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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第564堀:皆が幸せになる方法

皆が幸せになる方法




Side:ミリー




「おおっーー!!」

「わわっ!!」


ゴンッ!?


「「はうっ!?」」


いきなり部屋に入ってくるなり叫んだ2人だが、すぐに拳骨を落とされて黙る。


「まったく。病院では静かにしろ。そう教わっただろうキナ」

「お前もだシェリー。そんな常識知らずに育てた覚えはないぞ」


そう注意をするのは、ウィード冒険者ギルドのギルド長であるロックさん。

そして、私のお父さん。


「まあまあ、2人とも。仕方ないですよ。だってミリーが無事に赤ちゃんを産んだんですから」


最後に、ニコニコしながら、部屋に入ってくるのは、私のお母さん。


「大変だったわね。出張先で出産することになるなんて。でも、ミリーも赤ちゃんも無事でよかったわ。ねえ、赤ちゃん見せてくれるかしら?」

「うん」


私はお母さんに娘を見せる。

ユキさんとの愛の結晶であるユミを。


「うわーー!? ちっちゃいね!!」 

「可愛いよ。お姉ちゃん!!」


そしていつの間にかお説教が終わった2人は一緒に私の腕の中のユミを見て騒ぎ……。


「「いい加減にしろ」」


ゴンッ!!


「「あうっ!?」」


また拳骨を落とされていた。




そう、私は約一月振りにウィードに戻ってきていた。

理由は至極簡単。

子供が生まれたので人材や設備の整ったウィードに戻ってきたのだ。

長距離ゲート転移による妊婦への影響がわからなかったため、今まで私やリエル、トーリ、カヤの妊婦はバイデからウィードに戻らなかったが、出産をして、赤ちゃんとして個体に分かれたため、転移の許可が下りて戻ってきたのだ。

最初は子供がゲート転移でなにかあったらと不安におもっていたが、そこらへんは、バイデの乳児の捨て子などを保護してウィードに送ったという実績から安全だとわかっていたらしい。

私たちがバイデのダンジョン奥深くでのんびりしている間に着々とそういう解明を進めているあたり、ユキさんたちはよく働いているとわかる。


正直な話、リエルやトーリ、カヤの妊婦仲間を置いて、一足先にウィードに戻るのはためらわれたのだけど……。


『馬鹿なこといわないでいいよ。さっさとウィードの病院に行って体を見てもらわないと』

『うん。そうだよ。リエルの言う通り、ウィードの病院で見てもらって。リリーシュ様とかもいるんだから』

『……それに、ミリーの家族や仲間も心配しているし、ユミのことを楽しみにもしている。私たちは他の皆がいるから心配なんてしなくていい』

『どうせ、僕たちももうすぐだからね』

『すぐに、ミリーを追いかけるよ』

『……そういうこと。ミリーが先に行って、ゲートの安全を確認してもらうと安心』

『カヤ。それが本音ね』

『……全部本音』

『『『あははは……』』』


まあ、そんな冗談もあったけれど、ゲート移動の時はユキさんがしっかりと私とユミを抱きしめて、リーアにデリーユ、ルルア、アスリン、フィーリア、ヒイロ、ヴィリアが密集して、万が一があっても対応できるように厳重な体制で移動した。

結果はこの通り無事に移動ができたので、今となっては過剰だったとわかる。

ウィードに戻ってからは、一旦旅館に移動ではなく、すぐにウィードの病院に移動して、検査入院をすることになった。

とは言え、私はすぐに、リリーシュ様やルルア、えーっと、最後にルナの検診を受けて、特に問題なしと太鼓判をおされた。

ついでに、ユミにはリリーシュ様から加護も貰い。

ルナからは「名前からして弓術いるわよね?」ということで、赤ん坊に弓のスキルを最大レベルで付与してユキさんに怒られていた。

……銃器があるのに今更弓術って言われてもね。

というか、ルナは私たちの子供、つまり、ユキさんの子供に手厚く加護を加えて、信者化を狙っているらしいけど、無理じゃないかな?

