落とし穴71堀:夏の夜の納涼 解析編
夏の夜の納涼 解析編
Side:コメット
何やらヒフィーから妙な連絡があったが、その時はまたお小言の類かと思って無視していた。
しかし、ユキ君に呼ばれて来てみれば、なかなか興味深く面白い催しをやっているじゃないか。
もうちょっと、メールの書き方というのを覚えた方がいいね。ヒフィーは。
だって「ちょっときなさい」だよ?
これはどう見ても、お小言だろう?
ま、そこは、今はいいとしよう。
問題は、イチャイチャして戻ってきたヒフィーにいきなり変な言いがかりをつけられた。
いや、言いがかりではあるが、ヒフィーの憶測はあながち間違っていないとおもう。
事前にしっかりとこの肝試しの話を把握しているのであれば、あの手この手でヒフィーを驚かせようとするだろう。
私はそういう人間だ。面白いことには手を出さずにはいられない。
だが、残念ながら私はその場にいなかったという事実があるので、自分がやっていないことをやったというほど、馬鹿でも酔狂でもない。
「や、やっぱり、こんなことをするからじゃ!? 妾は怖いぞ!?」
「そ、そうよ。こういうことをするべきじゃなかったのよ」
「デリーユお姉ちゃん大丈夫だよー」
「ラビリスも大丈夫なのです」
流石に、こうやって本気で怖がっている人たちもいるし、冗談だったとしても言い出せないというのもある。
下手に私がやったと冗談でもいえば、この魔王とロリ巨乳に殺されるだろう。
いや、何度も言うけど、私は何もやっていないからね?
「うーん。これ以上は俺としても肝試しは中止したいな。不確定要素がでてきたし、デリーユやラビリスはこんな感じだしな。みんなはもう戻って寝てくれ」
「あら、あなたはどうするのかしら?」
「俺たちはここを調べる。この状況下で本当に俺たちの知らない何かがいるのは、かなり問題だからな」
「なるほど……ね。でも、大丈夫なの?」
「だから、嫁さんたちには戻ってもらいたいんだよ。コールで画面の確認ができるし、何かあればスティーブたちを使って救援してくれればいい」
「調べるのはスティーブたちのほうがいいんじゃないかしら?」
「人じゃないし、魔物だから、その影響がどう出るかわからんからパス。あと、見ての通り、デリーユとラビリスの怖がり方がひどいしな。家で待機している、シェーラとキルエも怖がりだから、だれかいないと、動けないぞ?」
「あー、そういえばそうだったわね。ミリーとかも待機しているし、子供たちもいるから戻る方がよさそうね。……明日の朝ってわけにはいかないのよね?」
「幽霊の出る時間帯じゃないからな。朝も朝で調査するだろうが、この時間も外せないな」
「そう。護衛の4人は頼むわよ?」
「うん。任せて」
「任せてください」
「……ん。お化けなんて非常に楽しみ。いるなら捕まえる」
「ゴーストだろうが、私の魔術で吹き飛ばして差し上げますわ」
ふむふむ。
結構本格的に調べるみたいだね。
こりゃ面白くなってきたね。
「そういえば一応確認しておくが、今まで肝試しに行ったメンバーは人形に触ったりはしてないよな?」
ユキ君がそう確認をとるが、やはり人形に触ったり、動かしたようなことはなかったらしい。
と、それはそれでいいとして、ヒフィーのほうは残るのかな?
「あ、あの、タイゾウさん。わ、私は死ぬのでしょうか?」
「……いえ、そういうことにはそうそうならないと思いますが」
「たまにはあるのですよね? わ、私は呪われた、み、みたいですし……」
「大丈夫です。これから確認や解析をしますから。きっとただの偶然ですよ」
「そ、そうでしょうか?」
……馬鹿がなんかタイゾウさんに迷惑かけまくっている。
元はといえば呪いとか言った私がわるいのだが、それだけでこうなるヒフィーのメンタルにも問題がある。
とりあえず、ツッコミ用のハリセンを取り出して、思い切り振りかぶり、ヒフィーの頭をはたく。
スパーーン!!
