表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 暗躍する影編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

406/2195

第334堀:もう一人の研究者は?

もう一人の研究者は?




Side:ユキ




コメットからの報告を聞いてちょっと考える。

あのライトは偽物ね……。

聖剣の方も別物だと。

ではあれはどこから見つかったのか?

エージルの話だと大聖堂の隠し部屋って話だった。

こっちもエージルに更に詳しく、話を聞いておくべきか。


「おーい、エージルいるかー?」


ということで、さっそく学府に戻ってエージルの部屋を訪ねている。


「「「……」」」


反応がない。

もう一度。


「おーい、エージル!!」


さっきよりも大きな声で呼びかけてみる。


「いないみたいですね」

「どこに行っているのでしょうか? すでに夜なのに……」


リーアとジェシカが首を傾げる。

この時間に自室にいないのはおかしいよな?

何か問題でもあったか?

明日にはエナーリアに速攻帰らないといけないのに。

実は、俺たちの帰還と同時に、各国への警戒文を送る手筈になっていて、エナーリアへの手紙はエージルを通じて渡すことになっている。

なので、今日はそろそろ寝ていないと、明日の出発に支障をきたすはずなのだが……。


「あ、ユキ殿!?」


そこに現れたのは、かつてスティーブにひん剥かれた、隠れ女性兵士のノークだった。

あれからエージルと共にいたおかげで、そのまま側近にされたみたいだ。

マッドとの付き合いは大変だろう……。

無論、最初から学府について来ていたが、日々精一杯で、俺たちと会話する余裕はなかったみたいだ。

ま、下っ端だしな。

幸い、多少の素質はあったみたいで、学府で勉強して、少しだけ魔術が使えるようになっている。

流石に魔術学府で魔術を使えないまま学生をしているのは非常に肩身が狭いから、よかったと思う。


「ノーク。私たちエージルさん探してるんだけど、どこにいるか知らない?」


そうやって親しげに話しかけるのはリーアだ。

リーアはノークといつの間にか仲良くなっているみたいで、普通に話しかけている。

まあ、元々村娘だしな。

ジェシカとかガチガチの上級軍人だから、ノークは緊張するのだろうよ。


「ガチガチの軍人で悪かったですね」

「ありゃ、口にでてた?」

「いえ。普通に夫のことは分かります」

「さよか。別に悪口のつもりはないんだけどな」

「それは分かっています。ですが、この場において役に立てないのは、私にとっては悪いことなのです」


ジェシカという嫁さんはリーアに見せ場を奪われて少し悔しいらしい。

……楽ができてうれしくないかね?


「リーアも帰ってきてたんだ」

「それはそうだよ。一緒にアグウストに行ってたんだから」

「そうだよね。っと、ユキ殿、丁度良かった。エージル将軍に言ってください!! 私の言葉じゃ聞く耳持たないんです……」


リーアとの会話を切り、慌てたように俺に話しかける。


「エージルがどうかしたのか?」

「はい。それが、実はまだ研究室に入り浸っていて……」

「明日、朝一番でエナーリアに戻るのにか?」

「……はい。研究室の物を全部持って帰るって言ってきかなくて」


ああ、そういうことね。

研究馬鹿ここに極まれりってやつか。


「別に、そのまま学府に戻らないってわけじゃないだろう?」

「はい。学長のポープリ様も研究室はそのまま残しておくといっているのですけど……」

「……とりあえず研究室にいってみるか」

「お願いしますぅ……。このままじゃ、私のクビが飛びます……」


物理的には飛ばないとおもうが、職的には飛びそうだな。

側近の意味ねーから。

いや、エージルの側近と認めたのはプリズムだし問題ないか?

でも役に立たない側近は置いとけないよな、給料出す国としては……。

税金の無駄使いは少しでも減らすのが、どこの国、世界でも一緒です。

まあ、その浮いた税金がちゃんとしたことに使われるかは、知らないけど……。


ガン、ガラ、ドン、ガシャーーン!?


研究室に近づくとすさまじい音が、断続的に聞こえてくる。

……あれー? 荷物まとめるのってこんな破壊音したっけ?

