落とし穴103堀:良い子にはプレゼントを 大人には愛を ボッチには……
良い子にはプレゼントを 大人には愛を ボッチには……
Side:タイキ
「タイキおじちゃん、アイリおばちゃん、ありがとーございます」
「「「ありがとうございます」」」
「「どういたしまして」」
サクラちゃんが妹たちを代表して、お礼を言うと、後ろの妹たちも唱和してお礼を言う。
さて、なんのお礼かというと、部屋の隅にある、木の下に置かれたプレゼントのお礼だ。
只今、地球の日本の日付は12月25日である。
つまり、クリスマス。イブではない。恋人たちの日という24日、歪められた日は終わり、25日、クリスマスがやってきたのだ。
何を言っているのか理解できないという人も多いだろう。
一般的には、24日、イブが恋人の日と言われているのは、25日が生誕祭であるからだ。
つまり、直接的にいうならば、子供が生まれるのが25日なら、前日はイチャイチャだろうという暴論である。
まあ、家族で過ごすというのが、慣例ではあるので、恋人は新たなる家族という意味では間違ってないのだろうが……。
と、そこはいいんだ。
一般的には、イブを経てクリスマスを迎えた25日は、サンタさんからのプレゼントがもらえるというわけだ。生誕祭だからな。
そういうわけで、俺たちはユキさんたちのクリスマスにお呼ばれして、ユキさんたちの子供たちに、プレゼントを渡したわけだ。
おじさんと呼ばれるのも、いまじゃなれた。アイリも最初はビクンって反応していたが、今ではそれもない。
子供たちからみれば、どう見ても俺たちはおじさんおばさんで間違いないからな。
それに、あんな嬉しそうな顔でお礼を言われて、ブスくれるひねくれモノがいたら、人格を疑うレベルだ。
「わー!! くまさんのぬいぐるみだー!!」
「リボンに名前がついてるよ。お姉ちゃん」
「すごーい!!」
「「「くまさん、くまさん!!」」」
子供たちが騒ぎでわかるように、俺たちが贈ったのは、くまのぬいぐるみだ。
シンプルとかけち臭いとか言われるかもしれないが、ユキさんの子供相手に贅を凝らしたプレゼントなんて意味ないからな。
ついでに子供だし。高級なモノとかよりもぬいぐるみの方が喜ばれるだろうと、ユキさんたちと相談した結果だが、予想は大当たりのようだ。
なぜ子供のプレゼントでわざわざ相談を? と最初はユキさんの提案に首を傾げたが、ユキさんたちの子供たちは、四方八方からプレゼントをもらう立場にあるので、被りを避けるためだと言われて納得した。
ユキさんと奥さん方で一個。俺とアイリからで一個。タイゾウさんとヒフィーさんから一個。ナールジアさんから、コメットさんから、ザーギスから、あとサクラのお爺さんであるロシュール王とかもう、盛り沢山。
特に、ロシュール王やガルツ王、リテアの聖女からは……。
『『『私たちより、地味なのにしろ』』』
と脅された。
一応、国としての面子があるというのが建前で、初孫に、尊敬していた先輩の子供に、自分たちが一番喜んでもらいたいとのこと。
ちなみに、俺を納得させたあとは、この3人でお互いさらに牽制しあっていた。
俺たちは、11月ごろにこの会議に参加してくまのぬいぐるみとすぐ決定したのだが、この3人はつい最近まで悩んでいたそうだ。
ロシュール王とガルツ王は終いに、土地をとか言い出して、セラリアさんと、シェーラさんに叩かれていた。ガルツ王の方はキルエさんの子供なのに、すげー可愛がっているから、不思議におもっていたが、キルエさんは妾の子でシェーラの姉にあたるのだそうだ。つまり、ガルツ王の子供で間違いないので、孫というのも間違いないのだ。
あ、リテアの聖女の方は、教会の名誉司祭にとかいって、ルルアさんに叩かれていた。
どのプレゼントもアホだよな。ああいう大人にはならないと誓った。
で、その孫馬鹿爺共は……。
「おじいさま。はやい、はやい!!」
「はっはっは。そうだろう!! おじいは、駿馬だからな!!」
「あ、あの、おじいしゃま……」
「心配いらんぞ!! あの騎士馬爺にこのおじいしゃまは負けん!!」
と、人馬レースを行っていて、次から次に、子供を背に乗せては四つん這いで走り回っている。
ロシュール王と一緒にきた、セラリアのお姉さんのアーリアさんは笑顔で固まって、妹のエルジュさんは苦笑いしている。
同じく、ガルツ王と一緒にきた、ティークさんや、シャールも同じような感じになっている。
俺からすれば、孫に優しいお爺ちゃんですむが、この人たち王様だからな。
