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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第792堀:霧の華

霧の華



Side:霧華



『……ということで、今からウィードにシーサイフォ王国のレイク将軍と随伴の護衛たちを連れて行くから、諜報活動頼む』

「お任せください。主様」


私がそう返事をしたところで、特に主様からの返事はなくコールが切れる。

これは私たち魔物の諜報部隊への信頼の証だ。

何も言わなくても伝わる。

それが、私と主様の関係だ。


「さあ、久々に主様直々のご指名による諜報活動です。しっかりこなしますよ」

「「「はい」」」


私がそう言うと、静かではあるが、はっきりとした返事が返ってくる。

この場にいるのは、ユキ様直属の魔物による諜報部隊。

人タイプの魔物は人に紛れて、動物タイプの魔物は動物のふりをして、相手を調べて丸裸にするのだ。

我らが、主様である、ユキ様の目であり耳であるのだが……。

だが……、ここ最近、イフ大陸といい、新大陸といい、新しく見つかる大陸では、魔力の枯渇や、くそ女神の呪いなどで、魔物の活動が難しいのだ。

そのため、私たちは主にロガリ大陸内部での諜報活動をしており、当初困難だったイフ大陸での活動が、ナールジア様とザーギスさん、コメット様のお陰でやっと安全にできるようになったかと思えば、今度は新大陸だ。


