第434堀:一番割を食った人
一番割を食った人
Side:ポープリ
「なるほど。なかなかこちらも大変みたいですね」
私はユキ殿に呼び出しをされて、ウィードに赴いていた。
無論、仕事の話であって、新作のケーキをあげるからということで来たわけではない。
今、ケーキを食べているのは、話を聞くうえでお茶うけとして出されたので、心遣いを無駄にするような無粋なことはできないので、ありがたく食べているだけである。
加えていうなら、ララやアマンダの分のケーキをお土産としていただいているのも、ユキ殿の心遣いであり、私が要求したものではない。
「というわけで、そっちがそこまで忙しくないのであれば、手伝ってほしいんだが……」
「かまいませんよ。学府の仕事はノーブル殿のおかげで、各国の橋渡しぐらいですから」
そう、私たちの大陸の方は、現在、ユキ殿の予定通り、ノーブル殿を中心に同盟を結ぶ活動が行われている。
ダンジョンのゲートのほぼ無償譲渡という案で、大国は前回の騒動への非難追及をやめた。
表向きは、犯罪集団がダンジョンを悪用していて、本拠地がノーブル殿の国エクスに在っただけということになってるから、そのお詫びとしては十分すぎると思っている。
私はその作り話が真実であると口裏を合わせるだけだ。
ホワイトフォレストの面々も師の望みならということで、あっさり頷いてくれた。
無論、ちゃんと説明もしたし、非公式の会談でノーブル殿が頭を下げたのが受け入れられた理由だとは思う。
無論、王の妹に、宰相の姉である聖剣使いの2人が一緒に説得、説明に来たのも大きいだろう。
その他の大国も、ユキ殿の根回しとか付き合いのおかげで、大きな問題もなく同盟を結ぶのに苦言を呈しているところはない。
ま、武勲を得たい武官や、傭兵共などは騒いでいるが、ゲートという規格外の流通の確保、および同盟軍の即時進軍が可能になった今、もはや戦争をする意味がとても低くなり、そういう意見は少数派だ。
そういう奴らはいろいろこそこそ動くので、前回の騒動を起こしたとされる犯罪者集団の一派とみなして、堂々と処罰できるのがありがたいと、同盟推進派には喜ばれていたりする。
しかし、まだまだ始まったばかり、油断はできないが、昔のようにいつ隣国が攻めてくるか? という感じのピリピリした空気はなくなってきている。
「話は分かりました。しかし、私を信頼してくれるのは嬉しいのですが、そういう話であるなら、師匠の方がいいのでは?」
タイゾウ殿の護衛という話だが、私よりも付き合いの長い師の方が適任だと思うのだが……。
ヒフィー殿のためとはいえ、付き合い自体はそこまではない。
だから、私より師の方が安心できるのではと思ったのだ。
というより、私や師がいても、ユキ殿の奥方たちが赴くのだし、心配は無用だと思うのだが、新婚であるヒフィー殿の安心のためだし、そこらへんは何かを言うのは無粋だな。
「あー、それなんだが……」
「なにか問題でもあったのですか? そういえば、師やヒフィー殿はどちらに?」
「簡単に言うと、ヒフィーがコメットを信用できねーから、ポープリでお願いしますという話になってな」
「はい? あの2人は親友と言っても間違いない間柄ですが?」
「仲が良すぎるんだよ。ほれ、コール画面で魔術演習場を見てみろ」
「魔術演習場? なんでまた……」
私はそういいつつも、ユキ殿の言葉に従い、魔術演習場の映像をつけると……。
『いつもいつも、便利なメイドとでも思っていたんでしょう!!』
『そ、そんなわけ、な、ないよ?』
『こっちを見てからいいなさい!!』
ズドーン!!
『あっぶな!? いくら超高性能リッチだからといって、あんな光の攻撃魔術食らったらただじゃすまないよ!! ヒフィーは手加減を覚えなよ!! こうやってね!!』
チュドーン!!
『どこが手加減ですか!! 新婚の私に傷がついたらどうするんですか!! それがわからない、コメットのくさった脳には光を当てる方がいいんですよっ!!』
ズドドド……!!
『誰が、人の遺体をおもちゃにしたんだよっ!!』
ドガガガ……!!
