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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第794堀:ここはダンジョンです

ここはダンジョンです



Side:ユキ



レイク将軍の観察を始めてそろそろ2時間がたつが、最初の会話以降は霧華やカグラたちからもたらされた以上の情報は出てこなかった。

その2時間であったことは基本的に、宿の室内にあるものをいろいろ触って、動かしては驚嘆しているって感じだった。

特にケトルでお湯を沸かせることには大層感心していて、インスタントのお茶やコーヒーを飲み比べたりして楽しんでいた。

素直に楽しんでいるので、見ているこっちも用意した甲斐があるというモノだ。


まあ、今の所、敵対するような様子はなさそうなので、普通に案内することにしよう。


「さて、そろそろ案内に行くか」

「はい。私もお供します」

「カグラたちはどうする?」

「ハイデンはもちろんついて行くわ。私たちはシーサイフォ王国を紹介、仲介した責任があるからね」

「フィンダールも同行いたします。シーサイフォ王国の目的を知れるのであればありがたいですし、これを機に友好を築けるのであれば幸いです」

「ハイレ教も同じくよ。というか、シーサイフォ王国にあの事件の話がどこまで届いているかの確認もしないといけないから」


ま、当然の判断だな。

仲介国や同盟国として、この状況を放っておくことはないわな。

ということで、俺たちは諜報部隊の司令室から出ていって、ロビーへと向かう。

同じ旅館内にいるので、時間はさほどかかることなくロビーへと到着する。


「じゃ、霧菜たのむ」

「かしこまりました。少々お待ちください」


霧華を霧菜と呼び、女将としての対応を任せると、すすっと速足で廊下の奥へと消えていく。


「いつ見ても凄いのう。着物を着てよくあそこまで器用に動けるものじゃ」

「いや、デリーユも大概薄着でしょう?」

「薄いから普通に動きやすいのじゃが?」

「そっちじゃなくて、良く服がずれたりといった心配しないわよねって話」


ミリーの言う通り、純白のドレスは薄くて露出も高いのに、良く動くので、夫としては露出系のハプニングが起きないかいつも内心ドキドキなんだよな。

とはいえ、そんなハプニングが起きたことは一度もないんだよな。

おっぱいは良く揺れるが、なぜか服がずれたりということは一切ないのだ。


「ああ、そっちか。こういう特殊な効果がある服や防具は意図的、或いは防御力以上の衝撃を受けない限りは、ずれたりはせんからな。それに、恥ずかしがるような体でもないからのう」


なるほど。ビキニアーマーがダメージ以外で脱げることのないその答えを聞いた気がした。

そして、胸を張るデリーユのおっぱいがぷるんと揺れたのを見て、カグラやソロが顔を引きつらせて、自分の胸に手を当てている。

すまんな。俺の嫁さんこういうところで理不尽なんだ。

と、そんなことを話している内に、霧華がレイク将軍一行を連れて戻ってくる。


「ユキ様、レイク将軍様方をお連れ致しました」

「霧菜さん、ありがとう」


俺は霧華にそう言って、レイク将軍たちに向き直り……。


「お迎えに上がりましたが、どうですか? これからウィードをご案内しても問題ないでしょうか?」

「ええ。色々聞きたいこともあるが、まずはこのウィードを見て回ってからと決めましたので」

「そうですか。では、案内いたしましょう。と、この案内にハイデン、フィンダール、ハイレの外交官たちも同行したいといっていますが、構いませんか?」

「願ってもないことですな。彼女たちなら、私にわかりやすく説明してくれるでしょう」


ふむ、カグラたちが付いてくるのは嫌がらないか。

というか、むしろ喜んでいるな。

俺よりも、カグラたちに聞いた方がいいと見たか?

