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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第769堀:治安の問題

治安の問題



Side:トーリ



「うへー。今日は休みじゃないのー?」


そう言って来るのはリエルだ。

昨日のサツマイモ発言であまりやる気がないようだ。

まあ、みんなにリエルらしいって笑われたからね。

たいして傷ついてはいないけど、少し恥ずかしいのか、しょんぼりしている。

でも、だからといってお休みにできるわけがない。


「休みはまだ先だよ。私たちはウィードの治安を守る必要があるんだから。特に今は大陸間交流祭の最中なんだし」


そう、こんな大事な日に、一番動きがいいリエルを遊ばせておくことはできない。


「あれ、面会とかはないの? カヤはいないみたいだけどさぼり?」


リエルはふと、カヤがいないことに気が付いて聞いてくるが、さぼりなわけがない。


「カヤはイフ大陸の人と農業関連のことで面会中」

「僕たちはほかにお呼ばれしてないの?」

「私たちもあとでイフ大陸のところに将軍としていかないといけないよ」

「えー? あそこ亜人嫌いってのがあからさまじゃん」

「気持ちはわかるけど、そこら辺のわだかまりをなくさせるためでもあるって言ってるし、ユキさんが協力してやれって。というか、私たちはまだましなんだよ。あの態度のままロガリとか、新大陸のほうと交流したら……」

「あー、ガルツのお姫様とか軒並み獣人かエルフだしねー。新大陸では獣人は精霊の巫女だし、もしかして色々まずい?」

「そうだよ。その前に馬鹿どもは排除したいみたい。カヤが単独で呼ばれたのもそういう理由もあるんだよ」

「うへー。カヤを怒らせるよ、あいつら」

「普段喋らないけど、お仕事の時はてきぱき対応するからね。カヤは」


そう、奥さんたちも案外知らないんだけど、お仕事モードでのカヤは結構普通に喋る。

あのボソッと喋るのは近しい人だけ。

あ、いや違うか。お仕事の時は、ビシビシ厳しくいくんだよね。

普段は農作業だから、地面を相手にせっせと仕事するだけだから、喋ることはあまりないんだけど、農作業の日程とか予算とか、警察での指導とかだとがっつりいくんだよねー。

まあ、そういう真面目さがあるから、カヤには新人の教育の締めとか、定期的な監査みたいなことをやってもらっているんだ。

それで、いつもはユキさん任せの外交交渉だけど、今回は農業のことで呼ばれているから、もうカヤのお仕事モードがさく裂だねってこと。

下手に怒らせて、イフ大陸の人たちが交易品減らされないといいけど。

と、そんなことを話しながら移動していると、気が付けば警察署の前だ。


「「おはようございます」」

「おはよー。今日も警戒頑張ってね」

「「はい!!」」

「いやいや、リエル。彼らは徹夜番だから、もうすぐ交代だよ」

「あれ? そうだっけ?」

「はぁー。昨日からのお勤めご苦労様です。あと少しですが、気を緩めることなく頑張ってください」

「「はい!!」」


門番の2人が元気よく挨拶したのを聞いて私たちはそのまま門を抜けて、警察署に入る。


「あ、署長おはようございます」

「リエル特務おはようございます」


受付にいた女性署員たちは元気に挨拶をしてくる。


「はぁ、署長はポーニですよ」

「あはは、すいません。なんかポーニ署長ということにいまだなれなくて」

「そこはちゃんとしないとだめですよ。私は副署長です。上下関係を守れないと昇進はできないですし、信頼もできません。いいですね?」

「はい。以後注意します」


この手の注意はいまだにしている。

まあ、ポーニは身長が低くて子供のような印象が抜けないというのもあるんだろうけど、それを言ったらラビリスとかもちっちゃいし、言い訳にはならない。

……でも、ラビリスって小さいけど私たちよりも色っぽい時はあるんだけどね……。

そんなことを考えている間に、リエルは受付のみんなと話している。


「おはよー。みんな。調子はどうよ?」

「もう、大変ですよ。連日大きな事件はないものの、通報は通常の3倍近くですから」

「昨日はまた冒険者が騒いで、冒険者ギルドに要請ですよ。ミリー様もイライラしていましたし」

「あはは、そういえば、ミリーはイライラしてたねー」


ミリーはこのお祭りの中、冒険者ギルドや冒険者区の管理の他に加えて他国から見物にやってきた冒険者がウィードの常識を知らずに色々やることに対してひどく頭を痛めている。


