第360堀:伝手を手に入れる
伝手を手に入れる
Side:カース
「かんぱーい!!」
「「「乾杯!!」」」
そんな声と共に酒宴が始まる。
皆、先ほどの戦いに勝ったことを心から喜んで、酒を飲んでいる。
……しかし、臭い。
ゾンビー共の相手をしたせいで、腐臭がうつっているのだろう。
体を拭いた程度であの臭いは落ちない。
……消臭スプレーを持ってきて正解だったな。
俺たち3人は爽やかな香りだ。
ユキの持ち込んでくれた技術に感謝しよう。
「いい雰囲気の仲間だな」
「ああ」
「ですね」
モーブさんがそう言う先には、ロゼッタ傭兵団の皆が楽しそうに酒を飲んでいる。
既に、ロゼッタが戦利品の宝石を売り払って、それで飲んでいるのだ。
思ったより高値で売れたらしく、上機嫌だ。
「おーい!! モーブたちも飲んでるかー!!」
そう叫んで、笑いながらロゼッタがこっちにやってくる。
茶色の髪でショートカットにしているせいか、鎧を着こんで、戦槌を担いだ姿は男と見分けがつかないだろう。
今は、鎧がないので、出るところは出ていて、女性だというのが分かる。
思ったより体の線は細く華奢だ。これでよく、あの戦槌を振るえるものだ。
「おう。飲んでるぜ」
「ありがたく貰っている」
「ええ。いただいています」
「そーか、そーか!! 遠慮はいらないよ!! 私たちもモーブたちが半数以上削ってくれなかったらやばかったからね。というか、私に至っては助けてもらったからね!! ガンガン飲んでくれ!!」
そんな話をして、モーブさんはロゼッタに連れていかれて、傭兵団の真中で、ロゼッタの身振り手振りの話に合わせている。
「懐かしいな」
「ええ。俺たちもやりましたよね」
冒険者で大戦果を挙げた時には、今のロゼッタみたいに、モーブさんがギルド連中集めて、酒盛りしていたっけ。
で、稼ぎが全部パーになったりで大変だったな。
今は、完全に冒険者ギルドでもサポート役で、ユキたちと深くかかわっているから、冒険者というのはもう建前なんだよな。
「しかし、パッとみて、女性が多いな」
「ですね。ロゼッタがトップなのが関係してるんですかね?」
ライヤさんの言う通り、ロゼッタ傭兵団の男女構成は女7男3ぐらいだ。
しかも、女は若く、男は俺たちかそれ以上に歳を食っているよう見える。
「それは簡単だよ。ロゼッタ嬢ちゃんが女の為に作った傭兵団だからな。男はわしらみたいな経験豊富で無体をしない紳士だけが入れるってことだ」
「なに言ってやがる。おっちゃんは、他の傭兵団から追い出されたのをロゼッタさんに拾われたんだろうに」
「うるせー。お前等の面倒を見てるのも確かなんだよ。明日の訓練増やすぞ!!」
「ひえー!!」
なるほど。
冒険者でも言えることだが、見た目が華奢とか、壮年とか、女性であるというのは、頼りなく見える。
実際、命を懸けるのだから、見た目もちゃんとした相手が仲間の方がいいというのはどこでも当然だ。
だから、そう言った関係であぶれ者が出てくる。
そういった連中を集めたのがこのロゼッタ傭兵団ということか。
確かに、これで名の知れていない他国に行けば舐められるだろうし、それに伴うトラブルもあるだろう。
そう言う意味では、ユキたちも同じではあるが、スペックが違いすぎるからな。
心配するだけ損だ。
というか、相手の手出しを待って食いついて引きずり込むタイプだ。
「しかし、お前さんたち、モーブ殿に負けず劣らずの腕だったな。あの時の援護はすごかったぞ」
「ま、モーブとパーティーを組んで長いからな。あれぐらいはできるさ」
「ですね」
「ふっ。あれぐらいというか。流石だな、わしが見てきた中でも指折りだぞ、お前さんたちは」
そう言ってその男は酒を一気に飲み干す。
「ふうー。わしの名前はノードン。不躾ながら、お前さんたちにお願いがある」
「あったばかりの俺たちにお願いということは、傭兵団の指導か?」
「それぐらいしかありませんね」
「ふふ、話が早くて助かる。今日の戦いはお前さんたちが半分以上削ってくれなければ危なかった。というより、あのロゼッタですらやられる寸前だった。つまり、お前さんたちがいなければ全滅していただろう」
確かに、あのオークキングのゾンビ相手は荷が重かったでしょうね。
「話は聞いていると思うが、この王都に、ゴブリンやオークを使い潰して戦果を挙げる血戦傭兵団もいる。片や魔物退治、片や魔物を先兵として扱う。分かりやすいほど仲が悪い。というか、向こうにとっては、女とは魔物を増やす道具だからな。その分こっちの傭兵団と険悪だな」
「まあ、当然だな。これで関係が良好と言われても不思議だ」
ライヤさんがそう受け答えする横で、俺はなんでここに血戦傭兵団がいるのか不思議に思っている。
確か、当初の話ではエナーリアの奥、ローデイ側にいたはずだ。
なんで反対側に近い、エクスにいるんだ?
