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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 神聖国編

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落とし穴52堀:クリスマス

クリスマス




Side:ユキ



俺は今悩んでいる。

昨年は忙しくて、放っておいたが、現在はそれなりに余裕があり、日本で悪しき風習と化した、3大悪イベントのことを思い出していたのだ。


※個人的私怨が混じっております。


1つは、死の2月14日。バレンタインデー。独り身の人間を指さし嘲笑う、お菓子会社の陰謀。恋人など相手のいない人間にとっては肩身の狭い時期となり、義理チョコというモノを渡されれば、3倍返しをしなければいけないという、人の財布をえぐるための酷い風習だ。

もともとは殉教した聖ヴァレンティヌスに由来する。世界各地で男女の愛の誓いの日とされているが、異説は山ほどあり、イチャイチャを推奨するものではない。

ましてや、チョコをもらえない相手を蔑む日ではない。

真の愛がいいのであって、義理チョコなどと、建前で配ることが認められているのはおかしいわけだ。


2つ、憎き3月3日。ひな祭り。5月5日の本来、男の日である端午の節句を子供の日と改めたくせに、女性のイベントとして残っている女尊男卑の象徴ともいえるイベントである。

そもそも、ひな祭りというのは、子供の成長を願って、ひなに厄を押し付け、川に流し、厄払いとするのが元だ。決して、女性のための日ではない。


そして、3つ目。

これが今俺が悩んでいるイベントだ。

その名もクリスマスといふ。

世間一般的には、いや、日本では仲の良い男女が愛を深めるなどと、ひどく曲解した悪しきイベントになり果てている。

そもそも、クリスマスはある聖人の生まれた日であって、生誕祭である。

つまり、日本のクリスマスのイメージは間違っているのであって、そのせいで、多くの独り身の男たちが肩身の狭い思いをしているのだ。

それは、断固として間違っていると断言できる。



……と、独り身の男にとってつらいイベントを言ってみたのだが、俺はすでに通り過ぎた身。

今や彼女どころか、嫁さん子持ちときたもんだ。

さて、この状態でなぜ悪態をついているのかといわれると、独り身のつらさではなく。


プレゼントの問題になるのだ。


いや、プレゼントを渡せる相手がいるだけいいだろ!! という意見も確かにあるだろう。

その意見は十分に認める。

だが、俺の場合は、ただ彼女の、嫁さんの気に入ったプレゼントを渡せば終わりというわけではないのだ。

だって18人いるから。


セラリア、ルルア、シェーラ、デリーユ、サマンサ。

この王侯貴族組は、高くて珍しいものを渡したところで、あんまり喜ばれない可能性が高い。

だって、献上品は常のような人たちだから。


エリス、ラッツ、ミリー、キルエ、クリーナ。

この文系寄り組は、本などがいいかもしれないが、すでに持っている可能性もあるし、ブックカバーといっても、サイズが固定でないし、栞がいいかなーと思うけど、ほかの嫁さんたちのプレゼントに比べて安くつきすぎる。いろいろ悩みどころだ。


トーリ、リエル、カヤ、リーア、ジェシカ。

こっちの運動大好き組は、運動道具や武器がいいのだろうが、そういった戦闘に直結するようなものは、ナールジアさんが喜んで開発しているので、俺が渡すより絶対性能がいい。だが、俺がプレゼントとして渡せば無理に使おうとするので、逆に装備性能が落ちて心配だ。


ラビリス、アスリン、フィーリア。

最後にこの3人は、ほぼ欲がない。

いままで贅沢というもの自体を知らなかったので、今あるもので満足しているのだ。

だから、下手に聞いても遠慮するので、この3人にプレゼントしたいなら、勝手に買って渡してしまわなければいけない。ある意味一番難易度が高いだろう。



まあ、こんなふうに言ってみたが、どうせ異世界だから、クリスマスなんて関係ないから、プレゼントもいらねーじゃん。

という意見もあるだろう。

だが、日本からの雑誌をいろいろ、取り寄せて読んでいる妊娠組とか、文系組はすでにバレンタインを実行しているし、日本の文化に興味深々だ。

すでに日本のクリスマスを知っていても不思議ではない。

これを黙っているのは、俺がクリスマスを隠しているとか、そんな心配をされる可能性がある。

俺としても、クリスマスは学校の子供たちに大義名分付きでプレゼントをやれるから、やりたいイベントではあったのだ。

だが、去年は初めての年越しのイベントだったので、クリスマスというイベントに手を割く余裕がなかった。混乱もあるだろうから、泣く泣く、やらなかったのだ。


という事情の元、すでにクリスマスというイベントは動き出しており、学校の子供たちのプレゼントはともかく、嫁さんのプレゼントに非常に困っているわけだ。

普通、嫁さんは1人だし、欲しいものだってわかっているはずだが、俺の場合18人も嫁さんがいて、欲しいものはDPで日本から直接仕入れているので、特に欲しいものは無い状態だ。

いや、俺を食うという返事が多数から上がりそうだが、それとはまた別なのだ。

こういうプレゼントは日頃のお礼を込めて贈る物なのだ。

自分がいなくても思っているよ、という感じの。


「価値が同じで、みんなから不満が出ないようなものが好ましいのだが……」


何それ? 存在するの?

