第566堀:ロガリ会談
ロガリ会談
Side:ユキ
「ふむ。元気そうだな」
「だな」
「そうですね」
そんなことを言って、のんびり机の上のお茶をのむ2人の爺と言ってもまあ間違いじゃないおっさんと、やけに若い女性の組み合わせがいる。
普通ならなんの付き合いかわからんな。
しかして、その正体は……。
「会談の連絡したら翌日開催とか、どうなってるんだよ」
そう。
セラリアの親父であるロシュール王、シェーラの親父であるガルツ王、そしてルルアの後継であるリテアの聖女であるアルシュテールがこの場に集結しているのだ。
目的は俺と会談をするため。
「何を言っておるのか。イフ大陸との話し合いには息子の協力が必要不可欠」
「どうせ、俺とロシュールのは国の運営などは跡継ぎに任せているからな」
「そもそも、この歴史に残るであろう一大国連事業です。参加は最優先になるのは当たり前です。というか、なぜ、今の今までユキさんが顔を出さなかったのかが気になりますね」
「リテアの言う通りだな。表向きは翻訳、通訳の養成期間とは聞いているが、流石にな」
「まったく本人と連絡が取れないと来たもんだ。ウィードにここ一か月何度か顔をこっそり出してわかったが、そもそも、ウィードにいなかっただろう?」
ちっ。やっぱりばれているか。
「セラリアがやけに荒れておったしな。孫のサクラも会わせられぬと来たものだ。会わせないではないぞ? 会わせられぬだ」
「こっちはキルエの奴、目が死んでいるのに殺気がすさまじかったからな」
「ルルア様もピリピリしていましたからね。ここまで乱れていて何もなかったと言われても納得できませんね」
セラリアが一番大墓穴だな。
ま、サクラも召喚されたから仕方ないよな。
さて、とにかくこれ以上隠すのは無理か。
下手に隠すと不信感しかでてこない。
セラリアたちの言う通り、そろそろ限界というのは間違っていなかったな。
「理由は話す。だけど、また厄介ごとだ。聞く覚悟があるか?」
「……またやけに念押ししてくるな」
「……これは聞かない方がよさそうな気がしてきた」
「……ですが聞かないわけにもいかないでしょう」
流石、各国のトップ。
直感的に、不味い話であると感じ取れるのはすごいよね。
だが、アルシュテールの言うように、聞かないわけにもいかないのもまた現実。
ということで、俺は3人の覚悟云々を聞く前に話し出す。
約一ヶ月前、ロガリ大陸メンバーがイフ大陸ベータン視察時に、起こった俺の出来事を……。
まあ、そこまで難しい話じゃない。
召喚された>戦った>召喚側、敵側全て倒した>事情を聞いて根元を叩いてきた>現在事後処理中で戻ってきた以上。
纏めるとこんなもんだよな。
いや、実にわかりやすい。
今後この説明が使えそうだなと思っていると、頭を抱えた3国のトップが存在していた。
「……国の王配を召喚、誘拐か。孫のサクラも連れていかれている。セラリアが荒れるわけだ。これはどう処理するつもりだ?」
「……普通なら戦争勃発の案件だぞ。俺の娘も召喚されている。まあ、だからこそ迂闊に言えなかったわけか」
「……というより、さらに新大陸とか、もうそこまで予算はありませんよ。ですが、状況を聞けば、セラリア女王が挙兵なんてすれば、付き合わないわけにもいきませんし……」
「「「……」」」
ふははは、悩め悩むと良い!!
俺がどれだけ四苦八苦して、事態収束に奔走したか!!
