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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第485堀:女神の力、及ばぬ土地

女神の力、及ばぬ土地




Side:セラリア




……あー、腹が立つ。

私はこの荒れた心を抑えられないでいた。

だって仕方がないじゃない。


「クソ共が。人の夫や娘、友人たちを誘拐して……」


そう、私の愛する夫、ユキを筆頭に、娘のサクラやシャンス、秋天、妊婦であるミリーたち、そしてまだ幼いアスリンたちが、先日夕方ごろ、召喚されて、ウィードから姿を消したのだ。

当時は、ベータンで親父やガルツ、リテアの長の相手をしていたが、異例の全指揮権移譲の緊急事態ですぐにウィードに戻った。

ちなみに、報告をくれたジェシカは大粒の涙を流して謝っていたし、リーアは茫然自失、キルエは気を失って、サーサリに介抱されているという状態だった。

私と一緒にベータンにいたメンバーも続々と戻ってきたが、私と同じように、夫と娘を誘拐されたラッツは壊れたように泣き叫んでいたので、すぐに気絶させた。

というか、ほかの皆も、ラッツほどではないにしても、ひどいショックを受けていた。

これは次の日には自殺者が出るのではと思ったぐらいのレベルだった。

しかし、状況は一転して、ラビリスから連絡が届いた。

コールから妙に雑音が入るが、全員無事とのこと、召喚したクソ共はすでに捕縛したこと、安全は一応確保したことなど、みんなが安堵の息を吐いた。


「これはウィードに対する宣戦布告です!! すぐにスティーブ達を……」

「落ち着いてくださいエリスさん。送るにしてもゲートがないんですし……」


そうエリスは叫ぶが、タイキのいう通り、ゲートが開通していないので、夫たちの救出どころかクソ共を殺しにも行けない。


「じゃあ、飛行機をDPで出せばいいんですよ!! そして旦那様たちを助けに行くんです!!」

「ルルア殿。それも無理だ。空の気流がまったくわかっていないし、ユキ君たちの位置が不明だ。どこにどう飛んでいいものやら。さらに、海と同じように空に大型の魔物がいないとも限らない。下手に調べもせずに動くのは非常に危険だろう」


ルルアの気持ちは痛いほどわかるけど、タイゾウのいうことも尤も。

下手に空にいる脅威を刺激して各国を危険にさらすことなどあってはいけない。

というか、飛行機自体DPが非常にかかるし、整備や、滑走路の用意などすぐに準備したところですぐに動けるものではないわね。

……でも、夫たちは今も必死に向こうで頑張っている。

私たちが手をこまねいてみているわけにはいかない。

なら、ここは全権をゆだねられたものとして、やはり飛行機とかを使って空中から探すという決断を取るべき?


「エリスもルルアも落ち着け。……腸が煮えくりかえっているのは妾も同じじゃが、今はユキたちの安全を確認できたのじゃから、あまり怒りにゆだねては大事なものを見失うぞ?」

「デリーユ……」


私に向けられていないその言葉がしっかりと私に聞こえてきた。

かつて、すべてを失ったデリーユからの言葉。


「まぁ、失敗した妾が何をという話じゃが、みんなには見失ってほしくないからのう。子供たちも不安な顔をしておったし、こんな様をユキが知ったら怒るぞ? ユキを心配するあまり、ユキに嫌われるというのは避けたいからのう」