うーん、ぬいぐるみとか?

テディベアとかいいのではないかと思うが、あれって、プレミアムとかあるしな、専門店もあったっけ?

ルナに頼むと複製品になるだろうし、それだとなんだかなー。

かといって自分でテディベアを作るのは時間が足らん。

……考えれば考えるほどドツボにはまっていく気がする。

指輪はもう結婚指輪に婚約指輪とかいろいろあるしなー。

ネックレスも、家族の写真を入れるロケットがあるし……。


「鍛冶場まで来られてどうしたんですか?」

「あ、ナールジアさん」


なにかいいイメージがわかないかと、ウィード物作りの産地、鍛冶地区まで来ていたのだ。

どうやら、俺を知っている妖精族かドワーフ族が、代表のナールジアさんに伝えたのだろう。


「すみません。ちょっと考え事がありまして。こう、物作りの現場を見れば何か思いつくかなーと」

「なるほど。クリスマスのプレゼントですか?」

「ありゃ、わかりますか?」

「まあ、すでにイベント、行事の告知はされていますからね。鍛冶場もプレゼントの作成で大忙しです。特注なんかもありますし」

「そうですか、それなりにウィードにはちゃんと認識されているんですね」

「はい。クリスマスに、年越し、本当にウィードはいろいろあって活気があります。本場のユキさんの故郷ではこれ以上の騒ぎなのでしょうね」

「それは……まあ、そうですね」


騒ぎどころか、日本中で祭り騒ぎだしな。

いや、ウィードも今や独立国家だし、国中でって表現で言えば同じか。

イベントによる経済効果はくらべものにならないが。

今のところ、年末年始、クリスマスもウィード内での話であって、他国では真似するにも準備ができていない。


「で、奥さんたちへのプレゼントは決まりましたか?」

「いやー、どうもですね。それぞれ違うものは価格や珍しさにばらけが出すぎで、ぬいぐるみとかどうかなーと思っても、さすがに一から作る余裕もなくて……」

「なるほどー。奥さんがいっぱいなのも大変なんですねー」

「と、そういえば、ナールジアさんが持っているものは?」


よく見れば、ナールジアさんは何かを持っている。

なんか、銀の色の小さい長方形の板みたいなものだが……。


「ああ、これですか? ドッグタグの板ですよ」

「ああ。そういえばドッグタグだ」

「まだ、名前を入れてないですからね」


ドッグタグ、認識票。

ドッグタグは後からついた名前だ。

まあ、名前からいろいろ察せられるだろう。

で、認識票だが、これは軍で使われている個別認識票だ。

とはいえ、これが施設に出入りできる確かな身分証になるというわけでなく、戦死した際、損傷の激しい遺体を区別するための片方を残し、片方を持ち帰って戦死報告するためのものである。

簡易的に血液型なども記されているので、治療の際にも多少は役立つ

有事の際、戦場のど真ん中で、戦死した兵士の懐を漁って、確かな身分証を取り出すわけにもいかないので、この認識票が生まれた。

……簡単に言えば、死んだときにのみ使えるってやつだ。


「で、なんでドッグタグを?」

「あははー。冒険者さんとか、旅する商人さんとかに人気なんですよ」

「ああ。そういうことですか」

「はい。彼らは兵士さんより、ある意味、死に近いですからね」


この世界には、魔物やら、ダンジョンやら、盗賊やらが存在するので、死亡率は地球に比べて非常に高い。

遺体すら残らないことも多々ある。バリバリ食べられて。

そういった意味では、個別認識票は鉄で出来てはいるが小さいので、食べ物にもならないし、価値もないから残る可能性が高い。

……嫌な意味だが、音信不通で行方不明になるより、確実に自分の死を伝えられるということのほうがいいということだろう。

これなら、ネックレスと一緒につけても邪魔にならないし、鎖が二つで面倒なら一つにまとめてしまえばいい。

まあ、アクセサリーをつける冒険者はいないから、そんなことをするのは商人ぐらいだろうが……。

それを閃いた、これなら色々な問題を解決できる!!