「しかも、たった一ヶ月で召喚者の国と戦争をしていた国を無理やり停戦に持ち込んで、召喚者側の問題の解決に手を貸してきただと?」
「何をバカな。と言いたいが、うちの婿はダンジョンマスターであり、女神の使徒様だからな。実績もあるし、信じないわけにもいかないか」
毎度やめてくれない? その駄女神で駄目神である女神の使徒とか。
それ、俺にとっては不名誉な称号でしかないから。
「……まあ、問題が解決に向かっているのは幸いです。この件はウィードの問題ということで処理しているのですね?」
「そういうこと。セラリアや他の嫁さんたちが暴走して、攻め落とせ、滅ぼせ、なんてのはないから安心してくれ」
「……まあ、要請がないなら動くわけにもいかんからな」
「しかしだ。この件はなあなあで済ませていいことではないだろう? そこらへんはどうするんだ?」
「下手をすればロガリ大陸が甘く見られることになりかねませんね。ユキさんはこれからそのハイデンにはどうするおつもりですか?」
「今すぐどうこうってのはない。どうせ内紛で荒れているんだ、下手に今搾り取っても旨味はないからな。まあ、落ち着いたら、交易とかで免税とかだな」
「そんなものでいいのか?」
「そんなものしか旨味がないだろう? 言葉も通じない、ゲートでしか移動できない、環境が不自然、そんな土地を貰ってどうするんだよ」
「いらんな」
「せめて、婿が魔力枯渇に関することをまとめ上げてからだな」
「理屈はわかりましたが、他国の王配を巻き込んだということから相応の賠償はもらわないと、双方の関係に悪影響を及ぼします。ユキさんの要求するであろう免税は、交易での今後のことを長期的に考えての政策というやり方は相手には理解できていません。わからないということは無価値です。それでは、こちらが満足しても、相手はそれだけでいいのだと、下手をすると我がロガリ大陸を下に見ることになります。そうなれば、そこからの不和で関係がぎくしゃくしかねません」
「まあ、アルシュテールの言いたいことはわかるが、じゃあ、一体なにをむしり取るんだ?ということになるよな。下手に鉱山とか資源を貰っても管理はできん」
賠償金ということで、数年に分けて金銭の支払いとかもないわけでもないが……。
そんなことすればハイデンの連中が反発するのは目に見えているからな。
ウィードとは戦争をしていないのに賠償金とかありえないとか、最悪、キャリー姫への非難に繋がる。それはまたハイデンが乱れる原因になりかねないから好ましくない。
「うーん。それなら、宝剣とか、なにか国宝などのモノを賠償としていただくとか……」
「国宝ねー。まあ、一品渡すだけで、歴史的付加価値があるだけで、金品を大量に渡すよりもマシではあるな。だけどさ、そうなると、その国宝の管理とかにお金がかかるんだけど。そこんところはどうなんだよ?」
「……流石にそこは自前でなんとかしてもらうしか」
「賠償をもらってこっちが損をするとかないわー」
しかも国宝だから、粗雑に扱えば相手の国から反感を買うことになる。
面倒極まりない代物。ただの爆弾じゃないか。
「まあ、そもそも下に見られてもいいのではと思うがな」
「それは俺も同じ意見だ」
「ロシュール王? ガルツ王?」
2人の王の意見に首を傾げるアルシュテール。
「そもそもだ。一国で我がロガリ連合と勝負ができるわけがない」
「ついでに、入り口であるゲートはウィードが守っている。ここが突破されるなら、降伏を見据えるべきだな」
「……それは、そうですが。我がロガリ連合の面子というのが」
「そこは正式な謝罪でもいいだろう。相手は国として非を認めることになるが、それだけで済むという利点もある。これでロガリの面子も立ち、余裕を見せることにもなるだろう」
「ウィードの方は、適当に免税などを勝ち取り、今後の長期的な政策で最終的に勝ちを取る。リテアのは若いからな。下に見られる。間違ったことをしたのだから相応の賠償を。というのもわかるが、もうちょっと冷静になってみるといい。下手につつくと崩壊しかねないからな。それはリテアのもよくわかるだろう?」
「……はい。ですが、私の時は賠償を支払いました」
あー、なんで賠償にこだわるかと思えば、確かにリテアの反対派を潰したときに、潰した反対派の金品とか色々ウィードに回してたな。
誠実なのはいいことだと思うが、やっぱりこういうところは頭が固いか。
「そもそも状況が違うからな。まだ、新大陸ではウィードの名はほとんど知られていないし、大規模に軍を送り込むこともできない。だから、威圧行為はできないし、直接的な要求は下げて免税や今後の国家会談の時の譲歩の切り札にするべきって話だよな」
