第655堀:神の審判 被告狂王:君の名は
神の審判 被告狂王:君の名は
Side:ユキ
「まったく!! へんたい!! へんたーい!!」
あー、うるせえ。
自分が裸でぴょんぴょんしてたくせに、俺だけに文句を言ってきやがる。
「なあ。タイキ君、ルース、タイゾウさん、3人ともハイレンの裸見たよな?」
面倒なので、3人を巻き込んで、味方になってもらおうと思ったのだが。
「やめてくださいよ。俺たちはなにも見てませんよ」
「その通りです。女神様の裸体を見るなどとそのような罰当たりなことはしていませんとも」
「婦女子の裸体を見るのは、ヒフィーさんとの誓いに反するので、見ていないな」
ちっ、駄目か。
タイキ君やルースはともかく、タイゾウさんはこれ以上引っ張るとヒフィーとの関係にひびが入りそうなので、この辺りでやめておいた方がいいか。
しかし、そうなると、俺をへんたいと呼ばわりしている、ポンコツをどうしたものかと思っていると、流石に見かねた、ソウタさんとエノルさんが拳骨をおとしていた。
「お前が見せたんだろうが、もうちょっと感謝しないか!!」
「いったーい!! なんで、感謝するのよ!! 裸を見られて喜ぶ変態じゃないわよ私!!」
「そこじゃないわい。お前をルナ様にお会いする機会を与えてくれただろうが、それに復活までだ」
「流石に、これでお前が罰せられても私たちは庇えんぞ」
「えー!? ルナ様はそんなことしませんよね!?」
「あ、うん。別に面白いからいいんじゃない?」
あんの駄目神が……。
「おいこら、ポンコツを煽ってないで、メインはあっちだからな、あっち」
俺はのんきに話をしているルナにそういって、金庫に入れられたまま放置されているアクエノキを指さす。
「えー、もうさ。勝手に処分しちゃわない? ここで新人女神がでてきたんだからさ、ヒフィーたちと一緒に一杯やりたい気分なんだけど。ほら、スティーブたち、金庫の中にTNTかプラスティック爆弾でもぶち込んで、爆破しましょう。ね?」
「「「えー」」」
難色を示すスティーブたち。
「当然だ、精神体で生きているような奴を何の安全策もなく吹き飛ばせるか。カグラみたいにとりつかれると面倒極まりないからな」
「あー、そっちの心配があったか。私的に大丈夫っていってもダメよね?」
「ダメだ。爆破処理するにしても、ルナが一から十まで指示しろ。責任ぐらいとれ」
「はぁー、別に私が悪いってわけじゃないでしょー。勝手に反発した連中なんだし……。まあ、しかたないか。ハイレンやソウタ、エノルもしっかり結果を見届けないことには心配だろうからね」
ようやく、渋々といった感じで、金庫の方へと歩き出すルナ。
流石に、ハイレンたちも金庫の中の狂王の処理に関してはルナに任せたいようで、俺との話し合いに口をはさむことはなかった。
「まったく、こいつらは私の足を引っ張るのが大好きよねー。って、金庫の番号って何番? というか、この丸いのを回すタイプって扱ったことないんだけど、どうするの?」
「スティーブ」
「へいへい」
そのぐらい神様パワーでどうにかしろよと言いたいが、やる気は最低限だが出しているルナに下手なことを言えば放置されかねないので、スティーブに開錠をさせて、中から壊れたコアを取り出す。
「ほぉー。本当に精神体が入ってるとはね。また生き汚いことで」
「で、それからどうするんだ? 予定通り弁明は聞くのか?」
「そうねー。面倒ではあるけど、聞かないわけにはいかないでしょうね……。あー、だるい」
心底嫌そうに、ルナは宝玉に向けて声を掛ける。
