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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第799堀:頑張る時

頑張る時



Side:ドレッサ



「……どうして私がこんなとこにいるのよ」


私がそうつぶやくと、即座にヴィリアとヒイロが口を開く。


「何を言っているんですか。ドレッサがお兄様の役に立ちたいと言ったんじゃないですか」

「お兄の役に立つとき。ドレお姉頑張れ」

「いや、私は魔物には詳しくないんだけど。言ったのは、海のことに関してよ……」


私は、いや、私たちはなぜか、レイク将軍たちが戦っている魔物のことを調べに、冒険者ギルドの書庫まで付き添ってきていた。

いや、ちゃんと手伝って調べてはいるんだけど、なんか場違いな気がしてならない。


「それを言ったら、私達なんてさっぱりよ」

「カグラはシーサイフォ王国とウィードを仲介する外交官でしょう。というか、バイデには湖を利用した港があるんだから、それなりに詳しいはずでしょう?」

「バイデの領主はキャサリン様よ。残念ながら、私は別な街の一介の学生。バイデの港や漁の仕方なんて全くしらないわよ。それに、そういうドレッサは海を領土に持っていた国のお姫様でしょう?」

「私も海のことは多少は知っているぐらいで、生粋の漁師ってわけじゃないわよ。それなら、カグラの言うようにキャサリンを呼んだ方がいいはずなのに……」


つい、ユキの役に立てることと、私が好きだった海のことだから手伝うって言っちゃったけど、専門家ほどの実力もないし、ヴィリアたちからの期待もすごいから、なんかちょっと気が引けて……。


「何をいまさら、ユキはドレッサにそんなことを期待していないわよ」

「え?」


いつの間にかラビリスが近くに来ていて、私に向けてすごくショックなこと言う。

ユキは私に期待していない?

嫌われてる? 

そんな……。

と、思わず目から涙が出そうになっていると……。


「ラビリス。その言い方はちょっと誤解を招きますよ」

「ラビリスちゃん。ドレッサちゃんが泣きそうになってるから、駄目だよ」

「もうちょっと優しく言うのです」


シェーラたちがかばってくれた?

誤解を招く? どういうこと?


「あら、ごめんなさい。そういうつもりじゃなかったのよ。ドレッサ。貴女の仕事は専門家をすることじゃないわ」

「どういうこと?」

「ユキは貴女に、海洋調査の指揮、つまり代表になってほしいって言っているのよ」

「はい? 私に代表なんて務まるわけ……」

「務まるわよ。ドレッサは昔はお姫様だったんでしょう。血筋も十分。というか、普段の仕事でもリーダーシップを見せているでしょう。足りないところはみんなで補えばいいわ。というか、書類仕事に関しては下手な大人よりこなせるはずよ。外務省の仕事で散々やったわよね?」

