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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第800堀:発見

発見



Side:ユキ



「うまっ!! ヒラメうまっ!!」

「ヒイロ。もっとゆっくり、丁寧に味わって食べなさい!」

「それぐらいいいじゃない。あ、イカ2皿と玉子3皿追加ね」

「さっきまでの凛々しい姿が嘘のようね。あ、私は、わさび抜きでタコと貝柱ね」

「私は茶わん蒸しかなー」

「フィーリアもなのです」

「あ、私も茶わん蒸しほしいです」


そんな感じで、我が家の小さなレディたちは回転寿司を楽しんでいる。

なんだかんだ言っても、ドレッサもお腹が減っていたようだ。

まあ、当然だよな。

あれだけ頑張っていたんだ。お腹が減っていて同然だろう。

俺も、実はちょっと無理があるかなーって思っていたのだが、ま、何とか乗り越えてくれた。


「いや、不思議ですな。こういう風に生魚を食べる文化が内陸の国であるとは思いませんでした」

「基本的に川魚、沼の魚は虫、寄生虫が多いですからね。内陸部ではそういうのを警戒して普通は生で魚を食べることはないですね」


生魚を食べるという習慣が内陸の人たちにとっては珍しい習慣なのは、異世界だけでなく地球でも同じだ。

日本が島国なので生で魚を食べる習慣が昔からあったが、外国ではかなりおかしい行動とみられる。

特にジャングルなどでは、生で魚を食べると、お腹を壊して生死にかかわる。寄生虫などの治療方法がないからな。

まあ、そういう雑談はいいとして……。


「しかし、ユキ様も思い切ったことをいたしましたな。あのようなお嬢さんを責任者になどと」

「ちょっと無理があるとは思いましたが、私が抜けたあとを任せられるのは彼女しかいませんでしたからね」

「ユキ様が抜けられるというのは? ……ああ、長期間は無理ということですか」

「ええ。これでも大陸間交流など忙しい身ですからね。シーサイフォ王国の魔物退治が終わるまでずーっと付きっ切りというわけにはいかないですからね」

「なるほど。だからこそ、あのドレッサ殿を責任者に」

「そういうことです。とりあえず、いったん問題を解決したら解散というわけにもいかないですからね」


海洋の問題っていうのはこれからどんどん出てくるだろうからな。

その対応部署を今から作っておくのは悪いことじゃない。

軍としても、海軍はサハギン連中がどうにか海軍もどきで動いているだけだからな。

本格的に組織としては立ち上がっていないんだ。

そもそも、地球の海軍とこの世界の海軍のありようはかなり違うからな。

人同士の船を浮かべて接舷、或いは大砲をもって撃ち合いという海上の戦闘だけにはなりそうにない。

魔物という存在のことで、シーサイフォ王国が救援を求めてきたことからもよくわかるだろう。


「確かに、こういう問題が一度で片が付くとは限りませんな」

「それに、内陸の我が国には海軍がありませんから、それを組織するいい理由になるでしょう」

「ほう。海、水上での戦いも想定しておりますか」

「シーサイフォ王国の話を聞いて、海軍を用意しないというのはないですね」

「それはそうですな」


各国が、ハイデン、フィンダール、ハイレといった国々が認めるほどの海軍を所持している、シーサイフォ王国が被害を受けたことを聞いて、海の危険性をゼロと考えるやつがいたら頭の中身を疑うぞ。

まあ、予算の関係できついところはあるだろうし、海に面していない国は海軍を組織する意味はほぼないが。

しかし、海に面していたり、海洋進出を考えている連中が海軍の必要性を考えてなければアホの極みだな。

特にウィードは各国の調停役のつもりはないが、そういう立場になりつつあるし、俺個人の課題である魔力枯渇減少の解決のためには、海上だけではなく、海中戦力が必要なのもわかっていた。