悪い人? 神? ではないのはわかってるけど、気の良いお姉さんどまりよね。

まあ、下手に頑張って引っ掻き回す神様たちよりはかなりマシなんだけど。



そんなことがありつつも、特に問題もなく検査もおわり、こうやって、家族や仕事仲間がお見舞いに来てくれたというわけだ。


「うひゃー、みて、シェリー。指握った。やわっこい」

「あ、キナさんずるい。ユミちゃん、私の指を……」

「……2人とも、はしゃぎすぎてユミちゃんを泣かせたら……。どうなるか、分かってるわね?」

「「はい!!」」


……なんか、お母さん迫力が凄いわね。

すでに、娘のユミは隣にあるベビーベッドに移動していて、それを覗くように、キナや妹のシェリーがつんつんしていて少し不安だったのだが、お母さんのあの迫力を見て、凄く安心した。


「……なあ、ゲーデン。ミーンは変わってないな。あの迫力をまだ出せるとは思ってなかったぞ。現役退いてから、もう何年だ?」

「すでに20年以上前だな。まあ、だがあれでも若くしてランク5はあったんだ。モーブたちへ指導したぐらいだったしな。それはロックもしってるだろう?」


ゲーデンというのは私のお父さんの名前で、ミーンはお母さんの名前。

ロックさんの言うように、お母さんは元凄腕の冒険者で、若いころのモーブさんたちの指導もしていたそうで、その関係で仲良くさせてもらっていたのだ。


「まあな。でも、未だに不思議なんだが、なんであのミーンが、受付していたゲーデンと結婚したんだろうな」

「それは、俺が猛烈アタックしたおかげだな」

「お前、ランク的にはよくて4ぐらいだろ? ミーンは機会さえあればランク6や7って言われてたから、どこに魅力を感じたんだか」


お父さんの言う通り、愛は全てを超えるの。

私やユキさんのように、異世界の壁とか生まれとかでも愛があれば問題なし。

冒険者のランクとか関係ないのよ、ロックさん。

それがわからないから、未だに独り身なのよ。

まあ、ロックさんが長く独り身でギルド長をやっていたから、私も安心して冒険者をやって、ランクをある程度上げたあとは、すんなりとギルドの受付に就職できたんだけど。

勿論、お母さんからの地獄の特訓を受けてたおかげもある。


「ねえ。そういえば、お父さんにお母さん。仕事は平気?」

「ん? ああ、繁盛してるぞ。なあ、母さん」

「ええ。まえより売れてるわね」

「なんでまた、飲食店なんか開いてるかね。お前ら2人は普通に冒険者ギルドに就職してほしかったんだがな。まあ、今更か」

「すまんな。前も言っての通り、自分の店を持つのが夢でな」

「そうね。私もお父さんの料理に惚れたのよ」


実は、お父さんとお母さんはウィードに来て、ある程度働いてお金を貯めて、商業地区の一角で飲食店を開いていた。

昔と同じように。

お金は私が出すと言っても聞かずに、ウィードで真面目に働いてお金を貯めて、店を構えたのだ。

特に珍しい料理を扱っているわけではない。

この土地の料理だ。

ユキさんの地球からの絶品料理ではなく、地元の素朴な料理店。

正直な話、私はすぐ潰れるのではと心配した。

まったく、地球の料理と比べ物にならないから。

不味いわけではないが、美味くもない。そんなお店だった。


「ダブリクも毎日食いに来てくれたからな」

「そうね。あの子の為にも店をあきらめるのはできなかったわ」

「……すまん」


ロックさんが謝る。

ガルツとロシュールの戦いで、私の弟、ダブリクは街を守るため、若い命を散らした。

そのダブリクが本当に好きだったかはわからないけど、毎日通っていた実家の料理屋。

だから、お父さんもお母さんも自分の手でまた店を開くって言ってきかなかった。


「謝るな、ロック。誰が悪いわけでもない。もう終わったことだ。ダブリクも自分の意志で街の為に戦った。それだけだ」

「そうよ。私の息子は街を捨てて逃げるような腑抜けじゃなかっただけよ。だから、私たちも一度店が無くなったからってあきらめるわけにはいかないでしょう?」

「……そうだな。でも、なんで繁盛してるんだろうな?」


そう、そこが不思議だ。

なぜか、お父さんの店は前よりも繁盛している。


「うーん。よくわからんが、ユキさん曰く。地元の料理だからだそうだ」

「珍しくて美味しいのもいいけど、人は昔から食べていた料理が懐かしくなるそうよ。だから、私たちがお店を開きたいって言ったら、喜んで承認してくれたわ。ラッツさんやエリスさんにまで繋ぎを作ってくれたわ」

