第462堀:笑ってはいけない道中記
笑ってはいけない道中記
Side:コメット
いやー、本当にユキ君といると退屈しないねー。
私やノノアは待機かと思えば、ノゴーシュ側の援軍を装って、ノゴーシュと合流するようにと言われたよ。
うひゃひゃ、これで、追撃は完璧となったわけだ。
ダンジョンに逃げ込もうが、すでにスティーブ君たちが権限を奪う準備はできているし、足で逃げるなら私たちも一緒に逃げることになるし、なにより……。
「ノノアがいるのであれば、万が一があっても離脱にはこまらんな」
「ええ、そうですわ。ノノア様がいらっしゃれば空を飛べるのですから」
なーんて、わざわざ空を飛んで追い付いて見せれば、こんなことを言って、いざという時は私たちを使って逃げるつもりでいるとか、もう八方塞がりですよ?
なに? 脳筋とか言ってたけどここまでだと、笑い死にしそうなんだけど?
これはあれですか? 私に笑ってはいけないをしろと?
やめてよー。私、笑いの沸点低いんだから。
いや、まあ、空を飛べば逃げられると思うよね普通。
ユキ君たち相手にはただの的だからねー……。
おっそろしいよね、対空砲とか銃器って。数キロ先から狙撃ってんなアホな精度だし。
まあ、音速で飛んでる飛行機どころか、音速の数倍でる大陸弾道弾ですら、条件が整えば撃墜可能だしー。
考えるだけ無駄だという奴だろう。
相手が悪いとかいうレベルを超えているんだよ。
あっはっは、そもそも、音の速度とか考えたこともなかったからね。
いやー、タイゾウさんとかの科学技術講義は面白いわー。
こんな面倒な仕事終えたら、研究所に引きこもっていろいろやりたいね。
私がそんな風に考えて、笑いをこらえている間に、ノノアがノゴーシュに話しかけている。
「ノゴーシュ、本気で向かうのですか? あからさまに罠ですよ?」
一応、苦言を呈するように言って、ノゴーシュの狙いを聞き出すように指示がでているのさ。
まあ、常識的に考えても、素直に協力するのはおかしな話だしね。
「なに構わんさ。これで私をコケにした、ノブツナの弟子と、悪逆の勇者タイキを堂々と切れる。そのあとは、ウィードの大悪人ユキだ」
うぇーい。笑いどころきたーーー!!
万が一にでもタイゾウさんとタイキ君を退けることができても、殺せるわけないじゃん。
そのあとのウィード攻略とか無理だよー。
天地がひっくり返っても無理。
やっぱり、こいつ私の笑い死にをねらっている?
耐えろ、耐えるんだ!! 私の死者ボディ!!
長年の無表情生活で、鍛えたポーカーフェイス!!
「……本気でそんなことができると思っているのかしら?」
「無論だ。流石に私も自分の力量ぐらい把握している」
どこが!?
やべー、こいつぁやべーぜ!!
腹筋にダイレクトだぜ!!
「そして、このカタナもある。みよ、この神々しい刀身と力強さを!! まさに私の為のカタナと言っていいだろう!!」
あー、うん。
なんというか、童子切安綱に飲まれているって感じがひしひしするわー。
あと、その刀が一番君の首を絞めている要因だよ?
もう、タイゾウさんがガチ切れ中。
いや、童子切よりも二本目の島津一文字が原因だけどさ。
「まあ、ノノアの言うように万が一ということもあるだろうが、離脱するならば先ほど言った通り、ノノアがいれば問題なかろう」
「ええ。そのときはよろしくお願いいたしますわ。ノノア様」
「……はぁ、わかったわ。で、そちらのお姫様がダンジョンマスターなのかしら?」
「そうだ。彼女がダンジョンマスターであり、あの悪逆の勇者タイキに城を追われたビッツ姫だ」
もうさ、そのすげー紹介やめてくれないかなー。
笑いを堪えるために私の腹筋はズタズタよ。
シックスパックとかに腹筋が割れたらどうするんだよ?
ムキムキの嫁さんなんて、男が近寄らないだろ!!