異世界の海に関するノウハウがなさ過ぎて、今まで手を出していなかっただけなのだ。

だが、その時が来たと思って踏み切ったわけだ。

人材的にも厳しいが、今のドレッサならやれると思ったということもある。

いずれ、外交官の手伝いや冒険者ギルドでの掃除兼情報収集仕事から離れて、海軍勤務になってもらうことも視野に入れている。

サポートとしては、ヴィリア、ヒイロなどがいるし、パーティーとしては安定していると思う。

まあ、嫁さんたちにはもちろん、本人たちの承諾が必要不可欠ではあるが。


「しかし、この寿司ですかな。この穀物がほんのり酸っぱく、それに新鮮な魚の切り身がのってとても美味い。見たことない魚ではありますが、いい物ですな」

「ふむ。ということは、あまりこちらの図鑑に載っている魚は見たことがないですか?」


俺は、ヒイロから借りたお魚図鑑でもってネタの説明をしつつ、魔物のことを聞いている。


「そうですな。若干似ているといえば似ていますが、そういった意味では魚は全部似ていると言えますしな。同じ魚ではないというのは確実です」

「そうですか」


今見せている日本近海の魚の類はシーサイフォ王国では見かけない種類が多いようだ。

とはいえ、フグやカワハギなどは似た魚をレイク将軍も知っているようで、異世界とは言えどいるらしい。

進化とは同じような道筋をたどるのだなと思った。

まあ、人がいる時点で基本的に同じような進化をたどっているんだよな。

とはいえ、調べているといっても美味いものを食べながらの雑なもの……。


「こ、これだ!」

「おい、食事中に何を大きな声って、これだ!!」

「レ、レイク将軍! こ、これを!!」


だったはずだが、レイク将軍の付き添いが何かを見つけたようで、こちらに見ていた図鑑を差し出してくる。


「ふむ。間違いなくこれだ。と、失礼」


レイク将軍はお茶を飲んで、一度落ち着きを取り戻してから、その図鑑をこちらに差し出してくる。


「この魚たちが、魔物化したとはっきり言いきれます。そこまで違いがありませんから」

「そうですか、これが……」


俺に差し出された図鑑の項目は……「古代魚」の種類。

古代魚とは、地球における古生代や中生代に出現し、絶滅せず、ほぼそのままの形態を保ちながら現在まで生き残ってきた魚類の総称である。いわゆる「生きている化石」と呼ばれる。特に硬骨魚類の一部がそう呼ばれることが多いが……。


判りやすく言うなら、シーラカンスが魔物になりましたってことだ。


おう。最初から魔物っぽい魚だね。

しかもこの手の魚は硬骨魚といわれるほど硬いし、大抵古代魚といわれる部類の魚は現代の魚に比べてガタイが大きい。


「この魚たちが船に向かって突撃してくるのです。そして、大きく飛び上がってきては船に穴をあけ、運が悪ければ船員が食いつかれて体ごと持っていかれます」


どこのパニックホラーだよ。

やべー、物凄く海に行きたくなくなってきた。

しまった。ドレッサとかヴィリアとかヒイロとか、体小さいからパクっと一飲みじゃね?

人選間違ったか?

