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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第587堀:新大陸の当たり前

新大陸の当たり前




Side:ヴィリア




私は学院生たちの後を追い、演習場まで来ていた。

入り口には学生たちがひっきりなしに入ってきていて、思ったよりも騒ぎが大きいのだと思いました。

とりあえず、中に入って先ほどの話が本当かどうかを確かめようと、足を踏み出すと不意に肩に手を掛けられる。


「こらこら、単独行動は厳禁だって言われているだろう?」

「誰ですか……って、ポープリさん」


一瞬、後ろを振り向いても誰もいないので驚きましたが、下に視線を向けるとポープリさんがたたずんでいました。

私がヒイロという小さい子を相手にしているからすぐにわかりましたが、他の人なら首を傾げて去って行ってしまいそうです。

と、そこはいいとして、本日ポープリさんは学院見学で来ていて、エージルさんたちと一緒に授業を眺めていたはずですが、なんでここに?


「いや、どうも教員たちからすれば、私が別大陸で教師だというのは信じてもらえなくてね。居心地が悪いんだ」

「……まあ、ポープリさんは若く見えますから」


若いどころか、ヒイロと同じぐらいの幼女にしか見えませんが。


「はぁ、昨日の演武に参加していればね。ま、そんな感じで、どうもユキ殿の連れ子みたいな扱いでね。私が話しかけると子供相手と思われてまともに話ができないんだ。仕方ないから、なんか騒ぎがあった廊下に出てみれば、君たちが分かれて行動をしているじゃないか。これは、大人としてついていく必要があるかなと思ったわけだよ」

「ありがとうございます。ポープリさんのおかげでお兄様との約束を破らずにすみました」


私は素直にお礼を言う。

容姿はともかく、ポープリさんは歴戦の魔術師で、お兄様の信頼も厚い。

こうやって、私のミスを補ってくれる立派な大人の女性であるのは間違いない。


「じゃ、いこうか、ヴィリアお姉ちゃん。カグラさんが何か面倒に巻き込まれているようだからね」

「……はい。そうですね」


凄い違和感がありました。

ポープリさんの正体を知っているからですが、傍から見ればポープリさんの言う通り、私が姉でポープリさんが妹に見えるでしょう。

それをためらいなく、幼子として振舞うポープリさんはやはり大人の女性なのでしょう。

私もお兄様の為にこんな強かさがいるのですね。

そんなことを考えながら演習場に踏み込んでみると、カグラさんと昨日急遽魔術演武に参加してきたジーマンさんが演習場の真ん中で向き合っていました。


「おお、どうやらドンパチする前に間に合ったようだね」

「どうしましょうか? 止めるべきでしょうか?」

「うーん。様子を見てからでいいと思うよ。未だ学生同士の喧嘩だからね。一応、カグラ君は公務の途中という名目はあるけど、それで割って入るのはちょっと大人げないし、下手をすると、ちょっかいを出してきたジーマン君だけじゃなく、この喧嘩に応じたカグラ君も処罰の対象にされかねないからね」

「なるほど。確かに」


ジーマンさんはカグラさんの公務妨害ということで止められますけど、それは同時にカグラさんが公務をないがしろにして、この喧嘩を受けたということにもなるわけです。

それは、カグラさんを後押ししているお兄様はもちろん、キャリー姫様たちにもよろしくないことです。

要職を持つ者として不適切な行動であると、周りから言われると庇いようがありません。


「まあ、こっちの大陸は男尊女卑思想が強いって言うのもあるからね。その対処方を知らない私たちが迂闊に手を出すのは逆にカグラ君の立場を悪くしかねない」

「難しいですね。では、一体どうすればいいのでしょうか?」

「まずは、さっき言った通り、録画しながら様子見かな。ビデオカメラは持ってきているんだろう?」

「はい。デジタルカメラですけど」

「……うん。まあ、記録できるものならいいよ。それでカグラ君の正当性を記録しつつ、不味くなったら間に入って行けばいいよ。間に入るのは私に任せてくれたまえ」


そうウィンクしていうポープリさんは頼もしく思えました。

流石、ランサー魔術学府の学長。

大人の貫禄という奴です。

小さいですけど。

しかし、デジタルってとこに反応が芳しくありませんでしたから、あまり機械は得意というわけではないんでしょう。

ああ、そういえば、デジタルカメラは基本パソコンありきの道具でしたね。

未だ、ウィードでも上層部でしか取り扱いのない道具だから知らなくて当然ですね。

というか、普通ならコール機能での録画なのですが、イフ大陸や新大陸ではコールという能力を知られるわけにはいかないので、表向き記録道具としてカメラという物体を利用しているのです。

編集もしやすいというのもありますが。

そんなことを考えながらカメラの準備を終えると同時に、ジーマンさんが演習場に来ている皆に聞こえるような声でカグラさんに話しかけます。


「よく決闘を受けてくれた。カグラ先輩」


一応、礼儀をはらっているつもりなのか貴族の礼を取るが、どこからどう見ても、カグラさんを見下している。

それはカグラさんもよくわかっているのか、憮然とした表情で答える。


「ジーマン中位生。そちらの遊びに付き合ってあげるのはこれで最後よ? わかっているかしら?」

「ええ。このようなことに付き合わせて申し訳ないです。ですが、私としては是非とも、カグラ先輩の実力を知っておきたいものでして、失礼ながら決闘を挑ませていただきました」