「さて、今から一時的に顕現、復活させるけど、大人しくしておきなさいよ」
そういって、一瞬の閃光の後、王様っぽい中年のおっさんが立っていた。
こいつがアクエノキか。
「ほう。我が体を復活させるとはほめて遣わすぞ、女」
「「「……」」」
体の様子を見てから、こちらというか、ルナへの第一声がそれであった。
個人的なこのアクエノキへの印象は、駄目だこいつ。である。
流石にルナも面白くなかったのか、にっこり笑いながら、すたすたとアクエノキの前に立ち。
「なんだ? 褒美が欲しいのであれば、あとにせよ。まずはそこにいる偽女神を……」
大きく右足を後ろに振って、上体を前に倒し、振り子のように、足を振りぬく。
それは、綺麗なサッカーシュートと言っていいだろう。
キャプ○ン翼でいうなら、必殺シュートと言える。
それが、アクエノキの股間のゴールデンボールに迷いなくヒットする。
余りの衝撃のためか、それとも激痛の為か、アクエノキは1メートルほど上に飛び上がり……。
「お、お、お……」
口をパクパクさせながら、何かを言いたげだが、言葉にならず、悶絶しながら地面に倒れ伏す。
そして、女性陣はともかく、スティーブたちを含めて俺たち男性陣はとっさに玉を押さえる。
いくら敵とはいえ、あれは痛い。
剣で斬られるとか、そういう痛いではない。男が本能的に嫌がる痛みが今アクエノキを襲っている。
自業自得とはいえ、俺たちも顔をしかめる会心の一撃である。
「さーて、上級神である私にその言い草、そして昔の反発も加えて、よくもまあ、そんなふてぶてしい態度でいられるわね」
「……ま、さか。お前は……」
そういわれて、ようやくルナの正体に気が付いたようだが、未だに偉そうな態度は変わらず、未だ地面に伏している頭をルナから踏まれる。
「弁明は何かあるかしら? まともな言い訳しなさいよ? なぜ私に反発したの? そして何を望んで、いなくなった中級神に未だに縋るわけ?」
「そ、れは……」
「それは?」
「……それはこちらのセリフだ。今まで放置に近かったくせに、なぜ今頃本人が乗り込んでくる」
「はぁ? どういうことよ? 基本的に神とかいう管理者なんてあってないようなものでノータッチでしょうに」
「それは、お前だけのことだ。中級神様は私たちを大事にしてくれた。そのお方の復活を試みて何が悪い」
あー、つまり基本的に指示だけ与えて放置なルナより、親身になって優遇してくれる中級神の方がよかったという話か?
「お前は、勝手に方針を変えて、勝手にこの世界の神々を処断して、何様のつもりだ」
「いや、あんたの上役である中級神が無茶したから、人に討たれたんでしょうに。そして、そのしりぬぐいだけじゃなく、魔力枯渇の問題もあるし、このままじゃ、あんたたち神も消滅しかないって言うのは教えたわよね? そして何様って言われても、あんたちよりお偉いの神様ってやつだけど?」
「……お前のいうことは信じられない。中級神様はそんなこと一度も」
「いや、ただその中級神がバカだっただけでしょう? 変に人の営みに口を出すから討たれた。当然じゃない」
……うーん。話を聞く限り、支社の連中が本社の連中の指示には従えないって駄々こねているようにしか見えないわ。
まあ、社会において独立というのは、そういう対立からくるものだろうが……。
「せめて、反発するなら、神からもらった権能を返上して自分の力でしなさいな。私たちが与えた力で暴れて、ただあれもこれもと要求するのは子供の我儘と同じよ? 私の指示に従えないのなら、力を手放せ。昔もそう言ったわよね? やる気があるなら、力を手放したあと独力で向かってこいってね」