因みに、この研究室、この学府に来た時に、エリスがポープリから巻き上げた部屋である。

いや、夫である俺がエリスのことを悪く言うのはいけないな。

確かな、まっとうな交渉の元、ポープリの善意により受け渡されたのだ。

決して、脅しの果てに、毟り取ったわけではない。

というか元々の原因はポープリが悪いからノープロブレム、問題なし、無問題。

いや、こんな破壊音させてたら、流石に部屋を取り上げられるわ。


「おい、エージル。入るぞ!!」


俺はそう言って中に入ると、研究室は荒れ果てていて、あられもない姿で、エージルがひっくり返っていた。


「や、やあ。アグウストから帰ったみたいだね……」

「おう。で、そっちは明日、朝一番で出ていくんだろ? こんな時間になに暴れてるんだよっと……」


そう言って、ひっくり返っているエージルを引っ張り起こす。


「いやー、それで色々あるんだよ。もう報告は聞いているだろうけど、このランサー魔術学府の街で、未確認の魔剣所持者と、持ち主無しの魔剣が大量に見つかったって話があるだろう?」

「ああ。その兼ね合いで、エージルが急いで戻るんだろう?」

「だからだよ。そっちの話も学長から聞いている。アグウストでも大量の魔剣が見つかったんだろう?」

「だから、エナーリアに急いで警告を出すんだろ?」

「そのせいで、僕は当分、学府には戻ってこれない可能性が非常に高い。アグウスト、ランサー魔術学府、この二国だけ、魔剣を隠し持った集団がいましたなんて都合がいいことはないだろうからね」

「そりゃな……」


ヒフィーの魔剣輸送報告を調べれば、6大国全部に潜伏しているよ。

まあ、その内3つは既に終わっていたり、監視中だったりするけど。


「万が一、エナーリアでその集団が見つかった場合。僕は自国で拿捕した魔剣の研究、量産計画の責任者に据えられる。そんな状態で、学府に戻ってこられると思うかい?」

「ああ、そうなると当然だな」


残念、既にエナーリアの魔剣持ちの集団はしょっ引かれてますから、エージルはめでたく、責任者に据えられるだろう。


「となると、ここの研究道具は絶対必要になる。後で指示して持って帰るように伝えても、学府からの横槍が入れば持って帰れないし、言葉だけでは運搬を担当する者がどれがどれだとかわかるわけない」

「だな」

「というわけで、出来るだけ多くの物を持って帰りたいわけさ。ここ以上に、魔道具の関連アイテムが揃っているところはないからね」


理屈は分かった。

しかし、このまま無茶苦茶な荷物まとめをしていては、俺の話が全く進まん。


「よし。これを使え」

「お? これはアイテムバックかい? いやー、貴重な物をよく持っているね。いいのかい?」

「見た感じ、そっちのアイテムバックは軒並み満タンみたいだしな。話からして、エージルが荷物を持って帰りたい理由もわかる。だから、貸す。ちゃんと返せよ。遺跡で見つけた品で、思った以上によく入るレア物だか……ら」

「うっひゃーーー!! すっげーー!! 入る入る!!」


俺が言う前に、さっさかと荷物をアイテムバッグに放り込んでいる。

新大陸じゃ、魔道具自体レアなんだよな。

信用できる相手でも、見せるのを躊躇うぐらいでいかないと、寝首をかかれるらしい。

この研究馬鹿は無いだろうが……。


「で、エージル。その関係で聞きたいことがあるんだ」

「んー、なんだい? おっと、これも持って帰らないと」


この類いの人に「座って話を聞け」というのは「呼吸をするな」というのと同じである。

だから、気にせず話をした方がいい。


「魔剣が大量に出てきた件に合わせて、そうなると聖剣の方もって思わないか?」

「ああ、それね。僕もなにか疑わしくなってきたよ」

「何が疑わしいんだ? エージルが見つけたんだろう? 文献をたどって……」

「そう。僕は文献をたどって聖剣を見つけた。だけど、その見つけた剣を魔剣ではなく、聖剣と判断した理由は言ってないよ」

「ああ、記述だけで判断することはないか」

「そうそう。ほかにちゃんと聖剣と判断できることがあったわけだ。それはライトが所持者になった時に、光が溢れたから。聖剣、魔剣とそれなりに数は多いけど。光を司る剣は一本だけ。聖剣使いのリーダーが持っていた物だけだ。だから僕はそれを聖剣と判断した」


なるほど。

しかし、エージルはすごいな。

文献の情報収集だけで、聖剣使いの情報をかなり正確に集めている。

魔術研究一辺倒というわけじゃなく、考古学系の才能もあるのかね?


