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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第560堀:束の間の休みと早すぎる仕事の再開

束の間の休みと早すぎる仕事の再開




Side:セラリア




いつものようにウィードの執務室で報告書に目を通す。

これは、商業地区でのイベント予算の申請書ね。

……うん、特に問題は無し。

確認した後にハンコを捺して、横の椅子に座っているクアルに回す。

クアルも慣れたもので、私から回された書類に不備がないか確認して、最終的に配る部署分けボックスに入れる。

これがいつもの女王の仕事だ。

謁見は午前中で、午後は専らこういった書類仕事で、夜にたまに他国のお偉方との会食ぐらい。


「しかし、そろそろ限界ですね」


無心に書類整理をしていると、不意にクアルがそんなことを言う。


「ん? なにか緊急の案件でもあったかしら?」

「いえ。ユキ様が公の場に顔を出さずにいるのはもう限界かと、という話です」

「あー。かれこれ一か月半ぐらい顔を出してないわよね。新大陸の件で」


いきなり新大陸に連れ去られて、緊急措置で私たちがロガリ大陸、イフ大陸の大陸間交流の橋渡しを受け持っているのだが、両大陸で一番顔が利くのは間違いなく夫なのだ。

そういうわけで、夫がしばらく顔を出していない状況に、各国が首を傾げているというわけだ。

夫を挟めばスムーズに行く話も多々あるでしょうし。あの夫の悪知恵と言葉の使い方はものすごいものがあるからね。


「その新大陸も落ち着いたと聞きますし、何とかこっちに顔を出してくれませんか? というか、奥様たちの大半も大陸間交流の役職でかなりユキ様のことは言われていると思うのですが……」

「そりゃ、言われてるわよ。私だってクソ親父から息子はどこに行ったとかここ最近よく聞かれるし。ジェシカとかサマンサは国の方から矢の催促よ。繋ぎを頼むって。でも、だからと言って、新大陸をほったらかしにするわけにもいかないでしょう? あっちはあっちで緊急事態だったし」

「まあ、それはそうですが……」

「一か月半ぐらいは予定が合わないという理由で日程ずれぐらいで済むわよ」

「でも、流石にこれ以上は不味いですよ」

「わかっているわよ。つい、一昨日ハイデンの方への殴り込みが成功して、戦争賛成派は今回の件で縮小、融和派が一気に盛り返すことに成功したと言っていいでしょう。その結果、向こうはお偉方で集まって連日会議。ユキたちの出る幕は当分ないわね。ハイレ教の方はスティーブやジョンに探らせているみたいだけど。もうユキをこっちに戻してもいいでしょう。バイデの方はシェーラたちを残してトーリたち妊婦の護衛と連絡役ね」

「自分で言ってはなんですが、ハイデンでお知り合いなられた方々の護衛などはどうするのですか? 暗殺などが起これば今の状況が水の泡になりかねませんが?」

「そこらへんはデリーユが対ハイデンの外交官ということで、エオイドとアマンダと一緒に修行しながら残るそうよ。タイキは基本的にドッペルで、中身は暇なときに行くらしいわ。ま、タイキの方は王様だからね。あ、タイキの護衛のルースも同じね」


これを抜かれて暗殺されたなら仕方ない。

まあ、すでに主導権は握っているし、そういうことは起こらないと思っているからこそ、バイデについて行ったんだけどね。

デリーユたちも基本的にバイデだし、ウィードと仲の深い連中は指輪渡しているから、すでにダンジョン化しているハイデン王都では転移で避難できるし、元々防御性能が飛びぬけているから、なんの心配もいらない。

タイキやルースの方は、男尊女卑のお国柄故舐められないように、ドッペルを置いているのだ。

エオイドは……まだ経験が不足しているからね。


「それはそうでしょう。というか勇者であり国王を顎で使うとか、普通ありえませんから」

「顎で使うというより、友人のお願いよ。さんざんこっちに世話になってるんだから。あと、イフ大陸の時もそうだけど、新大陸との交流で、他のロガリ大陸の国々より一歩抜きんでているから、国としても有益よ」

「本当に、何事も言いようですね」

「夫に言ってね」

「無理です。口で勝てる気がしません」

「私も同感」

「で、その口が達者なユキ様はこっちに来てもらっていいわけですね?」

「ええ。問題ないわ。こっちもそのつもりだったし。だけど……」

「だけど? 何か問題でもあるのですか?」

「クアル。貴女この件の一番の問題が何かわかってないわね?」

「はい?」

「昨日の0時ぐらいについにミリーが出産したのは聞いたわよね?」

「あ、はい。ミリー様はご無事にご息女を出産されたとか」

「そうよ。私たちのかわいい娘たちに、超かわいい妹が生まれたの。一家でわいわい状態よ。というか、むしろミリーの子供が生まれたから、新大陸の方は一気に戦力をバイデに戻したのよ」

