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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 エクス王国編

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第385堀:賽は投げられた

賽は投げられた





Side:モーブ




俺たちは、昨日の成果を資料で渡され読んでいた。

無論、表から、スティーブたちが見つけた胸糞悪くなる工場のことまで。


「ふーん。ま、よくある話だわな」

「だな」

「そうですね」

「そうなのですか?」


ドッペルドレッサはこういう知識がないのか、俺たちの返答に首を傾げている。


「こっち、新大陸じゃ珍しいかもしれないけどな。地元、ウィードがある大陸ではさして珍しいことじゃねーな」

「規模はまるっきり違うけどな」

「???」


ありゃ、ピンと来なかったか。

仕方ないので、カースに視線を飛ばす。


「あー、説明しましょう。この手の死体を扱うのは、リッチ系が得意ですよね?」

「はい。……ああ、なるほど。死霊術ですか」

「そうです。リッチ系が得意な術ですが、他の生物が使えないわけではないのです。ま、使うのは人ぐらいですが」

「人ですか」

「そう、人です」

「つまり、人が死霊術を使う死体というのは……」

「無論、人の死体ですね」


カースの言う通り、死霊術を使う奴らにとって、駒として使うために死体を手に入れないといけない。

だが、魔物の死体というのは基本売れる物が多く、完全な死体として残るのは稀だ。

遺体が元の状態に近ければ近いほど、アンデッドの動きもよくなる。

逆に欠損が大きければ、その分行動に支障がでる。

完全に骨からアンデッドを作ることもできるが、魔力の負担が尋常ではないし、元の魔物から特性が変わりすぎる。骨だけになって、体重が減りすぎるというのが一例だ。

だから、墓場に丸々入っている人の死体を使った方がいいというわけ。

無論、そんな事をされれば、遺体の遺族は良い気分であるわけがない。


「なるほど。そういうことがあって、死霊術、アンデッド使役に嫌悪があるわけですね」

「そういうことですね。私たちも仕事で何度かその手の馬鹿と戦うことがありましたが、まあ、胸糞悪かったですね。依頼者の旦那や息子、妻、まあよくもここまでというぐらいに、アンデッドとして使役していたのもいましたから」

「……それは、嫌悪があって当然ですね」

「まあ、だからと言って死霊術というのが絶対的に悪というわけでもないんですけどね。嫌悪されるのは当然ですが、国として、1人か2人、お抱えの死霊術士がいたりするんですよ」

「なぜでしょうか?」

「色々な理由があるのですが、簡潔に言えば、死体のプロフェッショナルと言い換えてもいいので、葬儀などの役に立つのです。あとは、願いで死後もアンデッドとして兵として使ってくれという人もいて、その願いをかなえるためです」

「……前者は分かりますが、後者はなぜそこまでして?」

「死してなお、国を守る剣であり盾でありたいというやつですよ。偉人の遺体が安置されているというのも結構ありますが、そういう利用方法も示唆しているのです」

「……なるほど。確かに合理的です。有用な人材や技能を亡くなってからでも使えるというのはいいと思います」

「そうだ。だから、その合理性を理解して、その手段を残している。ま、よほどじゃない限り使わないだろうけどね。自分の不甲斐なさを、過去の偉人に拭ってもらうなんて、相当な恥だよ」

「確かに」


ま、殆どが、非合法な死霊術士で面倒事しか起こさないからな。

数も精々操れて、10~20ってところだ。

だから、本当にエクスの方は規模が違う。


「説明が終わったところで資料の続きだ。俺たちに襲い掛かってきたオークやゴブリンのアンデッドは恐らくこれだろうという話になっているな」

「そりゃ、そうだろうよ」

「ああ。俺もそう思う。だが、厄介なのは次だ。読んだか?」

「次?」


俺はライヤにそう言われて、斜め読みをしていた資料をまた読み直す。


「えーと、モーブたちが襲われたあと、近辺を捜索したが、術者本人は見つからなかった。……これは聞いた話だな。更に次か、……それで視点を変えることにする。魔物たちが身に着けていた魔力減衰緩和のアイテムだが、それをつけることによって、命令を与えるだけで、術者より離れて行動ができたものと推察できる。……って、これは不味くないか?」

