落とし穴118堀:ここはどこ?
ここはどこ?
Side:エノラ
今私たちは、ルナ様に頼まれて娯楽施設になっているはずの廃校に来ていたのだが、思いもよらぬ、不可思議なトラブルにより一旦出て報告しようということになったのだが……。
「あ、開かない!? どうなってるのよ!?」
玄関の扉が開かずに出られないでいた。
カグラが演技しているように見えないし、あの扉は押せば動くタイプなのは入ってきたときに確認しているから、あそこまで体当たりをして開かないのはまずありえないわね。
「カグラ、落ち着いて。鍵とかかかってない?」
「鍵?」
「あ、これだよ。カグラ」
「ミコス先輩、でもこれって開いてません?」
「とにかく回してみましょう」
そう言ってカグラが鍵のつまみを回してみるが……。
カチッ。
「だめ。これ既に鍵が開いてる」
「とりあえず、押してみよう」
「んー!! だめです。開かないです」
それでも開かないようで、何度かつまみを回しては扉を開けようとしてみるが、扉はびくとも動かず、最終的には扉はガラスでできているので、壊そうと近場の花瓶などを投げつけてみたが、ガラスのはずの扉は壊れずただ時間だけが過ぎた。
どうしようかと思ったとき、あることを思い出した。
「あ、コールで連絡できるじゃない」
「「「あ」」」
コールを使えば連絡できるのに忘れているなんて、随分、私を含めて、みんな慌てていたようだ。
「全員で違う人に連絡してみましょう。カグラはユキ殿、ミコスはリーアさん、私はルナ様、ソロはエオイドね」
私の提案にうなずいて、すぐに連絡を取ろうとしたが……。
『ザッー……』
という不快な音だけが響くばかりだ。
私だけかと思ったが、どうやらカグラたちも同じらしく、そこでさらにあることを思い出した。
魔力やスキルは封じられている区画だった。
最初から連絡とか無理じゃないですか、ルナ様!! と思ったが口に出すのはさすがにまずいので、とりあえず状況を整理して自分を落ち着かせる。
「……ここ魔力やスキルが使えなくなっているから、無理やり出るのは無理そうね」
私はそう口にだすことで、自分の状況をはっきりと認識させる。
「じゃあ、どうするの?」
「……ルナ様のルールに従って裏口から出るしかないわ」
「ええっ!? でも、何かいますよ。絶対!!」
私の言葉にソロは過敏に反応するが、それ以外に出る方法はなさそうだ。
試しにガラスの分厚い扉じゃなくて、廊下の窓ガラスにモノを投げてみたが全く割れなかったのだ。つまり外に出るには、正規ルートじゃないとだめだということだろう。
「ソロ、これしか方法はないみたいだから、我慢していきましょう」
「ううっ……」
「大丈夫。私とミコスが守ってあげるから」
「そうそう。ほら、手を繋げば怖くないよ」
ミコスはそう言って、手を繋いで怯えるソロをなだめる。
これで、ソロもなんとか進めるわね。
「よし、何かいる可能性が高いから、無駄な寄り道はやめて最短で裏口をめざしましょう。いいわね?」
私がそう聞くと、皆頷く。
「じゃあ、さっそく行きましょう。まだ時間はお昼をちょっと過ぎたぐらいだけど、暗くなったら厄介よ。まあ、そこまで時間が経って音信不通なら、ルナ様やユキ殿が動いてくれそうだけど……。待つ?」
「いや。こんな埃ばかりの所で何時間も待ってられないわ」
「待つにしても、一度出られるかを調べてからがいいと思うな」
「……早く出られる方がいいです」
ということで、私たちは廃校の探索を再び続けることになったのだが……。
「とは言っても裏口ってどこにあるのかしら?」
「そういえば、玄関の掲示板のところに地図がなかったかしら?」
「あったあった」
「見てみましょう」
そういえば、そんなのがあった気がする。
私もいざとなったらどこからでも出られるからと思って気にしていなかった。
ということで、私たちは玄関の正面にある掲示板をまじまじと見てみると、確かに地図がある。
その前に、ルナ様の看板があるので、印象が薄れたんだろう……。
「えーっと、この地図だと、ちょうど反対側ね」
「まあ、裏口だしね」
「とはいえ、ここを職員室とは反対側の通路を行けば構造上近いけど、封鎖されているわね」
「防火シャッターが下りてますから、あれはさすがに……」
