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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第556堀:異議あり

異議あり




時にハイレ歴523年。

この年はハイレ信者にとってとても重要な事件が起きる。

原因は遥か昔だか、発端、顕在化したのはこの一帯に存在する有力国家二国の武力衝突からなのは間違いない。

その二国の一つは、ハイレの名を冠する遥か昔ハイレによって選ばれた3英雄によって起こったとされる魔術国家ハイデン。そして、そのハイレの3英雄と共に戦ったとされる武門の国である歴史あるフィンダール帝国。

この二国が500年の時を経て武力衝突することになった。

かつては盟友同士だとしても、国の為に敵対することなどはよくあることだ。

だが、今回はそういうものではなかった。

不可解すぎる外交不和。

戦争を望んでいるかのようなハイデンの立ち回り、動かざるを得なかったフィンダールはハイデン領はバイデという交易都市へと進軍。

そこでついに武力衝突が起こる。

そしてそのまま、二国が争っていればただの戦史の一つとして終わっていたのだろうが、そこで単なる戦史になるはずだった争いを事件の発端に変えてしまう出来事が起きる。


不意打ちに近い形で攻め寄せたフィンダール帝国を迎え撃つことになったバイデの戦力は、当時その場に演習に来ていた魔術学生とバイデに駐留している僅かな軍。

合わせて五千になるかならないか、対してフィンダール帝国は確実にバイデを取りに来るつもりだったので十万以上という圧倒的戦力差が存在していた。

当時、ハイレ3英雄の血縁である、御三家と言われる名家の内二家の若者がいたが、それでも十万の敵を押しとどめることは不可能だった。いや、敗北は決定していた。

そこで二家がとった行動は降伏でもなく、ましてや自害でもなかった。

500年前に存在した3英雄の1人は異世界から召喚されたという話が伝わっており、それは事実であった。だからこそ、バイデで敗北を待つばかりだった二家は英雄召喚を行ったのだ。

その結果、英雄召喚は成功し、力を借りて、二家はフィンダール帝国を追い返すのではなく、和解に成功。

自国の不審な動きをしり、平和のために手を取り合い動き出す。


調査の結果、数年前に遥か昔に消え去ったはずの魔物を操っていたリラ王国の影がちらつく。この集団はハイデン国内では叡智の集と名乗っていて、ハイデンを陰から操り、戦争への道を進んでいたのであった。

その事実を知ったキャリー・ハイデン、カグラ・カミシロ、スタシア・フィンダールという英雄がハイデンを救うべくハイデン王都へと乗り込み、王へ取り入る叡智の集を追い出すための行動を起こす。




Side:ユキ





そんな歴史書を適当に書きつつ、ジョージンやカミシロ公爵と一緒にことが起こるのを待っている。


「ふむー。間違いではないですが、これではユキ様のご活躍がまったくないものとなっておりますがいいのでしょうか?」

「そうですね。これでは英雄が召喚されたのはわかりますが、あとは全てキャリー姫、カグラ、スタシア殿下の成果になっておりませんか?」


そう俺が入力しているPC画面をみてコメントをする2人。

現在、タークラムとクレイが王城に乗り込んで、あらぬことを進言するのを待っている間に、今回の統括で一般的にわかりやすい英雄伝として流布するネタを書いているのだ。

あ、すでにハイデン王やキャリー姫のお母さんとも顔を合わせている。

勿論、手紙の回収も終わって、詳しい内容も全て伝えている。

今まで必死に国を保たせてきた人たちだけあって、娘たちのいうことを切って捨てるような馬鹿者ではなかった。

まあ、証拠があったからというのが一番大きいだろうが。


「間違いじゃなけりゃいいんですよ。ウィードが主導でハイデンとフィンダールの武力衝突を収めて和平に尽力したとか書けば、二国の威信は落ちるでしょう。それは今後の展開的に面倒でしょう」

「まあ、そうですが……。ウィードの事は黙ってるわけにはいきますまい」

「ジョージン殿の言う通り、ウィードの助力を隠して手柄を独り占めするようなことは恥でありますな」

「まあ、世間的にってやつですよ。手助けをした英雄が国家であったなんてのは一般市民が混乱するだけでしょう。国家介入があって停戦をせざるを得なくなったって書いても意味わからんでしょうし」

「うーむ。確かに、ウィードという国家がいきなり介入してきたなど、意味不明ですな」

「しかし、下手に隠しておけば、手柄を横取りしたなどという輩は出てくるでしょう。ハイデンやフィンダールの威信が落ちるのを喜ぶ者にとっては格好の話ですから」

「そこはわかります。ですから、折を見てウィードから人を適当に選出して英雄に仕立て上げましょう。隠していたのは他国からの介入を避けるためとか、そういうことを言えば大丈夫でしょう」

