第518堀:バイデのおるすばんできるかなー?
バイデのおるすばんできるかなー?
Side:ジョージン フィンダール帝国所属 帝国の大鷲将軍
ようやく、門から出て行く姫様御一行。
いや、ユキ様御一行だな。
あのお姫様はただの見世物、お飾り、それぐらいにしか役に立たぬ。
本人が悪いわけではないが、あれではな。
……そういう意味では、ハイデンは今まで上手く立ち回っていたというべきか。
しかし、その立ち回りが原因でユキ様たちがこの大地に来られた。
「ある意味、この流れは必然だったのかもな」
ハイデンの方はもう流れが決まったようなもの。
ユキ様を相手にまともな交渉ができるか見ものよ。
大方、己の力に酔って潰されるが落ちだろうがな。
いや、その場面を見れないのはいささか惜しいことをしたか?
ユキ様たちの力の一端を見れるチャンスやもしれん。
そんなことを考えていると、近衛から声を掛けられる。
「ジョージン将軍。これからどうするのですか?」
「どうするも何も、キャサリン殿に代って頑張っているシェーラ様を支え、このバイデを治めるのよ」
「それは、乗っ取るということで?」
そんな馬鹿なことをいう近衛は「いつでもやれます」と目を輝かせている。
はぁ、とりあえず目を覚まさせるために拳骨を落とす。
「な、なにを!?」
「何をではないわ。ウィードと戦争をするつもりか」
「し、しかし、残っているのは女子供ばかり……」
「その女子供にすらわしらでは歯が立たぬわ。現実を見よ。それでも近衛か!!」
「負けたのは近衛の恥さらし達であり、私たちは違います。 万が一、力はかなわぬとも、策略を……」
「……その策略にはまって全軍動きを封じられたのだぞ」
「……」
「近衛としての矜持や意地があるのはわかるがな。これは命令であり、同盟の為の非常に大事な任務である。一度は見逃すが次はないと思え」
「は、はっ!!」
明らかに不満顔だな。
しかし、負けた近衛が弱かったと言いたくなるのはわかるな。
「いや、まて、お主ら近衛のほとんどは、彼女たちの演武を見ただけであったな」
「は、はっ。その通りであります」
手合わせをした近衛も本気というわけではなく、命令での軽い手合わせにすぎなかった。
これでは確かに、不満が溜まるのもわかる。
そもそも本格的な戦闘となる前に、ユキ様に敗れたのだからな。
ここらで息抜きを兼ねて、ウィードの方々の立場をしっかりと認識させるか。
「よし。私がウィードの方々に話を通しておく。我こそはと思うものを集めておけ。結果如何によっては、色々考えよう」
「はっ!! ありがとうございます!!」
そういって近衛の一人は駆け出していく。
「お主らはいいのか?」
「私たちはウィードの力を知っておりますから」
「ふむ。それが利口だな。まあ、告知はしておけ、今日の昼、バイデの中央広場にて行うとな。兵士の身分問わぬと」
「はっ」
「そうだ。最近うるさい学生たちにも声をかけておけ。姫様やカミシロ殿が必死に押さえておったが、こっちの方がわかりやすかろう」
「承知いたしました」
娯楽も兼ねればバイデの民の支持も得やすいだろう。
さて、私は師匠に話を通しておくか。
彼女とは格別仲良くしてもらっているから、そちらから話せば今回のことは通るだろう。
そう思って領主館へと戻り、庭の方へと歩いていく。
そこには、離れというには立派な家が建っており、その隣の小屋からは煙が上っている。
「今日も今日とて、流石は職人というべきか」
私は特にノックもすることなく、小屋の扉を開けて中に入ると、鉄を鍛える音が耳に届く。
よく見る鍛冶屋の風景だ。
まあ、その家主は老齢の職人ではなく、幼い少女ではあるが。
「ジョージン爺なのです。ということは兄様たちは行ったのです?」
フィーリア殿はこちらを振り返ることなく、槌を振るいながらそういう。
「ええ。ようやく出立されました」
「まったく、あのお姫様にはびっくりなのです。見送りが台無しになったのです」
「はは、まったくですな」
見送りに来たフィーリア殿やそのほかのウィードの方々は姫様のあまりの手際の悪さに、見送ることなく各々の仕事に戻る羽目になったのだ。
「で、その話なのです?」
「ああ、いえ、少し手伝ってほしいことがありましてな」
「お手伝いなのです? どんなお手伝いなのです?」
「情けない話なのですが、一部の将兵が暇を持て余しておりまして……」
はて、口にして思ったが、フィーリア殿にはどういえばわかりやすいだろうか?