「これだ!! ナールジアさん。このドッグタグのサイズに、いろいろ模様を描いたり、穴をあけたりできますか?」

「ええ、できないことはないと思いますけど。どうするんですか?」

「嫁さんたちのメインの武器とかお願いできますか?」

「なるほど!! それはいいですね。それなら私が奥さんたちの武器は全部知っていますし、できます!!」

「あ、忙しいみたいですけど、大丈夫ですか?」

「問題ありませんよ。こんな面白い案、ほかの人に回すとか、私の武器のデザインを私以上に知っている人なんていないんですから!! ちょっと作ってきます!! あ、できたらすぐ連絡しますんでー!!」


そういって、ナールジアさんは空中をすっとんで鍛冶場に戻っていく。

その最中……。


「あ、代表。この前の依頼で受けた槍ですけど……」

「黙れ!! ほかのやつに聞け!! 今から忙しいんだ!! 邪魔したらぶっ飛ばすって、ほかの連中にも言っとけ!!」

「りょ、了解しました!!」


人が変わっている。

……仕事中は変貌するタイプか。

でも、すぐに部下の人たちは対応しているから、あれがデフォなんだろう。

とりあえず、あの様子なら、クリスマスプレゼントは間に合いそうだな……。




「と、こんなことがあってな」


俺はそうやって、家族たちにプレゼントを渡して、嫁さんたちが中身を見てきゃっきゃっと喜んでいる姿を確認したあと、このプレゼントを思いついて作るいきさつを話していた。

今年のクリスマスイベントは、恋人や家族と一緒にという感じだったので、お店などは忙しかったが、お役所などは特に当日はそこまで忙しくなかった。

まあ、ツリーの準備や、当日、日中の軽いイベントはあったりしたが、夜中までやることはない。

ということで、現在はウィードの国営のクリスマスイベントは終わり、教会などがミサを開いているぐらいだ。

そのおかげで、俺たちものんびり、夜、家族と集まって美味しい晩御飯とプレゼントにありつけるというわけだ。


「なるほどね。でも、考えたわね。ドッグタグのプレートに絵を彫り込むなんて」


セラリアはドッグタグに彫り込まれた、自分の剣と刀を見てうれしそうにしている。

ほかのみんなも嬉しそうに自分の武器が描いてあるプレートを見ている。


「まあ、こういうタイプのアクセサリーは地元にあったからな。それが再現できるとは思わなかったよ。ナールジアさんの腕がものすごいってことだ」

「そう考えると凄いわね。あの人はユキが口頭で伝えた要望だけで、ここまでの物を作ってしまうんだから」

「だよな。武器だけじゃなく、本当に細工も一流らしい」


それに弟子入りしているフィーリアのぶっ飛びようも納得できる気がする。


「本当ね。でも、一番のクリスマスプレゼントはあれね」

「そうだな」


俺たちは、子供たちを自然を目で追っている。

子供たちは、一様に同じ服を着ているのだ。

お揃いの、ぬいぐるみぱじゃま。

動物パジャマというやつで、いつの日か、サクラがシャンスのウサミミを引っ張るというトラブルがあったので、それの対策の一環で、みんなウサギパジャマにしたのだが……。


「うーうー」

「あうー」

「あー」


と、子供たちはお互いの頭に揺れるウサミミが気になるようで、手を伸ばしあっている。

これだとシャンスだけがウサミミを引っ張られることはないし、痛いということもない。

何よりかわいい。


「天使ね。天使がたくさんいるわ」


セラリアはもうデレデレである。



やっぱり、クリスマスは子供たちに夢を配るってのが一番だと思う。

未来を担う子供たちの笑顔を見る。

これだけでほっこりする。

逆に、彼氏彼女といちゃつくとかあるから、ヘイトをためると思うんだ。

子供相手に嫉妬とかしないだろう?



こうして、クリスマスは滞りなく終わったわけだが、そのあとに気がついたんだ。



「来年は何プレゼントすればいいんだ?」



毎年訪れるこのイベント。

嫁さんはこれから生涯一緒だ、ネタに困る……。





よう、同志よ。

イブは一人で、コンビニで買ってきたケーキとワインで楽しんだか?

だが、本番は今日だ。

今日も、ちゃんとアイテムをそろえて一人で楽しむんだぞ。


俺も、PCの前で執筆だぜ!!


と、皮肉はいいとして、実際、プレゼントって悩むよなーって話でした。

あと、子供の動物パジャマはかわいい。


うん。

こんなに書いても一人は変わらないけどな!!

じゃ、クリスマスを楽しもうぜ!!



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