色々、思うところがあるんだろう。
そんな風に、世間の難しさを眺めていると、ユキさんたちがこっちにやってきた。
「タイキ君。アイリさん。今日はありがとうな」
「いえ。なんか久々にクリスマスって感じで楽しかったですよ」
「はい。子供にプレゼントを贈るって言うのは楽しいですね」
「ああいう風に純粋に喜んでもらえると、自分たちも嬉しくなりますな。ヒフィーさん」
「ええ。そうですね。子供たちの笑顔というのは、何物にも代えがたいですから」
タイゾウさんや、ヒフィーさんもサクラちゃんたちを見て微笑んでいる。
俺たちも、昔はああだったんだなーと思ってしまう。
「さて、子供たちは爺さんたちが相手をしているし、俺たちは俺たちで、話でもしよう」
ユキさんはそういって、テーブルを指さす。
既にクリスマスパーティーは始まっていて、みんな思い思いに飲み食べしながら話しているのだ。
断る理由もないので、誘われるままに席に着く。
「じゃ、メリークリスマス」
「「「メリークリスマス」」」
そんな乾杯の掛け声をして、俺たちはワインを軽く飲む。
「そういえば、タイゾウさんはクリスマスは知っているんですか?」
「ん? ああ、意外かもしれないが、知っているぞ。長崎、熊本、というより九州は南蛮からの出入りが多かったからな。昔から教会とは縁が深かった」
「ああ、そういえばそうでしたね」
切支丹とかは、戦国時代に大名もいたはずだ。
なら、知らないわけないか。
「まあ、ここまで祝うということはなかったがな。ミサ程度だ」
「そりゃそうでしょうね。祭りにして大規模な経済活性の一部ってことにしたのは現代に入ってからですから。というか、俺としては、他の神様、しかも御国持ちの人がこの祝いに参加していいのかって疑問もあるのだけどな」
ユキさんはそういって、タイゾウさんの横にいるヒフィーさんに目をやる。
確かに、ヒフィーさんはヒフィー神聖国の神聖女とかいう大袈裟な肩書きを持っており、女神様でもある。
「そんなこと今更ですね。隣にいるルルアさんや、ノノアも、一緒に飲んでいるリリーシュも異教徒ですから。そして、常々ユキさんの言う通り、楽しければいいのではないのでしょうか。私たちの祈りは常に人々の幸せの為にあるのですから」
ヒフィーさんはユキさんの皮肉を皮肉と感じていない様子で返す。
「前はもっと生真面目だったのにな。成長するとつまらん」
「それはすみませんでした。しかし、そういう皮肉をこういう時に言うとは相変わらず腹黒いですね。ルルアさんは大変でしょう?」
「いえ。旦那様はちゃんと考えて口に出していますから、そこまで心配はしていません。まあ、時折、男性3人ではっちゃけるのが心配ですね」
「ああ、わかります。いきなり肝試しだの、釣りだの、祭りだのと……」
「「「……」」」
そういわれて、沈黙する俺たち。
藪蛇だった。というかここまで切り返してくるとは、なかなか強かになってるよなー。
まあ、これも頼もしい奥さんたちができたと思おう。
「そういえば、旦那様たちに聞きたかったのですが、このクリスマスは恋人、家族、子供というのはよくわかりますが、1人暮らしの方などはどう過ごすのですか?」
不意に、ルルアさんから極大の爆弾を届けられた。
「確かに、1人暮らしで、遠方に実家がある人などは、どう過ごせばいいのでしょうね?」
「そうですね。タイゾウさんはどう過ごしていたのですか?」
それに乗るように、アイリに、ヒフィーさんも遠慮なく爆弾投下を開始する。
本人たちはわかっていないから、純粋に聞いているのだろうが、少し考えればわかると思うんだよなー。
「私は、特にクリスマスだからと言って祝うことはなかったな。研究一色だったのでね」
「そこは、今も昔も変わらないんですね」
「どうかな。今はヒフィーさんやみんなと過ごしているから、違うと思うけどな」
うん。タイゾウさんは大人な反応だ。
いや、それは立派な大学をでて、研究員として胸を張れる仕事をしていたからだ。
ついでに、時代が時代でクリスマスはイチャコラするのが当たり前という時代ではないのもある。
しかし、しかーし!! 俺とユキさんは違う。
「へー。タイキ様はどう過ごしていたのですか?」
「旦那様はやはりご家族と?」
そして、来たる、最後の審判。
聞いてはいけない、もてない学生たちのクリスマス。
題して、クルシミマス。あるいはシングル(1人)ベル。
さあ、ユキさんどう答えるんだ!?