なんかすごい魔術戦なのに、言い合っている言葉が追い付いていない。
……子供の喧嘩か。
「というわけで、現在ののしりあいながら、今までのうっぷん晴らしという、じゃれあいをしているわけでな」
「まあ、そこは友人同士の戯れとして構わないのだが、あれではヒフィーさんが心配するので、ヒフィーさんの推薦もあり、真面目なポープリ殿にお願いしたわけです」
こうやって、言葉を濁しているが、私にはわかる。
いや、誰でもわかるだろう。
だから、特に学府とか他のしがらみもないから、遠慮なくこう言える。
「我が師と、その友人がご迷惑をおかけしました」
深々と頭を下げて謝る。
どう見ても勝手に喧嘩して、私に仲裁を頼みに来たとしか思えない。
はぁ、なんで自分より年上のババアたちの為に頭を下げないといけないのだろうね……。
耄碌しているならともかく、普通に肉体は若くて、意識もはっきりしているので性質が悪い。
「正直、身内があれだと頭が痛いだろうが、とりあえず、そういう理由で、ポープリが適任という判断になったわけだ」
「確かに、あの様子では、というより、師匠がおとなしく護衛の任をするような性格ではありませんからね。ヒフィー殿の心の安寧の為にも、私が出た方がいいでしょう」
師が人の要求を素直に聞くわけがない。
あれは、自分の好きなことを好きなようにやるタイプだ。
まあ、心根は優しくはあるので、忘れていなければしっかりフォローをしてはくれるが、護衛などという面倒なことをするとは思えない。
話を聞く限り、同行したい理由は魔術国の技術が知りたいだけだろう。
「よし、協力は得られたな。あとは、一旦あの2人を止めないと話が進まんな。いや、勝手に進めた方が早いか?」
「そういうわけにもいかんだろう。まあ、作戦の要である私の力を見てもらうのにもちょうどいいから、私が止めてくる」
そういって、タイゾウ殿はあの2人を止めるために部屋を出る。
私としてはユキ殿の話に賛成なのだが、タイゾウ殿の意見も至極尤もなので、本人が止めるというのであれば、止める理由はない。
勝手に話を進めたら進めたで、どうせ文句を言われそうだし、私としてはありがたくもある。
「しかし、タイゾウ殿が止めるのかい? 例の魔術・スキル封じを使って?」
「そうみたいだな。詳しい能力の範囲は聞いたか?」
「いや、私はあの決闘の時に見てたぐらいで、詳しい内容はしらないな」
「一緒に行動するから、ほれ、一応タイゾウさんのスキルに関しては把握しとけよ。というか、ポープリもタイゾウさんのスキル範囲では魔術やスキルは使えないからな」
そういいながら、ユキ殿は書類をこちらに渡してくる。
私が魔術やスキルを使えなければ、ただのかわいい幼女なんだけど……。
まあ、ヒフィー殿の心の安寧の為だから、いいのか。
どうせ、ちゃんとした護衛は他にいるだろうし。
で、なになに……。
タイゾウの所有スキル 我が故郷の在り方を示す
・スキル名「我が故郷の在り方を示す」の意味
おそらく、魔術やスキルが存在していなかったと思われる、ユキやタイキ、そしてタイゾウの故郷、地球と同様になる様、空間の法則を書き換える力だと思われる。
・効果 魔術及びスキルを封じる
文字通り、魔術、スキルの使用ができなくなる。
これは、放出系はもちろんのこと、肉体強化など、地球の常識を逸脱するような効果が見込めるものを排除する。
これの効果の判別はいまだ詳しくはできていないが、ドッペルの遠隔操作などは排除されないので、おそらくは、スキル効果範囲にある個体の、魔術や能力上昇を限定しているものだと思える。
実際に、剣術スキルなどは、訓練で得られるものでもあるので、これがなくなったりはしていない。
決闘の際にはタイゾウとタイキの剣術勝負から始まり、体術、殴り合いとなったから、自ら鍛えており、なおかつ地球でも当たり前の力であれば行使できると考えられる。
ドッペルの遠隔操作については、これはスキルではなく魔術に近いものではあるが、魔術というより魔力そのものを電波のように流して操作しているので、阻害されないものと考えている。
そして、特筆すべきは魔力生物に対して無類の強さを誇るということ。
魔力生物、つまり、本来生物としてはありえない形態のスライムやゴーレム、魔術によりよみがえった動く死体アンデッド、はては高魔力の塊とされる神は、個体の中にある、自身の生命維持機能を魔術、スキルによって補っているので、それを行使できなければ体の維持が不可能となるのだ。
ドッペルの場合は、自身の維持のための食事を必要としているので、おそらく、内部で魔力を生成できるか? というのが大事なのかもしれない。
この話だと魔力生物はデメリットしか見えてこないが、魔力が一定量補給できる空間であれば食事を基本必要としないので、そういった面での利点もあり、魔力の塊であるがゆえに魔力をそのまま蓄えて、レベルに関係なく力に転換できるのが強みだろう。
それを操るのには、個体の訓練が必要だろうが。
・効果範囲について
上記のように非常に強力なスキルではあるが、範囲がおよそ直径30メートルほどと、実はけっこう小さい。
大規模戦闘に際してはあまり役に立たない。
むしろ、大規模戦闘では、数の力に押しつぶされてしまう可能性が高まるので、使用するのはおすすめできない。
・効果時間について
タイゾウ自身の力量に左右されるらしく、ウィードに来た当初は30分前後だったが、ウィード式レベル上げの結果、3時間近く維持できるようになっている。
・バリアのような効果はあるのか?
