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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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712/2206

第595堀:図書館の怪

図書館の怪




Side:ユキ




「さてさて、始まりました。秋の夜長の怪談ツアー」

「無茶苦茶ありそうな番組タイトルですね」


俺がそう適当に言うと、横を歩いていたタイキ君がそう返す。

そう、只今、ハイデン魔術学院の怪談の謎を探ろうという企画で校内を歩いております。

企画というか仕事というか、今後学院で穏やかに過ごすためにも、後顧の憂いは取り除いておこうという話。

誰だって、事故物件には住みたくない。

住むしかないなら、お祓いとかをするのが当たり前。

やるなら徹底的に、遠慮なく、塩を全開で撒いてやるということで、つぎ込める戦力をありったけ投入している。


「かか様。がっこー広いね。かか様のがっこーも広かった?」

「ん。かか様の学校はもーっと大きかった」

「すごい。いつか見に行きたい」

「ん。いつか妹たちも連れてみんなで見に行こう」

「うん」


こんな感じで、娘まで投入しているところからも、俺の意気込みを感じ取れるであろう。

というか、こと怪談において、秋天以上の人材もいないのだ。

だって、日本における怪談の頂点ともいっていい酒呑童子その人なのだから。

更に、周りを固めるには、こっちの世界での霊能者というか、聖職者である元聖女のルルア、魔王デリーユ、勇者リーア、魔術学府の学長ポープリとこれでもかという布陣だ。

あ、無論タイキ君も勇者なんだけど、本人曰く「誰がお化けの相手なんぞするか」と基本的に対応を拒否。

日本人のお化け、幽霊に対する恐怖度はトラウマものだからな。

物理手段でくるならともかく、基本的に意味不明の攻撃手段に、最悪精神錯乱で自殺に追い込むケースもままある。(ドラマとかドキュメンタリーの情報)

それを知っているラビリス率いるちびっこ組はバイデに引っ込んでしまったし、そういう意味でも早急な不思議、怪談の解決が望まれるというわけだ。


『あー、あー、マイクチェック。聞こえるかい?』


無線からタイゾウさんの声が聞こえてくる。


「感度良好。只今、図書館前に到着したところです」

『了解。こちらも感度良好、ノイズなし。カンナ殿、エージル殿から確認したと連絡がきた。そっちからも確認できるか?』


そういわれて振り返ると、カンナとエージルが後ろにいて、手を振っている。

彼女は俺たちがちゃんと図書館内に入ったかどうかを確認するための人員だ。

同じように、横にヴィリアとドレッサも立っている。

今回は下手をするとパニックを誘発するものなので、冷静でそれなりに力量のあるメンバーが選ばれている。

エオイドとアマンダは力量が無さすぎて抑えることになっても苦労しないという点から同行している。

ある意味、反対の能力を持つが故に連れてきたという感じ。

あとは、カグラはカミシロ家の血筋、ミコスは一般学生代表という感じだ。

ま、これぐらいいれば何とかなるだろう。

さて、いい加減入るか。


「カンナ、エージルを確認。これより、図書館内部に潜入する」

『了解。幸運を祈る』


いざ、図書館に潜入。

中に入ると、蔵書はそれなりにあるらしく、大きめの本屋といった感じだ。

校舎とは別に館として建てていることから、その蔵書が多いことがわかるだろう。

3階建てなので、きっと3フロア全部とまではいかないかもしれないが、本で埋まっているのだろう。

大型本屋のフロアぶち抜きという奴だ。

流石に、日本とかの公営の図書館ほどではない。

あそこまで大きいと探索も苦労するだろうが、この程度なら今日のうちに目途はつけられるだろう。


「さて、館内に入ったけど、みんなは特に異変はないか?」


とりあえず、メンバーのメディカルチェックをしてみたが、特に変化なし。


「ルルア、秋天は何か感じるか?」

「いいえ。特には」

「なにも感じない」


ふむ。悪霊とかはいないみたいだな。

この館内にそういうのがいればどちらかが反応すると思っていたが無反応か。

やっぱり特定の場所でのトラップ系か?