「まあ、他の地域の料理もって言われて、色々人を雇って味を再現するのは大変だけどな」

「なるほどな。確かに、無性に美味くもない故郷の料理が喰いたくなる時はある」

「というか、ロックも私たちの店にはしょっちゅう顔を出してるじゃない」

「2人とも、美味くないってところは否定しろ」

「「「ははは……」」」


あ、ユキさんがちゃんとフォローしてくれてたんだ。

しかもこっそり、ちゃんと故郷を離れた人たちが寂しくないように、食生活の変化に悩まないように、始動した故郷の料理再現プロジェクトの内容じゃない。

なるほど。こうやって、計画に巻き込むことで、補助金を出したわけね。

確かに、私からただお金を出すって言われても受け取りにくいから、ユキさんが気を回してくれたんだろう。

後でお礼言っておこう。

私がそう思っていると、雑談をやめた3人が真剣な顔で私を見ていた。


「え? どうしたの?」

「いや、ミリーが無事なのはわかったから、そろそろ本題でも聞こうかと思ってな」

「本題?」

「ええ。出張先で出産。本当にそれで納得すると思う?」


あ、やばい。

お母さんのあの顔、絶対疑っている。


「平民の私たちにまであれほど気を使ってくれるユキさんが、妊婦であるミリーを出張に連れまわすはずもないからな。しかもいつでも会いに来れるように許可もだしていたほどだ。それが、一か月近く音信不通だ。ただ、無事です。と、精気のないラッツさんやエリスさんに言われても安心できるわけがない」


ああ、なるほど。

随分、ラッツもエリスも荒れてたって聞いた。

そこからばれてたか。

一応指定保護してあるから情報封鎖の制約はできるし、家族に隠し事はよくないって話す許可も貰っているから、教えてもいいんだけど……、逆にラッツやエリスみたいなに不安定になって問題にならないかな? と考えていると、キナとシェリーがユミの相手を終えたのかこっちに来て口を開く。


「ミリーが素直に話さないってことは色々事情があるんだろうけど。……それでもね。聞きたいんだ。他の皆もひどかったからね。ラッツやエリスはピリピリしていたし、リーアとか放心していた。友達としては何もできないってのは心苦しいんだ」

「そうだよ。お姉ちゃんたちの力になりたいよ。気が付いたら、お兄ちゃんが死んでたとかもう嫌だよ。何をしているの? 私もなにかできることはない?」


そんな2人の真剣な表情を見て、私は今回の事件を話すことに決めた。

いつまでも、私たちだけでやっていける仕事ではないってユキさんも言ってたし、話すことを許可してくれたのは、こういうことを予想しての事だろう。

私も、みんななら感情に任せて暴れるようなことはないと信じる。

ユキさんが私たちを信じて、色々教えてくれたように、私も家族を友達を信じる。


「わかった。話すわ」

「いや、まて、ミリー。国家機密のようなことなら……」

「大丈夫。ユキさんやセラリアには許可を貰ってあるから」

「そうか。なら、頼む……」


一応、コールでウィードのゴブリン警備隊に連絡して周りを固めてもらって、防音の魔術も施したうえで、今回の事件を話すことにする。

ユキさんを狙った誘拐召喚に私たちが巻き込まれて、新大陸で国を相手に立ち回ることになったこと、妊婦である私たちはゲート転移の影響がどうでるかわからないから、出産するまでは移動ができなかったこと、そして騒動が一段落して、私も出産したので、無事を知らせるために戻ってきたということを、小一時間ほどで話した。


「……うーん。なんか、聞かなかった方がよかったかな」


と、キナが呟く。

そりゃそうでしょうね。

いま、イフ大陸との大陸間交流の準備で冒険者ギルドも色々慌ただしい。

そこに新大陸発見!! などという事実は面倒極まりない。

聞かなかった方がいいのは同意だ。


「バカなことは言うな、キナ。ミリーの信頼を裏切るつもりか?」

「あ、いや、冗談だよ、ミリー」

「わかってる。あとでケーキワンホールね」

「えー!?」


と、そんな冗談を言っていると、シェリーが震えて怒り出した。


「笑い事じゃないよ!! お姉ちゃん、ユキお兄ちゃんと一緒に攫われたんだよ!? ユミちゃんも危なかったかもしれないんだよ!! なんでそんな国を助けるの!! 滅ぼせばいいじゃない!!」


バチン!!