俺がそういうと、うんうんと頷くおっさんたち。
「……なるほど。気が付けば、全てを掌握しているという方法をするつもりなのですね。経済的にも免税がありますし、時間をかけて新大陸の足場を固めるわけですか。今すぐ土地や金品を貰っても今のところは死蔵するだけですし、それならば、今後の展開の為の手札を増やすということですか」
「そうそう。あっちはいい市場だからな。こっちとは違って未だに国同士の戦いはあるみたいだし、そこらへんに食料品とか売りつけて稼げばいい。ロガリ大陸の方は畑とかどの国も広げてるだろう?」
「はい。販路が増えるというわけですね。そして時間をかけて交流することで言葉の問題も解決できるようになり、新大陸の人々をロガリ大陸へと移民させて、さらに国を耕すことができるのですね。だからこそ、それを気取られないためにも下に見られているほうが、私たちにとっては都合がいいと」
「うーん。その頃には、ロガリ大陸も結構開拓されていると思うけどな。まあ、大まかな方向性はアルシュテールが考えている感じだな」
そんなにうまくはいかないと思うけどな。
だが、健全な交易をしているぶん、恨みは少ないし、信頼もある。
そういう信用は金で買えないからな。
「何事もやりようというわけだ」
「ま、一番の問題は下手に介入すると金がかかるってことだ」
「……そうでした。そもそも、新大陸にかけるお金がないんでした」
「だからこそ、DPで金銭の代用ができるウィード、というかダンジョンマスターである息子が新大陸に当たるのは理に叶っている。今後も任せた」
「おう、婿殿頑張れ。何かあれば多少は手伝ってやれる」
「……なんだか無責任な気もしますが、お金がないのでよろしくお願いします。今後の大陸間交流のフォローはしっかりさせてもらいますので、新大陸との交易が始まった時には、ぜひともリテアの方も噛ませてください」
「なんだかんだで、しっかりしているなリテアのも」
「だな。いつまでもお嬢ちゃんではないということか」
「失礼ですね。それだと私が老齢に聞こえるではないですか。まだ私は若いですよ?」
「「わっはっは……」」
ふう。
なんとか話は済んだか。
思ったよりもアルシュテールが喰いついてきて驚いたが、まあ一国の主として成長してきているんだろうな。
さて、あとはイフ大陸の面々か。どうしたもんかなー。めんどい。
と、色々考えていると、笑い終わったロシュールの親父が不意に話しかけてきた。
「なあ。息子よ」
「どうした? なにか聞きたいことでもあったか?」
「ああ、ある。また見ない女性がおるが」
「見ない女性? ああ……」
そういわれて後ろを見るといつものメンバーに加えてカグラが一緒に控えていた。
「忘れてた。カグラ。こっちに来てくれ」
「ひゃ、ひゃい」
ひゃいって、ああ、そうか、ここの面々超VIPだからな。
とりあえず、さっさと紹介を済ませてしまうか。
「この子はカグラ。さっき話した、俺たちを召喚した張本人だ」
俺がそういうと、一瞬で目を鋭くする3人。
「ひっ!?」
「はいはい。いじめるな。話は聞いてるだろ、已むに已まれぬ事情だ。で、今、このカグラは今後の為にウィードへ派遣された外交官でもある」
「……ご、ご紹介に預かりました。ハイデンからの外交官である、カグラ・カミシロと申します。カグラとお呼びください」
「そして、容姿からある程度わかると思うが、祖先に日本人がいたって確認が取れている。そういう意味でも。仲良くしておいて損はない」
「……なるほど。そういうことか」
「はぁ。なあ、婿殿。こう周りに仕事ばかりの女増やして疲れないか?」
「いいではないですか。ちゃんとした仕事のできる女性が増えれば、その分できることも増えていきますから。これからよろしくお願いいたします。カグラ外交官殿。ああ、改めて挨拶をしないといけませんね。私は、ロガリ大陸5大国の内の一つ、リテアをまとめる聖女アルシュテールと申します」
「は、はい。リテアの聖女アルシュテール様、これからよろしくお願いいたします」
「さっそくですが、カグラ外交官から、新大陸……いえ、ハイデンの文化などを教えてもらってもいいでしょうか?」
「わ、私などでよければ喜んで」
うんうん。
カグラも順調に外交官として繋ぎを作ることができたし、万々歳というべきか?
なんか、カグラが睨んでいる気がするが、各国のトップと知り合えたんだから喜べ。
ロガリは基本的にスムーズ。
身内って便利だよねー。
あとはイフの方だ。
さあ、カグラの胃は持つのか!!