いい音だ。
振りぬいた感覚もベスト。
気持ちがいいね、ハリセン。
「いったーーーー!?」
「ほら、そこまで元気なら呪いとか関係ないよ。メソメソしてないで、タイゾウさんに協力するか、おとなしく旅館のほうに戻るか決めなよ。そうしてるだけ時間の無駄なんだから」
「……えーと。ヒフィーさん。良ければ旅館で待っていてください。これからまた一仕事ですから、夜食でも摂りたいのです。その準備を頼まれてくれませんか?」
「はい。わかりました。腕によりをかけて作りますね」
……ちっ。私がくっつけたが、こういう風にイチャつかれるとイラッとするわ。
さっきのおびえようはどこに行ったし。なにその切り替えの早さ。
たく、これだから……。
そんな風に私がイライラしているうちに、解析班だけがこの場に残っていた。
「さて、まずは……映像の解析からかな?」
「そうですね。それがいいんじゃないんですか」
「そうだな。丑三つ時まではあと1時間ほどある。再度検証は丑三つ時、現場の確認は明るくなった朝でいいのではないか?」
何やら男3人はそういって、作業を開始している。
しかし、丑三つ時ね。わざわざそんな時間に検証をするってことは結構マジみたいだね。
「コメットさんは戻らなかったんですね」
「それはそうだよ、リーア。私は研究者だからね。こっちに残らないなら研究者である意味はないさ」
分野は違えど、未知なる探求に興味がないわけがない。
それに手を出す余裕があるかないかだけだ。
「そういえばザーギスはなぜ来なかったのでしょうか?」
「ザーギスなら、3徹で轟沈。爆睡中だよ」
研究に傾倒してる馬鹿は、こういうサイクルなのだ。
「……それ、お風呂入ってる?」
「ザーギスがそんなことに気を使うわけないじゃないか」
「絶対、ザーギスは旅館に出入りすることを禁止しますわ。子供たちが病気になります」
……あー、うん。
流石に子供たちのことを言われると、風呂入らないとかは肯定できないなー。
私からも言っておこう。最悪、焼却処分されるかもって。
「……コメットはちゃんとお風呂入ってる?」
「流石に死んでも乙女だからね。私はそういうことには気を使っているよ」
「……じゃ、燃やすのはザーギス。子供たちが病気になるような汚物は、いてはだめ」
主に、ヒフィーがね。
ふう、あぶねぇ。私も焼却処分されるところだったよ。
クリーナの炎の魔術はユキ君の指導の下、けた違いになっているからね。
私でも防げないよ。
ザーギス、君の死は忘れない。
遺体も灰からなんとかアンデッドとして復活してみるから。
その時は私の言うことを何でも聞く、有能な天才のアンデッドができるわけだ!!
くっくっく、そうなったら、厳選とか孵化とかレベル上げをやってもらおう。
「おい、そこの死体女。妙なこと考えてなくていいから、こっちの説明聞け」
「な、なんだと!?」
「自分で育てないポケ○ンなんて、使い方とか癖を把握していないから使いこなせないですよ?」
「ばれてる!?」
流石、廃人たちは違うぜ。
まあ、なんとなく、こいつは大技のほうが当たりやすいよなーとかいう、信頼感とかがあるよねー。
やっぱり、他人に育成を任せるのは、実戦で判断を誤るか。
「と、そこはいいとして説明はありがたいね。私は人形が動いたとしか聞いていないから。詳しい話は全くさ」
「その説明だよ。いったん状況を整理する」
「えーと、タイゾウさん。これでいいですか?」
「ああ、そこのホワイトボードに広げてくれ」
タイゾウさんの指示でタイキ君がホワイトボードにある紙を広げて、磁石で留めている。
ふむ、あれは恐らく肝試しで利用した廃旅館の図面だね。
あ、ちなみに、私たちはその廃旅館がある場所から300メートルぐらい離れた場所にプレハブを建てていて、そこから出発帰還とし、監視場所も兼ねているのだ。
「先ほども見た人もいるかもしれないが、この図面が、肝試しで利用している廃旅館だ。なお、損壊状況などはこの図面には記載していない。で、その損壊状況、場所は今のところ詳細を教えると時間が押してしまうので、省略する」
「ちょっとまってくれないかい? その、人形が動いたとされる部屋の損壊状況はどうなんだい? そこは大事だと思うよ? 風や虫の侵入があって動いたとかあるかもしれないだろう?」
