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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第808堀:建前と本音

建前と本音



Side:ユキ



俺とタイキ君は戦闘機の回収を終えた後、のんびりと会議室で話をしている。


「……で、ユキさん。戦闘機をせしめたのはいいですけど、冗談でも乗っちゃいけませんよ」

「いや、流石にダンジョン内では無理だな」


高度せいぜい30メートルしかないから、すぐに天井にぶつかって墜落だ。


「いやいや、外でもですよ」

「どこにそのための滑走路とか設備を作るよ」

「ダンジョンマスターの力を使えば、どこでもすぐに用意できるでしょうに」

「流石にたった一回飛ばすためだけにそんなものを用意はできんよ」

「本当にですか? 新大陸のどこかで適当に滑走路でも作って飛び出そうとか考えてません?」

「当然考えてるぞ」

「やっぱりねー。って、あっさり喋りましたね」

「そりゃ、隠す理由もないからな。俺が戦闘機をもらっておいてそのまま死蔵するとかない。まあ、それなりの理由もあるんだけどな」

「一応、理由を聞いていいですか?」

「そりゃもちろん、空母が沈んだ時に避難してきた飛行機が着陸できる場所を用意しないとダメだろう」

「あー、確かに」


空母は確かに離着陸はできるが、同時に敵陣の真っただ中でもある。

未だに海中の魔物の正体がはっきりわかっていない以上、怪獣レベルの魔物も想定してないといけないだろう。

そんな事態になった時、無事に飛行機が脱出できたとしても、着陸できる場所がなければ結局死ぬしかない。

胴体着陸とかミラクルな成功を祈るより、素直に飛行場を用意するべきだろう。

逆に離陸もできるから、救援のための増援を送り込むこともできるわけだ。


「流石に、単なる遊びのためだけで戦闘機を拝借したりはしない。一機でいくらすると思ってるんだよ」


まあ、ただで手に入れたものではあるが、損失なんかするのはあり得ないレベルなんだよな。


「まあ、そうですね。でもそういう兵器を湯水の如く消費する戦争って恐ろしいですね」

「本当にな。どういった心持ちで始められるのか。というか、そこまで消費するんだから、何が何でも成果を得ないとってなるんだろうな」


一度始めた戦争を終わらせたくない感情ってここらへんなんだろうな。


「でも、それなら、奥さんたちに正直に言えばよかったんじゃないんですか?」

「予算の問題もあるし、その施設の人員をどうするかって話もある」

「ああ、そっちの問題ですか」

「そうそう」


これ以上組織として手広く基地を作っても、そこを守る、維持する人員が足りていないのだ。


「じゃ、結局作れないんじゃないですか?」

「いや、緊急避難用であれば離着陸の機能だけ持てばいいからな。そもそも管制室の指示はいらない。魔力通信、電波通信で事足りる」

「滑走路と夜用の誘導灯ってことですか?」

「そうそう。それだけの空港ってのもないこともないからな。というか、緊急着陸で閉鎖されている空港に着陸した例も多々あるからな」

「だけど、それだからといって奥さんに言わない理由もないでしょう?」

「ばか。それは建前ってやつだよ。乗ってみたいだろう? 戦闘機」


俺がそういうと、即座に首を上下に振るタイキ君。


「そりゃもちろん。乗りたいにきまってますよ。で、どこに空港っていうか、簡易滑走路を作るつもりなんですか? 結構広い土地がいりますよね? ああ、バイデの平原のところですか?」