あの顔。

実戦ならカグラさんを倒せるといった感じですね。


「はぁ。何度もいうけど、私をこんな決闘で倒したとしても、実力の証明にはならないわよ。私はあのバイデでは、指揮官として後方からの指示と魔術支援攻撃に専念していたんだから」


カグラさんは面倒くさそうにそう告げるが、ジーマンさんはその答えに納得した様子はなく……。


「実力もないのに、たまたま指揮官になり、たまたま戦線を支えられただけでしょう? 私なら兵を率いて敵を殲滅していたでしょう」

「……はぁ。昨日の魔術演武で実力の違いは分かったと思うんだけど?」

「あれは準備が万端だったからですね。実戦はそうもいかない」


筋は通っているように見えて、ほとんど言いがかりに近いです。

とりあえず、何としてもカグラさんを認めないという感じでジーマンさんは口答えをします。


「何を言っても駄目ね。はぁ、ま、いいか。先ほどの約束通り。この決闘で負ければ、これ以上邪魔はしないでね」

「ええ。この決闘で私に勝てるようであれば、女であるお前の功績を認めようではないか」

「結局はそれよね。女は認めないってだけじゃない」

「そうだ。大人しくしていればいいものを、いい気になって特位生、そして英雄だと? ふざけるな!! それは男が持つべき名誉だ!!」


……開いた口がふさがらないというのはこういうことなのでしょう。

私がそんな感じで唖然としている横で、ポープリさんは苦笑いしながら口を開く。


「いやはや、男尊女卑はこっちでは深刻な問題らしいね。いや私たちのところでも聖剣、魔剣がなければこうなっていたかもしれないとなると、師に感謝かなー」


ポープリさんは一定の理解を示していますが、私にとってはジーマンさんの言うことは何一つ理解できません。

実力があるものが望んでそれ相応の立場を手に入れるのです。

男も女も関係ありません。

才能の有無は男女で決まるわけがないし、何事も使いようとお兄様が言っていました。

女だからと下に見てたからこそ、カグラさんにジーマンさんは追いつけないし、追い抜けないのではないでしょうか?

そんなことを考えているうちに、試合が始まりました。


「行くぞ!!」

「……はぁ」


ジーマンさんは宣言と共に走りだし、火球を空中にいくつも浮かべて……。


バチッバチッ……。


そんな音と共に、火球は消えていく。


「な、なんだ!?」


本人の意図したところではないらしく、慌てているジーマンさん。

そして、対照的にカグラさんは無表情で、雷の魔術を使い一つ一つジーマンさんの火球を叩き落としていきます。


「その様子だと気が付いているようだね。カグラ君は必要最低限の魔力で針のような雷の魔術を放って、火球を落としている。しかも無表情で。いや、実戦を経験していると違うね。手の内を明かすようなことはしないか。あの若さで大したものだ」


……ポープリさんの言う通りなんですが、ポープリさんがここの学院生を若いというのは周りからすれば不思議極まりない発言でしょうね。

その間にも一応ジーマンさんは戦いの心得というのはあるのか、足を止めず何度も火球を生み出そうとしますが、出すそばから撃ち落とされて混乱していきます。


「くそっ!? なんだ、なにが起こって……」

「なにがって、私があなたの火球を落としているのよ」

「なにっ!?」

「試合が始まって対峙しているのは私とあなた。あなたの行動を阻害するのは私ぐらいのものでしょう? というか、見えてなかったのね……」

「何を言って……」


ドガンッ!?


「この小さいやつをあなたが火球を浮かべるたびに飛ばしてたの」


バチバチッ!!


そういうカグラさんの腕にはわかりやすく紫電が走っていました。


「動いている私ではなく、側で浮いている火球に当てるなど……」

「不可能? 現実を見なさい。ジーマン中位生。今のあなたでは私と勝負する以前の問題よ」

「そんなことはない!! 未だに一つも私は攻撃を貰ってはいない!! そっちは迎撃するだけで精一杯ではないか!!」

「……そう」


カグラさんはジーマンさんのリクエストに答えるべく、一気に魔力を集中させて、分かりやすく、雷を地面に落とすと、連続した雷が落ち始め、じわりじわりとジーマンさんへと向かっていきました。


「ありゃりゃ、意地が悪いというか、ジーマン君が悪いかな? 手加減していては埒が明かないと認識させてしまったからね」


ジーマンさんは迫りくる雷から逃げるように距離をあけようとしますが、説得をあきらめたカグラさんの雷撃が逃がすはずもなく……。


ドガンッ、ドガンッ!!