誰かがシェリーの言葉に答える前に、そんな音が鳴り響いた。


「お、かあ、さん?」

「落ち着きなさい。シェリー。確かに、その気持ちはわかるわ。下手をすれば、ミリーやユキさん、ユミが命を落としたかもしれない」

「ならっ!!」

「でも、それで関係のない人々に、ダブリクのような死を出していいと思ってるの? 戦争なんて起こせば、関係のない人が巻き込まれるのはあなたもよく知ってるでしょう?」

「……それは」


シェリーはそう言いよどんで下を向く。

ちょっと、シェリーには早かったかしら?

でも、アスリンたちも納得してくれたし、分からないはずがないわよね。

だから、私はシェリーに優しく話しかける。


「ねえ、シェリー。お母さんの言うように、その気持ちは私もよくわかるわ。ユキさんが攫われたとか言われたらきっと卒倒して、怒りが爆発すると思う」

「そうだよね!!」

「でも。ユキさんはそれを望まないわ。そして私もそれをよく知っている。戦争なんて起こせば関係のない人たちが沢山巻き込まれるわ。そんなのは私たちだけで十分」

「でも、そんなのは理想だよ……」

「そうね。でも、誰かが頑張らないと理想は届かないわ。それに……」

「それに?」


私は体をベッドから起こして、泣いているユミへと近づき抱き起す。


「私は自分の子供に誰かを殺したり、殺されたりとかいう悲しみや憎しみは背負ってほしくないわ。この子の未来の為にも、私は平和のために頑張るわ」

「……お姉ちゃん。ユキさんが誰かに殺されても我慢できるの?」

「……わからないわ。でも、世界が平和になれば、それはみんな幸せでしょう? 私もユキさんも他の皆も無事でそれを作ればいいのよ。夢はおっきくね」


私がそう笑っていると、ユミも泣き止む。

それを見たシェリーも、顔の険しさが取れていく。


「……ふう。わかった。わかったよ。お姉ちゃんが無理しないように、私が助ければいいんだ」

「いや、みんなで助けるんだ。事は国のことだからな。いつまでも、ミリーたちに頼っていいことじゃないからな」

「そうね。まあ、手伝うって言ってもシェリーはもっと勉強して、まずは試験に合格しないとね」

「試験?」

「そうよ、この子、エリスさんの仕事ぶりに感化されて、庁舎で働きたいっていって勉強しているのよ」

「そうだよ。エリスさんかっこいいから」


へー。あの地獄の会計部署志望とはね。

その辺の事情を知っている、ロックさんとキナは苦笑いをしている。


「ま、がんばりなさい。大きいことを言う前に、まずは試験に受からないとね」

「見ててよ。今年の試験絶対合格してやるんだから。ユミちゃんが大人になるころは、会計の代表だね」

「へー。それは期待しておくわ。冒険者区の増額は願ってもないわね」

「なるほど。今から、シェリー嬢ちゃんには媚を売っておくべきか?」

「私は受付に戻してほしいなー」

「「「それはダメ」」」

「「「あははは……」」」



そう。

こうやって、みんなで平和に、幸せになる方法を頑張って探していくことこそ、ユキさんの望みなんだから。

それが、きっと世界を覆う魔力枯渇問題を解決するカギになる。






ミリーというより、ウィードの一般市民の視点って感じですね。

こうやって、ユキたちだけではなく、ウィード全体で平和とかそういう物の為に取り組む人たちが増えていくわけです。


ああ、前回の馬鹿なことを考えていたユキより、完全にまともなお話だったので


「みんながしあわせになるほうほう」


から


「皆が幸せになる方法」


となりました。


さて、今回で7月の投稿は終わりです。

次回は8月1日となりますが、皆さま夏をどうお過ごしでしょうか?

満喫しておりますか?

自分はいまだ仕事が忙しいですね。

蝉もうるさいものですが、やっぱりこれが夏だなーと思うものです。

まだまだ夏は始まったばかり、色々満喫していきましょう。


皆々様も、夏ばてなどされないよう、十分体にお気をつけてください。



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[一言] 上部の広告タグに「誰と結婚する?」 という広告があってサブタイかと思ったよ・・・
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