「……つまり、ユキ様も」

「残念ね。私たちが夫を溺愛しているように、夫は子供たちにはデレデレなのよ。最近忙しくて子供たちと遊んでなかった夫は、ミリーの子供が生まれたことを理由にのんびりしているわね」

「……はぁ。なんて難儀な。しかし、仕事をしてもらわなければ困ります」

「それはわかってるわよ。でもねー。あの夫を子供から引き離すのはかなり大変なのよね……」

「そこを何とか……」

「わかってるって。大丈夫、最終手段はあるから」


ということで、私の仕事は通常業務に加えて、ようやく無理やりねじ込んだ休みを使って娘たちと遊んでいる夫を職場に引きずり出すという時間外労働が加わったのだ。

ははっ、夫と娘の団欒の時間を壊すのが女王の仕事とか、くそったれな仕事もあったものね。

本当に夫は上手く適当な立場に就いたものね。

そんなことを考えながら、書類仕事をこなしていき、気が付けば仕事の時間は終わり帰路についていた。



「さて、とりあえず。家に帰ったら夫に大陸間交流の方へ戻ってくれって話してみましょう」


何事も、言った、伝えたという前提は大事と夫も言っていた。

そのあとの実力行使がやりやすくなるから。

ある種の免罪符である。言っても聞かなかったから仕方なくという奴。

で、バイデの方の家に戻ると時差のせいで8時間前であり、まだお昼を過ぎたばかりだ。

ウィードで仕事をしているメンバーの生活はこうして、夕方に仕事を終えてお昼のバイデに戻っては、晩御飯を食べて、夕方には寝て、深夜に出勤して、朝のウィードへ仕事に出るという凄まじい生活スタイルになっている。


「はぁ、このせいもあって無理は言いにくいのよね」


時差による生活の変更がものすごく体に負担なのだ。

そして一番つらいのは……。


「あ、ままー」

「おかーさん」

「お、帰ったか。セラリア」

「ええ。ただいま」

「「おかえりなさい」」


そういって出迎えてくれる、我が娘のサクラとルルアの娘であるスミレ、そして夫なのだが……。


「ねー。ままー、あそぼー」

「ごほんよんでー」


この子供たちの懇願を受け入れるわけにはいかないのだ。

晩御飯を食べて休まなければ、明日が持たない。

最初はどうにかなると思っていたが、3日と経たず執務室で爆睡してしまって、子供たちと遊ぶのは控えているのだ。


「ごめんね。お母さん。お仕事で疲れているから、ごはんを食べて休まないといけないの」

「えー。またー」

「ううー。いつ、あそべるの?」


子供たちが悲しそうな顔でこちらを見る。

ううっ、なんで子供たちと一緒に居られないのよ。

こんなの本末転倒じゃない……。

仕事が憎い!!

こんな悲しそうな顔をさせる仕事が!!

そんな感じでイライラが溜まっているのを察したのか、夫がフォローをはじめる。


「無理を言っちゃだめだぞ。セラリアお母さんはサクラたちの為に一生懸命に働いているんだから。そしてサクラとスミレも、もうお姉さんだろう? 妹たちの見本になる立派なお姉さんを目指さないとな」