「ぎゃぁぁぁぁーーーー!?」


雷が直撃したジーマンさんの叫び声が演習場に響きます。

まあ、カグラさんの実力は知っていますから、流石に殺してはいないでしょうが、プスプスと煙が人から立つのは、死んでいるように見えますよね。


「審判。まだ試合を続けるのかしら? そうなら倒れている彼にまだ撃ちこみ続けることになるけど?」

「あ、しょ、少々お待ちください!!」


カグラさんの言葉でようやく我に返ったのか、審判役の人が慌ててジーマンさんの様子を伺いに行きます。

うつぶせに倒れたまま動かないのですから、勝負は決まったものだと思いますが……。

あ、生死の確認ですか。それは大事ですよね。


「ジーマン殿は気絶しているだけのようですね。よって、この決闘はカグラ殿の勝利です!!」


その審判の宣言のあと、一拍をおいて歓声が爆発した。


「「「わぁぁぁぁぁ!!」」」


ほっ。どうやら特に問題なく終わったようですね。

カグラさんに何かあれば問題かと思ってついてきましたが、余計な心配だったようです。

カグラさんも仕事があるので、観客に一礼をしてからすぐに背を向けて出て行こうとしていました。

ですが、その背に向かって火球が飛んできていました。

一体どこからと射線をたどって顔を向けると、倒れていたジーマンさんが手をカグラさんに突き出したままで叫んでいました。


「私は、まだ負けていない!!」

「えっ?」


カグラさんはその声でようやく振り返ろうとしますが、目の前には火球が……。


ボシュッ。


カグラさんにぶつかることなく、そんな音を立てて、火球は消えてしまいました。


「なにっ!?」

「えっ!? えっ!?」


ジーマンさん、カグラさん共に驚いています。

それも仕方ありません。

なぜなら……。


「いやー、ジーマン君。残念ながら既に審判の判定で君は負けているんだ。それを無視して後ろから攻撃はあまり褒められたものじゃない」

「こ、子供?」


そう。ジーマンさんの言う通り、空からふわっと降りてきたのは小さな女の子。


「え? なんだあの子。空飛んでたよな?」

「浮遊の魔術ってかなり制御が難しいんじゃなかったっけ?」

「見たぞ俺、さっきのジーマンの不意打ちをあの女の子が水を出して消していた」

「あ、ほんとだ。さっきの火球を消した位置が濡れてる」


私はとっさに駆け出して、同じように演習場に降り立ちます。


「ポープリさん、何をしているんですか!?」

「いや。モノのついでだから、引継ぎをやろうと思ってね。カグラ君、いいかな?」

「は、はいっ!? な、なんでしょうか。ポープリ様!!」


カグラさんはポープリさんの正体をしっているので慌てた様子です。

それはそうでしょう。

一国とは言いませんが、この学院と同じように学府を持つ学長であり、お兄様の信任厚い人なんですから。


「君はまだ仕事の途中だ。挨拶もそこそこで出て行かなくてはいけない。しかし、ジーマン君はまだまだやりたい様子である。違うかな?」

「と、当然……だ!! 私は、まだ……!!」


……やる気だけはあるようですね。

迷惑極まりない。

ああ、なるほど。だからですか。


「だから、これからの相手はこの私、イフ大陸の魔術学府を預かるポープリ・ランサー学長が相手をしてあげよう」

「「「は?」」」


演習場に見学に来ていた全員が唖然とする。

何を言っているんだという状態でしょう。

ですが、ポープリさんのことを知っているカグラさんはガクガクして……。


「そ、それは……学院が……」

「なに大丈夫だよ。そこらへんは手加減するから。君としてもジーマン君にこれ以上時間はかけられないだろう?」

「そ、それはそうですが……」

「ついでという奴だよ。さっきの授業では私は連れ子みたいな扱いでね。その認識を覆すためにちょうどいい舞台というわけさ」


カグラさんは悟った。

もう自分で収められないと。


「わ、分かりました。ユキ様を呼んでまいります!!」

「ゆっくりでいいよ」


だが返事を聞かず、カグラさんは駆け出していきます。

……少々気の毒に見えますがいいでしょう。

ここまで忙しければ、クンカクンカする余裕はないでしょうし。


「こ、子供が私の相手になるだと!!」

「おや? 私はユキ殿と一緒に来た賓客の一人だ。そしてさっきの自己紹介を忘れてしまったのかな?」


ポープリさんはそういうなりなんなり、一瞬で空中に無数の属性の違う魔術を百近く浮かべます。


「なっ!?」


絶句するジーマンさんをよそにポープリさんはにっこりと笑いながら言います。


「私は曲がりなりにも学長を務めていてね。この通り魔術は得意なんだ。だから、ジーマン君を退屈させることはないと思うな?」


それはまるで死の宣告をする死神という奴なのでしょう。

まあ、ポープリさんが殺すわけもないですし、ドレッサがお兄様を連れてこっちに来たようですから、説明をしに行きましょう。

あれ? 呼びに行ったカグラさんは入れ違い?

うーん。あの人は何というか色々不運ですね。



これが新大陸の当たり前、そしてご照覧あれウィードの当たり前。


世の中、いろいろな意味で強いものが残るんだよ。

物理的に力が強いとか、お金を持っている経済的強さとか、かわいいようじょとか!!



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