第759堀:大会議を見守る者たち
第759堀:大会議を見守る者たち
Side:タイキ
大陸間交流宣言がされてから、既に4日目となるが、いまだにウィードやゲートで繋がっている国々は騒がしい。
未だにお祭り騒ぎだ。
まあ、大会議も終わっていないから当然なんだろうな。
そう思いながら、俺は騒がしいランクス城下をテラスから見ている。
「いや、俺もこの流れに乗って祭りをしているんだから、同じか」
俺だって、ランクスの活気付けのためにお祭り騒ぎに便乗したのだ。
今回の大会議の参加国は基本的に大国だけだが、それでも小国も多数訪れて交流宣言を見に行っている。
報告じゃ、どこかのバカが入場チケットを持っていないのに押し入ろうとしたとか。
あんな大会議が行われるところで、なんという大失態。そのバカはもう没落するしかないな。
ああ、因みに小国の連中も大国を通して、優先入場チケットをもらっているので、普通ならあんなところで足止めを食らったりはしない。
つまり、入場口の事件は見栄をはって入りたいだけのバカだったというわけだ。
そして、それだけ立場が低い貴族ということでもあるから、本当にお取り潰しで済めばいい方である。最悪処刑。
「そんなに、あの交流宣言の場にいるのが大事か?」
「当然です。あの交流宣言をその場で聞くのは大変名誉なことでしょう」
俺がそうつぶやくと、後ろからそんな答えが返ってきたので振り返ると、近衛隊長ルースと奥さんのアイリが立っていた。
「まあ、タイキ様は疲れるだけとしか思わないのでしょうけど」
アイリはそう言って笑う。
俺のことをよくわかっていらっしゃる。
ルースの言っている意味はわかるが、俺としてはゆっくり過ごしたいんだから、そういうのは報告を聞くだけでいい。
「とはいえ、その名誉のために、家を潰してたら意味ないだろう?」
「ああ、あの話ですか。リテアのデスト殿が頭を痛めておりましたな」
「アルシュテール様もでしたよ」
「……2人ともリテアの人たちと会ったのか?」
「ええ。陛下がユキ様と歓談中に軽く挨拶を」
「流石に、他の大陸の方たちには無理ですが、同じ大陸の大国の要人たちとは一通り挨拶をしておきましたよ。タイキ様だって、ガルツ王には挨拶をしたじゃありませんか」
「そりゃな……。ビッツのことで散々迷惑をかけたからな。でも、ほかの大国に挨拶にいっていいのか? ほかの小国からにらまれるのはごめんだぞ?」
今回の大会議は大国だけで、ある程度方針を決めるのが目的だ。
そこに小国が顔を出すのは、ほかの小国に恨みを買う可能性が高い。
まあ、逆に見どころありと思われる可能性もあるが、どう転ぶかはわからない。
「そこは、陛下は勇者王であらせられますし、問題はないかと」
「はい。タイキ様のことを小国の王と侮る連中などロガリ大陸にはいないかと」
「そこなんだよな……」
俺は相変わらず、勇者王と巷では呼ばれている。
大国の皆さんも含めてだ。
これから、大陸間交流が始まれば。
『ランクスの勇者王タイキ殿です。ぷぷぷ……』
と、ユキさんが笑いをこらえながら説明する姿が目に浮かぶ。
戦力的にはユキさんの奥さんたちにも及ばないのに、名前負けしまくっていて恥ずかしい限りだ。
とはいえ、ランクスは俺の名前あってこそだから、使わないわけにはいかない……。
「別にどんな名で呼ばれようが、タイキ殿が成し遂げたことに変わりはあるまい。むしろ評価されてのことだから喜べばいいだろう」
そんなことを言ってまたテラスに入ってきたのは……。
「ビッツ……じゃなくて、その口調は輝虎さんか」
「うむ。本人は昨日の見回りで疲れているからな。私が今日は体を使わせてもらっている」
剣の国とランクスが揉めた時に出てきた、ビッツの体を借りた上杉輝虎さんである。
本物かどうかはしらないけど、あの戦国武将の毘沙門天の化身と自ら名乗る元祖中二病といっていい上杉謙信さんその人である。
あの事件以降は、ビッツの指導役兼、俺の護衛、そして反勇者王派の監視を兼ねて、この異世界を満喫しているようだ。
「というか、ビッツがまじめに見回りねえ。いまだに信じられないな」
あの事件以来、ビッツは輝虎さんにみっちりと現実を教えられて今に至るのだが、あの我儘姫が今日までやってこれたのが驚きだ。
てっきり途中で投げ出すとばかり思ってたけどな。
「人は変わるものよ。無論、変わらない者もいるがな。しかし、この調子でタイキ殿に反旗を翻せるか見ものだな」
「それは止めろよ。また内乱とか、ユキさんどころか、今度は大陸間連合に睨まれることになる。それで国民が流出したら目も当てられない」