まあ、見知った相手の方が安心を感じるのは当然か。

というか、ここまで堂々としている将軍がそんなせこいことはしないか。

真っ向から聞くタイプだよな。

見かけに反して、裏で動くタイプという可能性もあるが、そういうのはえてして将軍には向かないからな。

そんなことを考えつつ、とりあえず旅館を出て、どこに行ってみたいのかを聞いてみることにする。


「さて、案内するとは言ったのですが、ウィードはこれでもけっこう広いので、わずか3日では全てを案内しきれないんですよ。まあ、普通ならどこを案内するかとかを事前にしっかり考えてということになるのですが、今回はハイデン王の思い付きでしたからね」

「ああ、確かに。ハイデン王は若い時からそういう気分屋的なことはございましたな」

「わ、我が王が、す、すみません……」


俺たちは冗談で言っていることだが、ハイデンの外交官であるカグラにはひやひやモノの会話だよな。

勝手に他国の重鎮の承諾を得ずに、予定を入れたんだからな。

普通ならそれなりの問題だ。

だからこそカグラは謝っているわけだ。

とはいえ今回は特殊な状況だからな。

俺とレイク将軍は視線を合わせて頷く。


「カグラ殿、気にする必要はないですな。こういう風に無理やりにでも来る機会を設けてもらえなければ、ずっとウィードと縁は持てなかったでしょうからな。感謝こそすれ、文句をいうことはございません」

「そうだな。レイク将軍の言う通り。ハイデン王はウィードとシーサイフォ王国が仲良くなるきっかけを作ってくれたんだから、感謝だな」


俺たちはそう言って、握手して見せる。


「そ、そうですか。それならよかったです」


そう言って、カグラはほっと息をつく。

それを見た、レイク将軍は俺だけに聞こえる声で……。


「なかなか、カグラ殿は難儀しているようですな」

「まあ、あの若さで外交官ですからね。心労はかなりのモノですよ。周りの嫉妬も激しいようで」

「……このウィードの外交官ともなれば当然のことですな。利益、利権を考えれば、大人しくしている連中などいますまい。しかし、なぜ彼女が外交官に?」

「ああ、そのあたりの事情はご存知ないですか」

「ええ。後で詳しく教えていただけるのでしたらありがたいです」

「わかりました。その話はあとで必ず」


カグラの状況を知らないか。

俺たちウィードを呼び出した張本人だというのは、結構知られているはずだが、まあ、基本的にはおとぎ話だからな。

薄々分かっていても、自分から口にするのはアレだと思ったのか。

それか、全く事情を知らないか。

知っているのは大まかに、ハイデンとフィンダールがぶつかったぐらいという可能性もあるな。

ウィードの存在は知っていたが、名前も聞いたことがないから重要視はしなかったか?

と、そこは後で聞けばいいとして……。


「話がそれましたね。どこか、これを見たいというものは有りますか?」

「うむむ。そう言われると、何でも見たいものですが……。そうですな、ウィードの水産業などはどうなっているのでしょうか?」

「水産業ですか?」


意外なことを聞かれたな。

ああ、シーサイフォ王国は海洋国家だったな。

だからこそ、見比べたいってことか。

分かり易い物差しってことか。

とはいえ、ダンジョンだからなー。

まあ、そこら辺は分かった上で、聞きたいんだろうな……。


「そうですね。こちらに来るときにご説明いたしましたが、一応、このウィードはダンジョン国家でして、上を見上げれば空も見えますが、実は地下に存在しているのです。なので、水産業はもっぱら、水を溜めて、そこで魚を養殖しているような状態なのですよ」


