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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第722堀:次なる困難

次なる困難



Side:ユキ



……ミヤビ女王に神様を見破る能力でもあるのかと、別の意味で期待していたのに、ただの駄目神ズの自爆かよ。

俺は、ミヤビ女王の話を聞いて脱力していた。


「もーおー。女性の頭をぽんぽんハリセンで叩いちゃだめよー」

「うっさい。もうちょっと気をつけろ。この世界には長命の種族なんてごまんといるのは知っているだろうが」

「うー」

「ユキさん。落ち着いてください。夜に仕事を入れられた気持ちはわかりますが、今はミヤビ女王への対応です」


俺が文句を続けようとすると、エリスに止められる。


「ああ、そうだったな。はぁ……、すみません。ミヤビ女王」

「い、いや、気にしてはおらんが、そうも簡単に女神さまに手をあげてよいのか?」

「そーよー、ミヤビちゃん、もっと言ってあげてー。女性に手を上げるなんてさいてーって」

「……」

「ミヤビ女王が困ってるからやめろっての。こっちの事情を知らないんだから敵も味方も判別できんだろうが」

「ぶーぶー」


と、そんなことを話していると、部屋の扉が開いて人が入ってくる。


「はーい。お待たせいたしましたー」

「飲み物もってきましたよー」


そう言いながら、ナールジアさんとラッツが戻って……。


「はぁ……。お前はいったい何をやっているんだ」

「……あらー、不法侵入者がいますねー。女性の部屋に男が無断で立ち入るとかー、巡回の警察官にしょっ引いてもらいましょー」


ついでに、ファイデとその他二名も入ってきた。

なんで、こんな時に起爆剤が来るんだよ。


「いやー、それがですねー。厨房へ飲み物を取りに行くとき、偶然、飲食スペースで楽しそうに飲んでる3人に見つかりまして」

「まあ、ほらこの通り、荷物が多いですから、クーラーボックスとか持ってくれたんですよ。ついでに、事情を聞いて、先方に謝りたいと」


あー、ファイデとその他二名は、リリーシュとの戦闘で泥だらけになって風呂に行くとか言ってたな。

で、場所が寄りにも寄ってここかよ。

そんな風にナールジアさんとラッツから事情を聞いている傍らで、ファイデがミヤビ女王ご一行に深々と頭を下げるのだが……。


「この度は、うちの元妻が迷惑をかけて大変申し訳ない」

「ちょっとー、元妻とか言わないでくれるー? 司祭様がバツイチとか広がってほしくないからー」


と、そういうのを聞いて。

さらにミヤビ女王たちの顔がこわばり、ブリキのおもちゃのごとくぎこちなく、俺の方に顔を向かせ……。


「も、もしや、こ、このお方は……」

「……ひじょーに、言いづらいですが、その通りです。リテアの父親であり、農耕神といわれているファイデです」

「「「……」」」


ミヤビ女王ご一行は、状況についていけないのか、口をパクパクさせるだけで、言葉が出てこないようだ。

まあ、当然だよな。冗談ですで済ませればまだいい。

しかし、残念ながらこの状況が冗談でないと、ミヤビ女王ご一行が理解しているので、そういうフォローすらできない。

仕方がないので、ミヤビ女王たちが再起動する間に、飲み物を配ることにする。


「とりあえず、そこの駄目神。今回は、夫婦喧嘩とは無関係だから、騒ぎを起こすなよ。ファイデはわざわざ荷物運びを手伝ってくれたんだから、そこに文句をつけるな」

「ぶー……。仕方がないわねー。じゃ、ファイデ、黒ビール」

「そんなものは持ってきてない。コーラか麦茶にしとけ」

「気が利かないわねー」


コイツはファイデのこととなると話を聞かないようだな。

前回までは無視だったが、前の方がましだなこりゃ……。

とりあえず、話が進まんから……。