いや、移動したという話だろうが、私たちの情報網に引っかかっていないのが不思議だ。
「その血戦傭兵団だが、最近、鳴りを潜めている。そして、今日のゴブリンと強力なオークのゾンビ。どうも気にかかる。かといって調べるには今のままではリスクが高い。その前に、ロゼッタ傭兵団を強くできればと思ってな。無論、ただでとは言わない。できうる限り報酬を用意する。……わしにとっては、あいつらは家族も同然だ。こんな職業だ。死なないなんて思っていない。だが、それでも、長く生きてほしい」
ノードンさんはそう言って頭をテーブルに叩きつけるように下げる。
俺はライヤさんと目を合わせて頷く。
「こっちとしてもただの観光で来ているし、期限があるわけでもない。なあ、カース?」
「ええ。宿代が浮くなら、その分長く滞在できますし、そのお礼に稽古ぐらいはかまいませんよ。ああ、観光案内とかも頼めますかね?」
「ああ!! ありがとう!! 宿代も、王都の案内も任せてくれ!!」
よし、これで王都のことを根掘り葉掘り聞いても不思議じゃない繋がりができた。
と、その前に……。
「さっそくですが、聞きたいことがあります」
「なんだ? どんどん聞いてくれ」
「先ほどの指導、稽古に関係するんですが、私たちもロートルのような感じでして、後継とは言わないまでも、誰か技を伝える相手を探しているのです。で、奴隷商を訪ねて回っているんですよ。奴隷を引き取れば、まあ、僅かですが、その引き取った子にも道を示せると思いましてね」
「なるほどな。立派な考えだ。しかし、才能を持っているというのは、わしにもわからんから、知り合いの奴隷商人でよければ案内するぞ?」
「ええ。かまいません。よければ、明日にでも案内お願いできますか? 指導するにも、周りと一緒にやる方がいいと思いまして」
「そうだな。その方が、あいつらも訓練に身が入るだろう。新参に抜かれるわけにもいかないからな。わかった。明日、案内しよう」
「ありがとうございます」
「じゃ、難しい話は終わりだ。ノードン、飲むか」
「ああ、ライヤ、カース、この出会いに乾杯」
「「乾杯」」
そう言って、おっさんはおっさん同士で仲良く飲んでいたのだが……。
「周りの連中はー、私をー、女ってみてないんだよー!! ひどいだろー、モーブ!!」
「……ああ。まあ、落ち着け」
「わかってくれるか!! 見ろよ、これだけおっぱいがでかいのが二つついて、男呼ばわりとかひどいよなー!!」
「脱ごうとするな!! ええい、酒癖の悪い。おい、ノードン。この酔っ払いを……」
「モーブ、ロゼッタは任せた。今は他の連中を運ぶので忙しい。ライヤ、カースはそっちの2人を頼む」
どうやら、この傭兵団のおっさんたちは彼女たちの介抱役でもあるらしい。
「あううー。ライヤさん、槍教えてくだしゃい……」
「わかった、わかった。こんな状況じゃ、確かに心配だな」
「ええ。これじゃ、ノードンさんが指導してくれというのも分かりますね……」
「こう、カースしゃんみたいに、ふぁいあーをげろげろ……」
ぎゃー!?