「……神の力がなければ、反抗できるわけがない」
「いやいや、あんたたちの上役である中級神を倒したのはただの人よね? なに寝言言ってるの? あんたたちは神の力がなければ何もできないバカになっているわけ?」
「……」
「これだから、ポンポン現人神を作るのは嫌なのよ。思考停止のバカが多いんだから。あ、私に従った連中はましだけど、それでも、やっぱり事態解決には向かわないし、余所から人を引っ張ってくる羽目になったわけよ。それが、私がここにいる理由。わかる?」
そういって、ルナは俺に視線をむけ、アクエノキもこちらを見る。
「わ、私が倒したダンジョンマスターの量産品か。しかし、あいつも同じではないか、お前の力に頼っているだけではないか……」
「いや、当然でしょう。私の指示に従っているんだから。優遇されるわよ。というか、アレは神であろうが何であろうが、遠慮しないわよ。もとより信仰厚い世界から来たわけじゃないからね」
「バカな。信仰厚くもない人に力を与えたというのか……。そんなのは神への冒涜で……」
「冒涜じゃないわよ。しっかり働いてくれているし、能力としては下の下。神としての特殊能力もない。ただダンジョンを作る力と、物資を生産する力があるだけ。あんたがよく知っているでしょう? しかも、成果をださないと何も呼び出せないっていうオマケつき。あんたが、500年前にコアを奪って活用したときにそんなに万能だったかしら?」
「……」
「理解したかしら? 大事なのは頭の中身。何事も使いよう。神の力もあってコアもあって敗れたあんたは、そもそも神失格ってことになるわねー」
うわー、確かに状況を聞けばいいわけもくそもないよな。
ダンジョンコアを持っていて負けたという、超間抜けだから。
「しまいには、こういう場にまで来てるからね。処分をわざわざ私にさせるってことの方が冒涜でしょうに。休み返しなさいよねー。まあ、面白い子と会えたからそこらへんは良しとしましょう」
面白いというのは、あのポンコツの事だろう。
しかし、なんか嫌な予感がするから、ルナとハイレンが遊ぶときは監視をつけておくか。
いや、正直に言って、トラブルしか起こさない気がする。
「お前は、自分を否定した偽女神を支持するというのか!?」
「あの子は自分の意思でやってきたからね。まあこれも私の嗜好の範囲といえばそうなんだけど、あんたみたいに、中級神についた理由が甘い蜜を吸いたいとかあからさまなバカ発言もないし。ずっと人として頑張ってきて、最後の最後にコアを手にして願ったことは、あの地の復興と平和。あんたと比べるべくもないと思うけど?」
確かに、ポンコツと言ってはいたが、コアを手に入れて願ったことは、まあ、褒められてもいいことではある。
消滅させられた魔物たちのことは、今の所無視して、だがな。
「そもそも、女神に偽も本物もないわよ。人が信じれば、崇めればそれで女神とか聖女は出来上がるんだからね。あんたみたいなスカポンタンが王様なんてやってられたのがいい証明でしょう? アホ共が従って担ぎ上げてくれたんでしょうに」
「わ、我が臣下をバカにすることは許さん!!」
「そういう思いやりはあるのに、それを周りの、その他大勢の人にと思えなかったのがあんたや、中級神が討たれた原因よねー」
「人や神が救える数には限度がある。それをわかっていただけだ!!」
「はぁー。思考停止もいいところね。あんたの国だけしか救えないなんてのは幻想よ?