「そうだ。術者を倒しても止まらない。魔力が無くなるまで動くんだ。本来であれば、術者の魔力供給が無くなれば、すぐに体の維持ができなくなりただの死体に戻るが、このアイテムがそれを軽減しているわけだ」


うげー。

いざとなればノーブルをぶっ倒せば済むって話じゃないのか。

解き放たれたら、エクスは終わりか。

だって、ザーギスは失敗作だとか言ってたが、あれでも減衰率から考えても最低1時間は動けるらしいから、1万近くのアンデッドをエクス王都に放てばゾンビーパーティーにしかならん。

元々、アンデッドなんて魔物はほぼ存在しないような土地だし、一般人が対応なんてできないだろうし、兵士もきっとやられるだろう。

こりゃ、ポープリやヒフィーが穏便にっていうのはちょいと厳しくないか?

と、俺が頭の中でそんなことを考えていると……。


「そういえば、自然界に存在しているアンデッドはなぜ、魔力が尽きずに、自壊しないのでしょうか? ダンジョン内のアンデッドはコアからの供給があるのでわかりますが」

「ああ、それは簡単だ。自然界のアンデッドは全て魔石をその体内に残しているからな」

「……? ああ、そういうことですか。魔力を蓄積する場所、魔物にとって心臓と同じような物がそのまま死体に残っているから、そこに魔力が蓄積して自壊を防ぐわけですね?」

「そうだ」

「しかし、人の死体も放っておけばアンデッドになります。人には魔石は存在しないはずですが?」

「全部が全部、人の遺体がアンデッド化するわけではないのは知っているな?」

「はい。高レベルの方がアンデッド化しやすいと、ルルア様などから聞いたことがあります」

「そう。高レベル。恐らくは、魔力をある程度溜めている人ならアンデッド化しやすい。その理由は、多分死にたくないとかの理由で、魔石を無意識のうちに体内に作り、それを起点とするからじゃないか? というのが、ユキやザーギスの話だ」

「……なるほど。筋は通りますね」

「まあ、聞いての通り、まだ確証はないらしい。そこら辺は考慮しておいてくれ」

「はい。他の可能性もあるのは理解しました。どうもご教授ありがとうございます」


再び始まった講義はおわったので、俺は口を開く。


「しかし、どうしたもんかね。これ、知ったところで全部対応ができるわけでもないだろう?」

「そうだな。ユキたちが、生産する場所には何かしら手を打つだろうが、既に配備されているのを全部調べ上げるのは困難だろうな」

「まあ、それもこれも、ポープリさんやヒフィーさんが丸く収めてくれればいいだけですが」

「それまでは、いつ、エクス王都がゾンビであふれかえってもおかしくないわけですね」

「とりあえず、ユキからは、万が一の時には、知り合いぐらい逃がせるようにしておけとは来てるな」

「それぐらいしかできないだろう。どうせその時はあちこちで乱戦だ。俺たちが率先して潰しまわってもいいが、その時は目立つだろうし、ノーブルとも敵対してるだろうから、こっちに敵が集中するだろうな。そんな状態で知り合いを助けるもなにもないだろうな」

「それは勘弁願いたいですね。そうなったら、喜々として、俺たちを囮に使いますよ。ユキなら」


うん。絶対にあいつならやるな。

ということで、俺たちは知り合いだけを逃がす方向で。

えーと、ロゼッタ傭兵団と、商人トーネコのおっさんとその家族、あとは……美味い肉の店の看板娘か?