ソロの言う通り、やっかいなことに防火シャッターが下りていて、最短ルートは進めそうにない。
仕方なく私たちは、職員室側のルートを通って進むが……。
「なにこれ……」
カグラがそうつぶやく目の前には、防火シャッターが下りていた。
「これだと、向こう側にいけません。どうしましょう……」
ソロはそうつぶやく。
確かに、ここも封鎖されているとは思わなかった。
どうしたものかと思っていると、ミコスは普通に答える。
「いや、さっき通ったところに階段あったから、上から行けってことじゃない?」
「「「は?」」」
いや、一階にある出口に向かうのに、なぜ上にと思ったが……。
「そうか。別の階段を使って一階に降りればいいんだ」
「そうですね。二階の通路はふさがっていないかもしれません」
「……そうね、その通りだわ。角に階段があったわね。そっちから二階に行ってみましょう」
ミコスの言う通りなんだけど、私はなぜか誘導されているような気がしてならなかった。
だけど、それを言うのはソロの手前はばかられた。
まあ、行くしかないのだから、怖がらせて足を鈍らせることもないだろう。
そんなことを考えながら階段を上り、二階へと到着する。
「3階には行けないみたいね」
「防火シャッターが下りてるからね」
「よかったです。もしかして、3階まで迂回しないといけないとか思ってましたから」
「じゃ、さっさと行きましょう」
そう言って私を先頭に廊下にでると……。
ガラガラ……バタン。
と、ドアを閉める音がした。
「「「……」」」
音がしたのは私たちが進もうとしていた廊下の方から。
「どうする? ソロとエノラが見た変質者がいるかも……」
「ど、どうしましょう」
ソロを見る限り、震えているし、迂回したほうがいい気がするんだけど……。
「ここは、変質者を取り押さえる方がいいんじゃない? そして締め上げる。それで解決する。ミコスちゃん頭いい!!」
「……悪くないわね。そうね。あそこの部屋に逃げ込んだのは確かなんだし、何かいるのは確か。二つある扉を封鎖して、誰かが突入して変質者を取り押さえれば、出られない理由もわかるかもしれないわ。ここで避けても、相手が何か仕掛けてくる可能性がある。いや、この状況を作り出した相手なら何かを仕掛けて来て当然ね。私が捕まえられるかはともかく、一度相手のはっきりとした姿や、目的を確認するべきだと思うわ」
ソロには悪いけど、ミコスの言う通り、こっちから仕掛けた方が色々やりやすいわ。
運が良ければ脱出できる可能性もある。
「分かりました。ミコス先輩やエノラさんの言う通りだと思います」
私の説明に納得したのか、ソロの震えは止まっていて、脱出できるかもという希望から、元気を取り戻しているようだ。
「ソロも参加って決まったなら、さっそく行動しましょう。相手が逃げちゃ厄介よ」
「そうね。カグラの言う通りだわ。じゃ、私とミコスが取り押さえるから、2人は扉を外側から押さえてね」
「え? ミコスちゃんも取り押さえる側?」
「当然よ。2人掛かりの方が取り押さえやすいでしょう? それとも私1人か、ソロに任せる気?」
「カグラがいけば?」
「万が一、外側から襲撃があったら、ミコスが対処できるの? カグラは最近色ボケだけど、一応巫女よ?」
「誰が色ボケで一応よ!?」
「そう言えばそうだった」
「ミコスも!?」
「はいはい。騒がない。相手が逃げちゃでしょ?」
「うぐっ」
「で、ミコスは納得できた?」
「了解。仕方がないから、ミコスちゃんは頑張りますよ」
配置が決まれば、後は動くだけ。そして私たちは、いや、私はそこまでないけど、ユキ殿と一緒に、多くの戦場を駆け抜けた歴戦の戦士だ。
魔力やスキルが封じられ女子供だからと言って、そうそう遅れを取るわけがない。
覚悟や経験が違うのだ。
まあ、絶対とはいえないからこそ、ミコスと組んで取り押さえるんだけど。
「準備はいいわね?」
「はい」
私はこちら側の扉を閉めるために一緒にいるソロに確認をとると、力強く返事をする。
で、反対側の扉にいるカグラとミコスに視線を飛ばすと、頷いて返事をする。
よし、向こう側の扉にいるカグラたちに見えるように指を3本立てて、一本ずつ指を折っていき、最後の一本が折られると同時に教室らしき部屋のスライドドアを開けて一気に飛び込む!!