いや、結婚予定とか願望もないけどさ。
死体だし。
「これは、ご挨拶が遅れました。私が、ランクス王国正統継承者ビッツと申します。どうかお力をお貸しくださいませ」
「ご丁寧にどうも。まあ、今までお世話になっているから、協力はやぶさかではないけど、無理はやめてね」
くふふふ、本当にいろいろな意味でお世話になっているからね。
そういう意味で協力はやぶさかではないよねー。
喜んで手伝うにきまっているよ。
いやー、しかし、ちゃんとこういう腹芸もできるんだし、国元での仕事ぶりも見たし、為政者としてはしっかりしていたんだろうね。
相手が悪かった。この一言に尽きるんだろうね。
それを言うなら私やヒフィー、ノーブルもなんだろうけど、個人的にはこうなってよかったとおもっているかな。
ユキ君がいなければ、こんな和気あいあいな状態じゃなかっただろうし、未だにヒフィー神聖国で戦争に明け暮れてたことだろうね。
そんなことを感慨深く考えていると、ビッツが腰に佩いた刀を見せて返事をしてきた。
「わかっていますわ。でも、私もこのカタナ、ヒメヅルイチモンジで相当腕が上がっていますから、ご心配には及びませんわ」
ほぅ。
彼女も刀を持っているのかい。
これは、ユキ君たちに報告だね。
持っている刀は姫鶴一文字と、ユキ君たちの故郷、日本でこれまた有名な人物が持っていた刀みたいだね。
ノーブルと同じように軍神と言われたらしいけど、興味ないから名前は覚えてないや。
でも、剣の腕が上がったねぇ。
やっぱり、変な能力でもついてると見た方がいいのかな?
『今度は空飛ぶ人に屍人形か、はてさて、妙な異国にたどり着いたものだな』
ん? なんか聞こえた?
えらい、古臭い喋り方のような気がしたけど……。
でも、ノゴーシュ以外の男の人もいないし、気のせいかな?
あー、コールを繋げているから、向こうの声が聞こえたのかな?
「ともあれ、これでさらに私たちの勝ちが揺るぎないものとなった」
負け確定なんだけどねー。
まあ、酒呑童子が一番の懸念ではあるけど、君たちの先はもうないと思うよ。
いや、立場的に、首ちょんぱでハイ終わり、ってわけにはいかないだろうけどね。
あくまで秘密裏だし、剣の国の長であるノゴーシュがいなくなれば、それはそれで混乱を招く。
今回、ノゴーシュはボコボコにされて、剣の神という自信を打ち砕く予定である。可哀想に。
それで、そこら辺から脅しをかけて屈服させる予定なそうな。
まあ、元々、上泉信綱に負けてるしねー。なんでこんなに自信満々なのか私も不思議なんだけど。
脳みそまで筋肉だとこういうもんらしい。
さて、そんなノゴーシュの腹筋崩壊自慢話に耐え続けてランクス国境近くにたどり着くと、ビッツが立ち止まって、そこ掘れわんわんを起動して、何かいじっている。
「少々お待ちくださいませ。囮用の魔物たちを召喚して、森に待機させて……」
ふーん。多少は考えているみたいだね。
なるほど。これはビッツを放って置くには危険があるね。
ユキ君レベルに達するとは思えないけど、これ以上ダンジョンの扱いに慣れてしまえば厄介な相手になるだろうね。
最悪、私たちでビッツをやっちまえって言った理由が体感でわかったよ。
しかし、そのビッツの手は止まって驚いた顔をしている。
「どうかしたのか?」
「……おかしいですわ。DPがそこまで増えていません。確かに私たちが出た後、冒険者ギルドを襲うように言っておいたのですが……」
あー、やっちまったからね。
モーブさんたちが。
残念。そういう意味でも君たちは八方塞がりなのさー。
しかし、DPがそこまで増えていないねー。他に収入源があるとみていいね。
まあ、当然か。収入源があれ一つだけなんてのはおかしな話だからね。
これも報告っと。
あれ? 私って真面目に仕事してね?
「ふむ。何かのトラブルか、冒険者ギルドの連中も熟練がいなくなっている状態ではあるし、人を呼びに行かせて分散させているのかもしれんな」
「なるほど。そういうこともあるかもしれませんわね」
……ここで倒されたって発想が出るようなら、最初から喧嘩は売ってないか。
「まあ、予定に狂いが出るのはよくあることだ。幸い、ノノアたちとも合流できた。ノノアという魔術神とその弟子がいるから結果的には戦力は上がっただろう。とりあえず、今呼び出せるだけの魔物を呼び出して森に配置しておけばいいだろう」
「そうですわね。そういたしますわ」
あー、私は一応、ノノアの弟子の中で一番の使い手ってことになっています。
まあ、ダンジョンマスターでリッチです!! なんていえばすぐに斬られそうだしね。
実際の所、魔術勝負はしたことないからどっちが上とは言いにくいが、総合力は私が圧倒的に上。
なにせ、バックにユキ君や心の友であるナールジアがいるからね。
悪知恵、ぶっ壊れ装備には事欠かないのだよ。うははは!!