「一番揉めるのが、トイレの罰金ですね。自分で掃除すればタダではありますけど、それすら嫌がって払わないバカもいますから」

「やっぱりそこかー」

「トイレというものを覚えさせるのが大変ですねー」


あちこちごみを捨てたり、排せつしたりするバカがいるから、ウィードの子供たちや冒険者たちを駆り出して注意をしているのだが、それでも発生件数は大きく上昇してる。

まあ、人が多くなればその分増加するとは予想はできていたから、それを予想して増員などして対処したんだけど、対処しきれなかったなぁー。

今回の失敗は今後に生かすとして……。


「リエル。お話はそこまで、まずは執務室に行って報告をしっかり聞く」

「あ、うん。わかったよ。みんな、またねー」

「今日もみなさんよろしくお願いしますね」

「「「はい!!」」」


受付にいた職員は元気よく挨拶を返してくれる。

顔も見た感じは、疲れを感じさせないから、シフトはうまく回っているようだね。

そのあとは廊下ですれ違う署員たちに挨拶をしつつ、立ち止まることなく、署長室へと到着する。

中では既にポーニが書類仕事を始めていた。


「おはよー。ポーニ。はやいねー」

「おはようございます。リエル特務に、トーリ副署長」

「はい。おはようございます。ですがリエルの言う通り早いですね。なにか問題でもありましたか?」

「いえ、問題はありません。ただし事件発生数が増加しており、その処理に追われている署員が多いですね。その関係で私もでているだけです」

「あー、さっき受付で話をきいたよ。トイレを使用しないのが多いってね」

「でも、その処理に追われていることでなぜ、ポーニ署長が早く出る羽目に?」


そういう事件の処理は、署長の仕事じゃない。

ポーニが早出をする理由にはならないはずだ。


「ああ、いえ、これは私が自主的にでているだけです。今回の処理が追い付かない理由は他国から来た冒険者や観光客がウィードのトイレ制度を知らなくて起こったケースが大半です。まあ、知っててやっているバカもいるでしょうが、ほとんどの違反者はその場で後片付けを素直に手伝いトイレの存在をしれば喜んで使用しているという報告書が上がってきています。つまり……」

「私たちの周知徹底が足らなかったということですね」

「はい。入国者は全て、いったん私たちの管轄である入国審査を受けることになっています。そこでのトイレの周知が完全ではなかったということです」

「でもさ、トイレの説明はきちんとしているんじゃないの?」

「説明といいましても、口頭で伝えるだけですので、ちゃんと伝わらない可能性もありますし、聞き流してしまう人も多いということでしょう。実際、違反者のほとんどはトイレを知らなかったと答えています」


そう言って、ポーニは私たちに資料を渡してくると、違反者の理由がグラフ化されていた。


1位 43% 聞いてなかった 知らなかった

2位 22% トイレの場所がわからなかった

3位 12% トイレでする理由が分からない

その他23% 


「うへー。こりゃ酷いねー」


違反者の約半分がトイレの話を知らなかったと言うんだから、リエルの言う通りひどい。


「口頭、口だけの説明で排泄をする専用の場所があるということが伝わらないようですね。トイレというモノが理解できてないのです」

「まあ、そうですねー。トイレ自体はまあ、稀にあるから知ってましたけど、私たちもこのウィードのトイレを見て驚きましたし」

「うんうん。超驚いた。紙を使い捨て、それにウォシュレットまであるしねー」


どこの世界のトイレかと思った。

で、結果は異世界のトイレだからまあ当然だなーと思ったんだよね。


「今の私たちにとってウィードのトイレが当たり前ですが、ゲートが出来てから他国へ旅行するウィード国民たちは逆にトイレが無くて困るという話も沢山ききました」

「それは私も聞いています。というか実感していますね」

「うんうん。外国はトイレなくて困るよねー」


イフ大陸や新大陸での用足しは本当に毎回面倒でした。

あ、新大陸はソウタさんがトイレの普及に努めていたおかげか、トイレは多少あったからましかな?