「まあ、もとよりその約束だからな。とはいえ、この娘が復讐を優先するなら、そちらに肩入れさせてもらうがな。宿主の気持ちは優先する」
「律儀だよな。義はどこに行った」
「大義ではないが、この娘にとっては義よ。とはいえ、私もウィードを相手にはしたくないがな」
「輝虎さんは、なんか知らないけど、ユキさんを避けるよな。新大陸の時もビッツをって話もあったが、結局ルースだったし」
当時はビッツはまだ駄目、信用できない。ランクス内の敵対勢力をまとめるためにって言ったんだけど、実際は輝虎さんがユキさんを避けたのが本当の理由だ。
「……ふむ。タイキ殿の言っていることは真実だ。どうも私はあのユキという人物が怖い」
「怖い? そういえば、最初も同じようなことを言ってたよな」
「うむ。あれは、普通に見えて普通ではない。得体がしれん」
「いや、まあ、ユキさんはダンジョンマスターだしなー」
というか、ダンジョンマスターどころか、異世界人であり、しかも上級神とかいうルナさん直属の部下という扱いだから、下手な神様というか、こっちの木っ端の神様より立場が上なんだよな。
こんな正体がばれたら困るどころじゃないよな。
下手したら狂人扱いになるし、いや、信じている人たちもいるけど、混乱になるのは間違いない。
だが、輝虎さんの感じることはどうも違うようで、首をゆるゆると横に振る。
「そういうことではない。まあ、私がただ避けているだけだな。今までのことを見る限り、信用できる人物なのはわかる。やっていることも立派だと素直に認める。だがな、なんとも……、私だけの感覚なのだがな」
あー、個人的に気が合わないってことか。
そう言うのはあるよな。どうしてもそう言うのは人として出てくるもんだ。
「と、すまない。そこはいいとして、タイゾウ殿、ヒフィー殿がお見えになられているぞ」
「ん? タイゾウさんたちが? ああ、大会議の件かな?」
「それも含めて、今のお互いの大陸、国がどうなっているか聞きたいようだ」
「そうか。まあ、大会議4日目で何か動きがないか聞きたいんだろうな」
ということで、俺たちはタイゾウさん、ヒフィーさんと会うことになった。
「タイキ君、忙しい所すまないな」
「勇者王殿。わざわざ時間を割いていただいてありがとうございます」
2人は会議室で仲良く揃って俺を迎えてくれる。
もう、すっかりお似合いの夫婦で息もぴったりだ。
「いえ、大丈夫ですよ。王様のお祭りでの仕事なんて準備と開会式、閉会式、あとは片付けぐらいしかないですから」
「それは、全部やっていると思うがな」
「タイゾウさんもでしょう?」
俺がそう返すと一瞬沈黙があって、お互い笑う。
「お互い大変だな」
「ですね。でも、ユキさんほどじゃないですよ」
「ああ。彼は今大忙しだろう。歴史に残ることをしているんだからな。だが、それを彼だけに任せているわけにもいかない」
「はい。ユキさんを助けるのは当然です。で、何から話しましょうか?」
俺もタイゾウさんも散々ユキさんに世話になったんだ、こんな忙しいときに手伝わないなんてのはない。
というか、この大陸間交流宣言は俺たちにとってもありがたい話だ。これを維持するために協力を惜しむつもりはない。
ああ、ブラック勤務は勘弁だけど。
と、そんなくだらないことを考えていると、タイゾウさんが口を開く。
「そうだな。まずは、お互いの国の話をしよう。一応、ヒフィー神聖国、ランクス王国ともに、大陸間交流同盟に参加しており、3日前の大陸間交流宣言の祝いで始まった祭りの状態はどうかな?」
「そうですね。もう見られたと思いますけど、ランクスの民はこの王都の城下では素直に喜んでいるように見えます。報告からも、喜びの声が上がっているとか」
俺はそう言って、ルースや輝虎さんを見ると2人とも頷く。
「陛下の言う通り、この度のお祭りはランクスの民にかなり活気を与えております」
「うむ。ゲートによる物資輸送のおかげでウィードから産物を仕入れ、屋台で売っているのが人気だのう。イカ焼きは美味い」
「食べたのかよ」
「うむ。不審な食べ物が出回っているとあれば、危険だからな。そこはちゃんと調べておる。というか、私よりもビッツの方がな……。ってこらっ!? 輝虎、勝手に人のことを暴露するんじゃありませんわ!!」
どうやら、ビッツが体の主導権を握ったか。
「疲れて寝てたって?」
「……違いますわ。輝虎がタイキと話したいから、代わってあげていただけですわ。難しい話についていけないから、寝ていたわけではないですわよ?」
……なんという本音駄々洩れの会話なんだろう。
タイゾウさんもヒフィーさんも苦笑いしている。
ルースも微妙な顔だ。
「あ、まあ、難しい話はいったん置いて、ほら、皆さんの分もイカ焼き買ってきたので、食べてくださいまし」