「そこの駄目神。それ以上ファイデに突っかかるなら、つるすぞ?」

「麦茶でいいわー」


はぁ、頭いてぇ。

酒飲んで寝られるなら寝てしまいたいのは俺だっての……。

まあ、そこからは俺の注意したのが利いたのか、おとなしく麦茶を飲んでいる。

ヒフィーとノノアに目配せをして、おとなしくさせておけと指示も送ったからいいだろう。

そして、ファイデたちは大人しく出て行った。

これ以上いても、リリーシュと喧嘩になると思ったんだろう。

まあ、ナイス判断。

さて、そろそろミヤビ女王は元に戻ったかなー? と視線を向けると、こちらに向かってこいこいとアクションを起こしていた。


「どうしました?」

「どうしましたではない!! っと、いやいや、怒っているわけではないのだが、なぜここにこんなに多くの神が集まっておる? 何が起こっておるのじゃ?」

「あー……」


再起動したのはいいけど、クソ面倒なことを聞いてきたな。

どうしたものかと言葉に詰まっていると、エリスとリーアが前に出てきた。


「ミヤビ女王。私の夫が言い淀んでいることからある程度察しはついてるでしょうが、これ以上踏み込んでくるのであれば……」

「命を懸けてもらいます」


そう言って、エリスとリーアが戦闘態勢の完全武装で威圧をする。

おいおい、ミヤビ女王たちは完全に固まっているぞ。

と、思っていたが……。


「……確かに、おいそれと教えられる内容ではないのは、状況を見ればわかる。しかし、今更見なかったふりをして過ごすことはできぬ。もとより、トウヤと共に命がけの戦いは幾度も越えてきた。この程度でひるむと思うたか、小娘ども。……甘く見るな。お主らがいかに強かろうと、この首やすやすと取れると思うな」


そう言い返すミヤビ女王も、先ほどの困惑は消え、やる気の瞳になっていた。

まあ、世界に喧嘩を売ってきたんだ。

調子を取り戻せばこんなもんだよな。


「……いいでしょう。さすがは、夫、ユキさんと同じ日本人を夫に迎えた人ですね。では、お話いたしましょう。いったい何が起こっているかを」

「長くなるけど我慢してねー」


そうして、エリスとリーアが俺の代わりに説明をすることになるのだが、これはエリスとリーアが気を利かせてくれたってやつだよな。

でも、話を黙って横で聞いているうちに思った。

これ、俺が単に横で聞いているのって、つらくね?

既に時間は0時を迎えようとしている。

普通ならベッドで運動している最中か、爆睡かの状態であり、今はここ最近の勤務で疲れているので、後者なので、スゲー眠い。


「……とうことがありまして」

「そうなんだよー。だからユキさんは……」

「そんなことが……」

「……なのよー」

「……わ」

「……ですね」


周りで喋っている話の内容がさらに眠気を誘う。

あれだ、昼食の終わった午後の授業だ。

淡々と話しているわけではないだろうが、俺にとっては過去の話をされても、刺激が少なすぎる。

しかし、寝るわけにもいかない。女王の前だ。

しかも、ウィード側の男性は俺だけで、ファイデたちは出て行ってしまっている。

しまったな。奴らがいれば多少は気を紛らわせることができたんだが……。

いかん。これは寝落ちする。

意地を張らずに、明日にしようと提案するか。

寝落ちしたほうが失礼だしな。


「話し込んでいるところすいませんが、今日はずいぶん時間が遅いです。この話は明日改めてということでどうでしょうか? 急用の案件でもないですし、今話し込んでも、日中寝ることになります。正直に言って、私も説明するのが辛い」


俺は包み隠さずそう話した。


「むう? おお、そうか、そういえば、もうこんな時間か。普通であれば、すでに寝ている時間じゃが、この明かりはいかんな。つい時間を忘れてしまう。ある程度あらましは聞いたし、詳しいことはユキ殿の言う通り改めて聞く方がいいのう。予想以上に、大事になっておるようじゃし」