私がそうユキ君に説明を求めると、タイゾウさんが前に出てきた。
「そこは私から説明しよう。こちらがその部屋の映像だ。時間帯は今ではなく、昼頃のものだな。今夜のことをやるためにちゃんと事前に記録していたものだ」
その映像を見る限り、屋根に穴が開いていたり、目立った損壊はない。
「人形や、家具などの設置物の裏や下などが損壊していることは?」
「それもない。これが物を配置する前の部屋の状況だ。流石に、人の出入りを考えているので、足元が抜けるとか、壁が崩れるなどというのは事故の原因になりかねないからな。ボロボロに見えるだけでそういうところはしっかりとしている」
なるほど。
風などの外的要因が人形を落としたってことはないわけだ。
「あと考えられるのは、人が出入りした時の振動、虫や小動物などの侵入。最後に先ほども確認をとったけど、意図的な人による仕掛けだが、そっちは否定されている」
ふむふむ、そっちの可能性も捨てきれないね。
「ま、事前説明はこれぐらいでいいだろう。これから、当時の映像をみようと思う」
「タイキ君」
「はい。わかりました」
そして、映像が流れる。
時間帯は23時ちょっとすぎ、確かこの時間帯に肝試しを開始したんだっけ?
部屋の様子は暗く、暗視カメラで緑色で映っているのと、真っ暗で映っているカメラの二つが表示されている。
その時は、人形は動いていない。
「って、ちょっとまった。どの人形が動いたかしらないよ」
「ああ、映像止めてくれ。えーと、タイゾウさん」
「そうだな。確か、この人形だ」
そういってタイゾウさんが指差すのは、左側の中段においてある日本人形だ。
淵からもそれなりに離れていて、ちょっとした振動や虫などで動く距離じゃない気がする。
しかし、これを暗がりで見ると寒気がするね。
ヒフィーが怖がったのも納得だ。
あとでからかったことを謝っておこう。
「じゃ、再開する。これから、何組か普通に行って戻ってくるはずだ」
ユキ君が言ったように、数組のメンバーがこの部屋に出入りして記念撮影をしては出ていく。
しかし、動いた人形に変化はないし、その人形に手出しをした人も見当たらない。
そして、ヒフィーとタイゾウさんが来た時に、その人形は、ヒフィーが言った通り、コトリと床に落ちた。
「……マジで動いてるな」
「うわー、これマジもんですか?」
「ふむ。ほかのアングルはないのか?」
3人はほかのアングルに切り替えていろいろな角度からの映像を流しているが、私はあの映像に感動していた。
すげー、魔力やスキル無効化空間であんなことができるなんて、世の中にはまだまだ私の知らないことがたくさんあるんだと……。
「うわー。本当に動いてるよ!?」
「……本当に動いていますね」
「……ん。本当にすごい。幽霊はいる?」
「それはどうでしょうか? ってあれ? ユキ様、何か人の手のようなものが見えますが?」
「「「え?」」」
全員がそのサマンサの発言に驚いた。
繰り返される映像には、人形が動く姿しか見えない。
「サマンサ、どこだ?」
「えーっと、人形とは反対側のほうですわね」
そういわれて、反対側のほうを見ると……確かに、人の手がうっすらと映っている。
「手、手だよ!? 絶対人の手だよ!!」
「リーア、怖いのはわかりますが、私の頭に抱き着くのはやめてください」
「……確かに人の手。でも、位置がおかしい。これだと……」
「この映像に映っていないとおかしいですわね」
サマンサの言う通り、この映像はその人形が乗っている段を前方横、45度の斜め前から撮影したもので、段の裏は空洞なのがわかる。
だからこそ、人の手だけ映っているのはおかしい。
あの位置からなら、何者かがいるのならば、全身が映っていないとおかしいのだ。
「ユキ君。このダンジョン内に反応は?」
「ない。俺たち以外の反応は存在していない」
……くっくっく。
本当に面白くなってきたね。
科学的な検証とかしている心霊番組とかが好み。
あと、世界樹迷宮は相変わらず、鬼畜な難易度ですな。
でも鹿さんがいないのが残念。鹿の意味が解るなら、君はきっと優秀なボウケンジャーなのだろう。




