第440堀:最終兵器幼女とかの勇者の因縁
最終兵器幼女とかの勇者の因縁
Side:エリス
ユキさんが声だけで乱入してくるとは思いませんでしたが、城を掌握していると証明するのには一番穏便でわかりやすい方法だったでしょう。
タイゾウさんのなるべく穏便に済ませようという姿勢に協力したのでしょうね。
ユキさんも戦いなどといった血なまぐさいことは嫌いですから。
ノノアは思ったよりも愚かではなかったようですし、こちらの話を聞く耳を持っていたのも幸いだったでしょう。
まあ、不運というべきは、ユキさんが相手だからというべきでしょう。
これまでのダンジョンとは全く違う運用方法でここまで来たのですから、この世界の常識を作ったとされる神々が発想できるのであれば、すでに魔力枯渇の問題は解決できていますし、ユキさんがこちらに呼ばれることもなかったでしょう。
……ですが、理解できない者もやはり存在します。
「貴様ら!! このようなことをしてただで済むと思うな!! このような脅しで我が国が屈すると思ったのか!! ノノア様、だまされてはいけません!! この者たちの虚言に決まっております!!」
護衛の一人がそうわめいてこちらに近寄ってきます。
確か、ノノアが勇者認定したという人でしたね。
確かに、普通を超える力は持っているようですが……。
「落ち着きなさい!!」
「しかし、この者たちの言動見過ごせません!! これは宣戦布告ともとれる言動です!! 私はノノア様の勇者として、この者たちを捕縛いたします!!」
ノノアの制止を聞かず、ノノアの護衛の中で唯一魔術師の姿ではなく、鎧姿の勇者は腰に佩いた剣を引き抜き、切っ先をこちらに向ける。
まあ、護衛とか、国を守る者の観点からすれば今の話を聞けば当然の行為ではあります。
そういう意味では、ちゃんと義務を果たしていると褒めるべきでしょうが……。
「ポープリ」
私が動いてもよいのですが、一応要人としてきていますし、護衛の役のメンバーに動いてもらわないと意味がないので、一番インパクトがありそうな、小柄なポープリに声をかけます。
「承知しました」
ポープリも私のが声をかけた意図がを分かっているのでしょう。
特に慌てる様子もなく、とことこと容姿に似合ったかわいらしい歩き方で、勇者の前で歩いていきます。
それを見た勇者はみるみる不快感をあらわにします。
「見てくださいノノア様!! 小さな非力な少女を護衛などと言って連れている輩の言葉など信じるに値しません!! しかも、私との盾に使おうなどと、人の風上にも置けません!! 君、そんな命令を聞く必要はない、ちゃんと私たちが守ってあげるから、こっちに来るんだ」
予想通り、侮って憤っています。
ポープリを守るべきかわいそうな少女……幼女として見ているようです。
普通はそう見ますよね。
ですが、ポープリにとってはよくある演技の一つです。
私よりもはるかに長生きしているのですから、こういうやり取りは何度も経験しているでしょう。
そういう意味でも、ポープリが護衛の3人に残った理由と言えます。
彼女は年の功と幼女の容姿を使った話し合いを得意としているのです。
「お兄ちゃんありがとう」
ポープリはそう甘ったるい声をだして、とことこと更に勇者の方に近づいていき、勇者も特に警戒していないのか、剣を向けることもしなかったのですが……。
ガシッ。
ポープリはかわいらしい小さな手で剣の切っ先を片手でつかみます。
「君、剣に触ると危ないから放しなさい」
なぜそのようなことをしたのか理解できない勇者はそういっていますが、ノノアの方は顔面蒼白になっています。
それはそうでしょう。
前に立った時点でポープリは魔力を解放していますから、ある程度力量がある者なら察せられます。
既に、私たちはノノアたちのレベルを正確に把握しているのですが、簡単に言うのであれば、この勇者はまだその域に達していないのです。
つまり……。
「んー。君の心遣いはありがたいが。なぜ私のような小娘が出てきたか? という疑問を持ち警戒するべきだったね」
「何を……」
「何をじゃないよ。君はまだまだ若造だということだ」
バギッン!?