「フィーリアたち相手に腕試しなのですか」
「……そうです。お分かりになるので?」
「フィーリアたちは、ウィードで冒険者もやっているのです。そこでよく喧嘩をうられるのです。見ての通り子供ですから、まあ、最近はなくなってるのです」
「はは、そうですか……」
私は乾いた声で返事を返すしかできなかった。
最近はなくなった。……ですか、それは相手をすべてミンチにしたということですかな? と真実を聞く勇気はない。
そんな話をしつつ、フィーリア殿の腕はとまることなく、気が付けば、しっかりとした出来栄えの剣が姿を現していた。
いつの間にというか早すぎる。
「今しがた、槌で鉄を打っていたようですが……」
「うにゅ? ああ、槌だけでなく魔術も使っているのです。流石に槌だけだと一本仕上げるのに3、4時間はかかるのです。それは面倒なのです。ナールジア姉様はそれはそれで味がでるといってるのですが、フィーリアはよくわかんないのです」
「はは、職人にも個人個人の趣というものがありますからな」
まあ、ナールジアという精霊様をそこらのものと比べていいのか甚だ疑問ではありますが。
「フィーリアにとって一番大事なのは、兄様たちを助ける武具を作ることなのです」
ピュン、ピュンと小気味よい音を立てながら、フィーリア殿が剣の出来具合を確かめている。
その動きは様になっている。
というか、並みの騎士では相手にならぬ動きだ。
「……フィーリア殿は剣もお使いになるので?」
「メインで使うことはないのですよ。フィーリアには戦槌があっているのです。剣はサブなのです」
「しかし、私の目からみても十分素晴らしい腕前でしたぞ」
「ありがとうなのです。でも、姉様たちの方がすごいのです。剣は姉様たちから教わったのです」
「なるほど」
確かに、ウィードの方々と言われれば納得できる。
「さてと、見た目の問題はないですね。はい。あげるのです」
そういって、フィーリア殿はさきほど出来たばかりのロングソードを鞘に納めて、渡してくる。
「いいのですか?」
「ロングソードはフィーリアの身長だと扱い辛いのです。普段は倉庫行きになるですし、もらって使ってくれるとありがたいのです」
「そういわれるのであれば、ありがたく……。抜いてみても?」
「いいのですよ。ジョージン爺に合わせてバランス調整もしないといけないのです」
「では……」
そういって引き抜いたロングソードはいままでで一番と言っていいほど素晴らしい出来栄えだった。
無駄な装飾などなく、文字通り実戦用で無骨な作り。
しかし、装飾など関係なく目を引き付ける美しい刀身。
鋼色かと思えば、間近でよくみると、うっすら緑の刀身だ。
まるで宝石のようだ。
「この刀身はなにでできているのでしょうか?」
「よく聞いてくれたのです。それはさっき思いついた、魔力蓄積型合金32型なのです」
「まりょくちくせき? ごうきん? 申し訳ない。フィーリア殿、よくわかりませぬ」
「えーっと、えーっと、魔力を溜めて使えるすごい金属なのです。魔剣聖剣みたいに、コアや魔石を入れることが無い分、剣全体の強度があがって、それ自体から魔術を撃つことが可能なのです」
「……つまり、この剣を持っていれば、前にいただいた杖のように私でも魔術が使えるのですか?」
「そうなのです。昨日ジョージン爺にあげた戦槌のような補佐魔術じゃなくて、あるキーワードを言うと、だれでも攻撃魔術が撃てるのです」
「おおっ、それは素晴らしいですな。剣を振るいつつ、魔術も撃てるとは!! これは素晴らしい発明ですぞ!!」
「といっても、魔力蓄積率、量は魔剣聖剣におとり、触媒、杖のように扱うにしても、魔力伝導率が悪いので威力はいまいちなのです」
「ふむ。魔剣と聖剣というのはわかりませぬが、世の中いいとこどりというのは難しいということですな」
「なのです。ちょっと外で試すのです」
そういって小屋の隣にある案山子に向かって剣を構える。
「そんなに近くじゃなくていいのです。もう10mぐらい離れて、剣先を向けてキーワードはウィンドカッター、ウィンドハンマーなのです」
「ではいきますぞ。ウィンドカッター!!」
そういって剣先を向けると、緑色の風が案山子に向かい、弾かれる。
威力が弱いと思ったのだが、それは違ったようだ。
案山子は無傷でも真横に長く走ったウィンドカッターは、案山子の後ろにあった壁を斬っていた。
流石に壁を切り倒すことはなかったが、深々と、切り裂かれたあとが残っていた。
下手をすると、壁を抜けてたかもしれない。
「うにゅー。やっぱりこんなものなのですかー。火力が足りないのです」
フィーリア殿は不満顔だが、ここまで威力があれば、この剣の前にいる兵士は真っ二つになるだろう。普通に驚異の代物だ。
「ウィンドハンマーは線でなく、面で叩き潰す戦槌のような役割なのですが……、カッターでこんな威力だからあまり期待できないのです」
「ま、まあ、試してみましょう。距離はどのぐらいで?」
「同じように10mぐらいなのです」
「では、行きますぞ、ウィンドハンマー!!」
ズドーンッ!!