あの苦しみの記憶をどう答えるんだ!!
とりあえず俺は、ユキさんの答えに便乗しようとして、ユキさんに視線をおくると、自然とアイリたちも先に答えるのはユキさんだと思って視線を向ける。
「若いころ、学生の頃は家族や友達とかと賑やかに過ごしたな」
意外に無難な答えを言ってきた。
まあ、わざわざここで、恨み事を言う理由もないよな。
なら、俺も無難に答えよう。
「俺も同じですね。こう、親とかにプレゼント貰ったり、友達と騒いだりですね」
そう、普通の一般家庭はこんなものだ。
学生の身分で、恋人と過ごすなどというのは、大学生ぐらいのモノで、高校生や中学生という受験戦争がある子供にそんな余裕などあるはずがないのだ。
しかし、ルルアさんはさらに質問を続ける。
「学生の頃はご家族がいるのですからそうなるのは当然ですね。しかし、タイキさんは学生の時に召喚されたから経験がないのは当たり前として、旦那様は一人暮らしの時はどうされていたのですか? も、もしかして、こ、こ、恋人でもいたのですかかかか……?」
あ、なるほど。ルルアさんたちはここが聞きたいのか。
ルルアさんが少し壊れながら質問をした途端、奥さんたちから殺気が無数に飛んできた。
今更、地球の方に恋人がいたとしてもどうでもいいだろうに、とは言えない。
奥さんたちにとっては重要なことなのだから。
俺が下手に口を出せば、死ぬ!!
さあ、ユキさん。このピンチをどう切り抜けるんだ!?
「社会人になってからは、クリスマスとか気にする余裕はなかったな。そこはタイゾウさんも同じじゃないかな?」
「ああ、そうだな。気が付けば年越しをしていたという感じだ」
あれ? てっきり暗い顔をして、ボッチの寂しい話になるかと思っていたので拍子抜けだ。
「社会人になると、仕事で忙殺されるからな。クリスマスを仕事仲間で祝う余裕はなかったな。友達は恋人がいる連中はなんとか時間を作ってたし、恋人とかいない俺のような連中は、普通に仕事して帰って寝るだけだぞ? ああ、コンビニケーキとかチキンとか安くなるから、そういう意味では恩恵があったかな?」
……うわ。予想以上に辛い話だった。
ボッチを恨む余裕もない社会人とか辛すぎるわ。
で、そこで気が付いた。
ユキさんの目が死んでいることに。
「次の日も普通に仕事だからな。家に帰ってささやかなケーキとか食べたあとはすぐに寝るんだよ。それだけだな」
……社会人としては、ごくありふれた話だが、一方で家族がいる人たちにとっては、賑やかに幸せに過ごす日でもある。
そのギャップにユキさんも社会人の日々に疲れていたのだ。
「ま、まあ、仕事の話はこれでいいだろう。今はクリスマスを祝おう。なあ、ヒフィーさん」
「そ、そうですね。タイゾウさん」
すぐに察したタイゾウさんが大人なフォローをしてくれるので、俺もそれに乗ることにする。
「よ、よし。アイリ、ユキさんたちからもらったプレゼントをあけてみよう」
「は、はい!!」
あとはルルアさんたちがユキさんを慰めてくれるはずだ。
「……あーあー、別にさ、悔しいとか、寂しいとかはないんだよ。でもさ、自分は何やってるんだって感じでさ……」
「ご、ごめんなさい、旦那様!! 正気に戻ってください!!」
「……ユキは常々働きたくないと言っておったからのう」
「ユキさんが、微妙に壊れてるけど、いったいどんな仕事だったんだろう?」
「それは、ユキがここまでトラウマになっているのですから、想像を絶する仕事場に違いありませんよ」
……ブラック企業、異世界人に恐れられると。
そんなことを思って、不意に我に返る。
「いやいや、クリスマスに何やってんだよ。ユキさん。今日は楽しみましょう」
「あ? ああ、そうだな。今日はのんびりしよう」
なんとか俺はユキさんを現実に引き戻し、そのあとは楽しいクリスマスを過ごした。
しかし、大人って大変だな。
社会人とは、休みのないことに疑問を持たない人種のことを指す。(意訳)
ボッチが辛いとかいうけど、実際はそんなことを嘆く暇もなく、日々に追われる人の方が感情もなく辛いのかもしれないという話。
あ、あと、メリークリスマス!!
枕元にプレゼントはあったかい?
自分は特になしさHAHAHA!!
というか、仕事だしね。(白目)
さ、仕事納めまであと少しだ。
頑張ろう。