「そう、ですね」

「……はい。子供たちをないがしろにしていたら私でも怒ります」

「……デリーユの言う通りね。夫やみんなが安全なのは確認できたし、ちゃんと家族やいままで積み上げてきたものを大事にしないといけないわね。夫に嫌われたくないから」


落ち着かないと。

深呼吸をして……。


「すぅ……。はぁ……。よし、エリス、ルルア、気持ちはわかるけど、まずは落ち着いて状況を整理して、できることを考えていきましょう」

「「はい」」


2人とも落ち着いた様子で返事をしてくる。

ああ、そうか、今まで落ち着いてなかったんだ。

そんな状態での判断なんて当てにできないわよね。


「……そうね。まずは、ジェシカから聞いた話では、タイキやタイゾウに話を聞けと夫から言われたのだけれど、何か心当たりはあるかしら?」


そう、ジェシカは泣きながらも、夫に託された命令を忠実にこなして、タイキやタイゾウ、ルナに連絡をして寝込んだ。

……そうか、今や私たちの半数は攫われていて、戦力が半減しているのね。

だからこそ、まずは他の有識者を集めろという指示だったのね。

タイキやタイゾウがいなければ、すでに飛行機などを出して無理していた可能性は否定できない。

それだけ、頭にきていたから。


「いやー、詳しくはわかりませんよ」

「そうですな。確認が取れない今、なんとも言えません」

「詳しく、確認ね……。なら、ある程度予想はついているわけね?」

「まだ、予想の域をでませんよ?」

「構わないわ。夫たちの状況を少しでも把握したいの」

「タイキ君。別段、悪い話でもない。セラリア殿たちの心の安寧の為にも話していいだろう」

「わかりました。えーと、召喚条件が日本人で現状を打破できるって話でしたよね?」

「ジェシカの聞き間違いでなければそうね」

「ルナさんが、異世界からの召喚を防ぐために制限をかけたのも知っていますよね?」

「ええ。秋天のような、妙なものが流れ込んでこないために、あとはあなたたちのような召喚被害者を増やさないためにね。だからこそ、夫やみんなはこの世界のどこかにいるって話はわかるわ。異世界が駄目なら同じ世界しかありえないから」


でも、夫だけでなく、みんなも召喚で攫われてしまった。

ルナはちゃんと仕事していたの?

今もまだ到着していないし、今回は厳しく問い詰めないといけないわ。

冗談で済ませられるレベルを超えている。


「ええ。だからこそ、大人数が召喚されたと思っています」

「異世界からの召喚は停止している。なら残るは同一世界のみ。となると、本来異世界から呼び寄せる出力で、同一世界からの召喚となれば規模が大きくなるわけです」

「ああ、そういうことね。でも、なぜ夫やみんなが対象になったのかしら? 日本人と現状を打破はどれほどかわからないけど、日本人であること、そして力や能力でいうならタイキやタイゾウも劣っていないでしょう?」

「いや、これも多分ですけど、ユキさんが一番該当者としてふさわしかったからだと思います」

「どういうこと?」

「つまりですな。個々の能力でユキ君がというわけではなく、大人数が召喚されたという点ですな。私たちが召喚されていないところを見ると、結局は出力が上がったとは言え一か所に固まっている人たちを呼び寄せるだけで精一杯だったというわけです」

「ああ、なるほど。つまり、ユキとミリーたちが固まっていたからこそ、現状を打破する力がある日本人と認識されたわけね?」

「おそらくですが」


なるほど。

確かに、一か所に固まっている戦力として、私たち家族以上の存在がこの世界に二つもいるとは思えない。

そんなのが他にもいれば、すでに世界なんて平和になっているわよ。


「夫やみんなが呼ばれた理由はわかったわ。じゃ、次、呼ばれた先のDP効率が5千倍についてはなんでだと思うかしら?」


そう、ここが一番大事だ。

おかげで夫たちの救援にいけなくなった。

夫のミスではあるが、だれがこんな出鱈目な倍率を予想するだろうか?

ここで聞いてわかるわけはないと思うけど、とりあえず、話を聞いておくことは必要だと思ったのだが、思わぬところから回答がくる。


「それは、あの大陸では、なぜか私の力が著しく制限されているからよ」

「ルナ!?」


そう言って、珍しく厳しい顔をしたルナが、ふざけることなく、スーツを着込んで、席に着いたからだ。


「はぁ。ジェシカから大泣きの連絡がきたから、どうせユキの事だろうとおもって調べてみれば、まさか、あんなところに呼び出されるとはねー。手間が省けたというべきか、ユキらしいというか、あの奇想天外たちのメンバーというべきか」

「ルナ。何か知っているのなら、ちゃんと包み隠さず答えて。夫や娘、妊娠しているみんな、巻き込まれた子供たちもいるんだから」

「わかってるわよ。ユキだけなら、笑ってほっとくんだけど、流石にサクラやシャンスまで巻き込まれると笑えないわよ。で、その大陸なんだけど、地球で言う、ユーラシア大陸、アメリカ大陸といった、この世界に存在する最大規模の大陸ね。この大陸や、新大陸の方はどちらかというと、オーストラリア大陸といった感じの規模ね」


