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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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落とし穴108堀:年明けの戦争

年明けの戦争



Side:ユキ



『こちら、スティーブ……。もう、限界です。この戦線は支えられません。撤退許可を……』


そんな今にも死にそうな声が無線機越しに届けられる。

いや、厳密には無線機ではなくコールなのだが……。


「……撤退は許可できない。耐えろ。耐えるんだ」


俺は何もできない自分にくやしさを覚えつつもそう指示することしかできない。


『なんでなんすか!! なんでっ!! こ、このままじゃ、このままじゃ!!』


スティーブの必死な訴えが続くが……。


「ただの福袋確保で大げさなんだよ」

『……いや、その福袋確保で、わざわざおいらを駆り出している大将が言うセリフじゃないっすね』


そう、俺たちは本日1月2日の福袋確保の為に、只今の時刻4時30分、お店の前に並んでいるのだ。

このクソ寒い日になんでわざわざこんなクソ早い時間に並ぶ必要があるのかと、俺もスティーブも思っていたのだが……。


「厳密には俺じゃなくて、セラリアとか嫁さん一同だけどな。嫌なら帰っていいぞ。普通にスティーブ逃げ出したって言っておくから」

『庇うとかないっすかね?』

「ないな。俺もこの福袋確保作戦は毎年不本意なんだ。不幸に付き合え」

『うっわ。ぶっちゃけたっすね』

「どうせ、年明けで飲んでるだけだろう」

『だからと言って、こんな寒空の中、暗いうちからお店の前に並びませんって……。というか、おいらたちよりも先に並んでいるこの人たちは一体いつから並んでいるんすかね……』


どうやら、スティーブの所もすでに行列が出来ているらしく、俺たち4時出陣組は遅い部類だったらしい。

恐るべし、福袋商戦!!


「さあな。一応、1日のセラリアのラジオでの宣言で2日前に並んでいる連中は強制排除だから、0時以降というのは確かだ」

『0時っすか。人の欲というのが業が深いっすね。というか、中身もさっぱりなのに、なんでこんなに集まるっすかね?』

「宝くじと同じだろう。運試しって言う意味合いもあるんだろうさ。そして、一応値段以上の中身は入っているからな」

『はっ。在庫処分に利用されているだけっすよね』

「そういう側面もあるが、お互いにWIN=WIN。イーブンってことだからこうやって人が並んでいるんだろう」

『おいらたちはその犠牲者っすけどねー』

「ま、興味のない人にとっては、ただの時間がかかる買い物以外の何でもないよな」


そんな話をしていると、北風が吹いて、俺の体を直撃する。


ビュォォォ……。


『なんか、凄い風の音がしたっすけど、大丈夫っすか?』

「いや、大丈夫じゃない。すごく寒い。ダンジョンの管理者として常夏にしたい気分だ」

『気持ちはわからんでもないっすけど、大混乱するっすからやらないでくださいっすよ』

「やらん。冗談だ」

「うんうん。寒いからこそ、美味しいものもあるからね」


俺とスティーブの会話に急に入ってくる女性が一人。


『あれ? いや、当然すけど、今日の護衛はドレッサっすか?』

「おお、当たりだ。それにヴィリアな。しかし、声だけでよくわかったな」

『まあ、ドレッサがウィードにきた当初はうち、軍隊の宿舎で預かってましたし』

「ああ、そういえばそうだったな」

「そうね。あの時は、ウィードに私が亡命したような感じだったし、イフ大陸の件も秘密で、私の身分も身分だったからね。で、寒いって話なら、お汁粉か甘酒でも買ってくればいいんじゃない?」

『「列を離れたらそのまま戻ってこないような気がする」』

「……はぁ。わかったわよ。私が買いに行くから、ヴィリア、ユキをお願いね」

「ええ。任せてください。お兄様の守りは万全です」

「すまんな。ドレッサ」

「いいわよ。このぐらい。私もトイレ行きたかったし」

『あのー。おいらはどうしたらいいんでしょうか?』

「え? 我慢しろよ。ドレッサは俺のだぞ」


俺の為に温かいものを買いに行くんだぞ?

スティーブのことなど知ったことではない。


「ふぇっ!? い、行ってくるわ!! す、すぐに戻ってくるから!!」


ん? なんか変なこと言ったか?