「そのいいかたですと、ユキ様が英雄にならないので?」

「というか、ユキ様が英雄そのものではないでしょうか? 日本からいらした人物でもありますし」

「これ以上仕事を増やすわけにはいきませんので。この問題がある程度沈静化したら、ハイデン、フィンダールとの国交はもちろん、他の国々との話し合いがあるものですから」

「……ああ、そうでしたな。これが終わりではありませんでしたな」

「……始まりでしたね。となると、今回の英雄に祭り上げられたキャリー姫、我が娘カグラ、そしてスタシア殿下はうってつけというわけですか」

「そうそう。看板としてはちょうどいいし、未だに国政の重役というわけでもない。スタシア殿下が将軍なのが心配なぐらいだな」

「そこは姫でもありますからな。陛下ならばすぐに姫としての活動をご指示なさるでしょう。今、スタシア殿下が演じるべきは将軍ではなく、友好の為に、手を結んだ英雄姫という立場が大事ですからな」


そんな感じで、おっさん3人で今後の予定を話し合っていると、謁見室に馬鹿共が乗り込んでくる。


「タークラム。そして、サーベル隊のクレイか。一体どうした?」


そう問うのは、おひげがある偉丈夫なダンディなハイデン王。

キャリー姫の叔父というからそれなりの歳かと思えば、実は30前半。

キャリーの親父、前王とは実に10ほど年の離れた兄弟だったらしく、その結果、すでに王位が確定していたキャリーの親父とは確執もなく、仲の良い兄弟としてやっていたそうな。

なので、今回の不本意な状況を生み出した馬鹿共の捕縛については、証拠を見せると……。


『穴埋めはこちらでする。徹底的にやれ。兄上や義姉上の願いを踏みつけ、友好国であったフィンダールに泥を塗り古傷を抉り出し、あまつさえ、姪のキャリーや我が友、公爵の娘であるカグラに手を出した馬鹿共を叩き出す』


とブチ切れていた。

既に、タークラム以下、名簿に載っていた連中の家には兵士が包囲に向かっている。

つまり、ここからは出来レース。

馬鹿共が素直に罪を認めるか、暴れてさらに立場を悪くするかだけの話だ。

逃げ道はすでに存在しない。

ちなみにハイレの件はキャリーと同じような意見で、動きを観察するということに賛成だった。

まあ、余計な藪をつついて蛇が出てきたら嫌だからな。

そんなことを思い出しつつ、俺たちは謁見室の隣の部屋、近衛控室でその馬鹿共の嘘八百をきく。


「はっ!! バイデの件でございます」

「バイデ? すでに我が姪と公爵の娘カグラ、そしてバイデ領主キャサリンがフィンダール軍を撃退したと、タークラム、お前自身がそう報告していなかったか?」

「はっ。その通りでありますが些か違和感があり、こちらのサーベル隊隊長、クレイ・イゴット殿の協力を得てバイデを探らせたところ……。こともあろうに、キャサリンめの奴が全て企んだことだというのが分かりました」

「どういうことだ? クレイ。そなたが見たものを言ってみよ」

「はっ。恐れながらタークラム様の言うことは事実であります。私がバイデで目にしたのは、キャサリン殿がキャリー姫、そして私のカグラを虜囚として扱い、フィンダールの軍の者と話しておりました。つまり、バイデに敵が攻めてきたのではなく、キャサリン殿がバイデに招き入れたのです!!」


うん。

やっぱり言葉って不思議だわ。

こいつらの言っていることは何一つ間違ってはいない。

なのにこいつらの言葉から感じるのは、フィンダールは敵、キャサリンも敵。ということだ。

停戦したという事実を知らなければ、裏切り行為に見えるよな。

これを先に伝えられればキャサリンは敵として処断されることになっただろう。

だが、残念ながらタークラムとクレイの思惑はすで外れている。なにせ、俺たちがすでに王と接触しているからだ。

今の発言は自分の首を絞めただけだ。

この場で罪を告白して許しを請えばまだ助かったかもしれないが、その道もついえた。

恐らく、ハイデン王もそういう温情の場を与えたという建前が欲しかったんだろう。

ともかく、これで堂々とタークラムとクレイ、その他は処分されることが決定したのである。


「そうか。そうだったのか」


ハイデン王はしきりに頷く。

その反応を好感触と見たタークラムはさらに言葉をつづける。


「そうなのです!! あの性悪女キャサリンは、我がハイデンを売り、帝国へと寝返りました!! 今この間も、姫様やカグラ殿はとらわれております!! 国を救うためにもバイデ侵攻、いえフィンダール侵攻を意見具申いたします!!」


