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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
国の在り方 暗躍編

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第464堀:異世界の侍と剣の神

異世界の侍と剣の神




Side:タイゾウ




私はこの異国の地で、異人であるアーウィン殿の背中に、侍を見た。

そう、侍。

ユキ君やタイキ君を悪く言うつもりはないが、いま目の前にいるアーウィン殿が、私よりも、侍らしいと思ってしまった。

それだけの、覚悟が見えたのだ。


「両者とも、この砂時計が落ちきる頃に、この場で立ち会ってもらいますが、いかがか?」

「構わぬ。最後の余生を楽しむといい」

「構いません」


ふむ。

どうやら、ノゴーシュもただの馬鹿ではないようだ。

決闘の意味を理解しているのかはわからないが、本能で察知はしているようだ。

この決闘を断れば、ノゴーシュは文字通りすべてをなくすのだ。

剣の神という立場も、王という立場も、生命も、名声も、何もかもだ。

決闘を受けて、万が一勝てれば、現状は保たれるかもしれない。

まあ、私たちが敗れたところで、ユキ君がそのようなことにはならないように手を打つとは思うがな。

私がそんなことを考えて砂時計を見つめていると、アーウィン殿がこちらに近寄ってきて、頭を下げてきた。


「すまない。君たちがいろいろ準備していたのを台無しにしてしまった。本当にすまなかった」


私には確かに、誠意ある心からの謝罪に見えた。

だから、そのことを咎めようとは思っていなかった。


「……構いません。というのは簡単ですが、時もできたことです。できうる限り説明をしてはもらえませんか? 兄弟子。タイゾウと申します」


私がそういうと、少し驚いていた表情をしていたが、すぐに普通に戻り……。


「そうだな。弟弟子に説明をしておくのが、せめてもの義務だな。アーウィンだ」


アーウィン殿は特に拒否することもなく、私が用意した席へと座ってくれた。


「こちらが、ランクスの王であるタイキ殿です」

「この若者が……。いや、失礼をいたしました。私、上泉信綱の弟子であるアーウィンと申します。この度は個人的私怨で大変ご迷惑をおかけしました」

「あ、はい。アーウィン殿ですね。でー、個人的な私怨とはいったいどういうことでしょうか?」


タイキ君も困惑しつつも、敵意のない挨拶にしどろもどろではあるが質問をする。

まあ、いきなりの乱入者なのだから、当然か。

私も、アーウィン殿の意図を聞きたくて来てもらったのだ。


「話す前に一つ約束をしていただきたい」

「約束ですか?」

「はい。私が、皆々様方にご迷惑をかけたという事実は否定するつもりはございません。のちにどのような処罰をも受けることも誓います。ですが、この一戦、ノゴーシュとの戦いだけは、私に先陣を任せてほしいのです。私が負ければ、弟弟子であるタイゾウ殿がでるのも、そのあと勇者殿が周りに伏せている兵で袋叩きするのも構いません」


迷いもなくアーウィン殿はいいきる。


「えーっと……、ちょっと待ってください」


タイキ君は席を外す。

ユキ君と相談に行ったのだろう。


「ご安心ください。兄弟子の決闘を邪魔するようなことにはならないと思います。万が一そのようなことがあれば、私が止めます」

「感謝する」


そしてすぐにタイキ君は戻ってくる。


「はぁ、特に問題はないのでいいのですが、とりあえず事情を話していただけませんか?」

「そうですね。話すと長くなるのですが、簡潔に言うのであれば、先ほどノゴーシュと話した通りです。私は遥か昔、ノゴーシュに国を奪われました。その時にダンジョンマスターとしての力を手に入れたのですが、いろいろな巡り合わせの下、上泉信綱という素晴らしい師を得て、この身で打ち破ることこそ、最高の仇討ちだと思い、迷惑だとは思いましたが、私がノゴーシュを正々堂々と討つに相応しい状況を作り上げてもらうために、ランクスから逃げてきたビッツ姫を利用したわけです」


ふむ、いろいろと疑問はあるが、仇討ちで間違いはないようだ。


「いやー、なんで私たちを巻き込む必要があったんですか? ダンジョンマスターならそんなことをしなくても……」

「私がこっそりと討ち取っても意味がないからです。他国の目がある言い訳のできない場所で、討ち取る必要があったのです。我が師に敗れた時も揉み消しましたからね」

「あー……」

「それに、恨みがあるのは、ノゴーシュのみ。今、暮らしている人々の平穏を乱すつもりはありません。我が師に言われなければ無用な悲しみを生むだけでしたでしょう」

「……そういうことですか。だから、ランクスから逃げたビッツの手引きして、ダンジョンマスターの能力を与えて、ノゴーシュと手を組ませたわけですか」

「そのとおりです。そうすれば、いずれ暴走するとは思っていました。その暴走したノゴーシュを討てればと思っていました。まあ、ウィードのダンジョンマスターとランクスの動きがここまで早いのは意外でした。無用な混乱を避けるために、ノゴーシュ亡き後の領土分配する手間が省けましたよ。おかげで迷惑料の価値も低くなりましたが、とりあえず渡しておきます」

「迷惑料ですか?」


アーウィン殿はそういうと、ダンジョンコアをころころとテーブルに置く。


「未だ稼働状態の物もありますが、必要のないダンジョンはすべて止めてきました。本来であれば、ランクスの勇者殿とウィードのダンジョンマスターに渡すべきでしょうが、もう時間がないようだ。一旦、タイゾウ殿にダンジョンマスターの能力を譲渡しておきますので、私が勝とうが負けようが、これで問題はないはずです。まあ、残っているダンジョンも、コアに残っているDPもウィードのそれと比べれば大したことはないと思いますが」