つまり、主様が一番大変な時に、お役に立てていないということ。

主様の役に立つためにこの世に来たというのに、このざまでは主様に申し訳が立ちません。

主様はその地の特性だから仕方がないと言ってくれます。ロガリ大陸でも人手が足りていないので助かっているとフォローしてくれます。

まあ、ウィードと関係する国が増えたいま、我らの諜報部隊の人手が足りないのもまた事実ではありますが……。


「そんな主様のやさしさに甘えているばかりではいけません。我らは、ウィードの目と耳であるのですから」

「「「はっ」」」


ということで、私たちは行動を開始します。

といっても、私は諜報部隊の隊長、長官なので、基本的には司令室に待機しているのが仕事です。


「隊長。今回のシーサイフォ王国から要人に対する諜報活動は基本的に、いつものように案内や旅館の仲居として諜報に当たります」

「そうですね。それがいいでしょう。露骨な諜報活動は避けるのが無難です」


諜報活動と聞いて、映画のようなきらびやかなスパイを思い浮かべる人がいるのですが、そんなのは稀です。

相手に悟られず、刺激しないように、すーっと周りをひっそりと囲むのです。

ヴィリア様たちがやっているごみ収集を兼ねた情報収集と同じようなものです。

まあ、やっていることはさらに上の内容にはなりますが。

そんなことを話していると、モニター管理のほうから……。


「隊長。映像来ます」

「わかりました。中央のモニターを使いなさい」

「了解」


そう指示をだすと、すぐに司令室の全面一杯にあるモニターの中央に主様たちの映像が映ります。

ウィードの諜報司令室も、ほかの軍事司令室と変わりはありません。

ちゃんとした近代化を行っており、オペレーターも配置してしっかりとした対応をしています。


「ユキ様の横にいる軍服の男がレイク将軍です」

「写真とは違いはありませんね。いえ、少し物腰が柔らかそうですか」


画面に映った目標のレイク将軍は報告で上がってきた映像や写真よりは、多少温和なおじいさんという風に見える。

恐らく、映像は国の代表としてや、軍の最高司令官としての時の写真や映像だったのでしょう。

多少、こういうところではそう言う厳しさも抜ける優秀な軍人のようです。


「しかし、ユキ様からの話ではウィードの存在についてはかなり疑っているようです」

「まあ、そこは当然でしょう。素直に信じるようであればそれはそれで心配です。だからこそのウィード訪問という形になっているのですから。と、ステータスの確認は?」

「できています。詳細をそちらに回します」


そう言うと、直ぐにレイク将軍のデータが送られてきます。

ユキ様はステータスの値そのものについてはさほど重要視しておりませんが、経歴を調べるのには適していますので、こうしてきちんと調べるよう厳命されています。

まあ、数値にはない人の凄さというのはありますから。


「レベルは75、年齢は56、ステータスは相応。やや、敏捷が高いぐらいですね。称号はシーサイフォ王国の海の守りと。何ともまあ、仰々しい称号が付いていますね」


オペレーターはレイク将軍のステータスを見た感想を告げる。


「称号のつき方については、未だによくわかっていませんからね」


主様はルナ様がひょいひょい妙な称号をつけられるので、称号そのものは見ていないといっていますし。

実際、私もルナ様に頼んだら、くノ一の頭領なんて称号を貰いましたし。

ありがたみの薄いことです。


「とはいえ、その称号が付くだけの働きはしているのでしょう。しかし、新大陸としては異様にレベルが高いですね」

「そうですね。今までの新大陸の統計では、指揮官、将軍クラスで精々45前後です。それから考えると、かなりの高レベルです」


そう。このレイク将軍のレベルは75とこの新大陸の中ではずば抜けて高いです。

無論、私たちに比べればたいしたことはないのですが、この魔物の少ない……いえ、魔物がいない新大陸においてどうやってここまでレベルを上げたのか気になりますね。


「大体、イフ大陸の魔剣使いと同レベルですね。まあ、ありえないというレベルでもないのですが……。一応、そこら辺の理由も探ってみてください」

「はい。そのように伝えます」


モニターの中のレイク将軍と主様は既にハイデンに設置してあるゲートへと差し掛かっています。


「ゲート、起動を確認しました」

「流石に、驚いていますね」


レイク将軍は目の前に存在するゲートを見て、目を丸くして驚いたあと身構えています。

後ろの随伴の護衛も同じです。


「音声を」

「はい。つなぎます」


私がそう指示を出すと、ザッという音とともに音声が聞こえてきます。


『……れは、一体』

『これは、ゲートといって、遠方の地へ一瞬で行ける魔道具なんですよ』

『ま、まさか。そ、そんなものが存在するのですか? あ、いえ、失礼。信じていないというわけでは……』

『いえいえ。その反応は当然ですよ。案外、まやかしかもしれませんしね』


主様の悪いところが出ましたね。

変に相手を刺激するようなことを言っています。

おそらく、ふるいにかけているのでしょうが、下手すると侮辱だと取られる可能性もあるので、私は心配です。


『ははっ。ユキ様はご冗談が好きなようですな。ハイデン王の信認もあり、ここで私たちを騙す理由もありませんからな。私はユキ様を信じますぞ』


そんな心配をよそに、レイク将軍は朗らかに主様の言葉を受け流して、話を信じるといってくれました。

レイク将軍は随分と柔軟な考え方をお持ちのようですね。


「目標。ゲートへ入ります。わあ、びっくり。意外ですね。もうちょっとためらうかと思っていましたけど……」


モニターには、レイク将軍がためらう事無く、誰の先導もなしにゲートへ入っていく姿が映っています。

その映像を見てオペレーターは驚きの声を上げています。

確かに、どんな豪胆な者も、大半は、大抵ゲートを見ると入るのをためらったりするものですが、レイク将軍はいたって平然とゲートへと入っていきました。


「あれですね。ローデイのブレード王を思い出します」

「ブレード王は、好奇心が強いですからね。おかげで、サマンサ様はいつも大変そうですが」

「しょっちゅう、こっそりウィードに来ては、ローデイからの捜索願いがでますからねー」

「まあ、もう慣れたというか、ブレード王の行動は定番、名物になっていますからね。と、それよりも、レイク将軍がウィードに到着したみたいですね」


そんな話をしているうちに将軍はゲートを無事に抜けてウィードに到着したようです。

それを追うように主様たちや、護衛の方々も到着します。


「はい。そうですね。全員ゲートを無事に通過したことを確認。後は入国管理ですが、私たちの部下をいかせています。いいでしょうか?」

「それがいいでしょう。いきなり見るからに魔物の入国管理官に合わせるのはトラブルの元ですからね」

「では、予定通りですね。しかし、流石にあの将軍もゲート移動を実体験して驚いているようですよ」

「それはそうでしょう。いかに平静を装っているとはいえ、未知の技術を体感して驚かないわけがありません。驚かないとすれば、主様のようにその技術をあらかじめ知っていると推定されます」