そう、敵たりえる相手ではないのです。
勇者の回答を待つまでもなく、剣を握りつぶすポープリ。
そしてそのまま、勇者の眼前に飛んで、蹴りを入れ、壁まで吹き飛ばしてたたきつける。
見事に決まったのか、勇者は起きてくることなく沈黙する。
「ふむ。ある程度、実地試験はしているからわかっているけど、私程度でもこの威力。いやはや、恐ろしいね。いや、格闘術を教えてくれたデリーユ殿に感謝かな? 彼女の教えがなければ、手加減ができないで殺していただろうね」
そういいながら、ポンポンと服装を整えるポープリ。
そして思い出したように、ノノアに声をかける。
「ああ、ノノア殿」
「は、はいっ!?」
「護衛風情から声をかけるのは失礼だと思うけど、一ついいだろうか?」
「ど、どうじょ!!」
「彼の行動に対しては特に何も文句はつけたりしないから安心してくれ。彼の言うように疑わしいのは私たちも理解しているし、彼の行動は護衛としては褒められるべきことだ。まあ、ちょっと甘いところはあったが、騎士としては合格だろう」
「あ、ありがとうごじゃいます……」
「と、すまない。私が言いたかったことは、それじゃない」
「で、では、どういった?」
「簡潔に言うと、私はこのメンバーの中で一番実力が下なんだ。そもそも専門はノノア殿と同じで魔術師でね」
そうポープリが告げると、ノノアの目が点になって、こちらを確認して顔が青から白になって、ぶるぶると震えだした。
ようやく正確に実力差と現状を理解したのでしょうね。
そして、いきなり頭を下げ……。
「魔術国はウィードへの全面降伏、服従を誓います!! ですので、なにとぞ、民にはご容赦を、すべての責任は私にあります!!」
そういいだしました。
こっちはそのつもりはないのですが、まああの実力差を見たら、勝負を仕掛けた時点で終わりだと思ったのでしょう。
しかし、彼女は彼女なりに、自国の民の平穏を願っていることが分かったのは幸いでした。
腐っても神というべきでしょうか?
判断は間違っていましたが、それでも彼女なりの平和への道筋だったのでしょう。
だって、頑張ればポープリぐらいは何とか倒せる実力を彼女は持っているのですから。
ナールジアシリーズの武具を外していたらという限定が付きますが。
「ノノア殿、頭をお上げください。私たちはそちらの降伏や服従を望んでおりません。こうやって話し合いに来たのが何よりの証拠です」
がくぶるのノノアを見て苦笑いをしながら、タイゾウさんが話しかけます。
既にポープリは私たちの後ろに戻っており、ジェシカは普通の表情ですが、リエルは笑いを必死にこらえている様子です。
これは、別室でこの状況を眺めているリーアやコメットは爆笑していそうですね。
「なぜ、そのような寛大なことを仰るのでしょうか?」
ノノアはようやく恐る恐る顔をあげたが、なぜタイゾウさんがそんなことを言うか理解できていないようだ。
まあ、ユキさんのいう魔力枯渇に対する方針が、この神々とまったく違うのだから仕方がないでしょう。
この世界はいまだ文明が育たず、相手を飲み込むことこそ、自国の、未来への発展と疑っていませんから。
「なぜと言われましても、これが私の方針なのですよ」
「方針と申しますと?」
「そもそも、私は世界を統一するという手段を取るつもりがないのです。それよりも一刻も早く、魔力枯渇に対する研究を進めるべきだと思うのです。つまり……」
そして、タイゾウさんがユキさんの方針をノノアにしっかりと説明していきます。
同盟を組んで各々魔力の研究をしてもらって、魔力枯渇の危険性を自発的に認識させて、多方面からの研究による、多角的視点を用いて、魔力枯渇への解決策を探していこうと。
その障害となりえる、国同士の争いはすでに、ダンジョンのゲートを用いて沈静化しつつあること、など、その過程で、この体制を作り上げた3大国やウィードに対して嫉妬からの妨害などが起こっていて、その一つに魔術国があったという話を、結構時間がかかりながらも説明し終えました。
私やファイデ殿もフォローに回り、ジェシカ、リエル、ポープリも参考資料を広げたりといろいろ大変でしたが、その結果……。
「素晴らしいです!! 異世界のモノの見方!! 新しい国家のあり方!! 才能の発掘!! 新しい発想を促すための形!! これならば民が困難に陥っても他国が助けてくれる!!」
流石に魔術という学問の一分野で神と呼ばれているノノア。
理解するのはとてつもなく早かったのですが……。
「魔術国は剣の国との同盟を破棄して、3大国連合同盟に加わります!! というか、あの大馬鹿者どもに、鉄槌を今すぐ下しましょう!!」
だまされていたこともあってか、やたらと息巻いています。