あ、あと家政婦のヒフィーね。
だからと言って、私が下に扱われても文句とかはない。
現状も理解しているし、私が表に立ったらそれはそれでクソ忙しいのはわかっているからね。
ヒフィー神聖国の時みたいにオートパイロット処理でもないと、書類仕事なんてやってられるかー!!
研究職だけで十分です。
今の職場が天国!!
「配置も終わりましたし、行きましょう。本日中にはその村に着きたいですし」
「うむ。そうしよう」
配置が終わって再び処刑予定地の村へと馬を進める私たち。
「まったく、本当に護衛もなしで行っているとは思わなかったわ」
「仕方あるまい。どう考えても罠だ。私やビッツ姫はどうにかなるが、ほかの騎士たちは命を落とす可能性があるし、人数が増えれば速度も落ちる。これが最良だったのだ」
そう、ノノアの言う通り、というか、モーブさんと霧華君の報告通り、このおバカたちは護衛なしの二騎駆けでランクスに向かっていたのだ。
理屈はわからなくもないが、やはり脳みそ筋肉というべきだろう。
私には理解できないタイプなんだろうなー。
そんなことを話していると、特に問題もなく村にたどり着く。
村の門の前には豪華な鎧を着た兵士が立っている。
ランクスの兵士だろうねー。
「とまれ!! 名とここに来た目的をお聞きしたい!!」
「私が剣の国の王であるノゴーシュだ。こちらがランクスの正統継承者のビッツ姫。そして、魔術の国の女王ノノア殿に、その弟子のコメット殿である。ランクスの勇者殿に伝えられたし。こちらが証明の親書である」
ほう。
こういうことはちゃんとするんだね。
いきなり斬りかかるとか思ってたけど、そうでもないらしい。
アレだね。昔の在り方にこだわるタイプだと見た。
「はっ!! お預かりいたします!! 皆々様方、失礼ではありますが、少々お待ちください。確認を取ってまいります!!」
「うむ。かまわぬ」
いやー、よく訓練しているね。
これから袋叩きしようってやつらにちゃんと礼を払うってなかなか難しいんだよね。
ま、とりあえず、私の腹筋はもったわけだ……。
「ふっ、あの兵士はよく訓練されている。悪逆の勇者を倒した時に生きていれば部下にしてやろう」
「ええ。私たちにちゃんと礼を払うとは、だれが主かよくわかっている兵士ですわ」
そんな不意打ちを私は食らってしまった。
「ぶばっ!!」
噴き出した。
もう噴き出した。
辛抱溜まらんかった。
痛恨の一撃だった。
こうかはばつぐんでした。
「どうかしたのですか?」
「む。具合が悪いのか?」
やめてー!!
真顔でそのバカ面近づけてこないで、ひー、拷問だよこれーー!?
早く、タイキ君来てくれー!!
シリアスな空気をー!!
この話は人によって見え方が違うということ。
当人たちには一大事であるが、コメットという第3者からは、ギャグをやっているしか見えないってやつ。
シリアスな笑い?
いや、これノゴーシュはギャグの塊だよな。
そういえば、今年の笑ってはいけないはないんだっけ?
さて、それはいいとして、朗報です。
いや、昔からランキングに乗ってたかもしれないですが。
知り合いにTUTAYAランキングのってたぞーといわれて、そんなランキングがあるんかーと初めてしりました。
いや、なんか他の作家さんはTUTAYAランキングがどうとか言ってたからこれかなーと思ってはいました。
で、12月の1日、2日、どっちかは忘れましたが、TUTAYAランキング ライトノベル部門で1位をとっておりました。
凄いのかはわからん。賢者の孫とか押さえてたしすごいかな?とは思う。
11月28日から12月3日の一週間ランキングでは3位と健闘しているように思えます。
これもひとえに皆様のおかげであります。
今更ながらお礼申し上げます。
まあ、売れようが売れまいが、ここでのんびり書いていくことには変わりありませんので、これからもよろしくお願いいしたします。