いや、それよりも……。


「別にわざわざ買に行かなくても、アイテムボックスから取り出せばいいよな」

『……絶対にアイテムボックスから出して飲んでちゃだめっすよ。ドレッサ、この寒空の中、大将の為に買いに行ったんっすから』

「流石に、お兄様。スティーブさんのいう通り、それはいかがなものかと」

「いやいや。俺はどれだけ鬼なんだよ。スティーブの話だよスティーブの。温かい物のストックぐらいアイテムボックスにあるだろう?」

『ああ、そりゃありますけど。こういうのはドレッサみたいに、誰かがこう、ね?』

「お前は相手がいないのに無駄に理想と希望は高いよな」

『うっさいっすね。言うだけタダなんすよ……』


しかし、まあ気持ちもわからんでもないので……。


「お兄様?」

『ん? どうしたんすか? ゲームでもするっすか? でも、色違い探してて育ててないって……』

「あー、そっちじゃない。ちょっと他に連絡しないといけないの忘れてた」

『ああ。仕事っすか』

「いや。仕事というか、知り合いに連絡だな。年明けてから挨拶してなかったからな」

『あれ? 新年会呼んでなかった人がいるっすか?』

「そっちの話じゃない。と、連絡するからいったん切るぞ」

『ういっす。暇つぶしになったし、ありがとうございましたっす。開店まであと5時間弱かー……』


そんなことを言いながら、スティーブとの会話は終わり、俺は宣言通り、知り合いに連絡することにする。


「もしもし?」

『はい。もしもし、あけましておめでとうございます』

「おう。あけましておめでとう。でさ、ちょっとお願いがあってな」

『お願いですか?』

「そうそう。年明け早々深夜? 朝っぱらから悪いけど、動けるならちょっと頼まれてくれないか?」

『ええ。大丈夫ですけど。みんなとは、3日に集まる予定ですし、今日は家でのんびりですから構いませんよ』

「よかった。実は……」


俺はアルフィンにあることを頼んで、コールを切ると、ちょうどドレッサが戻ってきた。

両手には甘酒を抱えている。


「お待たせーってどうしたの?」

「お兄様は優しいんです」

「……まあ、優しいときは優しいけど。あの顔は何か企んでるときの……」

「おう。ドレッサ、ありがとう。さ、飲もう」


ドレッサが甘酒を買って戻ってきたので、さっそく飲んでいると、スティーブから再び連絡がくる。


「どうした?」

『どうしたじゃねーっすよ!? なんで、アルフィンがこっちに来てるっすか!?』

『え? スティーブが寒いから抱きしめてあげてって、ユキさんが言ってたよ?』

『ごらぁぁぁ!? おいらはただ温かい飲み物が欲しいって話を……』

『温かい飲み物なら買ってきたよ。こんな寒いところにいるんだもんね。ほら、甘いお汁粉。沢山あるよ』

『多いっす!? 多いっす!? お汁粉の缶は普通一つっす!! どう見ても、10はあるっすよ!?』

『寒いからたくさん飲んでね。はい』

『うっ!? 餡の香りが……』

「スティーブの寒さはそれで大丈夫だな。アルフィン任せた。あ、自分の福袋も買っていいからな」

『ありがとうございます。ここのお菓子セット食べて見たかったんでいい機会です』

『ちょっ!? たいしょーーー』


ブツッ。


「さて、スティーブも寒さの問題を解決できたことだし、俺たちもあと少し頑張ろう」

「はい」

「……なんというか、色々な意味でひどくて優しいわね。たちが悪いわ」

「あっはっは。そう褒めるな。じゃ、ドレッサの甘酒を飲もう」

「そうですね。いただきます」

「あ、うん。どうぞ」


寒空の中で飲む甘酒はやはり体の芯から温めてくれる。


「そういえば、今年も教会とか商店のほうで、お汁粉や甘酒の配布はやっていたんだっけか?」

「ええ。ルルアさんやラッツさんが話し合っていましたよ」

「だけど、無料ってことだし、教会前でやっているからね。人混みがすごいわよ。ユキたちも待ってたし、私はスーパーラッツのほうで買ってきたわ」

「その判断は間違ってない」


初詣の人混みに巻き込まれたら、そう簡単に脱出できるわけがないからな。

本来であれば、福袋を買うために並ぶのも遠慮願いたいが、ここは嫁さんたちの為と思えば仕方がない。


「あ、福袋で思い出したけど、ヴィリアやドレッサは欲しい福袋とかなかったのか? 俺の護衛なんてしないでそっちに行っても……」

「大丈夫です。お兄様の護衛の方が大事です」

「1人2袋まで買えるから、欲しいのは頼んでるわ。アスリンたちに」

「あ、そうですか」


こういう所は抜かりはないらしい。

身内の多い嫁さんたちはこういう戦術が取れるからすごいよな。

……なにがどうして、そこまで福袋にこだわるのだろうか?