「ま、まあ、落ち着いてください。同盟に加わっていただけるのはありがたいですが、今は敵対勢力を押さえなければいけません。そのために、剣の国のノゴーシュと繋がりのあるノノア殿に協力をしてほしいのです」
「何なりとご命令を」
「いえ、同盟国なので、お願いとなりますから」
「失礼いたしました。どのような協力も惜しみません」
……なんというか、研究以外はからきしなのでしょうね。素直すぎます。
だからこそ、小国にとどまっているのでしょうか。
「では、今の状況を、剣の国との同盟を続けてもらい。相手の情報を得たいのですがいいでしょうか?」
「……なるほど。しっかりと情報を見極めて行動を起こしたいのですね? 私たちにしたように」
「その通りです。不要な争いを避けられるならば避けるべきです」
「わかりました。私としては、かの脳筋はさっさと滅するべきだとは思いますが、確かに無辜の民が巻き込まれてはいけません。慎重に動くべきですね」
なるほど、ノゴーシュとノノアはそれほど仲良くはなかったのが、今回の使者受け入れの要因でもあるみたいですね。
「早速ですが、今、剣の国とダンジョンマスターについて知っていることがあれば教えていただきたいのですが」
そうです。
今は少しでも多くの情報を手に入れ、剣の国へ応援を回さないといけません。
魔術国が外れだったのであれば、ノノアが同盟している剣の国にダンジョンマスターがいると考えるべきでしょうから。
「お恥ずかしながら、剣の国は隣接しているわけでもないので手紙でのやり取りぐらいでして、最近の様子をこの目で見たことはないのです」
「そうですか……」
それは仕方がないです。
だって、私たちが、そうやって連合に入らない国は孤立するように仕向けたのですから。
「しかし、魔力を籠めることによって、連絡が取れる道具と、DPを蓄えるためにダンジョンコアを送ってきて、見返りとして、いくばくかの物資援助も受けておりました」
……なんで連絡するのに魔道具なんてつかっているのかしら?
あ、コールはユキさん特有だったかしら?
あと、DPの代わりに見返りの物資を受けていたのなら、相手の言っていることの信憑性は増しますし、そういったところから信じたのかしら?
私がそう考えていると、ノノアは何か思い出したのか、何かを言いかけて口ごもります。
「何か?」
「いえ、その……私事の困りごとがありまして……」
「私たちは同盟国ですし、今回の良き協力者です。誤解もとけたのですから、できることであれば手を貸しますよ?」
「そ、そうですか? な、ならば……、ウィードで販売しているシャンプーとリンスを売っていただけないでしょうか? 最近取り締まりが厳しく、手に入らなくなっているので……」
「……」
タイゾウさんが固まった。
何を言ってんだ、この女って顔です。
私も多少は同意しますが、気持ちはわかるので私がフォローするべきでしょうね。
「ノノア殿の髪は美しいですからね。その維持とケアは大変でしょう。気持ちもよくわかりますし、私の方からお譲りいたしますよ」
「ほ、本当ですか!! ありがとうございます。エリス殿!! あれは、やはりウィードで生産されているのですね!!」
「い、いえ。ユキの故郷からDPと引き換えに仕入れているのです。そういった面ではある種の事実を織り交ぜているので、ノノア殿もだまされたのでしょう」
とりあえず、シャンプー談義は後にして、話を戻すように促したのだが、そこで意外なことがノノアの口から発せられた。
「なるほど。しかし、こんな小細工はノゴーシュの脳筋には無理、なら、ダンジョンマスターである、ビッツ・ランクスが指示したと思うべきかしら?」
「「ちょ、ちょっと待って」」
慌てて、止めに入ったのは、ランクスともめた時にいた私とリエルの2人。
「お2人とも、どうかいたしましたか?」
「ダンジョンマスターの名前言ったよね!?」
「そうです。言いましたよね。もう一度名前をお願いします」
「あ、そういえば言っていませんでしたね。ノゴーシュの所にいると思われる、ダンジョンマスターの名前はビッツ・ランクス。かの異世界から呼び出された勇者に王国を乗っ取られたかわいそうな姫らしいですよ?」
……あ?
誰が、かわいそうな姫君だって?
「ひっ!? な、なにか問題でも!?」
あ、つい顔に出ちゃったみたい。
でも仕方ないですよね。
さんざん、ウィードで暴れてくれたのですから。
「いえ、私たちとも因縁のある相手なので」
「うん。そうなんだ。ウィードで暴れたんだよ。そのお姫様」
「やはりそうでしたか、何やら、ビッツ・ランクスの話を集めると真逆の話がよくあるのです」
あのクソ姫がー。
至急、ユキさんに連絡を取らないといけませんね。