ルナはそういって、おそらくこのアロウリトの世界地図を広げ、私たちの大陸から新大陸より遠方にある大きな大陸のある一点を指さす。


「で、この地点にユキたちは飛ばされているわ。この星の時差的には約8時間。ほとんど裏側に近いわね」

「そんな遠いところに……。でも、なんでルナの力が制限されているの?」

「それがわかれば苦労はしないわよ。私としてはこれが魔力枯渇の原因になにか関係あるんじゃないかとみていたんだけど、まさかその真っただ中に飛ばされるとはね。どんな影響があるかわからなかったから、そこは相談してからって思ってたんだけど……」

「そこに夫やみんなは召喚されたわけね」

「ええ。というか、私の力で直接、この地域にある旧ダンジョンを復帰できないのよ。だから話すこともなかったの。言ってのとおり力が阻害されているから。でも、ユキが呼ばれてわかったけど、私が誰かに与えた能力であるのなら、ある程度負荷はかかるけど機能しているみたいね」

「それって、DPが5千倍になった話かしら?」

「ええ。他にも色々あるんだけど、それが顕著ね。とりあえず、あそこは私の力が及ばない土地で、正直、こっちから助けることはできないわ」

「……そんな」


あまりの返答にルルアが絶望した顔になる。

他の皆もルルアほどではないにしても、ルナを頼れない状況に顔が曇る。

でも、ルナは明るい声で、言葉をつづける。


「ま、そこまで暗くならなくていいわよ。なにせ、ユキがいるんだしね。あいつなら、大丈夫よ。私が保証してあげましょう。あんたたちが選んだ夫はそんなにやわじゃないのは知っているでしょう?」

「そう、ね。すでに、呼び出した召喚者たちは捕縛したみたいだし、ダンジョンを展開しているから当面の危機はないはず……」

「……ぶはっ!? 召喚者を捕縛したですって!? なにそのルール違反!! 相変わらずお約束は守らないわねー。まあ、ダンジョンも展開しているんだし、外にいるっていう10万の餌を使ってすぐにでもゲートを開通してくるわよ」


たしかに、すでにゲート開通の目処は立っていたわね。

……本当に頭に血が上っていたようね。


「よし、みんな。まずは休みましょう。当面の危険はなさそうだし、今無理に起きて、体調を崩しても夫に笑われるわ。今、ある意味ピンチなのは、動けるメンバーが減ったウィードの方よ。ユキやほかのみんななしで、大陸間交流を進めて行かないといけないのだから」


……あれ?

自分で言ってなんだけど、本当にウィードの方が大変じゃないかしら?

向こうはもう、ダンジョンを使って相手を嵌めて、DPが溜まるのを待つだけ。

こっちは継続で、大陸間交流の仕事……。

……ユキの計画書とかの確認をしないといけないわよね。


「さっさと寝ましょう。冗談抜きで、ウィードに残っている私たちの方が厳しいわよ!!」

「「「はい!!」」」


皆もそれが分かったのか、すぐに部屋を出て行く。

……あれ? 向こうは下手すると休暇じゃないかしら?

くそー、合流したら私たちものんびりするわよ。

ちょうど、誘拐犯の国があることだし、うっぷん晴ら……いえ、運動相手にちょうどいいでしょう。




Side:ルナ




「いやー。あの田舎娘たちが強くなったわねー」


やっぱり、ユキに、鳥野和也に任せて正解よね。

というか、ほかは手に負えないし。

常識があるって大事よね。


「じゃ、俺たちも寝ますか」

「そうだな。私たちも大陸間交流に尽力しなければ、今まで助けてくれたユキ君に申し訳がない」


そういって、セラリアたちと同じように退出しようとしている男二人に待ったをかける。


「ちょっと待ちなさい」

「なんですか?」

「なんでしょうか?」

「いま、飲みたい気分なのよ。付き合いなさい」

「「えー」」

「えーじゃないわよ。行くわよ!! 今日は3軒梯子よー!! ヒフィーとかリリーシュを呼びなさい!!」

「「えーー」」

「どうせ、ユキと合流したらネチネチと何かいわれんでしょうから、今のうちに遊ぶわよー!!」

「「そういう理由かよ!?」」






本日休みで早めに投稿。


で、ルナの真意が少し明らかに。

ユキはやっぱり狙われて連れてこられたということ、あと、会議のあとは飲みたかっただけ。

そして、セラリアたちの怒りは、誘拐した国へ……。


さて、どうなるのやら。



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