるアクアマリン様がいて、しきりに話しかけてくる。
しかし、なんでこんなにうら若い女性が宰相を……。
いや、若いとは言ってもさすがに私よりは年上に見えるが、歳を重ねた古強者という風には全く見えない。
宰相という地位は、本来国の政治、中枢を担う大事な役職。
それをこんなうら若い……。
「それで、このくるまとやらの御者をしているのが、ウィードとかいう小国の王配ですか」
「……ちょっ!?」
こ、この女、ユキに対してなんて言い草!?
相手はユキよ!? ウィードの王配にして、神の使いでもあるのに。というか、一番機嫌を損ねてはいけない相手なのに!?
そんなことを思い私は慌てていたのだけれど、ユキやデリーユさんはもちろん、レイク将軍までもが少しも慌てる様子はなくて……。
「ええ。ウィードのセラリア女王陛下の王配を務めておりますユキと申します」
ユキが穏やかに返事を返すと、にこやかに笑っていたアクアマリン宰相の顔が一瞬で真顔になって……。
「レイク将軍の言うことに嘘はないとは思っておりましたが、本当にあなた方のような国が存在するとは思いもしませんでした」
「そうですか。案外ハイデンやレイク将軍を騙しているだけかもしれませんよ?」
「はてさて、それはそれで困りますからやめてほしいですね。レイク将軍の首を切らなくてはいけなくなりますから」
「では、ご期待に沿えるようにしますよ」
「そう願います。まあ、私が見た限り、このくるまを用意できるウィードならば心配はいらないでしょうけれど、それがわからず文句を言う輩は必ず出てきます」
「それはそうでしょうが。それを押さえるのはそちらのお仕事でしょう。ああ、こちらに処分させるのでしたらそれ相応の代価はいただきますのでよろしくお願いします」
「そこは、おまけしてくれると助かるのですが……。よいでしょう。そこらへんは後程詳しく」
あまりの態度の変わりように驚いていると、アクアマリン様は話が終わったのかようやく私の隣で大人しく座り、こちらを見て……。
「ま、国を動かすっていうのはそれだけ大変なんですよ。カグラ殿」
「……そうですか」
おそらく彼女も姫様みたいな立場なのだろう。
感情を押し殺して、別の仮面をかぶって生きているのだ。
「……ひとまずは合格、といったところです。これなら、王宮の連中の策謀に惑わされることはないでしょう」
ああ、そういうことを確認したくて、ユキたちの反応を見ていたわけね。
「やっぱり、それほど海洋の魔物問題は深刻なわけですか」
「残念ながら、未だに解決の糸口すら見えない状況ですからね。と、こちらがシーサイフォ王国王城への道となります」
改めて外を見れば、目の前には大きく立派な門がそびえ立っていて、その向こうにはお城が見える。
けれど、そこにつながる道は門構えには似つかわしくない曲がりくねった細道だ。
これは敵が攻めてきたときに大軍が一気にお城に攻め寄らせないための方策ね。
そんなことを考えている間に、車は王城へと入っていた。
「こちらでお寛ぎください。後ほど改めて議場へご案内いたします」
アクアマリン宰相は私たちを客人用の部屋へ案内して、そのままどこかへ移動してしまった。
まあ、会議の準備あるんでしょうね。
と、私がそんなことを考えている間に、ユキたちは集まって話を始める。
「レイク将軍。彼女、アクアマリン宰相の言っていたことは?」
「残念ながら事実ですな。今回の問題に関してシーサイフォ王国の面目にかかわるということで、独力で解決するべきという勢力も存在しています」
「それを排除してほしいと?」
「いえ、私としてはそのようなつもりはなく。向こうも実際には独力で解決が出来るとは思ってはいないでしょうから、わざわざ妨害をしてくるとは思わないのですが」
「ふむ。そこがレイク将軍とアクアマリン宰相との見解の違いですか」
あー、なるほど。
私たちも散々ウィードに助けられ続けて国としての面目が潰れかけているように、シーサイフォ王国もハイデンの力を借りることは面目に関わると思っているのか。
まあ、私たちの方はユキたちが表向きは上手く譲ってくれて、対外的な面目は保てているけど。
それに危機感を感じている者たちがいて、その者たちが動き出すと感じているのがアクアマリン宰相。
そして、わざわざ手を出してくることはないと思っているのがレイク将軍というわけね。
「まあ、実際会ってみればわかるでしょう。案外あの若い宰相をからかっている可能性もありますから」
「ああ、その可能性もありますね」
「で、彼女について聞いてよろしいですか? わざわざ宰相自ら迎えに来るのはよほどのことだと思いますが? というか、失礼な質問ですが、あの若さで本当に宰相で?」
