第571堀:イフ会談 混迷と説明と企み
イフ会談 混迷と説明と企み
Side:ポープリ・ランサー ランサー魔術学府 学長
新大陸が見つかって忙しいんです。それで遅れました。
と、少々意訳ではあるが、いとも簡単に超重要機密を話すユキ殿。
その余りにもぶっ飛んだ内容に何も言えない各国の王。
喋るように話を振ったアグウスト王に至っては顔に手を当てている。
そりゃそうだろうね。
ただ今回の遅れを非難して、身内の不満抑えと、交渉を有利にと思ったんだろうけど、そんなことはどうでもいいぐらいの内容が飛び出てきたわけだ。
ジルバ王やエナーリア王は、ユキ殿に振り回された手前、何か罠があると思い慎重だったが、それでも何も言えないでいる。
そんな中、ローデイ王が不意に口を開く。
「とりあえず、もう一度確認しておくが、新大陸発見というのは嘘というわけじゃないよな?」
「もちろん。こっちとしても、この大陸間交流を成功させたいからな。上下関係をはっきりというなら最初から全員集めてたいした歓迎もしてないって」
「だよなー。で、新大陸の詳細は?」
「詳細ってどこまでを詳細っていうのかがわからん。一か月ほど前に見つかったばかりだからな」
流石に召喚で誘拐されたとは言わないか。
その場合は戦争に参加させろという要請がくるだろうしね。
「……なるほど。私たちと会談がここまで延びた理由はその大陸のせいか」
「ジルバ王。当たり。おかげでここ一ヶ月外交ルートの構築に一苦労。向こうは別の大陸なんて信用してくれないからな」
「……それは当然だろうな。私たちとて、ゲートやこのベータンを見なければ信用しなかった」
「ということで、納得いただけましたか? 証拠も出します?」
と、ユキ殿は話を振ったアグウスト王へと話しかける。
証拠と言ってもでっち上げたと言われれば終わりだが、他の国々がユキ殿の話を信用しているところで、文句をいうのは孤立を意味するので言えるはずもなく……。
「いや、いい。ユキ殿が遅れた理由は分かった」
納得するしかない。
別の大陸が見つかるなんて思いもよらなかっただろうね。
だが、そこはアグウスト王、それで終わることはなかった。
「しかし、新大陸となると、ウィード一国だけでやれることではないだろう。今のように会議が遅れるというのは好ましくない」
「ですね。ま、なんとか頑張りますよ」
「いや、そこは我々がウィードに助力を……」
「その前に、イフ=ロガリ会談を成功させてくださいな。ウィードは基本的にロガリ側ですし、未だ大陸間同盟も組めていないのに、そちらの助力を得るわけにはいかないでしょう」
「むう。しかし、助力がいるのでは」
「いや、それはさっき言ったけど、俺を通さず頑張ってくれってこと。それが助力になる。今回のことで嘘か本当かは理解できただろうし、席は用意するから、あとはそっちで話をまとめてくれ。勘違いしているかもしれないけど、ウィードは基本的にゲートを使った交易国であって、大国ではないから、話の主導権はない」
余りの言いように吹き出しそうになるのをこらえる。
実際、ユキ殿が一言いえば、殆どの大国が膝を屈するだろうに。
が、大国でないというのも事実、他国の主導権がないのも当然。
事実を話しているのに、なんでこうも嘘ばかりに聞こえるのが不思議でならない。
と、そんなことを思っていると、不意に、アグウスト側の騎士が立ち上がり叫ぶ。
「聞いていれば小国の分際で、我がアグウスト王や他の5大国の王たちに対して何たる言い草か!! 分をわきまえよ!!」
叫んだ本人としては、お国の面子とか色々慮って行動したんだろうけど、それは逆効果だね。
すぐに周りにいた人たちから押さえつけられて、アグウスト王はもちろん、他の王たちも口を開かず、ユキ殿の動向を見つめている。
で、そのユキ殿は少し考えるふりをして、表面上は特に何も変化はなく、口を開く。
「ふむ。小国の分際で、か。まあ、当然ですね。ではなおの事、ウィードを挟む必要はないでしょう。これで顔合わせも終わりましたし、これで私との会談は終了ということでいいですかね?」
そういって席を立とうとするユキ殿と同時に、ローデイ王とエナーリア王が止める。
「まてまて、どう考えてもユキ殿は必要だから」
「そうだ。今ユキ殿に出て行かれては、ロガリ大陸や新大陸との交流手段がない」
「ええい。アグウスト王。なにか言わないか。お前の躾のなっていない者のせいだぞ」
「……」
アグウスト王はジルバ王の言葉に返事を返さず沈黙するばかり。
迂闊に何かいえば、アグウストはこれから始まるイフ大陸連合で一番下の位置に着くことになるからね。
「アグウスト王。色々思惑があるのやもしれんが、今のはそちらの部下の失態だ。それは全員の意見の一致するところ。大国であれ小国であれ、敬意は払われて当然。しかも、ユキ殿はジルバとエナーリアの王族であり、ローデイでは公爵家の姻族、我がエクスでは事件解決の英雄でもある。確かに、ウィードは小国ではあるかもしれないが、その経済力、軍事力は下手をすると我ら大国と同等かそれ以上だ。そんなこともわからないようであれば、アグウストの一団は会談から外してもらうしかないが? 協力できないのであれば、ゲートの封鎖も考えなくてはならん」
そう淡々と喋るのはエクスのノーブル王。
いや、喋るというよりは脅しだね。
「……ユキ殿。部下の非礼、申し訳ない」
ここでようやくアグウスト王は謝る。
ユキ殿の立ち位置を正確に把握したのかな?