そう言って、ビッツはイカ焼きとか、焼きそばとか、箸巻きとかをテーブルに並べ始める。
「いや、お前。前はこういう下賤なモノをって……」
「あー、うるさいですわ。そういう細かいところが嫌なんですわ。アイリ王妃もちゃんと嫌なところは嫌と言わなければだめですわよ。と、はい。イカ焼き」
「はい。ありがとうございます。ビッツ姫」
なぜか知らないが、アイリは普通にビッツと仲がいいんだよな。
まともに顔を合わせたことがないからか、先入観がないせいか、警戒したりぶつかることが無いのだ。
「はぁ、何度も言いますが、このランクスの姫はアイリ王妃だけですわ。私を姫と呼ぶのはおやめになってくださいませ。今後、バカな連中がまた私を担ぎ出そうとしたり、アイリ王妃を相応しからずというモノも出てくるでしょう」
そして、最近のこの変わりよう。
すっかり、お約束のわがまま姫の性格は潜めてしまったのだ。
「今のビッツ姫なら、十分王妃も務まると思いますよ。昨日も転んでけがをした子供の治療をしていたではないですか」
「たったそれだけのことで……。いえ、それだけのこともできなかったのですわよね。今の私に国主を務める器量はありませんわ。当然、昔の私なんて論外ですわね。なので、王妃の座は要りませんわ。それにタイキは貴女やソエルのものですわ。あ、そうだ、ソエルにも分けてあげてくださいな」
どうやら、輝虎の方針で俺の側近の傍ら、こういうお祭りの準備はもちろん、税の徴収などにも顔を出していたのがかなり効いたようだ。
というか、税金を下げるように怒鳴り込んできたこともあったからな。
いやいや、お前の時代なんて倍以上あったからなって言ったら凹んでたな。
ま、ちゃんと事情を聞くと、金貸し、地球で言う闇金に手を出して首が回らなくなった母子家庭だったのだ。
働き手である旦那さんは戦争に駆り出され戦死したと聞いて、いたたまれなくなったそうな。
戦死補償金も前の政府にかなり減らされていたからな。
本当に苦しくて、止む得なく手をだしたんだろう。
まあ、そういう理不尽な金貸しはユキさんと組んで潰して回っているので、まだ残ってるとは思わなかった。
怪我の功名というか、ビッツのおかげで闇金を潰せて、その親子もこちらの公共事業に従事してもらうことで、今後の生活の糧を得て借金もチャラになったわけだ。
「彼女も変わったものだな。元々そう言う素質はあったということだろう。更生しない者はどうやっても更生しないからな」
「ですね。と、話がそれましたね。こんな感じでランクスは賑わっていますね。平和を素直に喜んでいます。タイゾウさんの方はどうですか? と、失礼しました。ヒフィーさんに聞くべきですね」
いかんいかん、国の話なんだから、ここは国主、ヒフィー神聖国ならヒフィーさんに聞かないと失礼だ。
「いえ、タイキ王も血縁であるタイゾウさんの方が話しやすいのはわかりますからお気になさらないでください。それで、ヒフィー神聖国の方ですが、こちらも平和を喜んでいますね。ウィードからの物資提供もあり、他の大陸と繋がったんだという実感もあるようです。このイカ焼きとかですね」
「はは、まあイカ焼きはロガリ大陸の特産じゃないですけどね」
しかし、イカほど分かり易い独特な食べ物はないよな。
あとたこ焼き。
「まあ、イカ焼きが別の大陸があるという認識に一役買ったというわけだ。お互い、今のところは問題が無いようで何よりだ」
「ええ。で、あとは、他の小国の動きですね」
「ああ。ロガリ大陸はともかく、イフ大陸の方は、まだまだ大陸間交流の話が浸透していない場所もあるからな」
そう、話はこれからだ。
ランクス、ヒフィー神聖国が平和に祝っているのは予想ができたが、ここからはどんな話がでてくるのやら。
ユキさんの頭を悩ますことが無いといいけどなー。
「たこ焼き好きなんですよ」
「美味しいわね。あ、こっちの大根おろしもいけるわよ」
……いや、俺にとっては馴染み過ぎている、勤勉になったビッツの方が扱いが難しいな。
そして、懐かしきビッツと輝虎さん現れる。
すっかり改心したというか、常識を学んだ様子。
いい子になる要素はあったということ。
まあ、輝虎さんがちゃんと教育したようで……。
そこは良いとして、今のところ小国は動きなし。
そして、「雪だるまの自由なブログ」にて「10巻の表紙」公開中!!
http://snowbookman.diary.to/archives/13038794.html
上記のURLをコピペしていって見てねー。
ブログの方がこういうのは早いんだよね。
活動報告は意外と画像を載せるのは手間。