「水龍の方は?」

『いや、こちらも何も感じない』


秋天の肩に乗っている超合金水龍もそう答える。

ちなみにこの水龍、秋天と会って平伏していた。

簡単に言えば、田舎マイナー神がメジャー大妖怪に勝てるわけもなく、しかも母親といわれるのは水神としても名高い八岐大蛇で、同じ水の神としても格も違うらしく、秋天の配下のように付き従っている。

秋天は特に嫌がっていないし、安全もさらに確保されるので問題はない。


「とりあえず、噂の現場まで行ってみるか。ミコス、噂の場所に案内してくれ」

「了解です。ユキ先生」


そういってミコスが上の階を目指し歩き始める。

この噂の出所は各フロアごとにあって、そのどれかは特定できていない。

しかし、人目につかない上の階ではないかという推測は立てられている。

人の出入りの多い1階などで不思議が起きていれば、それだけ被害者が多いはずだからな。

増築したという話も聞いていないので、やはり3階ではないかという意見でまとまったのだ。


「こちら探索班。予定通り、1階から3階へ」

『了解。通信状態は良好。引き続き探索に当たられたし』


タイゾウさんとの連絡も今のところは問題なしか。


「でもユキさん。ここ作られて500年ぐらいでしょう? 蔵書の入れ替えとかどうなってるんですか?」

「ああ、それは稀覯本とかは学院が別に管理する宝物庫とか、王都の方へ移動するんだそうだ。他の本は払い下げて新しいのを購入したり、備品の修繕費用に充てられたりするんだと」

「なるほど。ニーズに合わせて図書館に入れる本を選んでいるわけだ」

「そういうこと。流石に500年分の本をぶち込んでいれば、ここだけじゃ収まらないだろうからな」

「じゃあ、なんかいわくつきの本が置きっぱなしって言うことはないんですかね?」

「うーん。カグラ、ミコスどうだ?」


一応図書館の管理職員はちゃんとやっていると言っているが、それは立場上、やっていないとは言えないわけだし、人がやることだ。ミスは普通に存在する。

だから、現に図書館を利用していた2人に聞いたのだ。


「うーん。いわくつきの本か。そんな話は聞いたことないわ」

「ミコスちゃんも聞いたこともないですね」


時にこのミコスは自分のことをミコスちゃんというが、何というか、こう砕けた時に言うような感じだ。

わざとこういうキャラクターを演じているのだろう。

情報収集としてはこういうやり方はよくある。真面目に聞いてもダメなときはこういう搦め手の方がいい時があるのだ。

そういう意味では、得難い才能なのかもしれない。

しかし、そのミコスも特に知らないってことは危険な本はなさそうか。


「となると、空間とかに仕掛けてあるのかな?」

「さあな。そこはルルアと秋天、水龍に頼るしかないよな」

「任せてください」

「とと様、任せて」

『まあ、できる限りのことはする』


とりあえず、3人はやる気十分。

秋天のお世話もクリーナが常に手を握っているし、キルエが側に控えているので問題はないだろう。

で、そんな話をしているうちに3階へとたどり着く。

カウンターはなく、ただの案内板があるだけで、同じような本棚がズラーっと並んでいるだけだ。

幸い、魔術のおかげで館内は明るく、本を読むのには苦労しない。

窓などは壁に沿ってあるが、そこまで大きくもない。

泥棒などが入って盗難を避けることや、直射日光で本が駄目にならないための措置だ。


「えーっと、こっちです」


ミコスの案内で、図書館の奥へと足を進める。

その際本棚を見て理解したが、思ったよりもこの図書館の蔵書は少ないということだ。

どういうことかというと、このハイデンの本は造本技術などがそこまで進歩していないので、装丁などが豪華で、無駄に分厚いのだ。

製紙技術も洗練されておらず、紙自体も黄ばんでいて厚い。その上糊付け製本などはなく、紐付け製本ばかりだ。

なので、現代日本で主流の簡易装丁のスリムでページ数が多い本はなく、分厚くてページ数がそこまでない本ばかりなのだ。

大体2、3倍は蔵書に差が出るのではないだろうか?