その熱演は素晴らしい。

国を救うために立ち上がった英雄にも見えなくはない。

何も知らない謁見室にいる人の半数は「姫様を救わなくては」「逆賊キャサリン許すまじ」とか言って乗せられている。


「あい分かった」

「では!!」

「うむ。だが、焦りは禁物だ。実は私の方でも同じような情報を得ている。その者たちの話を聞いてからでも遅くはあるまい」

「は? 他の者でありますか?」

「そうだ。入ってくるがよい!!」


そして、満を持して入ってくるのはキャリー姫、カグラ、スタシア殿下、そしてキャサリン。

護衛にヴィリア、ドレッサ、ヒイロ。

ちなみに俺の護衛はデリーユとリーアが付いている。

で、その囚われのはずの姫とカグラが出てきたことで、状況は一変する。


「ひ、姫様!? カグラ殿!?」

「なぜここに!?」


びっくりしているタークラムとクレイをよそに、ハイデン王は話を続ける。


「さて、我が姪のキャリーよ。先ほどの話は事実か?」

「いいえ。まったく違います」

「そうか。では、キャサリン。お前はキャリーやカグラをフィンダールに売り渡したのか?」

「いえ。それではこの場にいることがありえません」

「ふむ。そうであるな。では何があったのか?」

「はい。陛下。私やカグラ、そしてキャサリン伯爵、果ては、カミシロ公爵もそこのクレイ・イゴットに暗殺されそうになりました」


ザワッ!?


と、謁見室が騒がしくなる。


「静まれい!! ほほう。タークラムやクレイの話とまったく違うな。どっちを信じたものか?」

「へ、陛下!! 姫様はあのキャサリンに騙されているのです!!」

「なるほど。キャサリンが横で脅しているというのか、つまり今キャリーは命の危険にさらされているということか」


その発言で、謁見室いる兵士が一気にキャリー姫たち、いや、キャサリンをとり囲む。


「さて、キャサリン。今のタークラムの発言を覆す証拠は何かあるかな?」

「はい。ございます。こちらをご覧ください」


そういって取り出したのは、ビデオカメラ。


「それは何かな?」

「はっ。私たちの窮地を救ってくれた英雄からもたらされた、その場の出来事を記録する魔道具であります。これを使用する許可を頂けますか?」

「ふむ。許可しよう。しかし、妙な動きをすればわかるな?」

「はい。では頼みます」


キャサリンはヴィリアたちに設置を任せる。

ヴィリアたちにはアイテムボックスからテレビを取り出し、まずは先ほどのやり取りを記録したのをみせ、この道具がその場の事を記録する道具というのを証明する。


「なるほど。これは間違いなく。その場の出来事を記録する道具であるな。素晴らしいものだ。そして、これにタークラムやクレイが襲ったという証拠があるのだな?」

「はい。ご覧になられますか?」


この時点でキャサリンを囲んでいた兵士たちはタークラムとクレイを囲んでいた。

つまり、周りの人たちもタークラムとクレイが姫たちを襲ったと確信したのだ。

こんな道具を持ち出してくるのだから、確実な証拠があると思うのは当然だな。


「ふむ。その前に、タークラム、クレイ。もう一度問おう。お前たちが言ったことに間違いはないのだな?」


その問いには答えず、タークラムが叫ぶ。


「クレイ!! その魔道具を壊せ!! そうなれば証拠はない!!」

「はっ!!」


そういって、クレイはビデオやテレビに飛びかかるが、ドレッサたちがいるのを忘れている。


「なに、あんた。私たちのこと忘れたの? あ、馬鹿だったわね」

「なに、きさ……ぐわっ!?」


ドレッサはそういって、かかと落しでクレイを叩き伏せる。


「きさぐわって何よ。ドレッサよ。私は」


それと同時にヒイロがビデオを再生して、魔物を使って姫たちを襲ったときの凶行をハイデンの面々に見せつける。


「……今の行動然り、記録然り、タークラム。弁明はあるか?」

「わ、私は関与しておりませぬ!! そのクレイが勝手にやったこと!! 私は被害者であります!!」


この期に及んであきらめの悪いこと。

確かに、この映像はクレイの単独犯でしかない。

しかし、この映像記録がある時点で自分が探られていたとは思わないのかね?


「そうか、ではヴィリア殿。次を頼む」


さてさて、この演劇も終盤に入ってきましたよ。

とりあえず、俺が動かないでいいのは助かるよなー。





異議ありどころか、証拠突き付け。

こういう世界で記録映像というのは便利極まりなのです。

プライバシーとかないしね!!


あとは、タークラムさんの最後の頑張りに期待。

変身をあと3回のこし、ハイデン王都を血の海にして、最終決戦を挑む!!

ユキたちは果たして勝てるのか!!


そんなネタにはなりそうもありません。



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