第713堀:おてがみどうしよう?
おてがみどうしよう?
Side:ユキ
ついにこの時がやってきてしまった。
いや、まだ一番危険な時じゃないけどな。
それでも緊張してしまう内容だ。
「いっそ、この手に持っているモノを燃やせたらな」
「やめなさい。それこそ、獣神の国が文句言ってくるわよ」
「わかってる。冗談だ」
俺はそう言って、手紙をひらひらさせる。
「ちょっと、その手紙は年代物なんでしょう? そんなに雑に扱っていいの?」
「この程度で破損するなら、その前に塵になっているさ。日本の和紙とかは1000年前でも残っているらしいから、この手紙に使われた紙もそう言うタイプなんだろう」
リテアの建国は500年前以上だと聞いているし、リテアが存命の間の手紙と考えると、大体450年ほど前の手紙なんだよな。
それが、見た目ちょっとボロくなってはいるが、手で持てるレベルで存在しているから、丈夫な紙を使っているんだろう。
「それだけ紙に気を使って残した手紙なんだから、大事に扱いなさい」
「この程度で崩れたら、それはそれでごまかしがきくかなーと思ったが無理だったか」
「……あなたにしては、随分、アレな対応ね。気持ちは分からなくないけど、一応故人の手紙なんだし、尊重しなさいよ」
「ただの手紙なら、やぶさかじゃないんだが……。これは地雷の可能性もあるからな」
「だから、その前に知り合いたちに相談するんでしょ」
セラリアの言う通り、これからこの手紙をどう扱うか、どう渡すかの会議が開催される。
会議参加のメンバーは主に知り合いの神たちと来たもんだから、この会議の重要性が伺える。
いや、重要ではあるが、くだらないというかなんというか……、離婚した元夫婦の扱は困るよなー。
と、思っていると、会議メンバーが入って来た。
「来たぞ。ノゴーシュと一緒だ。迎えに来てくれてな」
「ノーブルは仕事が忙しいからな、迎えに行ってきた。この話が終わったら一杯ひっかけていく予定だ」
「そのぐらいの贅沢はあっていいだろうとな。話が話だからな」
「文句はない。会議で話が付けば一杯ひっかけて帰ってくれ」
面倒な会議に参加してくたんだ。
それぐらいで目くじらを立てたりしない。
「しかし、意外と、ノーブルとノゴーシュは打ち解けているな」
「まあ、似たような信仰でもあるからな。ノゴーシュ自身も気持ちいい男だ」
「だな。軍神ノーブル。その軍略には恐れ入るという感じだ。機会があれば、一緒に戦場に立ってみたいとも話していてな」
「ま、そういうことなら、出張先で戦闘でもあれば、まかせるか?」
「「いいのか?」」
「ウィードに協力しているというか、この大陸間交流参加国としての防衛連合みたいな感じになるから、いけるだろう。まあ、その時は自国の戦力を用意してもらわないといけないが。被害を出したくないなら、ウィードだけで排除だな」
「命のやり取りこそ、軍人にとって実戦が一番の経験だからな。かまわない」
「だな。我が兵を鍛えるためにも当然のことだ。それに我が剣の国の力を見せるいい機会だ」
ま、そうだよな。
武力を売りとしている国にとっては、大陸間交流で戦争が少なくなり、窮屈しているのだから、こういう発散の場所は欲しいよな。
「大陸間交流軍と仮につけて、その組織の参加を各国から募ってみるのもいいか?」
「……ふむ。大陸間交流を守るための軍はいるが、一纏めにすると、誰を代表にするかでもめるな」
「そうだな。大陸間交流を行っている国々の中でのトップが決まる話になるからな」
「あー、そうか。それなら、問題が起こった時に、希望者を募って出撃してもらうって感じになるか」
「それがいいな。即応性はなくなるが……」
「そこは、即応できるように希望の軍は常時出撃できるように待機しておくように通達しておけばいいのではないか?」
「ノゴーシュの案がいいかもな。当番制にでも……」
とそんな話をしていると……。
「また悪だくみですか、ノーブル」
「ノゴーシュ、考えなしの行動はやめなさいよ」