「で、2人が欲しい福袋ってなんだ?」


ミリーやナールジアは酒、エリスやラッツは服、デリーユとリエルは武具となんだかんだで好みの福袋を狙っている。

というかさ、武器の福袋ってなんだよ。と思って聞いたら、毎年くじ引きやるんだと。

武具店と鍛冶区の連中が集まって、福袋用の武器を集めて、一括で福くじの商品として扱うそうだ。

運が作用するが、特にぶっ飛んだ武器を配るわけでもなく、こっちも在庫処分という感じなのに、なんでそんな武器を誰が買うんだと思ったが、結構多くの冒険者や商人も買い付けに来るそうだ。

理由としては、予備武器の確保や、新しい武器を試すのに一々悩むよりはというのが冒険者の意見で、複数手に入るからお得で。そうやっていらなかった武器を買い取ったりして商人の方は安く武器を仕入れられるのでメリットがある。ウィード産の武具はよそに持っていけば高く売れるらしい。


「私は服ですね」

「もちろん武具よ!! だって、ウィード鍛冶組合からの出品だからね」


どっちとも納得の回答だった。

ヴィリアはどんどん女性らしくなっていき、ドレッサは鍛錬に余念がない。

……ん? ドレッサの方は女性としてどうなんだろう?

ま、人の趣味に口出すのは野暮でしかないか。

別に、犯罪に走るようなことでもないから問題なし。


「そういうお兄様は何も福袋に興味がないのは知っていますが、欲しいと思う物はないのですか?」

「ヴィリアの言うとおりね。福袋に興味がないのは知っているけど、欲しい物ってなにかないの?」

「欲しいものなー」


そう聞かれて悩む。

大人になると、欲しい物は自分で手に入れるというのが基本になる。

まあ、給料がでるからその範囲で、生活に困らない程度に欲しい物を買うんだよな。

だから、これと言って欲しいものがないというのが正しいか?

これで家とか車とかいう高級すぎるものは福袋とは関係ないからな。

うーん……。ああ、そうだ。


「やっぱり、美味しい料理とか食材かな?」

「ああ、なるほど。お兄様らしいです」

「そうね。意外なようで、ユキらしい答えね。でも、やっぱりそういうのは見て判断するのが大事だし、福袋はないわよね」

「食材ですからね。それを福袋に入れるのは流石に……」

「そうよね。痛んだ食材とか入ってたら色々問題になりそうだし」

「まあな……」


いや、日本のどっかで食材の福袋的な話は聞いたことがあるような?

お菓子の福袋っていうのも含まれるんだろうか?

まあ、お菓子の福袋は普通に売ってるしな……。

まあ、深く考えないようにしよう。

と、そんな雑談をしているうちに、朝日が昇り、それを拝みつつ気が付けば……。


「大変お待たせいたしました。ただいまより、開店いたします!! 福袋はお1人2袋までとなっております。ご理解のほどよろしくお願いいたします」


ようやく開店か。

そういえば、この店の福袋ってなんの福袋なんだろう?


「では、ウィード宝飾福袋をお選びください!!」


宝飾品店かよ!!

通りで、女性が多いはずだ。

というか、一袋一体いくら……って、うっそー!?

たっか!? どこのセレブ向けの福袋だよ!?


俺の驚きをよそに、奥様やこの日の為に頑張ってきたお嬢さんたちが我先にと押し寄せて、それに押されて、俺は特に考えもせずに二つとって、会計に向かい、あまりの値段に驚くのであった。


「や、約、ゆ、ゆきちさま。20枚って、び、微妙だな、おい!?」






福袋を買いに行った人は多いと思いますが、並ぶ人はそこまでいるのかなー?

いや、まあ大型ショッピングモールとかすごかったよ。

あれ並ぶ気力はどこから来るのかわからぬ。


さて、今日で3が日も終わりですし、そろそろ切り替えていきましょう!!

あ、ちなみに、お正月落とし穴は次回で終わりです。

本編開始はあと少しお待ちくださいませ。


ではでは、よいお正月を。


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