第394堀:お仕事は大変である
お仕事は大変である
Side:スティーブ
「こちらαよりβ、Θへ、現在の状況はどうか?」
『こちらβ。所定位置に到着。全周囲警戒継続中。欠員無し』
『こちらΘ。β同様、所定位置確保、警戒継続中。欠員無し』
「了解。こちらも所定位置を確保。警戒を継続しつつ、調査部隊を展開。βは居住区、Θは工場屋内へ。未発見通路及び未発見建築物への侵入は不可。それらを発見した場合は速やかに報告。αは作戦本部との連絡をとり、作戦の再確認を行う。次の連絡は10分後。行動開始」
『『了解』』
現在の時刻、0000。つまり、0時ジャスト。深夜っすね。
ただいまおいらたちは、既に二度目のダンジョンアタックの最中っす。
まあ、今はただのおさらいで、各チームの待機予定地の確保をしているだけっすけどね。
幸い、深夜だけあって特に何も問題なくすんなり、ここまでこれたっす。
いや、総勢200名近くがすんなり潜入して気が付かれないのはおかしいと思うっすけどね。
「ねー。私も様子見てこようか?」
「……黙ってるっすよ。無駄に口を開くのは禁止って言ったはずっす」
横には口うるさい小人が飛んでいて、そいつの名を妖精族のコヴィルというっす。
「なによ、その言い方。私が手伝って……もごっ!?」
「コヴィル。少し静かにしようね。流石にスティーブさんに迷惑かけるなら僕も怒るよ?」
「……わかったわ。ごめんなさい」
「理解してくれてありがとう。この仕事が終わったら一杯仲良くしよう」
「うん。そうね、キユ」
キユに諭されてようやく大人しくなるコヴィル。
はぁ、なんでこんな五月蠅いのを潜入任務によこしたんすかね大将は。
あと、リア充死すべし。
独身ばかりのαチーム内で、夫婦でいちゃつかないでくださりますか?
憎しみにかられたチームがフレンドリーファイアしても知らないっすよ?
というか、おいらも撃つっすよ?
と、そんなことより報告報告っと。
「こちらDA隊より、本部へ。予定時刻にズレ無し。潜入は成功。繰り返す、潜入は成功。他の状況と、今後の動きを確認したい」
『こちら本部。DA隊の作戦遅延無しは了解。他の状況、今後の動きについては……』
手早く本部への報告と確認を行って、すぐに連絡を切る。
一応、傍受系を気にしてっす。
タイゾウさんが既に電気通信網は作っていたっすし、傍受ができる敵がいてもなんら不思議じゃないっすからね。
そこら辺は念には念を入れて注意するっすよ。
通信兵をちゃんと置いて、傍受が無いか、電波及び魔力の乱れがないか確認させているっす。
「さっきの無線は?」
「ノイズ無し。電通信を前半、魔通信は後半で使い分けましたが、特に傍受されたような痕跡はありません。記録も取ってありますので、傍受されていたのなら、解析班にすぐにでも届けられます」
「うし、一応データの送信。ザーギスの馬鹿に届けとくっす」
「了解」
「そのあと、予定通り10分後にβ、Θとの連絡を取る。電魔力の出力は絞るのを忘れないようにするっすよ。範囲は10kmまで」
「了解」
特に問題はなしっすね。
なら、こっちもチームを動かしますか。
「よし、そのほかは警戒継続しつつ、ゾンビ生産所の様子を遠目で伺ってくる部隊は予定通り行くっす。後で報告を求めるっすから、しっかり監視をしておくっすよ」
「「「了解」」」
さーて、後は……。
「ねえ、なんかスティーブが真面目に働いているのって初めてみたかも」
「え? スティーブさんはいつもマジだと思うんだけど?」
「えー、だってさ訓練中とか、巡回の時とかだって大体めんどくせーって感じでやってるじゃない」
「あれは、周りを和やかにするためだよ。ピリピリしてたら皆に不安が伝わるからね。今みたいにやることはきっちりする人だよ」
「……へー」
ちっ、絶対疑ってる声っすね。納得してないっすね。いや、巡回の時とかはめんどくせーと思ってるっすよ。