抱えたところで吐くんじゃねー!?
今日一番の重労働はこれだったか。
くそ、服は後で洗わないといけないな。
そんなことがあった次の日。
「お、流石にあの程度じゃ潰れないな」
「そりゃな。というか、ロゼッタたちが酒に弱すぎだ」
俺たちは宿の前で奴隷商に行くために待ち合わせをしていた。
まあ、潰れたのは小娘たちだけで、ノードンさんが遅れるとは思わなかったが。
「ま、あれも経験だ。さて、さっそく奴隷商人の所に行くか」
そう言って歩き出したノードンさんの後を俺たちはついて行く。
「そう言えば、知り合いって言っていたが、やっぱり複数の奴隷商人がいるのか?」
「ああ、今時、奴隷なんて珍しくもないからな。食い扶持の為に売ったり、金が欲しかったり、戦争での奴隷なんてのもザラだ。仕入れルートは沢山あるし、商人もそれに応じて多い。まあ、王都では精々5件ぐらいだな。他の町などじゃ、路上での奴隷売りがあるが、王都ではないな。治安の為にもな」
……王都では奴隷の管理を厳重にしているってことか。
いや、どこでも当然か。不法な奴隷がいるのは国のメンツに関わる。
しかし、王都の街並みは特に不審な点はないな。
人通りも普通にある。
流石に大国の1つと言われるだけあって、ロシュールやガルツ、リテアなどと遜色ない。
「どうだ。ここが王都の大通りだ。立派なもんだろう」
「ああ」
「賑やかだな」
「流石、大国ですね」
宿からちょっと歩いて、大通りに出ると、人の流れが一気に増える。
昔なら、驚いていたんだろうが、ウィードに比べるとどうもな。
あれと比べる時点で間違っているのはわかるが。
「そうだろう。と、人込みがすごいからはぐれるなよ。こっちだ」
ノードンさんはそう言って、大通りをそのまま進む。
大通りを挟んでの方向にあるのだろう。
まあ、宿屋周辺に奴隷商とかがあっても困りものだしな。
そう言うところは区分けされているのだろう。
と、思っていたのだが、大通りの反対側に向かわず、そのまま大通りをどんどん進む。
そして、大通りがつながっている、大広場にでて、大通りに面している店で足を止める。
「ここだ。王家御用達の奴隷商だ」
「王家御用達!?」
「ああ。昔、ちょっとあってな。ここならお前さんたちが言う、才能あるやつぐらいいるだろうさ。と、すまねえ。店主にノードンが来たって言ってくれ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
そう言ったメイドらしき女性は、奴隷の首輪をしていたから、奴隷なのだろう。
……レベルが高いな。
思った以上にこれは情報を持っている人物と会えそうだな。
まあ、逆にここに来たことで、目をつけられる可能性もあるけどな。
それは、ユキにとっては好都合でもあるか。
俺たちが暴れるっていうのも、期待していたしな。
「お待たせいたしました。こちらにどうぞ」
さて、これからが本番か。
「一気に情報を手に入れられるのか、それとも、俺たちが追い詰められるのか」
そう呟くと、すぐに誰かの声が耳元で聞こえる。
『どっちかというと、追い詰められる方がいいなー。それで思い切り暴れてくれ。裏で一気になだれ込むから、どうよ?』
「断る」
監視も十分なようだし、万が一の場合は簡単に逃げられそうで安心した。
さあさあ、お楽しみの奴隷ターイム!!
皆の欲望をかなえる子はいるのか!!
このへんたいどもめ!!
ま、そこはいいとして、ようやく原稿終わって入稿。
早割りも効いて助かった。
マジでこの一か月死ぬかと思った。
まあ、詳しい話は活動報告に後日まとめるわ。
で、先行でちょいと大⑨州東方祭の話をば。
入場チケットとか手に入ったけど、一枚余ってるねん。
誰か、俺と一緒に店番してやれる人がいれば手伝って。
詳しいことは活動報告でな。
明日か明後日には上げる。
ではではー。