「でも、よくよく考えると変な話さ」

「どこかだ?」

「元々、聖剣使いは国を追われて、その後行方不明だ。なのに、大事な聖剣をわざわざ憎い国のど真ん中に安置するかな?」

「……」


確かに、もっと安全な場所がありそうな気がするな。


「まあ、意外な所に隠したとか。これから離れる国を案じて、最後の希望で残していった。なんて事も考えられるけど。エナーリアに光の聖剣があるのもおかしいんだよねー。エナーリアの祖、スィーアは水の聖剣。色々文献を調べてみたけど、リーダーの光の聖剣使いの祖国はエクス王国だって話だし、安置するにしても場所が変すぎる。場所がほぼ正反対。意味がわからないね。道中で適当に埋めた方が確実だと思うけど。まあ、だからと言って、聖剣は偽物ですなんて言えないけどね」

「どうしてでしょうか?」

「あ、ノーク。いたんだ。まあ、簡単だよ。一度聖剣として発表したし、光の剣なのは間違いない。撤回すれば、国の評判にかかわるし、あって損するものでもない。幸い他国から、それが偽物だという文句もでていないしね。まあ、ユキたちにボコボコにされて、すぐに引き戻されたけどね。内々に処理出来てよかったとお国の重鎮は胸をなでおろしているだろうね。いまやジルバも身内みたいなもんだしね。お互いに痛いところはつつき合わないって約束でもしたんだろうね」

「……そうなんですか」

「あ、言い忘れたけど。これ極秘も極秘だから。下手に喋るとクビが飛ぶよ。いや物理的にも。だから気を付けてね」

「ひぃぃぃーー!?」


ノークもついてないな。

まあ、エージルの側近なんだから、こういう秘密事項はよく聞かされることになるだろうし、今のうちに慣れておけ。

殆ど、俺とヒフィーのとばっちりが多いけど。


「とまあ、あの聖剣に関して僕は疑問を抱いているから、戻った時にまたしっかり調べてみるよ。機材も前よりも充実しているし、なにか違う情報が出てくるかもしれないからね。正直、今回の魔剣騒動とは繋がってほしくはないんだけど。繋がっていたら、それだけの物を開発できる組織が存在していることになるからね。既に各国にも手が伸びている。こうなるとこの前の騒動の大臣のローデイとの繋がりも糸を引いていたように思えるし、これはどうやっても後手でしか動けない。もし、そいつらが動き出せば被害は甚大になるよ。ま、これで僕が暗殺でもされれば信憑性が増して、多少はましになるかもしれないけどね」

「エージルが邪魔で消しに来た誰かが怪しいってことか?」

「そうだよ。君みたいに周りが察し良ければいいんだけど、それは望めないし。万が一に備えて、手紙をプリズムに預けておくから、その時は彼女と協力してくれ」


エージルは自分が起爆剤になることも覚悟ってわけか。


「一応、エナーリアは僕の祖国だしね。国の名前や名誉に未練はまったくないけど、そこに住んでいる人たちが脅かされるのは認められない。だからさ、迷惑かもしれないけど、その時は墓下にいる僕の代わりに皆をたのむよ」


エージルは「仕方ないけどねー」とのんびりした様子で、荷物をせっせと入れている。

しっかり将軍としても働いている分、コメットよりもマシかもな。


「それなら提案がある」

「提案?」

「俺たちも同じ件で、明日ローデイに行くことになっている」

「ああ。そういえば、サマンサ嬢を手籠めにしたって話があったね。それなら君がローデイへ使者に行くのにちょうどいいか。で、どんな提案があるんだい?」

「エナーリアには、こっちのメンバーも残っているから、そっちをエージルの護衛に回そう。その方が安全だろう?」

「おおっ。それは盲点だった。確かに、内部のだれが敵か味方かわからない今、傭兵である君たちの方がよっぽど安心だ。実力も見せてもらっているし、周りからも反対はでないだろうね。僕も進んで死にたいわけじゃないし、頼めるかい?」

「じゃ、俺が一筆書いておくから、それをルルアかミリー、ラッツにでも渡してくれ、それで通じると思う」

「ありがとう。感謝するよ!!」


ルルアやラッツは変装して学府、アグウストにきているので、エージルに見つかっても別人にしか見えない。

だから、エナーリアにいるはずなのに?と不思議に思われない。


そんなことを話している内に、荷物まとめがおわり、ようやく眠れると思ったエージルは、そのまま立って寝るという荒業を披露して、ノークに引っ張られて部屋に戻って行った。


「立って寝るってできるんですね」

「……極限の状態だとできると聞きますが」

「人によりけりだな。長くてつまらない話を聞いていると結構できるぞ」


校長の話とかな!!


「とりあえず、エナーリアの方はエージルと組んでやった方が効率がよさそうだな。そっちの方を伝えて……」

「それは私がやっておきますから」

「ユキもさっさと寝てください。エージルのことは言えませんよ?」

「あ、そうか。俺も朝一だよな……はぁ、だるい」


なんでこうも忙しいかね。




さて、もう一つの騒動の元になりそうな、エナーリアの研究者はどうでしたでしょうか?

エージルもこれからさあ大変。


あ、分かってると思うけど、14日はちゃんと、デスイベントするよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