「やっぱりこんなもんなのです」
「十分使えそうではありますがな」
案山子は相変わらず無傷だが、半径3mの範囲で、およそ30cmほど陥没している。
これを食らえば、普通死ぬだろう。
「しかし、なぜあの案山子は地面に沈みこまぬのですか?」
「ああ、あの案山子には対魔術防御が……」
そうフィーリア殿が説明しかけていると、領主館の窓がバンッと開かれ。
「こらーーーっ!! フィーリア!! 武器の試験はウィードの試験場でやりなさいって言ってるでしょう!!」
「シェ、シェーラ!? ご、ごめんなさいなのです!?」
「あー!! 壁や地面をあんなにして!! ラビリス、アスリン、ヒイロお願いします!!」
「はぁ、今回ばかりは庇えないわよ」
「フィーリアちゃん悪いことをしちゃだめだよー」
「リアお姉。あきらめる」
二階の窓から次々に飛び降りてくる彼女たち。
そして、抵抗することなく、フィーリア殿は取り押さえられる。
「まったく。領主館の修繕費用なんて税金でだせませんから、おこづかいから引かせてもらいます」
「そ、そんなー、酷いのです」
「ウィードのあちこちで破壊事件を起こしたときに、さんざん言いましたよね。今回ばかりはユキさんに報告して、しっかり、叱ってもらいます!!」
「い、嫌なのです!? 兄様に怒られたくないのです!! うぇーん!!」
シェーラ様にそう宣告されて泣き出すフィーリア殿。
流石に忍びない。
「あいや、まってくだされ。今回の件は私がいただいた剣の性能を試したくてこうなった次第であります。勝手に私がウィードに行くわけにもいきませぬ故」
「……本当ですか?」
私の言葉を聞いて、シェーラ様はフィーリア殿を見るが……。
「……えぐっ、嫌なのです。悪い子じゃないのです。兄様に嫌われたくないのです。ひっぐ……」
ちょっとこれは話になりませんな。
「はぁ。反省はしているようですし、いいでしょう。ジョージン殿の話を信じましょう。ラビリス、フィーリアのことを頼めますか?」
「ええ。大丈夫よ」
「アスリンとヒイロは書類の整理を手伝ってください」
「はーい」
「わかったよー」
「ジョージン殿は引き続き、街の治安維持をお願いします」
「はい。お任せください」
そういって、その場から離れようとして思い出した。
「シェーラ殿、待ってくだされ。少々問題がありまして、報告と解決案をもってまいりました」
「はい? 問題ですか?」
危うく、領主館に来た目的を忘れるところだった。
「なるほど、不満解消と今一度私たちの実力を見せるためですか。……いいでしょう。舞台設営もこちらでやれば魔術も見せることになりますし、いい機会ですね」
「はっ、しかし、この剣のような攻撃力だけは控えてほしいのですが」
参加者が死んでしまっては、恐怖の圧政になりかねない。
「わかっていますよ。ちゃんと手加減はしますから。そのあとは、私たちの対決を見せて、ちょっと本気も見ればそういう不満は当分なくなるでしょう」
そういうことで、わしの陳情はあっさり受け入れられて、部下や騒ぐ学徒、そしてバイデの住人たちは、シェーラ様たちの実力を見て震えあがるのだった。
……結局恐怖の圧政になったか?
バイデは治安は日々こうやってよくなっています。
バイデの守護神ちびっこ軍団。
そして、その補佐をするお爺さんが一番つらいかも。
さて、話は変わりますが、前回のキノコタケノコ戦争において、感想を山ほどいただきました。
ありがとうございます。
返事はちょっと大量すぎて、一人一人お返しできないのは申し訳なく思います。
ですが、ちゃんと読んでおります。
かわりに、このように、皆さんとわいわいやれるような話を書いて、交流できればと思っております。
それが、趣味でかけるネット小説のいいところであると思います。
初めて書き込みをされた方もおられるでしょう。
いつも書き込みをしてくれる方もいるでしょう。
本当に感謝しております。
では、また次回。