「……私の才能はともかく、書類云々については、納得ね」


これ以上ないぐらいすごく納得できる理由だわ。

そんな私の納得の仕方に苦笑いしながら、今度はシェーラが……。


「それに、色々な部署に応援を頼む際。全員と面識があって、簡単に話しかけられる人物となると……」

「あー、それは私より、ドレッサですね」

「ドレお姉は遠慮がない」

「いや、ヒイロもそうでしょうに」

「流石にヒイロを代表にはできないわよ。小さいし、可愛いし」

「ふふん。ヒイロは可愛い」


ヒイロのどや顔にイラっとする。

と、ヒイロになんか構っている暇はない。


「わかったわ。そういうことなら仕方がないわね。その仕事、このただのドレッサが引き受けたわ」

「王女の肩書は使わないの?」

「そんなのとはいわないけど、その肩書を使えば、今はエクス王国にいる元臣民たちが困惑するわ。そう言うのは本意じゃない」

「そう。それなら何も言わないわ。何か困ったことがあったら遠慮なく言いなさい。手伝うわよ」

「ええ。任せてください」

「ドレッサちゃんを手伝うよー」

「手伝うのです。兄様のお役に立つのです」

「よし。がんばるわよ!! おー!!」

「「「おー!!」」」


そう皆で気合いを入れていると……。


「やる気を出してくれたのは嬉しいが、一応書庫だからな」

「あ、ごめんなさい」


気が付けば、ユキが傍にいて注意をしてきた。

……最初から何を躓いているのよ。

そんな感じで、ちょっと自己嫌悪に陥っていると、レイク将軍たちもこちらの様子に気が付いたようで……。


「ほう。そのお嬢さんが何かをやられるのですかな?」


と、手を止めてこちらに近寄ってきてくれて。

温和なおじいさまといった感じで、足取りはしっかりしている。

だがそれだけじゃない。日に焼けた肌を見れば一目瞭然。

そのおじいさまは生粋の海の男だった。それも現役の。

私の国で何度も見たことがある、海で生きる男だ。

それは、向こうも同じようで、私の全身をしっかりと見た後……。


「……なるほど。お嬢さんも海で生きていたのですね」

「ええ。ミスターレイク。私も女ではありますが、海で生きてきたものです。この度、ユキ様のご指名により、シーサイフォ王国の海洋調査について、責任者を仰せつかりました」


私がそう言って、礼をとると、レイク将軍の部下がつぶやく声が聞こえる。


「あんな少女が我々シーサイフォ王国の海洋調査の責任者? ふざけているのか?」

「小娘ごときが海を知っているなどあり得ん」

「船、しかも軍船に女を乗せるなど……」


そんな否定の言葉が聞こえてくる。

シーサイフォ王国も新大陸にあるのだから、男尊女卑が強いのね。

まあ、小娘なのは百も承知だし、私が責任者として不満なのも分かるから、私は黙って……。


「失礼な物言いは控えろ」

「「「はっ」」」」


……耐える前に、レイク将軍が戒めた。


「お前たちの気持ちは分からんでもないが、ここはウィード。別の大陸の別の国だ。我々とは常識ももちろん違う。このお嬢さんが選ばれた理由はちゃんとある。そうですね? ユキ様」

「ええ。勿論ですよ。まあ、雰囲気や立ち居振る舞いからわかるかと思いますが、とある立派な家の出です。諸事情がありまして、こうして私たちに力を貸してくれています。一見非力に見えるのは仕方ないですが、横のつながりは私たちのことを見ていただければわかるかと」

「なるほど。ユキ様たちに直接話ができる人物というのは稀有でしょうな。ユキ様と連絡が取れない場合は彼女に伺いを立てれば、というわけですな」


かばってくれたのは、ありがたいんだけど、改まってそう言う人物だとみられるのは、緊張するわね。

でも、ここではっきり返事をしないとレイク将軍たちの部下が不安に思う。

為政者というのはたとえ不安であっても押し殺して、出来るというところを見せなければいけない時もある!!


「はい。私自身は見ての通り非力ではありますが、こうしてユキ殿たちとは縁が深く、元々は海の生まれと言うこともあって、シーサイフォ王国の皆様のお役に立てるものと自信をもって言えます」


私はそうはったりを言ってレイク将軍に向き合う。

レイク将軍も私をしっかりと見つめてくる。


「「……」」


お互い視線をそらさない。

この視線から逃げてしまえば、私がただの小娘になってしまう。

そんなのは嫌だ。ユキのためにも絶対に視線はそらさない。


「よい瞳だ。まっすぐで澄んでいる」


しばらく視線を交わしあった後、レイク将軍はそう言うと、私から視線を外し、ユキの方を向いて。


「しかし、能力に問題ありと見ればすぐに交代していただきます。現場は若者を育てるのに最適な場所ではありますが、逆に命を最も落としやすい場所でもありますから」

「ええ。それは当然でしょう。決して向う見ずな作戦を立てるほど、ドレッサはバカじゃないはずですが、そんな時は外して当然です」


……流石にこの程度で認めてくれるわけもないか。

それでも、今は私が責任者として認められたこと。

これから、頑張ればいい。


「ということだ。お前たちも落ち着け。何も考えなしにこんな人選をしているわけではない。彼女を排除しようとするのならば、お前たちも同じようにひよっこということで排除しなければいけなくなる」