まあ、海水浴場とかは4キロ四方だからとんでもなく広いけどな。

水を溜めてとか言ったけど、ちゃんと循環機能もつけていて自浄作用もあるので、養殖と言って良いかはちょっとわからん。

巨大な生け簀といえば生け簀だが、ここまで広くて放置しても環境を保っているので、もう自然じゃないのかと思う。

だが、レイク将軍は困った様子で……。


「……もうしわけない。嘘を言っているとは思ってはおりませんが、ここが地下にあるというのはどうも……」

「ああ。まずはそこからですね」


最近、ウィードのことを知っている国が増えたのでそっちの説明を忘れていた。

まあ、それでも、ここが本当に地下なのか? という疑問は残るので、地下だと証明する演出は用意してある。

簡単に階段を上るだけなんだが。

ということで、まずはここはダンジョン、洞窟の中ですよーということを証明する案内になる。

だが、普段は使用しない階段であるし、外敵侵入に備えて離れた所にあるので徒歩で行くにはつらいので、移動には車を使用することになり、その車についてもレイク将軍たちは驚くのだが、そこは割愛。見慣れた反応だからな。

人ってなれる生き物なんだよ。



「では、こちらからは歩きとなります」


俺が車から降りて案内する先には、空というか、空間にぽっかり穴が開いていて、そこから階段が伸びているのだ。

まあ、階段の横は土壁なんだけどな。魔術で外の様に見せているだけだ。

それも演出として触ってみせ、レイク将軍たちにも実感してもらう。


「……本当に、壁だ」

「見た目は普通に地上の風景にしか見えないのに不思議だ」

「ここは本当に地下だったのか……」


と、レイク将軍についてきた護衛、付き添いの方々はそんな感じで驚いている。

しかし、レイク将軍は、驚きは全く現さないタイプで、直ぐにこちらに向き直り……。


「ユキ殿。国防上言えないことかもしれませんが。このダンジョンというのは地下何階層まであるのでしょうか?」

「いえ、別に公開していることですので、大丈夫ですよ。まあ、冒険者区にあるダンジョン区には本格的な冒険をするためのダンジョンがあるので、そちらを含めた正確な階数となると難しいですが、人々が普段の生活をしている部分は大まかに答えるとするなら5~8階層というところですね」


後付けで別空間に、海水浴場とかアウトドア場とか作ったからな。

そういう別枠を数えていいのかよくわからん。


「それは、この商業区と同じ規模で?」

「そうですね」

「……すさまじいですな。ダンジョンというのは。こういう規模のダンジョンがあちこちにあるのですか?」

「普通はここまではないですよ。まあ、代わりに危険度は高いですが」

「危険? どういうことでしょうか?」

「普通のダンジョンには魔物が棲み着いていますからね。ああ、そういえば、そちらには魔物がいないんでしたね」


しれっと、魔物の話を織り交ぜてみると……。


「……なるほど。だからこそ、ハイデン王はユキ様との関係をと仰ったわけですか」


納得したようにそう言って頷く。


「ハイデン王が見た手紙の内容のことですか? 将軍にウィードに行ってみろと言うきっかけになった」

「ええ。もう、隠すことはないでしょうが、一応、その魔物がいるのなら一度見せていただけますか?」


お、食いついてきた。

なるほど、シーサイフォ王国の狙いは魔物関連か。


「いいですよ。では、先ほどご質問頂いた水産業の場所でお見せしましょう。水場には魔物も多いですから」

「……危険はないのですか?」


新大陸の人にしては珍しく、どうやら、魔物に対して警戒心を持っているな。

いや、魔物を知っているなら当然の反応だが、なにせ、新大陸ではハイレンの無茶のおかげで、魔物がほぼ存在できない空間になってしまっているのだ。

だから、この警戒心はおかしい。

問いただすか?

いや、まずは水産業を行っている場所に連れて行ってからだな。


「危険も何も、魔物はこのダンジョンに限り意思疎通のできる良き友人ですよ」

「は?」


俺の言葉にレイク将軍は初めて、お前何言ってるんだ?という顔になった。






みんな、今更だけど。ウィードはほぼ地下都市だからね?

レイク将軍たちの反応が普通。

そして向かうは、ダンジョンの港。


港? 地下に? ああ、ほら地底湖ってやつ。

それで納得しよう。


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