「そう思われるのも無理はありません。ですが、このレイク、嘘は申しません。アクアマリン殿こそ、我がシーサイフォ王国の宰相であります。若いのは事実です。過日先代の宰相が病没いたしまして、その際、登用試験をいたしましたところ、老獪な重鎮たちを押しのけて宰相の座を勝ち取ったのが、先代の宰相の曾孫であるアクアマリン殿でした。そして、ハイデンへの援軍の派遣と、それによる魔法技術の提供を受ける案を出したのも彼女です」
「ああ、だからこそか」
そういうことね。
彼女は天才と呼ばれる部類なのね。
そしてそれを妬む者がいると。
「でしょうな。おそらくかなり風当たりが強いのでしょう」
「こういう人事を認めたのはなぜでしょう? ああいうポストは経験豊富なものが就くのが通例でしょう? それともこの国は違うのでしょうか?」
「いえ、先ほど言ったように試験で老獪な重鎮たちを破ってのことです。無論登用試験においては、頭の良さだけではなく、交渉の上手さなども必要で、最終的には試験を受けた者同士で話し合い、だれがふさわしいかを決めることになっているのです。なので、遺恨を残すことはないはずなのですが……」
「ああ、そういう対策は取られているわけですね。しかし、決定に当たっては当事者同士でだれがふさわしいかを決めるというのもなかなかすごいですね」
「そのために相手を説得する。お金を背後で回すのもいいですし、権力でのやり取り、利権などの譲渡も許可されていますからね。もちろんその会議に立ち会い、聞くものもいます。単に力が強いだけの者による露骨な脅しなどを避けるためですね」
へぇ。あの人はちゃんとそういうところを乗り越えて、宰相になったんだ。
まあ、先ほどの表情の変化の仕方は姫様を彷彿とさせたし、そういう修羅場をくぐっているのよね。
「となると、レイク将軍が国元を空けている間にシーサイフォ内部の世情が変わったということですかね?」
「その可能性はあります。まあ、彼女のことについては詳しく……」
とレイク将軍が言いかけたところで、不意に部屋のドアが開いて……。
「そんな難しい話じゃないですよ。軍部の一部との軋轢が生じているだけ。レイク将軍がハイデンに向かったあとで、武功を上げたい連中が他国の介入を招き入れることに対して文句を言い始めただけですよ」
つまらなそうな顔でそう言いながら、アクアマリン宰相が入ってきた。
「それで、その提案をした私を売国奴と罵る始末。まあ、私を罵るのはいいでしょう。他国の力を借りるというのは、確かに自国のふがいなさを他国に喧伝する様なもの。だけど、その様な状態に陥ったのはそもそも事態への対処できない軍の責任。そこを棚に上げたバカどもが騒いでいるだけ。陛下もあきれているわ」
「まさか、そんなことが。いったいどこの隊ですかな?」
「……5、6艦隊ですよ」
「あいつらですか……」
どうやらレイク将軍にも心当たりがあるらしく、顔をしかめている。
なるほど、軍の若い連中が暴走しているってところかしら。
でも、厄介な問題よね。
そんなことを考えていると、ユキが2人に近寄って……。
「宰相の状況は何となくわかりましたが、私たちはこれからどうしたらいいでしょうか? このまま待機ですか?」
「あ、失礼いたしました。陛下との面会や、詳しい状況の説明がございますので、会議室の方へお願いいたします」
「わかりました」
そう言うことで、アクアマリン宰相に案内されて私たちは会議室に移動すると、そこには大きい机を囲むようにこの国の要人であろう人物たちが座っていた。
「ほう。こちらがレイク将軍がハイデンから招き寄せた方々か?」
「それにしては、若い気がするが……」
「うむ。若い。若いが、このような場で少しも慌てておらぬな。察するにアクアマリンと同等の者たちだろう」
私たちを見て色々話しているが、こちらを侮るような言動はない。
なんというか、立派であり侮れない人たちの集まりなんだと思った。
……私たちの国の重鎮たちを振り返ると何とも悲しい気がするけど、そこは考えないようにしよう。
全ての原因はアクエノキなんだし……。
そんなことを考えていると、私たちは席に案内される。
ああ、もちろんアスリンちゃんたちは、会議の席ではなく、後方に置かれている傍聴席みたいなところに座って私たちの話を聞くことになる。
「では、改めましてご紹介いたします。こちらの黒髪の方が魔術大国ハイデンよりわざわざ出向いてくださった……」
まずは、紹介ということで、レイク将軍が私たちの説明を始める。
って、私がなんで最初に!?