「そこでは目立ちすぎるからな。俺たちものんびり戦闘機に乗れない。すぐにばれて嫁さんたちが飛んでくるに決まっている」

「そりゃー、そうですね」


嫁さんたちはどうしても俺を戦闘機には乗せたくないようで、ルナが出したのを知って俺にかなり釘を刺してきたからな。

だから、そんな簡単にばれるようなことはしないし、大人しく納得したように見せかけた。


「だから、こっそりとばれないところに離着陸場を作らないといけないわけだ」

「でも、こっそり作れるような場所。バイデにありましたか?」

「心当たりは一つだけある。まずは、その土地の持ち主と交渉をしないといけないけどな」

「それは当然でしょうけど。その口ぶりだとバイデ以外の土地って感じですけど、そんな伝手ありましたっけ? あ、カグラのカミシロ領ですか?」

「惜しい。ニアピンだ。まあ、カミシロ公爵の土地を借りるっていうのも確かに考えたけど、あそこは、ハイデンの忠臣の家だからな。すぐに報告されるに決まっている」

「そりゃ、カミシロ家はハイデン御三家の一つですからね。というか、簡易とはいえ、空港なんて作られれば誰だって報告するでしょう」

「だから、カミシロ領は借りれない。カミシロ公爵の言葉はウソとは思われないだろうしな」

「そりゃ、カミシロさんの報告をウソと……は……」


タイキ君もそこまで自分で言ってようやくわかったようで。


「まさか、ミコスですか?」

「そうそう。ジャーナ家の土地を借りようと思っている。ちょうどシーサイフォ王国の復興支援軍が一時駐留していた地域の近くで、拠点もすでに置いてあるからな。ジョンを説得して、併設させてもらう予定だよ。もちろん、ミコスのご両親にも話を通しておくから、口留めもOKだし、報告されても地方の男爵家の領地なんてなぁ?」

「ただの勘違いとしか思われませんよね……」

「しかも、金銀財宝が出てきたわけでもない。ただの広い平坦になった土地にしか見えないからな」

「報告する意味もないですよね」


そう。ミコスには悪いが、こっちにとっては本当に色々な意味でジャーナ家の位置は大変都合がいい。


「ということで、今からミコスに会いに行って、使用許可をこっそり取り付けてこないといけない。まあ、表向きはジャーナ家への挨拶としてだな。シーサイフォ王国への訪問というか、支援が決まった今、その経由地としてちゃんと挨拶しておかないといけないだろう」

「本音を聞くとただのいいわけですよねー」

「必要なことだから仕方がない」


建前だとしても、ちゃんとした理由なのだから仕方がない。

筋を通すというのは大事だ。


「で、そのミコスは今どこにいるんですか?」

「ああ、それなら……」



ということで、俺たちは海辺へとやってくると……。


「「「……」」」


海辺にバタバタと屍をさらす水着の女性たちがいた。

普通なら水着の美女だと喜ぶところなのかもしれないが、いや、違うな。この状況を見れば水着美女というより、数多の水死体が打ち上げられた現場か。

髪は振り乱して、肌は砂だらけ、水着も色気のあるものでなくスクール水着で全員統一。


「なんですかこれ? うっかり子供が見たら泣く状況ですよ?」

「やっぱりそう見えるか」


俺の意見は特に間違っていないようだ。


「あー、やられましたね」

「うーん。ちょっときついねー」


俺たちがそんな雑談をしていると、水死体の内2人がのそりと立ち上がる。

いや、水死体は水を含んで膨れているから、実際は綺麗な死体ってわけじゃないんだけどな。

そんな冗談はいいとして、立ち上がったのはスタシア殿下とエージルだ。


「ぺぺっ。砂が口に入りました」

「同じく。ぺっ。いい加減、体につく砂程度は気にならなくなったよね」

「流石にここまでやっていればですね。とは言え、払う余裕があれば払いますがっと……」

「だね。あーあー、すっかり砂まみれだ」


そう言って、スタシア殿下とエージルは体についている砂を払い始める。

その際に、胸に手が当たってプルンと揺れるのが、色っぽく見える。


「おー、意外と見れるぞ」

「なんか、あの2人は堂々としていますからね。絵になるんでしょう」


2人が砂を払う色っぽいシーンを眺めていると、スタシア殿下とエージル将軍はこちらを向いて……。


「いえ、なんというか、そう堂々と見つめられると羞恥心もわきませんね」

「というか、そういう余裕もないのが事実なんだけどね。で、ユキにタイキは何しに来たんだい? 僕たちのあられもない姿をみて笑いに来たわけでも、欲望をたぎらせたわけでもないんだろう? それとも、ユキは僕の姿に見惚れたかい?」

「ん? ああ、エージルには惚れてる惚れてる」


なんか知らんが、エージルはこの手のやり取りで挨拶をしてくるよな。

あれか? いい加減、エナーリアで働くのがつらくなっているから、こっちに引き抜いてくれってことかね?


