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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 暗躍する影編

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落とし穴59堀:男にはつらい日

男にはつらい日




side:ユキ



時は3月の14日。

俗に言う、ホワイトデーである。

この悪しき文化は、地球の世界中探しても、日本だけの固有文化、いや、お菓子メーカーの陰謀である。

そもそも、このホワイトデーの対となるバレンタインデーですら、曲解した状態で日本で蔓延っている。

お菓子メーカーはそこまでしてお金が欲しいか?

といいたいが、実はホワイトデーはさらに性質が悪くなっていたりする。

お菓子メーカーのみならず、お返しにといわんばかりに、数多の他企業が参戦してきている。


バレンタインのお返しは3倍返し、10倍返し、30倍返しというあれだ。

もはや、100円の義理チョコでさえ、300円、1000円、3000円という超値上げである。

なので、もはやお返しはお菓子というのは、学生ぐらいのもので、大人になれば、増えた財力をつかって、懐の広さというのを見せ、プレゼントのセンスも測られるという、甚だ腹立たしいイベントである。

もはや、女尊男卑である。

というわけで、お菓子会社以外のところも、ここぞとばかりに、ホワイトデーのお返しにと、いろいろタイアップしてくる時代である。


が、幸いな事にここは異世界。

そんなクソみたいな日本の常識は存在せず、嫁さんたちだけに流行っているバレンタインデーで、つい先月、普通の子供達が甘いお菓子を食べられる日という改変を行い、2月14日に流行らせようという案が出たのである。

そういう、純真な嫁さんたちにホワイトデーをするのは決して胸糞悪くないので、準備をしている次第である。

去年はお返しをする暇もなかったからな。

当時は、ジルバとエナーリアの衝突回避の真っ最中で、敵軍は落とし穴に落とすし、子供は生まれるわで、それどころではなかった。

ああ、それを考えるともうすぐ子供たちも1歳か。

と、それはまた、ちゃんとお誕生日会を開くとして、いまは、嫁さんたちのお返しである。



「で、なんで俺も手伝っているんですか?」

「というか、なんですか? ほわいとでーって?」


今回のサポーターはタイキ君とエオイドでお送りします。

嫁さん持ちの2人となら上手くやれるだろうということで、ランサー魔術学府の調理室を借りております。

最初にスティーブには声をかけたのだが、泣きながら逃げて行ったので、流石にそれを無理やり手伝わせるほど鬼ではない。


「タイキ君は気にするな。嫁さん、アイリさんにお返しと思えばいいだろ? どうせ来年にはバレンタインデーを広めるつもりだし、そういった意味で先取して、嫁さんをいたわるのは、プラスになると思うぞ」

「まあ……そうですね」

「で、エオイド君。俺たちの国にはついちょうど一か月前に、女性から男性へお菓子をプレゼントするというイベントがあってだな。その一か月後の今日は逆に男性から女性へそのお返しをするという風習になっているのだ」

「へー。そういうのがあるんですね。でも、いいかもしれないですね。アマンダも甘い物好きですし」

「納得してくれたところで、俺たちは今からお菓子作りをしようと思う。ちゃんと、味見役も用意した」

「「味見役?」」

「おう。よろしくお願いします」


俺がそういうと、調理室の扉が開けられて、女性が2人入ってくる。


「が、学長!? 副学長も!? な、なんで!?」

「いやいや、エオイド。ユキ殿のところのお菓子は美味しいと有名だからね」

「はい。アマンダさんと一緒にケーキなどは食べられたことはないですか?」

「ああ。あの白いのが乗ってて、すごくおいしいケーキはユキさんたちのところのやつだったんですね」

「そういうわけだ。ユキ殿たちが、お菓子を作るのならば、私達が毒見してやるのが一番いいわけだ」

「ほかの女性たちはあのケーキなんて初めてですから、美味しいとしか評価はできないでしょう。一度食べたことがあり、正しく評価できる舌を持った、女性であるというのが大事ですね。ユキさんだけではなく、お二人も、奥様との良き関係のために、全力でお手伝いさせていただきます」