だって冒険者区は相変わらず他所からきた冒険者の馬鹿共が喧嘩売って来るから、始末書ばかりになるんすよ。
そう、周りが悪いのであっておいらが悪いわけではない。
そんなことを考えつつも色々作業をしていると、本部からの資料も届いたっすね。
もうそろそろ、10分か。
「αより、β、Θ、聞こえるか?」
『こちらβ。聞こえる』
『Θ。聞こえる』
「問題が無ければ、現在の状況及び、今後の行動の確認をとりたい」
『βは問題無し』
『Θも問題無し』
「よし、警戒を怠らず話を聞いてくれっす」
前日、ヒフィーさん、ポープリさんたちは予定通り、ノーブルから演習の約束を取り付けた。
開始は本日昼頃。お互いダンジョンもちであることが幸いし、演習準備のための移動時間が無いのが幸いした。
逆に相手も転移系を把握していることの確認が取れた。
しかし、その発言の中で転移門はDPがかかると言って、ノーブルからの設置を渋っていたことからそこまでDPに余裕があるとは思えないとのこと。
楽観的に考えると他のダンジョン所持している素振りはうかがえない。
だが、そんな楽観を受け入れるわけにはいかないので、予定通り、侵入している潜入部隊が予定演習戦場の把握、転移門の捜索、魔剣及びゾンビ生産所の構造把握停止、このダンジョンを稼働させているコアの発見奪取、ノーブル及びダンジョンマスターと関係者の確保と目標に変わりはない。
各作戦の細かい内容は、各チームのリーダーが把握しているので、指示を仰ぐように。
作戦開始時刻はヒフィーとノーブルが演習準備に入ってから、演習開始後、ミノちゃんからの合図を持って、準備ができているなら仕掛けを全部動かす。
それまでに、ルートの把握、下準備を終わらせておくように。
分担については……。
ダンジョンアタック隊 DA隊 内訳 任務
αチーム:スティーブ部隊。ゾンビ生産工場の監視、把握。
βチーム:ジョン部隊。退路の確保、住民の状態監視、把握。
Θチーム:スラきちさん部隊。生産工場の監視、把握。
Ωチーム:ナールジア技術班。各チームが発見した技術を把握、任意で作動する細工を仕掛ける。
それが終わり次第、βチームは退路の確保で状況維持、αとΘは合流して、Ωチームを護衛して未発見地域の探索、演習予定戦場、転移門、コアの発見のち細工を求める。
なお、ノーブルなどはミノちゃんの方に集まっているので、そこで確保する。
「と、この仕事を深夜の内にやってしまおうということっすね」
『……全部終わらせようって話にしか見えないが』
『右に同じく』
「まあ、それが最良っしょ? といっても、これは最良の結果であって、大将やおいらとしては……未発見地域の捜索ぐらいが精々だと思っているっすよ」
『できてそれぐらいだな』
『他は運の要素が多すぎるな。しかし、それじゃどうしようもないんじゃないか?』
「いんや、全然。ミノちゃんの合図を持って演習中に仕掛けを発動するから、最低でも魔剣とゾンビ工場の生産が止まるっす。その時には、機械?の担当者が来るはず、それかDPからの魔力操作があるはずっす」
『ああ、なるほど。それをたどればコアにつくわけか』
『コアを抑えればあとは簡単。担当者が来るならその後をつければいいってことか』
「そういうことっす。残る問題は、ナールジアさんが細工できるほどの技術レベルかってことっすね。どうっすか? 写真とか見た限りでは?」
そう言って、既にΘ、スラきちさんと行動をしているナールジアさんに聞いてみる。
『そうですねー。正直な話わからない。といったところですね。まあ、見た限りで言えば特にたいしたものには見えませんでしたから、ハッキングはたやすいとは思います。ま、あくまでも私見ですけどね』
「まあ、そうっすよね」
見ただけでハイ出来ますって言われても信用ねーっす。