そんなことを考えていると、コールに新しいメールが届く。

俺は特に深く考えずそのメールを開く。

どうせ、経過報告とか、今後の予定ぐらいだと思ったからだ。


「なっ!?」


俺はその内容に愕然とした。

いや、内容はその通り、経過報告と今後の予定でしかなかった。

だが、それが異常だった。

俺はクビが錆びているのではないかと思うぐらい、重くゆっくり顔を上げると、ライヤもカースも同じような顔をしていた。

恐らく、2人にも同じメールが届いたのだろう。


「み、みたか?」

「……見た」

「……見ました」


声を出して確認をとってみたが、やはり同じ内容だったらしい。

いや、明確な答えはもらっていないが、あの返事だけで、見たものが同じだと直感的にわかった。

そして、ドッペルドレッサだけは、俺たちとは同じ反応をせず、ただ純粋に……。


「素晴らしいですね。ジョン隊長、キユ隊長、スラきちさん隊長と、魔物部隊のトップがそろい踏みですよ。これなら、作戦は随分楽になるでしょう」


そうなのだ。

ユキが直々に指揮下に置いている魔物4将の内、3人を投入することが決定したという連絡が来ている。

そして極めつけは……。


「さらに、その場でしっかり解析ができるように、技術班として、妖精族のナールジアさんとコヴィルさんが同行するようですね。これは鉄壁の布陣といえるでしょう」


俺たちが持つ武器を専属で作ってくれている、クレイジー武器開発マニアが紛れ込んでいる。

俺たちでもナールジアの武器を戦場で使ったことはない。

訓練で少々というぐらいだ。

それだけ無茶苦茶な物だと言っておこう。

というか、あれを持つだけでもステータスが馬鹿みたいにあがるから、訓練が非常にしにくい。

それが、ミノちゃんを除いた、魔物4将たちと、ユキの弟分のドッペルキユと一緒にダンジョンアタックだ。

これは、ドッペルドレッサがいう鉄壁の布陣どころではない。


「い、いつ、あいつらいつ動くっていってる!?」

「そ、そうだ。その日にきっとこのエクスは滅びる!!」

「あ、ありました!! ヒフィーさんたちの到着と合わせて動くみたいです!!」

「あと、何日だ!? 何日ある!?」


俺たちが慌てふためく中、ドッペルドレッサは不思議そうにして俺の質問に答える。


「えーと、2、3日後ですね。今のペースだと」


絶望的だ。

絶望的に時間が足りない。

しかし、あきらめるわけにはいかないのだ。


「急いで、エクス王都の知り合いと連絡とるぞ!!」

「そうだな。このままでは、みな悲惨な結末に合う」

「そうですね。もう、俺たちの想像が及ぶ範囲の被害では済まないでしょう。少しでも犠牲を減らさなければ!!」

「え? え?」


ドッペルドレッサだけは、事態について行けず目を白黒させている。

ああ、そうか、こいつは内勤ばかりで、ユキがしでかしたことは資料でしか知らないのだ。

端的に「策により、目的は達成した」とかな。

過程を知らないのだ。

ユキが、身内で動かせる戦力を殆ど投入したということは、もうめんどくさいことはやめたということだ。

ノーブルがあまりにも、色々引っ掻き回すから、嫌になったのだ。

つまり、全部ぶっ壊すつもりだ。

もう、収拾がつかないぐらい、わけのわからないことを起こして、ノーブルの脳みそをパンクさせてから、ゆっくり料理するつもりだ。


奴が、動くということは、もうそれだけの準備が整ったということ。

もう、エクスに未来はないのだ。



……どっちが、悪者か、今の俺にはわからない。

が、世界は非情である。それだけは知っている。




モーブたちの視点で、この世界での死体を使うということの認識を語ってもらいました。

良くも悪くも、という話は分かったと思います。

そして、ユキがこのような持てる戦力を最大限投入という事態は、物事の収束に向けて動き出したという見解です。


さあ、どんな終わり方を迎えるでしょうか?




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