「「「はっ」」」

「さて、私たちは引き続き魔物についての調べ物をいたします。少しでも情報が欲しいですからね。もう少しお付き合い願えますか?」



ということで、レイク将軍の部下と多少揉めたが事なきを得て、そのまま私たちは夕方近くまで調べ物を続けたのだが、芳しい成果は得られなかった。


「やっぱり、陸の魔物と海の魔物は違いましたか。お役に手に立てずに申し訳ない」

「いえいえ。多少似ている魚の魔物の生態が分かっただけでも何よりです」


レイク将軍がそう言ってプリントアウトした魔物の図鑑を見せてくる。

種類はピラニアみたいな肉食の魚だ。

この程度なら魔物でなくともいるレベル。

だけど、これはあくまでも川や湖の魔物で、海の魔物とは違うみたい。

その証拠にレイク将軍の喜びも微妙なもの。


「我々が相手にしている魔物はもう少しガタイがいいですな。こちらはサイズが小さい気がしますな」

「まあ、環境が違いますからね」

「難しいものです。しかしながら、この図鑑の記述を見て、ある程度行動に似通っているところがあるので、情報が無いよりは絶対まし、ありがたい限りです。もともと、ハイデンに行って協力の要請が出来れば、ぐらいに思っておりましたから」


そういってくれるレイク将軍だけど、私はまだ何か忘れている気がしていて、きっとそれを調べれば何とかなるんじゃって思っているのに、その何かがどうしても思い出せない。

このままとりあえず今日は解散して、明日までに思い出せばいいのかな? とも思うけど、何か引っかかる。

この場所じゃないといけない。そんな気がしてやきもきしているところに、ふとヒイロたちの会話が耳に入ってきた。



「ねえ。ヴィリお姉。今日お寿司が食べたい」

「いきなりどうしたの?」

「それはねー。お魚図鑑見たからだよー」

「マグロに、ヒラメ、おいしそうだったのです!!」

「そうね。今日の夕食はお外で食べようかしら?」

「いいですね。今日はみんな忙しいですし、外食の方が……」

「あっ、それよ!!」

「「「うひゃ!?」」」


お魚図鑑!!

それがあるじゃない!!


「どうしたドレッサ? 急に大きな声をだして、何か気が付いたか?」

「ええ。ヒイロたちの会話で気が付いたわ。魔物図鑑に載っていないなら、お魚図鑑よ! 魔物っていうのは基本的に二種類の分類があるでしょう? その一つが普通の生物にある一定量魔力がたまって魔物化したもの」


これは人でも確認されている。

魔族の人たちだ。

ユキはこれだけ言えばすぐにわかってくれて……。


「もう一つは、魔力溜まりから自然発生するといわれているタイプだな。となると、レイク将軍から聞いた話からは……」

「そう。あくまでも魚から大きくは逸脱してはいないみたいだから、きっと魚から魔物に変質したタイプだと思うの。だから……」

「なるほど。ドレッサ殿の言いたいことがわかりました。魚図鑑を見ればそれらしい魔物の原型が見つかるかもしれないということですね」

「その通りです。レイク将軍。ということで、ヒイロそのお魚図鑑貸して!」

「ええー。お寿司ー……」

「お寿司はあと!」


光明が見えた!

ということで、私たちはしっかりと……。


「いや、意気込みはわかりますが、その前に腹ごしらえを致しましょう。ウィードの食事は楽しみですから」

「ですね。いったん休憩を入れよう。ドレッサも意気込むのはわかるが、周りの人の体調を注意して管理するのも大事だぞ。踏ん張らないといけない時はもちろん休まずにやるべきだけどな。今は休めるからな」

「わかったわ。それなら、みんなでお寿司よ!」

「「「わーい!!」」」


しっかり食べて、またお仕事よ!




ドレッサはここで頑張れるのか?

冗談のつもりだったが、ドレッサの立場は便利なんでユキはドレッサのやる気を信じて責任者へ抜擢!

とはいえ、裏があるに決まっているけどね。


そしてさっそく成果を上げる。

魔物図鑑にいないなら、お魚図鑑をみればいいじゃない!!


で、コメントで何度かお見受けする「なんで、新大陸の人たちがウィードの言葉、文字を理解できるの?」という、質問を頂いております。

今更ではありますが、ここで回答をしておきます。


「第479堀:訪問開始と言葉の壁、そして……」


にて、翻訳のスキルリングを要人たちだけと限定して貸し出しをしております。

新大陸メンバーも同じね。

ここのことを忘れているよね?

言葉は通じていないけど、翻訳の道具があるってわけです。


ではでは、また次回。

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