「カグラ・カミシロ殿。知っている方もいらっしゃることでしょう。ハイデン建国の御三家の1つであるカミシロ家の次女殿です」
レイク将軍!? こういうことは事前に言ってもらえますか!?
そう叫びたいのはやまやまだけど、私は一国の代表。
そんなことをすれば、私の人生が終わる。
「……初めまして、ハイデン王の命により、シーサイフォ王国へ派遣されました、カグラ・カミシロと申します」
「ほう。まさか、御三家のご息女に来ていただけるとは」
「だが、あの若さだぞ?」
「まて、若いからダメだというなら、アクアマリン宰相も同じだ」
「確かに、非礼。お詫びいたします」
「いえ。若輩者であるのは間違いございませんので、これからよろしくご指導のほどお願いいたします」
「ははは。若者ですから、そうあるべきですな。アクアマリン宰相はそこらへんの可愛げがなくてですな」
「こほん。私に可愛げがないのは申し訳なく思いますが、今は国同士の会議です。そこらへんは後で、そして私のいないところでお願いいたします」
「「「……」」」
アクアマリン宰相の言葉で沈黙するシーサイフォ王国の皆さま方。
「よろしい。レイク将軍。ほかの皆さまの紹介もお願いできますか?」
「はっ。続きまして……」
それから、スタシア殿下、エノラの紹介と続き、最後にようやくユキたちの紹介となった。
ちなみにこの席では、タイキ王、エージル将軍やアマンダたちの紹介はしない。
彼らは今回そういう立場にはないし、うっかり紹介してもウィード以外の国が介入しているという事実にシーサイフォが混乱するだけだからね。
「シーサイフォの国難にハイデン王国のみならず、フィンダール帝国、ハイレ教会までもが動いてくれたとはありがたいかぎりだ」
「無論ウィードの協力にも感謝する」
「しかし、ユキ様。こういっては失礼ですが、レイク将軍の話を聞いても貴国のことは今一つわかりませんな」
まあ、口頭で説明を受けたからといって、ウィードのことが理解できるわけがないわね。
というか、聞いただけでわかったというやつは全く信じていないか、頭のネジがぶっ飛んでいるだけよね。
「はは、まあ、私たちウィードのことに関しては、今この場で色々説明するわけにもいきません。明日にでもゆっくりということで、まずはシーサイフォの状況の説明をしていただけませんか?」
「ふむ。確かに、ユキ様の仰る通りですな」
「明日改めて時間を作りますゆえ、本日は聞いていただくばかりでつらいとは思いますが、よろしくお願いいたします」
ユキは相変わらず無難に返答するけど、この国の人たち全然ユキを下に見たりしない。
……ちょっとすごい気がするんだけど。
まあ、小国であろうが、王配である相手にたいして礼を尽くすのは当然だし、これが普通なのかな?
と、そんなことより、会議の内容をちゃんと聞かないと。
シーサイフォ王国に迫る魔物の脅威を。
意外とバカにすることなく挨拶を始めるシーサイフォ王国一行。
普通はいろいろ揉めるが、こちらではそういうことはなかった。
いや、多少疑いのまなざしはあったけど、そこまで問題はなく進んだ。
カグラたちはこのまま素直に話が進められるのだろうか?
シーサイフォ王国は一体何を考えているのだろうか?
と、そこはいいとして「レベル1の今は一般人さん」の更新ペースを落とすことといたしました。
楽しみにしている皆様方には大変申し訳なく思う次第です。
ですが、ゲームが出来なくなっているという現状があるので、しばらく我慢してください。
ポケモンの新作発表されたから、ポケモン頑張らないといけないんですよぉぉぉー!!