「はぁ、あっさりした返しだね……。いい加減、僕を引き取って欲しいんだけどね」

「そりゃ、関係各所の折り合いが取れてからだな。いきなりエナーリアからいなくなるわけにもいかないだろう?」

「おお、意外と前向きな言葉だね。でも、そういう細かい話はここでするべきことじゃないね」

「ですね。私の目の前で、そういう話はやめて戴きたいです。正直な話、私もエージル将軍は欲しいですから」

「えっ!?」


スタシア殿下の言葉に大げさに驚くエージル。


「いや、普通にエージルの知識や技術力は他国からは喉から手が出るほど欲しいだろう?」

「ああ……、そういう意味かい」

「なにか、問題でもあったでしょうか?」

「いいや、全然問題ないよ!! あはは!! ほれ、さっさと起きろ!! ユキにみっともない姿をみせてるんじゃないよ!!」


なんか突然ハイテンションになったエージルは、倒れて動かないでいるカグラたちを起こし始める。


「ふえっ!? ユキ!! どこ!?」

「ユキせんせー助けて下さい!! タコがぜんぜん倒せないです!!」

「もう、べたべた……」

「……ふにゃ!? 嘘かと思えば本当にユキ殿がいるじゃない!?」


で、俺の姿を確認したカグラたちは素早く立ち上がって緊張した面持ちになる。

俺は鬼軍曹か何かか。


「いったい、どんな訓練をさせているんですか?」

「いや、訓練の方針はデリーユやモーブたちに任せているんだが……って、いたいた。何やってるんだよお前ら」


俺の視線の先にはコテージの倉庫から荷物を運び出しているデリーユやモーブたちがいた。


「ん? 何って、くたばったカグラたちの介抱をじゃなって、ユキか」

「今から飯だったんだよ。カグラたちはアスリンのタコ介と戦って力尽きてるだけだ」

「タコ介ってあいつか」

「あー、あの超巨大タコですね。そりゃ無理じゃないですか?」

「いやいや、それがなかなかいい勝負をしてな。のうモーブ?」

「おう。流石というか、戦い慣れしてるだけあるな。今回は惜しいところだったって、それはいいとして、何か用事か?」

「ああ、話がそれたな」


そうそう、今はカグラたちに用事があったんだった。


「デリーユ、モーブ、カグラたちというか、ミコスをしばらく借りて、連れて行っていいか?」

「なんでまたミコスを? 理由を聞かんことには何も言えんぞ。このまま、シーサイフォの海に放り出せば確実に死ぬぞ?」

「いや、流石にそこまではないと思うが、まあ、連戦は厳しいな。で、結局どこに連れて行くつもりなんだ?」


ふむふむ。モーブ的には多少はやれるみたいだな。

デリーユの方はまあ、魔王様基準だしなー。

と、それより理由だな。


「ほれ、ミコスの実家だよ。シーサイフォに行くことになったからな。きちんとこっちの拠点を置くことの許可をもらわないといけない」

「ああ、そういうこともあったのう。まだ挨拶してなかったのか?」

「いや、これまで挨拶しに行く理由がなかっただろう?」

「そういえばそうじゃったな。これで国境の防衛もしっかりか?」

「今のところシーサイフォが攻めてくる理由もないとは思うが、しっかりと地元と連携できる方がいいだろう?」

「確かにのう。じゃ、いったん訓練は中止かのう?」

「それで頼む」

「「「やったー!!」」」


後ろで喜ぶミコスたち。

それなりにつらい訓練だったようだな。


ということで、俺たちはミコスの実家へと向かうのであった。





そう、空母があるからといって、飛行場がいらないとは限らないのだ!!

だからこそ、飛行場を作ることは必要不可欠!!

これは詭弁ではない、当たり前の話である!!

軍とは数があってこそであり、組織としての強さが物言うのだ!!


決して、空を飛びたいからとかそういう理由で飛行場を作るわけではない!!


素晴らしいいいわけだ!!


で、それを知らずにカグラたちはべたべた。

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