まあ、幸い活版印刷はカミシロさんが意地で発明、普及させたので、本の値段はそこまで高くはないというのが救いか。

いや、カミシロさんに現代機械印刷レベルを再現しろとか無理な話でしかない。

そんなことを考えている間にたどり着いたのか、ミコスが立ち止まり、こちらに振り返る。


「ここですね」

「えーっと、歴史?」

「はい。ハイデンの歴史はもちろん、他国の歴史書なんかも置いてある場所ですね。ここで、妙な声が聞こえるって話や、図書館から出られなくなるとか、秘密の部屋につながるとか変な噂があるんです」


見た感じは普通の本棚が両脇にある場所なだけだ。

本棚に収められている本も、そこまで古い物は見当たらない。


「歴史書か。私はここに来たことはなかったわね」

「そうなの、カグラ?」

「ええ。貴族なら国の歴史は実家で嫌というほど学ぶでしょう? わざわざ、学院の図書館にきてまで調べるって人は物好きの研究家ぐらいよ」


なるほど、好き好んでここに来ようという人はあまりいないのか。

なおの事怪しいな。

そう思って足を進めようとすると、秋天が制してきた。


「とと様。駄目。足元になにかある」

「足元?」


全員が秋天の声を聞いて足元に視線を向ける。


「ん? 何か魔力の流れがあるな……」

「どこですか?」

「ほら、中央の所の……」

「ああ、あれですか。確かに、見た目は変哲もないブロックですけど、なんか変な流れがありますね」


俺が指さしてタイキ君もわかったらしく、それを見ていた他の皆も気が付いたようだ。

とりあえず、報告を。


「こちら探索班。3階の歴史書のコーナーにて、怪しいトラップらしきものを発見。これより調査を開始する」

『了解。十分に気をつけてくれ』


ということで、調査を開始!! と行きたいがそうもいかない。


「まあ、人為的に仕掛けられたってのはわかりましたけど、ぶっ壊してみるわけにもいきませんよねー。これがきっかけみたいな感じですし」


タイキ君が言うように、この図書館の不思議は秘密の部屋があるというモノだ。

だから、目の前にあるトラップ?を分解してみるわけにはいかない。

直せる保障がないからだ。


「しかし、足元にトラップを仕掛けるというのはある意味合理的。床なら本や本棚のように変えられることはないし、この館全体に仕掛けを施すにはうってつけ。秘密の部屋の噂。信憑性が増した」


クリーナの言葉にみんなが頷く。

確かに上手いトラップだ。


「で、問題はこうなると、誰かがこのトラップを踏んでみるしかないわけだが……」


誰がそれを踏むのか?という話になる。


「ミコス。迷った子は出てこられるんだったよな?」

「あ、はい。時間はどれぐらいかわからないですけど、出てこられたって話です」

「範囲はよくて、この通路だな。この3階フロアを全部対象にしたら、他の人も巻き込まれる」


人が少ないだけで、利用者がいないわけでもないのだ。

だから、被害者の数から出られなくなる一種の無限ループに陥る範囲は広くて、この歴史書の通路ぐらいだろう。

となると、ここで人員分けだな。


「踏んでみる人と、それを隣で監視する人、さらに遠方から監視する人で分けよう」


ということで、踏んでみる人は、もちろんカミシロ家の血を引くカグラが受け持ち、近場で監視するのは同じ学院生であるミコス、俺、リーア、クリーナ、秋天、水龍、キルエとなった。

遠方、歴史書の通路の外から声だけで確認をとるのは、ルルア、デリーユ、タイキ君、アマンダ、エオイドだ。

更に、カンナとエージルは2階に待機してもらっている。

タイゾウさんとも連絡済み。

これで、何かあっても即座に動いてもらえるだろう。


「じゃ、これより、トラップを試す」

『『『了解』』』

「5、4、3……」


カウントダウンを開始して、カグラを見る。


「2、1、0」


俺が頷くとカグラが意を決してトラップが仕掛けられているブロックを踏む。


「今、カグラがトラップを踏んだ。各自状況確認。タイキ君、タイゾウさん。聞こえますか?」


が、返事はなく、雑音というノイズが響くだけだった。


「……とと様。秋天たち飛ばされた」

「飛ばされた?」

『うむ。ここは図書館であって同じ図書館ではない。場所がずれている。この感じは鳥居を重ねた無間の道に近いか?』


……つまり、マジものってことか。

おいおい。

本当に出られるんだろうな。





無限ループってこわくね? テンプレ



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