「さて、話を聞いていればわかると思うっすけど、最優先事項はΩを誘導して、細工の支援をすることっす。これができないと陽動もなにもないっす。なので、まずは警備の薄い魔剣工場へΘがΩを護衛しつつ潜入。そこでクラッキングかハッキングかわからないっすけど、出来るかを確認するようにっす」
『了解』
「αはゾンビ施設への誘導と護衛になるからしっかりするっすよ。βは居住区の確認をしつつ住民の把握、及び退路の確保っす」
『了解』
「作戦開始時刻は0040。各チームへの説明、確認を速やかに終わらせて、行動を開始するっす。定時連絡は5分置き、作戦終了予定時刻は0400。準備にかかれ」
『『了解』』
ふう、えーと今の時刻は0020か、ま、20分もあれば準備はできるっしょ。
「α先行は?」
「特に問題無しとのことです」
「よし、中を探る隊を追加、先行から情報もらうのを忘れないようにしろ」
「了解」
おいらたちもおいらたちで、Ωの支援をしないといけないから面倒っすよね。
あの人なら一人でスーッといって戻ってきそうだし。
まあ、そんなことはさせられないってのは分かるっすけど。
「ねえ。なんで私が族長と別行動なのよ」
「あん? そりゃー、もちろん別行動っすよ。万が一があった場合、一網打尽は避けたいっすからね。どっちかが残っていればどうにかなるっすよ」
「私、そこまで機械は詳しくないけど?」
「あー、そりゃ自覚がないだけっすよ。ナールジアさんのように無茶苦茶兵器を作るわけじゃないっすけど、妖精族としての基礎能力に、高精度の魔力操作があるっすからね、まあ、ナールジアさん程じゃないっすけど、ある程度こういう細工はとくいっしょ? イタズラ良くしてるし」
「うっ、そりゃ、そうだけど……。やれって言われてできるかな……」
「大丈夫だよ。僕のコヴィルならできるさ」
「あ、うん。そうね。キユがいるんだもん。絶対上手くできるわよね」
けっ、リア充はくたばるっすよ。
それがαチームの、いや全人類モテない生物の総意っす。
ああ、神よ。なぜこのように、人を差別なさったっすか?
『知らないわよ』
ああ、駄目神が出てくる時点でお察しっすね。
『ゴブリンのクセにいい度胸じゃない!?』
覗き見してないで、そっちの仕事してから言ってくださいっす。
大将に暴露して、酒を届けないようにしてもいいっすよ?
『すみませんでした。どうかなにとぞ……』
あ、すみません。作戦開始時刻なんで。
『ちょっ!? ねえ、本当に喋らないわよ……』
脳内チャンネルを切る。
あの人、勝手に魔力をつなげて脳内会話するから困ったものっす。
まあ、こういった冗談にしか使わないから無害なんでしょうが。
こうでもしないとやってられない神の仕事とか、考えただけでもゾッとするっすね。
「αより、β、Θ、及びΩ用意はどうか?」
『β準備完了』
『Θ準備完了』
『Ω、いつでもいけますよー』
「よし、時計合わせ。……5、4、3、2、1、作戦開始」
『β行動開始』
『Θ魔剣生産工場へ移動開始』
『Ω、Θについていきますー』
さーて、約3時間ですんなり終わるっすかね?
そうだといいなー。夜間業務とか眠くてたまらないし。
世の中、成功して当たり前、失敗は怒られる。
これが社会の常識であります。
失敗することをしようとは思わないし、成功できると思ったからこそやるわけであります。
まあ、人によりけり、状況もあるけど、なるべく成功するように失敗する要因は極力排除して行うのが、当たり前。
だから、成功するのは当然って言う話。
いやだよねー社会人って、まあお金とか生活かかるから当然なんだけど。
ストレスマッハだぜ!!
ま、だからそこここまでの道のりを書いたわけですが、もうこの話の結果は深く書かないよ?
たぶん一行ぐらいで終わる。
だって、成功して当然と思われるほど積み重ねてきて、トラブルもなければ一行で終わるよね。
そして、物語は一気に、ギャグへと向かうのだ。
あ、「ルフランの地下迷宮」「牧場物語 3つの里」楽しいです。