アグウストではアマンダの竜騎士に隠れて、ユキ殿の存在はあやふやだったからねえ。
ある程度情報を得ていたとは言え、確信してたわけでもないから仕方ないかな。
だけど、実際はこのイフ会談において、一番の発言力を握っているのはイフ大陸の国々じゃない。
ユキ殿、ウィードなんだよ。
新しい餌である、新大陸もぶら下げたんだから、これを逃すような真似をすれば非難轟轟だからね。
「謝罪は受け取ります。で、これからどうする? とりあえず、各国が知りたがっていた、真実というのはわかったと思うけど」
「……そうだな。ロガリ大陸は存在する」
ジルバ王がそういうと、他の王たちも同意するように頷く。
「あとは、我がロガリ大陸に対してどのように話をまとめるかを会議するぐらいだね。ああ、一応、こちらの大国の王との会談の席も用意はできるけど、まずはこっちをまとめてもらわないと話し合いもなにもないだろう?」
「だな。会談で何を話すかまとめる時間がいるな。それはそうと、そのロガリ大陸の特徴とかなにか情報はないのか? 何を話し合えばいいのかすらわからん」
そういうのはローデイ王。
ま、当然の意見だよね。
ロガリ大陸の情報を集めないと話にならない。
「情報ならある。だけど、山ほどあるからな。地道に説明していくと数日はかかるぞ?」
「数日で済むなら安いものだ。是非説明をお願いする」
エナーリア王の意見に他の国々も頷く。
「じゃ、長くなるけど、説明を開始しますかね。皆さん、天井から吊るされている長方形の板をご覧ください」
ユキ殿がそういわれて上を見ると、確かにテレビモニターが吊してある。
だけど、これは円卓に座っている私たちからは見にくい、というか首が……。
そう思っていると、ヴィリアたちが出てきて、私たち王たちの前に一つずつモニターを置いていく。
「各国の王たちは首が痛くなるので目の前にモニターを用意するので、そっちを見てくれ」
王たちはそのモニターに首を傾げている者がほとんどだが、ローデイ王はビデオカメラなどのことを知っているのでなるほどと頷いていた。
準備が整い、モニターに映像が映ると、驚く各国。
エクスとホワイトフォレストも驚いてるが、演技だ。
勿論私も。
で、思ったより驚きが少ないのが、アグウスト王。
まあ、私の通信宝珠というユキ殿の案でもらった、モニターのようなものがあるからね。
本人は私が作ったと思っているのだろうが、あとでユキ殿の技術流用だと言ったらどうなるかなー。
本当に、イフ大陸の国々はユキ殿一個人に頭があがらないんだよ?