あっさりとダンジョンマスターにとってのすべてと言っていいものを私に渡す彼にタイキ君は驚いていた。


「ちょ、ちょっと!? いいんですか!?」

「いいんですよ。私はダンジョンマスターには向いていなかった。君たちのような、我が師と同じ、叡智ある人に使ってもらうのがいいでしょう。さあ、時間だ。あとは頼みます」

「いや、あの!!」


タイキ君が決闘に向かうアーウィン殿を止めようとするが、私がそれを押しとどめる。


「やめるんだ」

「やめるって、そういう話じゃないと思うんですけど!?」

「……彼は、一人の人として、あそこに行ったんだ。ダンジョンマスターではなく、ただ、仇討ちの為に。余計なものはすべて私たちに預けて」

「余計な物じゃないでしょうに……」

「余計なのさ。剣の神を相手にダンジョンマスターの力は不要。自身が鍛え上げた、技術で戦うと決めた男には」


そう、この戦いはどこまでも私怨だ。

だが、それ故に止めることはできない。

私たちが止めたところで止まるわけもない。

ただ、彼はこの日の為に生きてきたのだから。



彼はノゴーシュと相対する。

納刀したままで、立ち尽くす。


「ふん。ビッツ姫にわざわざ手を貸したのがお前だったとはな。寝首を掻けばまだ勝ち目があったものを」

「……」


ノゴーシュの言葉に返事もせず静かに立ち尽くす。

私も立合人として出向かなければ。


「貴様、聞いているのか!! 最後の会話だぞ、何か言う事はないのか!!」

「……ノゴーシュ殿。もはやそんなものは必要無いのですよ。あなたもそれぐらいはわかるでしょう?」

「……立会人か。まあいい。お前の兄弟子とやらをすぐに叩き斬って、次はお前だ」

「その時を楽しみにしています」


恐らくは来ないだろうが……。


「では、決闘の前の名乗りを」


私がそういうと、すかさず、ノゴーシュが声を上げる。


「剣の国が王!! 剣の神でもあるノゴーシュ!! 神に仇為す愚か者どもを斬ってくれよう!!」

「……上泉信綱が弟子。アーウィン。故郷の人々の仇討ちのため、偽りの神を斬る」


ノゴーシュは闘気や殺気が膨れ上がるが、対してアーウィン殿は自然体だ、風に揺れる柳のごとし。

ここまでの人物を育て上げるとは、間違いなく、彼の師は上泉信綱なのだろう。

戦いに際して、闘気や殺気で相手の士気を挫くのは当然。

そしてそれに対抗するために、同じように闘気や殺気を放つのもまた当然。

それをせず、自然のごとくというのはそうそうできることではない。

これは勝負あったな。

そう思いつつ、私は言葉を紡ぐ。


「では、はじめ!!」


その声と共に、相手に踏み込んだのはノゴーシュだ。

確かに早い。

恐ろしく早い。

レベルという概念で身体能力があがるこの世界で、流石神と名乗るだけはあって、物凄い。


「何もできずに、構えもせず、ただ立ってるだけとはな!! 刀も抜かぬ腑抜けはそのまま死ねい!!」


だが、中身が三流だ。

この男には精神修養がたらんな。

いや、刀を知らな過ぎるか、アーウィン殿の何も構えていない立ち尽くしたあの姿に飛び込むとは……。


バキッ。


「ぐっ!?」


次の瞬間、そんな音と共にノゴーシュがアーウィン殿から飛び退いていた。

そこには、納刀したままの刀を前に突き出しているだけのアーウィン殿が立っているだけだ。


「……あれに当たらないでもらいたいのだが」

「たまたま抜くのを忘れた刀があたったからと言っていい気になるな!!」


そんなわけがない。

あれは、おそらく試したのだ。

アーウィン殿はおそらく困惑している。

自分の実力と、相手の力の差に。

あまりにも、差がありすぎて、手加減しているのかと思っているのだ。

その証拠に、ノゴーシュが今度は連続で斬りかかっているが、それを柳のようによけている。

アーウィン殿はあの構えを取れることのすごさを実感していないのだろうな。


無行の位。無行の構え。

柳生が生み出した物かと思えば、やはり新陰流の祖である、上泉殿の教えだったか。

その構えとは構えないこと。

構えとは、相手を打ち破ろうという気構え、それは相手を倒そうとする工夫。隙を見せず、相手を倒すための在り方。

しかし、だからそこ、隙だらけの構えなしこそ、あらゆる太刀筋を生み出せる。あらゆる状況に対応できる。

それ故、真似できるものはいないといわれる。絶技である。

隙だらけの構えをとることの恐怖。命を奪われるかもしれないという状況下で、そのような行動がとれる者がどれだけいるだろうか?

わずかに、恐怖や焦りに飲まれれば、あっという間に命を落とす。

それが無行の構え。


だから、結果は当然だった。

唐突に、アーウィン殿が抜き放った抜刀により、決闘の終わりを告げた。


カラン、カラン……。


「ば、か……な」


信じられないようなものを見る表情で、ノゴーシュはアーウィン殿を見つめたあと上半身がズレ落ちる。


それと一緒に、童子切も刀身が真っ二つに……。



「「「ああーーーー!?!?」」」



私のほかに叫び声が聞こえる。

……しまった。

まさか、そこまでの腕前があるとは思わなかった。

どうしよう。

簡単にいうなれば……。


大事件!!(どっかのOP風でいいと思う。たぶん)


物事は予定外のことに進むものよ。

さあ、どうなる!!

あ、レイ?はもうほっとけ。





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