そう言って、私はモニターに背を向けて部屋の外へと向かいます。


「では、私も出ます」

「はい。くれぐれもご注意を」

「ええ。ありがとう」


さあ、私も今回は相手が相手なので、自ら動きます。

なにせ、銃もどきを所持している国の将軍なのですから。

今までで一番主様が警戒の表情をされていた相手。

……最悪、主様の命令に逆らってでも、命を刈り取ります。

それが、私の仕事です。覚悟を決め、私は……。



「ようこそお待ちしておりました。当旅館の女将を務めております。霧菜と申します」


そう言って、私は主様とレイク将軍を迎え入れていました。


「うむ。しばらく世話になる」

「じゃ、女将さん、お部屋への案内よろしく頼むよ」

「はい。ではこちらにどうぞ」


この旅館は私が管理する情報収集のための高級宿の1つです。

基本的に初めての国のお客さんは一度こちらに泊まってもらうというのが、ウィードの基本的なルールとなっていて、まあ、対外的には、ウィードの文化になじんでもらうため、あとは洋式か和式どちらがお好みかなどを調べて、改めて、馴染みやすい旅館や宿へと案内するための場所ということになっています。

裏はもちろん、主様、ウィードの敵なのかどうかをしっかり見極める場所でもあります。

ここで危険度が高いと判断したお客は、監視を強化するようになります。

とはいえ、今後の野望を語る程度のことでは監視を強化する対象になりませんが。

誰しも、そういうところは有りますからね。

しばしば、こうした環境が極端に違う場所で一時的とはいえ生活をすると、周囲の耳目が感じられない自身の部屋では本音が漏れるものです。

このレイク将軍や護衛の方々もウィードの技術レベルに驚いているようです。

まあ、新大陸のハイデンやフィンダールを基準に考えれば、当然の反応ですね。

そもそも今まで驚かなかった来訪客などいませんから。

と、そんなことを考えている内に、部屋へとたどり着きます。


「こちらが、鈴の間と申しまして、レイク将軍様方のお部屋となりますが……」

「ん? どうかしたのかね?」

「いえ、護衛の方々も一緒のお部屋というご要望は珍しいものでして、これでよかったのかと」

「ああ、うむ。普通はそうだろうな。しかし、女将殿配慮は無用だ。初めてのウィード訪問で、色々と驚いていることが多々あるのでな。部下と一緒の方が落ち着くのだ」

「かしこまりました。別のお部屋が必要な時は、遠慮なく申し付け下さいませ。お隣のお部屋は空けておりますので」


随分と警戒心の強い方ですね。

ですが、その警戒もウィードの力の前には無意味なのですが。


「うむ。その時はよろしく頼む。では、ユキ様、ウィードの案内ですが……」

「ああ、そちらは一旦部屋で休憩なされてからにいたしましょう。申し訳ない、こちらもちょっと準備がありますので。そうですね、大体一時間程でしょうか。もし何かある時は、そちらの女将に言ってくれれば私の方に連絡が参りますので」

「わかりました。正直、このようなことを経験して少し混乱しております。時間をいただけるのはありがたいです」

「では、むしろ案内は明日にして、今日はこちらでゆっくりされますか?」

「いえ、いろいろ見たり、お話は聞きたいので、今日も案内をしていただけると」

「そうですか。では、ちょっと時間を空けて2時間後、あの時計が……」


どうやら、レイク将軍も時計の見方は分かったらしく、とりあえず問題無く話が終わり、主様とレイク将軍は別れ、私も主様の後を追うように、その場を離れていきます。


「くれぐれも失礼のないようにな」

「はい」

「で、このまま、監視に入る」

「かしこまりました」


ということで、私は主様と一緒に、旅館に備え付けられている指令室へと入って行くのでした。

久々に、主様の手足となって働いている気がして、とても嬉しいです!







霧華はあまり出番がないようで、実は各章で必ず出てきて諜報活動をしていたりします。

スティーブたちと同様安定したキャラですね。

ということで、ゲームでもSRですが、つかってね!!


と、そこはいいとして、レイク将軍のとびぬけたレベル。

これからわかることとは?

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