まあ、こんなもっともらしいことを言っているが、お菓子を適当に作るから味見するか? と聞いたら速攻で手を挙げたのだが。

エリスに完全に餌付けされている2人である。

あ、いろいろあったが、コメットもヒフィーも生きているし、お互い顔合わせもしていて、いろいろな意味で、2人にとっては肩の荷が下りた状態だ。

こっちも利用させてもらったし、こういうことぐらいはいいだろう。


「で、でも。俺ってお菓子作れませんよ。ちょっとしたクッキーぐらいで、あんなケーキなんてとても……」

「あ、そこは心配するな。俺はクッキーすら作ったことない」

「そ、それで大丈夫なんですか!?」


タイキ君は学生の頃にこの世界にきたし、バレンタインデーに関係のない男ならば、お菓子なんて言うのはそうそう作る物ではない。

知らなくて当然だ。


「大丈夫、大丈夫。料理なんてちゃんと本通りに作ればいいだけ。変にアレンジ入れようとするやつが失敗するって決まっているんだ」

「料理の本があるんですか?」

「ああ、あるな。ま、文字は分からないだろうから、こっちが説明する。ホレ、これがその本だ」

「うわー。すごい。でも、材料とか、道具とかさっぱり見たことないですけど」

「とりあえず、材料と道具はユキさんが出してくれるし、どれ作るか決めるか」

「わ、わかりました」


で、俺はその間に、必要そうな道具や材料を出しつつ、そのお菓子の本とか、パンフをポープリとララに渡す。


「ま、結局は手作りだからな。後でまともなお菓子はやるから、今日は頼むよ」

「んー。まあユキ殿の料理の腕は信じているから、そう不味い物ができるとは思わないけど、そういう心使いは感謝するよ。で……」

「どれぐらい、頼んでいいのでしょうか? 5? いえ、10?」

「いやいや、ララ。そこはいつでも欲しい物を頼めばくれるというやつだよ。ちゃんと仕事をしていれば。な? ユキ殿」

「あ、ああ」

「ほ、本当ですか!! じゃ、じゃあ、なんなりとご命令を!!」


いや、怖いわー。

お菓子が仕事の成功報酬でいいって言ってるよこの人たち。

協力的なのはいいことだし、ここは普通にやらせてもらおう。

お菓子作りは時間がかかるしな。

さっさとしないと、ホワイトデーが終わってしまう。



ということで、いろいろ試しつつ、基盤となるスポンジとかはデパートにある系のを使っているので、クリームとか、果物、アーモンドとかを間に挟んだりって感じの、ちょっと手抜き系ではあるが、できたわけだ。

失敗作と思しきものは、予定通り、2人のお菓子大好きに処理させている。


「よし。こんなもんかな」

「できるもんですね」

「本通りならいけるんだよ」


タイキ君やエオイドの協力もあって、嫁18人とメイド1人がいる俺のケーキも無事にできた。

流石に一人ワンホールはないが、二、三個は食えるからいいだろう。

というか、ワンホールとか食えるわけがねえ。

それは人類じゃない。

あ、どこかの毒見役はツーホールぐらい食ってる気がしたけど、まあ、男の感覚な。

だって……。


「とりあえず。甘くてむせそうだ」

「ですね……」

「俺は基本ケーキ一個でギブアップだから、よく頑張ったと思う」


うん。

俺もタイキ君と同じようにケーキ一個が精一杯だな。

ケーキバイキングとかあるけど、あれは無理だわ。


「ま、とにかくできた。今日はありがとうな。各自嫁さんたちに振る舞ってやってくれ」

「はい。アマンダは喜んでくれると思います」

「アイリも喜ぶと思う。ありがとう、ユキさん」


そういって、各々別れて戻っていく。

俺も、報酬のケーキをさらに2人に渡してから、作ったケーキをウィードにもって帰り……。



「あら。お帰りなさい。今日はどうしたの? タイキやポープリが一緒だから護衛を無しって言ってたから多少は心配したわよ?」

「ぱーぱ」


そういって、出迎えてくれるのは、セラリア。

で、その腕の中にいるのは、娘のサクラ。


「ああ。ほら、バレンタインデーのお返しがあるのは知ってるだろ?」

「……? ああ、日本じゃホワイトデーとかいうのがあるんだったかしら?」

「そうそう。で、今日は、お返しに、ホレ、ケーキを作ってきたわけだ。ちゃんとみんなで食べられる分はあるぞ」


俺がそういって、ケーキを見せると、セラリアは目を丸々にして驚いていたが、すぐに笑顔になって……。


「ふふっ。今更、料理人でもないのにって言うのはあれよね。全く、あなたにはまだまだ驚かされるわ。嬉しい意味でね」

「うまーうまー」

「そうね。とても美味しいそうね。早くみんなに伝えて食べましょうね」

「あい!!」


サクラの頭を優しくなでる。

たぶん少し口に含むぐらいは大丈夫だろう。

ベタベタになるのはこのころの子供は当然だから仕方ない。


「じゃ、俺はケーキを置いたら、本体に戻るわ」

「ええ。ドッペルをお菓子作りに使うとか、なかなか思いつかないわよ。私たちにばれない様にするためでしょ?」

「嫁さんたちの驚く顔と喜ぶ顔が見たいからな」

「ふふっ、やっぱりそういうところも大好きよ」

「どうも」



さて、ケーキを置いたら、皆を集めないとな。

セラリアみたいにみんな喜んでくれるといいんだけど。

つらいねー、男にとっては慣れないことをするつらい日だが、大事な人が喜んでくれるなら、こういう日も悪くはないと思う。

相手がいないやつはいろいろな意味で、嫌な日だろうがな。

そういえば、スティーブには、今アルフィンがいたよな?

なんで、嫌がったんだ?




「ねえ。スティーブ、このお菓子美味しいよ」

「……そうっすね」

「お母さん。スティーブ、甘くて辛そうだよ。僕もだけど……」

「なんで? スティーブもグラドも、こんな美味しい甘いお菓子の匂いが辛いわけないわ。ほら、あーんして」

「あ、呼び出しがあったっす。グラド、任せたっす」

「に、逃げんなー!!」

「ねえ、早く」




いや、今どきスイーツ男子ってのがいますけど、無限に食えるわけじゃないし。

あのケーキバイキングとかの食いっぷりはマネできる気がしねえ。

見てるだけで胸いっぱいになる経験ってそうそうないけど、あれは胸いっぱいになる。


皆はどうよ?

お菓子は別腹でかなり入るタイプかい?



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