ソロは私たちが入ったのを確認してすぐに扉を閉めて、扉を封鎖する。
あとは、私たちが上手くやるかだ。
ミコスとカグラの方も同じように既に扉は閉じていて、準備は万端だ。
あとは、変質者を取り押さえればいいだけ!!
教室に入った時に、変質者は教室の真中で力なく肩と頭を落として佇んでいるのを確認している。
ルナ様とユキ殿の私有地に勝手に入り込んでいるのだから、警告をする必要もない。
問答無用に取り押さえる!!
どこかの衛兵のよう叫ぶこともなく、無言で私とミコスはその変質者にとびかかる。
相手は反応できていない、いける!!
そして、手が変質者に届い……。
「「え!? うひゃっ!?」」
た、ではなく、体を通り?突き抜けて、向こうにいたミコスと正面から衝突する。
ゴツン!?
「「!?!?」」
流石に、思わず正面から衝突すると、痛くて悶絶する。
頭と頭がごっつんこ。なんて、子供みたいなことをこの年になってやるとは思わなかった。
しかも、加減無しの衝突なのでなおさら痛い。
「いつつ……。って、なんで通り抜けたの!? もしかしてよけられた?」
私は頭の痛みをこらえつつも、慌てて立ち上がり、変質者を探すといまだ同じ場所から動いてなかった。
未だに顔を上げることもなく、髪を振り乱した状態なので顔色は伺えないが、やはり何か異常だ。
とりあえず、ミコスはまだ悶絶しているし、私1人で確保しなくちゃと思い、今度は手を掴もうとしたのだが……。
スカッ。
と、相手の手首をつかむことなく、文字通りすり抜けた。
そこにいるのに掴めない。
そこでやっと気が付いた。
私の前にいるのは……。
「あなた。人?」
そして、それがきっかけだった。
『うふふふ……』
そんな笑い声が教室中にこだまして、気が付けば、目の前の変質者が顔を上げていたのだが、その顔が……。
『ねえ。私の目しらない?』
私はいきなり顔面を掴まれて、間近で瞳のない黒い穴を見せられた。
「あ、あっ……」
声が出なかった。
体が動かなかった。
これは、やばい!!
今まで出会ってきたもののなによりも!! あの狂茸よりもはるかに!!
『ここに目があるのね?』
そう言って怪物は、私の瞳に向かって手を伸ばしてくる。
でも、体が動かない……。
そうか、ルナ様やユキ殿の拠点に侵入できるような変質者がただの変質者のわけがない。
下手をするとルナ様やユキ殿に匹敵する怪物である可能性を全く配慮していなかった。
「ちょ、ちょいさー!!」
が、そんなときにミコスが動いた。
変な気合の入れ方だが、全く動けない私よりはるかにましだ。
綺麗なハイキックが怪物の頭に迫るが、またもや手ごたえもなく通りすぎるだけだが……。
バッっと迫ったミコスのキックをよけるために私の体が反射的に動いた。
「ナイス、ミコス!!」
「ど、どんなもんよ!!」
つまり攻撃回避時には、実体化が解けるってことね。
ならやりようは……。
『うう? うううううう……』
『『『ううう……』』』
教室のいたるところから、同じ怪物が湧き出してきた。
「撤退!!」
「あったりまえ!!」
私たちは慌てて、教室から飛び出し……。
「どうしたの?」
「つかまえました……か」
『『『私の目しらない』』』
「「きゅう……」」
ちっ、二人は私たちの後ろを追ってきたモノを見てあっさり気絶。
だけど、見捨てるわけにはいかない。
「担いでいくわよ!!」
「りょーかい!!」
こうして、私たちは理解を超える怪物のいる校舎を逃げ回ることになった。
「……いったい、ここは何なの? いったいここはどこ?」
私が走りながら、そんなことを呟くと……。
『……こ、こは、マヨヒガ。うひっ、うひひ……。みつ、けた』
誰か、私たちを……助けて。
『マヨヒガ』
検索をしちゃだめだぞ?
次回、最初で説明して文字数稼ぐんだから、我慢だ!!
いや、文字数稼ぐのは冗談。説明をしないとだれもわからないしね。
ちゃんとストーリー上必要にするから。