「うー。わたしおねえさんだからがまんする」

「わたしも、おかあさんおしごとがんばって……」

「よしよし、いい子だ。じゃ、ご褒美にお父さんが今日は遊んであげるぞ」

「「わーい」」


ふう。

なんとか、この場は切り抜けられたけど。

これじゃやっぱり言い出し辛いわねー。

私なら、子供をほったらかしにして仕事に戻れとかいわれたらキレるわね。

いや、キルエとかサーサリがちゃんと面倒をみてくれるんだけどね。

ともかく、ここで考えても仕事は減らない。これ以上の引き延ばしもキツイ。

なら言うしかないわよね。

ということで、食事を終えた後、夫の所へ行くと、お昼寝をしている娘たちを見守りニコニコしている夫がいた。

そりゃ、そうでしょう。

天使たちがかわいい顔で寝てるんですから。

私だって頬が緩む。


「みんな寝てるのね」

「ああ。さっき寝た。みんな元気だよ。最近仕事が忙しくてあまり構ってあげられなかったけど、みんな結構重くなったよな。立派に育ってる」

「ええ。そうね」

「ミリーと娘のユミの方は元気そのものだってさ」

「それはよかったわ」


ミリーの娘はユミという名前に決まった。

勿論女の子。

名前の由来は弓ではなく、ユキとミリーの名前を一文字ずつとったから。

漢字的には優美、優しく美しくの方らしい。

そして、しばし沈黙してすやすやと寝ている天使たちを眺める。

私たちはこの平穏を守るために頑張っているのだ。

だから、だからこそ、言わなくてはいけない。


「ねえ、あなた」

「どうした?」

「……ハイデンの方は一旦落ち着いた。だから、大陸間交流の方に……」

「俺は忙しい嫁さんたちの代わりに娘たちと一緒にいてやるって決めたんだ」

「……気持ちはわかるけど、あなたがいないと……ね?」

「嫌だ。俺はもう働きたくない。子供たちを立派に育てるだけの蓄えはあるだろう? 魔力云々とか神様とかどうでもいいから。邪魔をするなら滅ぼせばよくね?」

「はぁ。落ち着きなさい。今のあなたの実力じゃ冗談に聞こえないわよ」

「冗談なものか。子供たちとの一家団欒をじゃまする奴は神だろうが悪魔だろうが、国だろうが滅ぼす」

「……とりあえず、一家団欒を邪魔するなら私も容赦はしないけど、今回のことは仕方ないでしょう?」

「いやだー。娘たちと遊ぶって約束したんだ。俺は約束を破る汚い大人になんかならないぞ!!」


いや、あなたは噓八百、口八丁手八丁でしょうに……。

むしろ、穢い大人の代表みたいなものでしょう?

とにかく、これ以上、今話しても無駄ね。

子供たちも起きてしまうし、一旦引きましょう。


「俺は働かないぞー。俺は今まで頑張ってきたんだからなー」


と、言う夫に私は何も言えないのも事実だった。

はぁ、みんなに相談して、作戦がないなら最終手段を使うしかなさそうね。

頭を抱えて、みんなに招集をかけることにした。

そして、特に時間もかからず、みんな集まる。

さっさと寝ないといけないウィードでの仕事メンバーもいるし、手早く話を進めましょう。


「……というわけよ」

「お兄さんの悪い癖がでましたねー」

「しかし、言ってることは尤もじゃから厄介じゃな」


私が夫の仕事復帰の話を話すとみんな苦笑いだ。

ラッツの言うように、悪い癖ではある。イフ大陸を調査中に私たちが子供を産んだ時もこうやって仕事をしない。平和にひっそり暮らすと言ったのだ。

だが、デリーユの言う通り、今まで頑張ったから休んで何が悪いと言われると、こっちも何も言えない。この世界で夫以上に働いている人物を挙げろと言われても困る。


「今、大陸間交流をスムーズに進めるには、ユキの協力が必要不可欠です」

「ジェシカの言う通りですわ。イフ大陸では、ユキ様は英雄として勇名を馳せておられますし、私との婚姻や、王位継承権こそないものの、二大国の王族という立場もありますのでユキ様なしで話を進めるのは難航しますわ」

「ん。というか、ユキが顔を出さないことがトラブルの原因になりかねない。現状、両大陸の王たちに顔が利くのはユキだけ。ユキが出ないとどこかで隠されているなどと勘繰られる」


ジェシカ、サマンサ、クリーナの言う通り、イフ大陸との交流においてユキという存在は絶対的な潤滑油だ。

私たちもある程度はこなせるだろうが、傭兵団のリーダーとしてイフ大陸を暴れまわっていたユキが一番なのだ。

それはある意味、抑止力でもある。

ユキに敵対した馬鹿共はあっという間に叩き潰され、ジルバ、エナーリアに至ってはサマンサの言う通り、ユキを押さえつけるためにも停戦をしたわけだし、王位継承権はないものの王族の血縁、一族だという無茶な設定をつけたのだから。

だからクリーナの言うように、ユキがいないことで、均衡が崩れて戦争状態に陥っても不思議ではない。

そうなれば、もっと忙しくなるのは確実だ。


「ここまで頑張ってきたのに、無に帰するわけにもいきませんし、ユキさんには何とか頑張ってもらうしかないのですが……」

「でも、お兄ちゃんはサクラちゃんたちと遊ぶーって言ってきかないよ?」

「はぁ、どうしたものかしらね」


エリスとアスリン、ラビリスは困ったという表情をする。

だが、そこでキルエとサーサリが口を開く。


「……本来であればこのような手段はとりたくないのですが」

「……ですね。でも、ユキ様が動かなければいけないのですから、やらないと」

「何かいい案があるのですか?」

「あるのです?」


2人の話にシェーラとフィーリアが首を傾げる。

どうやら、キルエとサーサリは私と同じ答えにたどり着いたようだ。

ま、ここからは女王である私が話すべきね。


「簡単よ。私たちからが駄目なら、子供たちから言ってもらうのよ」

「「「あー」」」


そう。

夫が弱いのは子供。

前回はまだ子供たちが喋れなかったから渋々という感じだったが、今ではその子供たちはもう3歳。

つまり、直接意見を言えるのだ。



「ままたちにばかり、はたらかせるのはだめだよー。ぱぱー」

「ぱぱがてつだってくれれば、ままたちもやすめるっていってたよ」

「「「ぱぱー。おしごとがんばってー」」」


「よーし!! パパは頑張るぞ!!」



その姿を見て、とてつもない罪悪感を感じる私たちであった。





すいません スプラトゥーン2やっててわすれてました。


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