そう言って、女神たちがご到着した。
こっちも仲良くヒフィー、ノノア一緒に到着だ。
「ヒフィー、別に悪だくみではない。普通に大陸間交流軍に関しての話をしていたのだ」
「考えなしとは心外だ、ノノア。こうしてちゃんと軍神ノーブル、そしてユキと話をまとめていたのだ」
「ま、雑談だ。そこはいいとして、さっそく話でもするか」
俺はそう言って、さっそく会議を始める。
「さあ、話を、といいたいが……4人に聞きたい。リリーシュとファイデの様子はどうだ? 今回の件はその2人に関することだが、機嫌が悪いなら時期じゃないからな。物が物だけに、先に言うのも考え物だ」
一番の問題はそこだ、いくら手紙があるとはいえ、2人が機嫌が悪ければ、ただの紙切れとなってしまう。
怒らせるのが目的じゃないからな。
この4人にもらった手紙のことは言ってもいいが、迂闊に喋れば、俺が手紙を渡すのを渋っているなどと思われればマイナスだからな。
「ふむ。ファイデの方は特にいつもの通りだな」
「ああ、とれたての作物を持ってきてくれるぞ」
「リリーシュもいつもの通りですね」
「相変わらずほわほわして、お茶をしてたわ。ああ、ハイレンが加わって、その指導に楽しそうよね」
「私たちとは違い、彼女は、ウィードの司祭なだけですからね。まあ、それでも忙しいですが、私たちほどではありません」
ふむ。どうやら、話を聞く限りは特に問題はなさそうだが……。
「セラリアどう思う?」
「いいんじゃないかしら。これで、破綻しても私たちや大陸間交流に影響はなさそうよ」
セラリアは話してもいいと思うか。
俺も同意だな。
というか、この爆弾をいつまでも抱えていたくはないからな。
「破綻? 一体なにを手に入れた?」
「やたらと大げさだな」
「とりあえず、見せてもらわないことには」
「わからないわね」
そして、4人とも興味津々なので、手紙を取り出して、中央に置いた。
すると、当然全員の視線を集める。
「手紙か? 一体だれからだ?」
4人を代表してノーブルが聞いてくる。
俺は躊躇うことなく、その手紙の送り主を告げる。
「リテアからだ」
「「「は?」」」
まあ、こういうのはまず理解が及ばないよな。
「リテア聖国の始祖、リリーシュとファイデの娘。リテア本人からの手紙だ。獣神トラがリテアと懇意だったのは知っているな? それで訪問したさい、俺たちからリリーシュとファイデの香りを嗅ぎ取って、この手紙を渡してほしいと預けられた」
「「「……」」」
しっかり説明すると、今度はみんな沈黙する。
「ということで、この手紙を渡すか否か。そして、誰が渡すかを決めないといけない。もちろん、友人として仲がいい君たちが快く引き受けてくれるとは思うが、大陸間交流のこともあるから、なるべく穏便に進めたくて、この会議を設けたわけだ」
そんな風に、4人の神様に全部丸投げするぞと俺は言ってのけた。
まあ、本人たちの希望なんだし、文句は言わないだろう。特にノゴーシュとノノアなんだが。
「……中身は確認したのか?」
そうようやく口を開いたのは、ノゴーシュだ。
「いや、故人の手紙を暴くような真似はしていない」
「それは、当然なのだけれど、中身は知っておきたいわね……」
俺の回答にそう返事を返すのはノノア。
「うーん。リリーシュとファイデの関係の改善になるのならいいですが、更なる亀裂を入れる内容なら困りますね……」
「ヒフィーの言う通りだな。だからといって、手紙を覗くか? それがばれたら、2人の仲だけでなく、私たちとの関係も気まずくならないか?」
そう言ってウンウン悩む4人の神様。
まあ、そうだよな。
自分の立場が上ならば、勝手に手紙をみて検閲とかなんとか言えばいいだけだが、相手が対等な立場なら無理だ。信用問題にかかわる。
「そういうわけで、俺も覗くに覗けなかったわけだ。覗くのなら、この場にいる全員の責任とする」
「まあ、そうよねー」
セラリアも難しい顔をして同意する。
ここで誰かに責任を押し付けてもそれはそれで問題だからな。