ついでに、このタイプの魚には銃が効きにくいのもよくわかった。

魔術であっても人が火傷を負う程度の炎を撃ち込むだけでは、3メートル級の魚が死ぬわきゃない。

普通の魚なら陸に上がっただけで火傷の症状になるというが、魔物になってるならそんな貧弱さだとはとても思えない。

嫌な想像ばかり出てくるが、とりあえずこれで対象が分かった。


「ミリー」

「ふぁい? 飲みますぅ?」

「すまない。今は飲めない。真面目な話だ」


俺がそう言うと、デリーユたちと楽しく食べて、飲んでいたミリーであったが、直ぐに真剣な顔つきになって……。


「はい。なんでしょうか」

「具体的な魚の種類が分かった。これについて、魔物研究班に該当がいないか調べてくれないか?」

「……古代魚。わかりました。すぐに調べさせます」


そう言って、ミリーは即座にお店を出て行って連絡を取り始める。


「素晴らしい奥方ですな」

「ええ。働き者ですよ」


ミリーは飲んでだらしないように見えるが、仕事はきちっとする。

今は食事中で休みのはずだが、それでもこうして動いてくれる。


「ふむ。目的のを見つけたのかのう?」

「どんなまものさん?」

「見つけたの?」


ミリーの動きを見て何かあったのだろうとみんなが集まってくる。


「今は食事中だ。といっても気になって食事を楽しめないか。これが、海の魔物の原型らしい」


俺はそう言って、古代魚の図鑑を見せると……。


「これはまた独特な」

「最初から魔物みたいなものじゃない」

「……?」


デリーユやドレッサも俺と同じ意見のようだ。

まあな。その気持ちはよくわかる。

しかし、アスリンだけが首を傾げている。


「どうしたアスリン? 何か疑問に思うことがあったか?」

「うーん。えーとね……」

「ああ、この魔物ならアスリンが海で飼っているのですよ」

「あ、そうね。なんか図鑑で見ると雰囲気が違うから別物かとおもったわ」

「そうですね。確かに、これはアスリンが飼っている魔物と似ていますね」


まじかよ。

というか、いつの間に?


「本当か、アスリン?」


俺がそう問いただすと、アスリンはコクンと頷いて……。


「うん。名前も一緒だよ。シーラちゃんっていうんだ」

「こぉーーんなに大きいのです」

「そうね。私たちどころか、成人でも一飲みって感じよね」

「ええ。外皮もすごく堅いですし、シーラちゃんの野生がいるなら、相当苦労するでしょうね」

「おおー。すごいアスお姉。シーラちゃん見せてー」

「そうですね。見てみたいですね」

「「「……」」」


にこやかに話すアスリンたちだが、大人の俺らからすれば、とんでもない恐怖の事実を告げられた感じがする。

よし、落ち着け。まずは話をちゃんと聞いてからだ。

と、思っていると……。


『ユキさん。ミリーです。古代魚に関する情報がわかりました』


ミリーから連絡がきた。

向こうも元の名前さえわかれば情報収集はしやすかったんだろう。

とりあえず、俺はミリーの情報を聞くことにする。

基本的にアスリンの飼っている魔物は超性能となることが多いから、冒険者ギルドが管理している情報のほうが一般の魔物としては正確だ。


『まず、古代魚で引っかかったのはシーラカンスが魔物化したもので、データベース上には項目が存在していました。主な理由としては、十分な観察ができるレベルではなかったこと。魔物そのもののレベルはそこまで高くなく、せいぜい40前後ですが、水中が主な活動範囲というか主戦場になります。水中の魔物の場合、レベルを20ほど上に見積もるというのが基本ですので、実質的には……』

「だから、図鑑に載せられなかったってわけか」

『はい。しかも基本的に海の魔物です。遭遇の可能性は極めて低く、後回しにしていたと、ロックさんから話を聞きました』


納得すぎる理由だな。

だが、それでかえって疑問が湧いてくる。


「なら、なんでそんな存在を知っていたんだ? その話だと、ロックは知っているような話だが?」

『どうやら、ロックさんが海に面した所に赴任した時に、そのシーラカンス討伐依頼が出ていたそうです。でも、その時の被害は甚大。観測の鑑定持ちの人からの情報で同レベル以上を当てたんだそうですけど、それでも……』


いやすぎる話だな。

あのロックのおっさんがラビリスや俺と同じような鑑定スキル持ちでしっかり調べていてもやられるって、水中の魔物と戦うのがどれだけ難易度が高いかって話だよな。


「そうか。情報を書類にまとめておいてくれ。こっちもアスリンがその魔物を飼っていることが分かった」

『ふぇ!? アスリンが!?』

「ああ。まあ、今日はもう飯を食っているし、夜になっているから、続きは明日だ。ありがとう、ミリーも今日はそこまででいいぞ」

『あ、はい』


とりあえず、これ以上は今無理にすることはない。

だから……。


「レイク将軍。今日はこれで旅館に戻ってのんびりしてください。詳しいことは明日に」

「そうですね。今日は大きく前進しましたし、これ以上の無理は禁物。明日でウィード訪問は終わりですが、焦らず確実に詰めていきましょう」


そんな感じで俺たちは明日に備えるのであった。




古代魚

遥か昔からのそのままの姿のカタチで生きている「生きた化石」といわれる種類の魚。

その古代魚が魔物化人を襲っているようで……。


海って得体がしれないよね。

特に異世界で魔物がいる海とか。



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