これは、効果範囲外で発動した魔術やスキルによる攻撃を防げるのか? という疑問だが、完全に魔力で作られているものは、その維持と発動がなくなる。しかし、物質を出現させて投てきする魔術、肉体強化による物理的エネルギーに変わったものに対しては効果がないことが分かった。
つまり、炎や雷などは収束、誘導するための魔力が否定されるので消えるが、石礫や氷の塊などを魔術によって射出された場合は物体が飛ぶというエネルギーが発生しているので、そのままの速度で自然減速して落下するまで飛ぶ。
このように、バリア、盾として使うには心もとないので、既存の魔力防壁をつかったほうが安全であると判断する。
・このスキルを防ぐ手立て
無論、スキル発動本人に使用をやめてもらうか、意識を奪う、命を奪えばいい。
間接的な手段としては、デコイ、囮を用意することで、魔力生物の本体の魔力減衰を遅らせることができる。これは新大陸で開発した魔力消費減衰のペンダント系で効果が確認されているが、記述の通り、遅らせるだけである。
力技的には、ルナのような超魔力があれば、タイゾウのスキルを上回り阻害できることが確認されている。というかそんな魔力はルナぐらいしかないので暴論と言っていいだろう。
・総合判断
特定の相手に対しては絶大な効果を期待できる。
しかし、その反面、その効果が範囲にいる全員に、敵味方区別なく無差別に適応されるので、諸刃の刃でもあり、使いどころは極めて難しい。
使うのであれば、戦闘を目的とするのではなく、交渉などの話し合いの時に使用して、突発的な魔術的、スキル的な妨害にする防衛として使用するのが望ましい。
似通っている事柄は、ダンジョン内のトラップである、魔術、スキル使用禁止エリアと似ているかもしれない。まあ、厳密にはちがうのだが、似ているというとこれである。
「ふむ。効果を体感した時には、恐ろしいスキルかと思ったけど、これはこれで穴だらけだね」
「だろう。ま、ヒフィーが心配するのもわかるんだよ」
「で、私はお飾りみたいだけど、実際に護衛に当たるメンバーはどんな武装で行くつもりだい?」
「間近で護衛するのは、ジェシカとリーア、リエルだな。近接武器を持たせておく。女性じゃないと向こうも警戒するだろう」
「なるほど。それはわかる。で、間近ってことは、そうじゃないのもいるんだよね?」
「無論、スティーブが率いるダンジョン攻略工作部隊を展開させておくから、すぐにでも部屋に突入、狙撃ができるようにしている。装備品は銃器メインで」
「それはそれは……」
なにかあった場合、相手は、魔術やスキルが使えず、ハチの巣にされるわけだ。
私たちはその少しの間だけ、耐えればいいと。
うん、相変わらずおっそろしいね。
「で、そのタイゾウさんが会談している間に、ダンジョンを掌握する。魔術やスキルが封じられていれば、外部の情報は得られないから、それが実際本命」
交渉自体が囮とか、……鬼か。
と、すいません。
質問コーナーですが10月末にまとめて出します。
ちょっとゴダゴダあってまして、遅れてすいません。
前にも話したんですが、11月に友人の結婚式で横浜に行くことになりまして、友人スピーチとかの準備とか、スーツの買い直しとかままめんどくさい。
あと、11月4日着の5日式で帰りなんですが、余裕があればなんか遊べたらなーと思いつつ、東京なんも知らんからうごけねーってのが本音です。
だれか、案内ついでに遊ぶかい?(ゲス)