「ということで、第一の選択肢だ。まず、この手紙を渡すか否か。渡した方がいいと思う人は挙手」
俺がそう言うと、4人とも手を上げる。
「リリーシュの娘の手紙を渡さないわけにはいかんだろう」
「そうね」
「概ね同意だが、内容が心配だな」
「そこがネックですね……」
まあ、そこだよなー。
そう思っていると、あることを思いついた。
そうか、これを2人の仲の改善につなげようとするから問題なのか。
「いっそ、これを仲直りのきっかけに使用するのはあきらめて、素直に手紙を2人に届けるっていうのはどうだ? 2人で仲良く見ろという話ではなく、手紙を預かったとして、1人1人に届ける」
娘からの手紙を1人で見れば、特に何も問題ないだろう。
それで、相手に八つ当たりするとは思えん。
「……うーん。手紙内容で2人の仲が悪くなることはないかしら?」
「ノノア。それは心配し過ぎでは? 娘さんからの手紙で、わざわざ、手紙の相手と関係ない恨み言を残すとは思いません」
「まあ、そうだな……。ヒフィーの言う通りだと思う」
「そこは私も同意だな。よほど恨みが無い限りはないだろう。しかも父親、母親に残した手紙だ。普通に考えるなら、日頃のお礼などだろうな」
ノーブルの言うように、親への晩年の手紙なんて、日頃のお礼といった、うるっとくる内容だろう。
普通なら、この手紙は天国の両親へとなるが、リテアの場合は、両親が健在だったからな。
そして、元々この手紙はリテアが仲違いをした両親を心配して、トラに託していたものだ。
内容はそこまで心配することはないだろう。
「なら、ユキの言うように、個人個人に渡した方がいいかもね」
「ですね。それが良いと思います」
「そこで、私たちがどうだっと聞くべきか」
「そうだな。それが、一番穏便だな。手紙が悪い内容であってもフォローに回れるし、嬉しい内容ならそのまま祝えるし、2人を引き合わせてそのまま仲直りもできるかもしれん」
企むより、素直に動いた方が上手く行くって奴なのかもしれない。
「大げさに考えすぎたのかもな」
「そうね。まあ、実際誰がこの手紙を渡すかっていうのは、色々悩みどころだとは思うけど」
セラリアがそう言うと、和やかだった会議室の空気が再びビシッと固まる。
しかし、ここで話がまとまっているのに空気を悪くしてもアレなので……。
「ここは手紙を受け取った俺が渡す。その方が、遅れた理由を話すとき、仕事が忙しかったからで言い訳できるからな。あえて、手紙を渡す時は、ここのメンバーといるときに渡そう。そうすれば、手紙を読んだときの反応もうかがえるだろう」
俺がそう提案すると、全員が頷く。
タイミングは、リリーシュ、ファイデと一緒にいる時に連絡を貰って、俺が渡しにいくという手筈になった。
これで、問題は解決したかに思えたが……。
『大将。緊急連絡っす』
「どうした、スティーブ?」
『ウィードの警戒網に妙な人が引っかかったっす』
「警戒網って言うと、非正規ルートか?」
『いや、普通に正面から正規手続きっす。鑑定で確認をしてみると、名前を偽ってはいないんすけど、身分がちょっと特殊で、一度連絡をと部下からきたっす』
「偽名や身分を隠してくる人なんてごまんといるだろうに。ロシュールの親父や、ガルツの親父もそうだろう?」
何をいまさらと思ったのだが、次の言葉でその思いはひっくり返った。
『いや、それが、ミヤビっていう名前で、種族がハイエルフ、そして女王っていう……』
「すぐにいく!!」
手紙の当事者とはいわないが、関係者来たよ!?
なんとかごまかさなくては!!
素直な気持ちで、邪な事は考えず渡すのが一番ということになりました。
まあ、それがいいよね。
そして、ちょっとした報告。
次回と次々回は投稿できないかもしれません。
理由は出張中だからです。
まあ、最近ホテルでネットがつながらないっていうのもないですけど。
自分が疲れて執筆できるかもわかりませんので、その時はご容赦くださいませ。