でもイフ大陸は、ほぼなしの良くておまるで窓ポイ捨てという始末で凄い匂いだった。


「私も今となっては受け入れて、ありがたく使わせてもらっていますが、初めての時は驚きました。というか、こんな立場にまでなれるとは思っていませんでした」


ポーニはそう言って肩を竦めながら微笑む。


「ポーニは、奴隷からだっけ?」

「はい。リテアで売られていた私を、セラリア様がリテアからの賠償の一部として購入してくれました。リテア難民を受け入れた時期と同じぐらいですね」

「そうですか。もうずいぶん前のことですね」

「それでも、5年ほどですが。と、昔話はまた後日にするとして、今はそう言う関係で、トイレの改善策を考えている所です」


そういうことか。

これで終わりじゃない。むしろこれからどんどん観光客が増えてくるんだから、こういう対策は早めに練らないとおいつかないね。


「それに、私たちは明日、イフ大陸との面会もありますし」

「何が聞きたいか全く不明だけどねー」

「恐らく私たちからウィードの軍事力とか警察の組織図なんかを聞き出したいんじゃないかと思うよ」


それだけ、注目を集めていると同時に警戒もされているんだろうなーと思う。


「トーリ副署長や、リエル特務が将軍として参加される時は私が警察のトップということで参加いたしますので、面会時の警察関連のことは私にお任せください。問題は私たちがいない間のトラブルですが……」

「そこは、残っているみんなが頑張るんじゃないの?」

「はい。そのように指示はだしていますが、心配にはなります」


まあ、そうだよね。私も最初はリエルに副署長が務まるか心配していたから。

で、ものの見事に書類仕事が苦手で、すぐに現場を走り回る始末。

おかげで、ポーニが良く駆り出されて、そのおかげというべきかどうかわからないけど、署長の仕事を手伝った功績というか、実務経験ができたので、そのまま署長になるよう推薦したんだよね。

こういう心配をポーニも抱えているわけか。

さて、なんて声をかけてあげればいいのかなと思っていると、リエルが口を開く。


「大丈夫大丈夫。みんな頑張ってくれるって。僕たちの時だって、ポーニたちががんばってくれたじゃん。だから、ポーニもみんなが助けてくれるよ。ね、トーリ」

「うん。そうだね。きっとポーニ署長じゃないね。ポーニを助けてくれる人がいるから、いや今だって沢山の人たちに助けられているでしょう。だから、ポーニも信頼してあげていいと思うな」

「問題が起こった時はそれこそ皆一丸で解決するんだよ」

「……そうですね。はい。私は皆を信じます」


そう返事をしたポーニはいい笑顔だ。

しかし、直ぐに真面目な顔になって……。


「とはいえ、トイレ指導の方法や、明日の問題があった時の対応書類の見直しなどは作らないといけませんので、お手伝い願います」

「はい。分かりました。ポーニ署長」

「えー? 書類仕事なら僕はユキさんの所に行って、護衛を……」

「いいですよ。ユキ様にはリエル様が仕事を放棄して逃げましたと報告いたしますから」

「はい!! お仕事頑張ります!!」


ポーニが署長に向いていると思ったのは、奔放なリエルとか自由なデリーユを、こういう風にいうことを聞かせられることが一番かもね。


さ、私もユキさんに報告されないようにがんばらないと。






人が多くなればトラブルが起こる。

それは治安の悪化につながる。

お祭り時なんてのは特に。


日本だって、トイレが並んでいたり、ごみが散乱していたりとか、最近ではハロウィンでのトラブルは有名ですね。

でも、こうしたトラブルがあるからこそ、どんどん修正していってよりよき治安を目指していくわけです。

まあ、やりすぎても雁字搦めになるから、難しいところですよねー。

みんなが良識と常識をもって行動してくれればいいんですが。




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