そんなことをしているうちに、モニターによる説明が始まる。
そこからはさらに各国は驚きの連続だ。
ロガリ大陸に生息する多種多様の魔物たち、それに応じた武具の強力さ。
更に魔術を使える者の多さと、ここで明らかにロガリ大陸とイフ大陸の差を見せてきた。
まともにやり合うことの愚かさを見せてきたわけだ。
文句を言っていたアグウストの一団は他の国々から鋭い視線をうけて小さくなっている。
さらに、この魔術や魔物の差を調べることでお互いの大陸に足らないところを補えるかもしれないということも示し、大陸間交流の有用性も説明していた。
ロガリ大陸は凶悪な魔物の減少につながるかもしれないし、イフ大陸は減少気味の魔術師の増加につながるかもしれない。魔道具に関してもロガリからの技術派遣などで大幅な向上も望める。
この話を聞いて、無視する国がいればそこは数年後には無くなっているだろう。
時勢を読めなさすぎるし、足を引っ張ること請け合いだ。
そんな国は邪魔でしかないから、イフ大陸連合に一気に叩き潰されることになるだろうね。
上手いことに、新大陸の件も説明に絡んできた。
無駄にぐだぐだ各国が利権争いをして大陸間交流が先延ばしになるのであれば、新大陸の方で交易が先に開始する可能性もあると、ユキ殿は示唆してきた。
つまり、さっさと決めないと、そっちの取り分は少なくなるぞと脅しているのだ。
こっちが忙しいのは知ったばかりだよな? と。言い訳もできない。
いつまでもよその都合に合わせていられないと先に釘を刺してきたのだ。
しれっと、各国が魔力枯渇を調べる起因になっているので、ユキ殿にとっては一石二鳥といったところだろう。
それに気が付いたノーブル王とホワイトフォレスト王は感心したようにうなづいている。
本当に口が上手い。
まあ初日はざっくり説明しただけであって、あとの細かい話は明日以降となるのだが、初日の話だけでもイフ大陸の面々にとっては驚愕の連続の内容だ。
それをユキ殿もわかっているのか、早々に初日の説明は終わり、そのあと夕食まで時間一杯イフ大陸のトップ会議が行われていた。
主に、今後のウィードとの付き合い方についてだ。
利権争いで大陸間交流が先伸ばしになれば、新大陸の後ということになると言われてしまったので、各国はとりあえず、平等に派遣をすると言うことであっさり合意した。
その際に、ローデイのサマンサ、アグウストのクリーナは王たちの養子となって姫になることが告げられた。
これで、ジルバ、エナーリア、ローデイ、アグウストはユキ殿が王族の一員という意味では横並び、つまり対等になったわけだ。
問題はユキ殿とそこまで繋がりのない国、エクスとホワイトフォレストだが、ゲートを有していることや、エルフなどの魔術を得意とする種族優位性から、特にそういうことは望まないということで決着がついた。
いや、ノーブル王とレフェスト王はユキ殿の部下みたいな感じなんだけどね。
「……ところで、魔術の関係だが、そこはポープリ学長、ランサー魔術学府に頼もうと思うのだが」
そういったのは、エナーリア王。
それに同意するようにジルバ王も頷いて口を開く。
「うむ。それに回復魔術の関係でヒフィー神聖国の方からも行ってもらった方がいい」
「そうだな。ランサー魔術学府とヒフィー神聖国はこの大陸では魔術の最先端。そっちで各国の魔術師の代表を決めてもらってから、ロガリ大陸へ技術研修に行ってもらう方がいいな」
ローデイ王も同意する。
予定通りに、魔術関連は私たちに任されることになるね。
これで、魔力枯渇のヒントを与えて各国の魔力研究を根付かせることができる。
ヒフィー殿の方も回復魔術に加えて、外科内科といった、医学知識の研鑽による魔術以外の治療技術を正規の手続きで習得でき、無知により失われる命を減らすこともできるようになる。
回復魔術以外での治療方法の確立というのは、それだけでイフ大陸各国の環境を引き上げることになるだろう。
なにせ魔術の才能に依らず、胡散臭いと言われていたクスリなどの効果をしっかりとした勉学によって修めることができるのだ。
一国で外科などの有用性を説いても、体を切り開いて治療など狂気の沙汰といわれるだろうが、ロガリ大陸の各国で行われていると言われれば、その有用性は認めざるを得ないだろう。
さらに、私の魔術学府の今後の生き残りにも大事だ。
悲しいかな。イフ大陸の魔術の技能は魔力枯渇が原因かどうかわからないが、ロガリ大陸、新大陸に比べてレベルが低い。
ああ、そうか。
そこまで考えてようやく思い至った。
ユキ殿はちゃんと私たちの学府の事も考えてくれていたんだなと。
流れ的には必然に見えるけど、私をこの会談に参加させたのはユキ殿。
つまり、魔術学府を意識させたということ。
あとで、ちゃんとお礼を言っておこう。
ユキのターン!!。
「嫌なら無理にしなくていいですよ」
最強の切り札を切る!!
そして、これからもずっとユキのターン。
果たして、イフ大陸の王たちはユキに対して有利な条件を引き出せるのか!!
次回、必勝ダンジョン運営方法「イフ大陸敗北!!」 お楽しみに。
いや、嘘です。普通にユキがいなくなってからの強かなイフ大陸会議をお送りします。
元ネタは遊〇王「城〇内死す!!」なのはわかるよね。