野盗がはびこらない世界なんてありえないとか言いたいんでしょうけど、こいつのいた世界は、基本的に戦争は起きても内戦、野盗とかの無法者がいるのは辺境の土地あたりぐらいね。国の規模もあんたが治めていた国の数百倍は規模が違うわ」
「そんなことがあり得るわけが……」
「あり得るわよ。もともと、国だって多くの町や村が集まってできたもの。それは町や村の共存。つまり、人と人の共存。それなのに国と国同士が共存できないと思えるほうが不思議だわ。規模が大きいか小さいかのことだけ」
そう、ルナの理屈は正しい。
人はそうやって大きくなってきた。
いつか分かり合えるというのは夢幻と言われているが、それは違う、その夢幻を幾度も達成して俺たちの地球はいまも問題を抱えつつも、大きくなっているそれだけだ。
まあ、地球統一国家、地球連邦みたいな組織ができるのは利害関係から、まだまだ先だが、いずれできるだろう。
その間に人が滅びるかはわからないが、今までの歴史を考えればできても何も不思議じゃない。
これを否定するなら、いま存在している、いや今まで存在してきた国や町、村を否定しないといけない。共存なんてできないというんだからな。
「……」
そして、怒涛の正論にアクエノキは口を閉ざす。
「別にさ、私に反抗するのはいいのよ。ちゃんとまともな意思、信念の元に反抗するならね。ただ、自分たちを大事にしてくれる中級神の為とか言われてもねー。しかも、人々の反発を買って討たれた間抜けの為とか……。あんたたちは、再び討伐されるしかないわよと。せめて改善案を提示して中級神復活を願うならともかく、論外だわー」
「……私はどうなる?」
ようやく、アクエノキはどうあがいても助からないと自覚したのか、落ち着いた様子でルナに自分の未来を聞く。
「うーん。正直消滅っていうのが、処分としては妥当よね。私に逆らった挙句、その理由は子供の我儘レベルときたもの。でも、それだと生ぬるい気がするのよねー。あと、私のこの問答や手間かけた時間を返せと言いたいわ」
「そうはいっても、俺に預けるとか無しだぞ?」
とりあえず釘は刺しておく。
流石にこれの再教育とか勘弁願いたい。
今までで一番アホの神だ。
ノーブルとかノゴーシュ、ノノアとかまだマシと思えるほどにだ。
この3人は真剣に魔力枯渇の改善策を求めて国を運営していたが、アクエノキに至ってはとりあえず中級神というトラブルの元を復活させることしか考えていない阿呆だ。
こんなのはいらない、という思いを込めて言うと、流石にルナもわかっているようで……。
「そんなことしないわよ。こんなの迷惑でしかないからね。ま、力を奪って人としてどこかの地で頑張ってもらいましょうか。それで、また力を取り戻せるのなら、また向かってくると良いわ」
「おい。それだと敵を逃がすだけにならないか?」
害虫をバラまくのはやめてほしい。
「こいつに他の中級神派が集まるならいい撒き餌でしょう?」
「ああ、なるほどな」
そりゃ名案だ。
他の潜伏している中級神派の連中を探し出せるということか。
「……そんなことを言われて、私が簡単に他の連中と連絡を取ると思うのか? そもそも、既に連絡を絶って500余年だ。私を消滅させた方がいい。連絡は取れなくとも、必ずお前たちに復讐をする」
「その気概だけは褒めてあげましょう。じゃ、また人として生きてみなさいな」
そういって、ルナはアクエノキに掌を向け淡い光が発する。
「じゃあね。アクエノキ」
「え? いや、私はアクエノ……」
最後にアクエノキはなぜか困惑したような顔で去っていった。
「頑張れよ。アクエノキ」
嫌な奴だったけど、また人生をやり直すことになった奴にそれだけのことは言ってやれた。
あわよくば、俺の役に立ってくれというのは口に出さなかったが。
「えーと、ねえ。ソウタ。狂王の名前ってアクエノ『ス』じゃなかったっけ?」
「……そうだったはずだが、ルナ様がアクエノキと言っておられたのだから、あれが正しいのでは?」
「うーむ。なら、訂正しないといけんのう。大司教できるか?」
「まあ、古い文献ですから、これからの教育で、アクエノスではなくアクエノキだったと教えればいいのではないかと」
「……スタシアお姉様。あれは、ルナ様がまちが……」
「しっ。ソウタ様やエノル様、そして大司教様が賛同しているだから、わざわざ止める理由もないだろう」
「……なんというか、ルナ様にとってはアクエノス……ではなく、キもその程度だったということですね」
これにて、狂王は人となり、新大陸は平和に……。
皆さん知っている 感動アニメ映画「君の名は」
間違えようもないタイトルでしたな。
内容はどうやって名前を覚えてもらえるかという大河ストーリーでしたね!!
ま、ギャグという真剣な罰はこういうモノがいいでしょう。
色々な意味でもね。
最後に、「アクエノス」じゃなくて「アクエノキ」と間違えておぼえていた人。
怒らないから正直に申告するように。
いずれ再出演するときに「アクエノキ」であると決定打をあたえるから。