意外にも、ミヤビ女王はすぐに俺の言葉に賛同してくれた。

なんでだろうと思っていると……。


「すぅー」

「起きなさいって」

「いえ、無理でしょう。風呂上りでまずは一杯飲んでましたから。もうしわけないですが、今日はここまでということで……」

「……先ほどあったという、リリーシュ様とファイデ様の喧嘩の話は聞いた。そのあとすぐここではユキ殿の胃もきついじゃろう。妾もさすがにこの状況で説明を続けろというつもりはない」


あー、そういうことですか。

お前が先に寝るか。

さっきまで普通に話してたじゃなねーかよ……。

いや、落ち着け。落ち着くんだ。

イライラしても仕方がない。

リリーシュのおかげで、休めるようになったと思うべきだ。


「……すいません。うちの司祭が……」

「……随分苦労しておるようじゃな。そしてさらにルナ様の相手まであるとは、妾には想像できん」


ルナのことまでどうやら話しているようだ。


「今日は夜が遅くなっていますので、明日はお昼ごろに宿の方にお迎えに上がります」

「うむ。配慮していただいてありがたい」



そんな感じで、何とか深夜の残業は1時ぐらいまでに終わり、ミヤビ女王たちを宿へ送り届けて、家に戻ってきたときには2時近くになっていた。

流石に、この時間から嫁さんとイチャイチャする元気もないので、エリスとリーアには悪いが、抱き枕になってもらうだけで我慢してもらった。

まあ、エリスもリーアも疲れていたのかすぐに2人もベッドに入るなり寝てしまったのだが……。


「眠い」

「……眠いですね」

「ふぁ、そうですねー」


で、こういう時によくあるのは、目をつぶって開けたら朝でしたというやつ。

寝たはずなのに、寝た気がしない。すごく眠いというやつだ。


「さて、そうなれば私の出番ですねー」

「ええ。リーアの代わりにしっかりユキの護衛を務めて見せましょう」

「よろしく。ラッツ」

「よろしくねー。ジェシカー。私たちはまだ寝る」

「はいはい。おやすみなさいー。私は昨日、先に帰してもらいましたからねー」

「私も昨日はオフでしたから、体調は万全です」


あー、そうそう。ラッツとナールジアさんには話が長引きそうなので、帰宅してもらった。

まあ、元々、ナールジアさんはスーパー銭湯のトラブル立ち合いのためについてきてもらったようなものだしな。

ラッツは、状況はそこまで差し迫っていなかったので、家で待機しているみんなに事情説明と休むために戻ていったわけだ。

こうして、我が家は、代わる代わる休みをとって負荷がかからないようにしているのだが……。


「あれ?」


とあることに気が付く。

今回の場合、俺は休めていないのでは?


「俺の代わりは?」

「申し訳ないですが、流石に、ユキさんの代わりはいないです……」

「いや、まあそうだが、昨日の説明どこまでしたとか、覚えてない」


すごく眠気と戦っていたから。


「あ、それならラッツたちに伝えていますから大丈夫ですよ」

「それに合わせて、資料も用意していますから、大丈夫ですよー」

「そうか……」

「まあ、ユキ。面会の時間まではまだ時間がありますし、朝ご飯を食べたら、時間までもう少し寝てはどうでしょう」

「ああ、そうさせてもらう。さすがに、まだきつい」


よかった。俺にこのまま働けよという嫁さんはいなかった。


「ですけど、状況からして、ルナさんを呼ばないといけないんですよねー」

「……彼女が私たちのお願いで動いてくれればいいんですが、逃げられると面倒ですね」

「ちくしょー!! 朝飯食べたら、駄目神確保するぞ!!」


眠る時間は、やはり駄目神に削られるようだ。

女神って単語はそろそろ疫病神と同義語にしろよ。

くそー。眠い!!


そして、朝日が目に染みる。




ユキにとってのラスボスが待ち構える。

さて、この辛い仕事をどう切り抜けるのか!!

ちなみに、セラリアはスタシア殿下と謁見のち、妹会議。

そして、ユキにはイフ大陸は聖剣、聖剣使いのお披露目会が目前の予定として待っております。


ファイト!! 一個ずつ終わらせるしかないのだ。

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