表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 神聖国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

379/2252

第316堀:それでも……

それでも……




Side:コメット・テイル



私は今までにないことを経験している。

死後に新しい経験をできるとは、人生わからないものだ。

こんな大きな池を丸ごと、お湯にして、お風呂というぜいたく品に変えるとは……。


「いやー、長生きはするもんだね」

「貴女はもう死んでいるでしょう」

「別にいいんじゃない? 意識があるんだから」


まったく、ヒフィーは無粋だねー。

ヒフィーらしいと言えばらしいけどね。

しかし、こんなものをあっさり、DPで構築するなんて、どうやったのかな?

明確なイメージがないとDPで生産なんてできないんだけどね。

空に舞う桃色の花びらに、偽物の空の星々といい、どういった理屈なんだろうね。

私がそんなことを考えていると、ルナさんが露天風呂?の隅にあった箱を開けて、中にある瓶をとりだす。

多分、見た感じ飲み物なんだろう。


「さて、露天風呂で酒は飲まないといけないでしょう」

「ルナ様。流石に今はユキ殿たちの話し合い中ですので……」


あ、そう言えばそうだっけ?

ルナさんが出てきて話がぶっ飛んだ感じだね。

うん、この人も変わらないね。


「相変わらず硬いわね。ま、そう言うと思っていたから、ほら、ジュースよ」

「あ、どうも」

「コメットはこっちの方よね?」

「分かってるじゃないか。そっちがいいね。何だいその、白い瓶は?」

「日本独特のお酒でね、熱燗、冷酒、と幅の広い清酒ってやつね」

「ふむふむ。名前から察するに、温めてもよし、冷やしてもよしってやつだね?」

「そういうこと。まあ、お風呂だから冷酒にしてるわ。熱燗は晩にでも飲みましょう」


そう言って、小さいコップ?に、その瓶から、ちょろちょろとお酒が注がれる。


「うわ。冷えてる!?」

「いや、冷酒っていったでしょう?」

「てっきり常温かと思ったよ」

「ああ、今は冬だもんね。でもあれは冷蔵庫っていって……」

「物を冷やす箱だろ? うーん、あんなことに魔術や魔力を割くのは無駄かと思っていたけど、案外ありだなー。昔も少しは余裕があればよかったのに」

「説明が楽でいいわ。さ、さっさと飲みましょう。久々の再会を祝って……」

「「「乾杯」」」


うん。

始めて、この3人が集まった時も、これからの門出を祝って飲んだっけ?


「おいしい……」

「かぁーー、良いわね!! やっぱり!!」

「ルナさんが勧めるだけあるね。本当に美味しいよ」


透き通った、水のような喉越し、それでいて、しっかりと酒精を感じさせる強さ。

きっと、果物を使っているのだろう、飲むたびに、その華やかな味がしっかり分かってくる。


「まったく。何度も思うけど、この味が米でできているとは信じがたいわね」

「……え!? 流石に嘘だろう!? この感じぜったい果物が混じってるって!?」

「ふふふ、それが日本の技術よ。魔法でもない、積み上げたものの力ってやつよ。まあ、ある意味、魔術だって積み上げたものだけどね」

「魔術は使う人が限られるからね。万人に使えてこそだと思うよ」


自分も魔術師ではあるが、魔術師だけ、その中でも、才能があるものだけにしか使えない魔術が多すぎる。

これでは、魔術の力があがろうが、上限はたかが知れている。

多様性というのは、多くの人に使ってもらうことで生まれるのだ。

私が切り捨てた、冷やすという道具の有用性を、目の前で見せられてそう思った。

その多様性を持つ世界から来た人たち、そして、そのあり方を許容した国、二ホン……ね。


「……あの、私にも一口だけいいでしょうか?」


私がそんなことを考えている内に、ヒフィーが私たちの会話が気になったのか、物欲しそうな顔で、こっちを見ていた。


「いいわよ。ほら、持ちなさい」

「いえ、ルナ様に注いでもらうわけには……」

「いいのよ。これがこのお酒を飲むときの礼儀と思いなさい」

「はぁ? そうおっしゃるのであれば」



トクトク……。



そんな耳触りの良い水の音が聞こえる。

そして、そのお酒をヒフィーはゆっくり味わうように、喉に流し込む。

……一口だけで止まるわけないよねー。凄く美味しいから。

くくく、これは後で冷やかすネタになりそうだね。


「……美味しい」

「ヒフィーの口にもあってよかったわ。さて、一息ついたことだし、さっさと説明をしましょうか。そのためにわざわざユキにこの場所を作らせたんだから」

「なるほど。後輩たちと別れたのは、言い合いをさせないためかな?」

「まあね」


ということは、私たちにとってもあまりいい話ではなさそうだね。

まあ、後輩ということばを否定しないのだから、私たちは……。


「率直に言いましょう。あのユキはあなたたちの後任として、この新大陸にきて活動しているわ。そして、それなりの成果もあげている。あなたたち2人はユキ相手にどういう行動を取るつもりかしら? このままだと、ユキとぶつかるわよ? いいえ、既にいつ戦闘になってもおかしくないわ。あなたたちからすれば、邪魔しているのはユキなんでしょうけど、向こうからすれば、邪魔しているのはあなたたちなのよ」


そうだろうね。

敵方の使者として来ているのだから、戦争を起こしたくないってことだ。


「ルナ様がこちらにこられたのは……」

「なるべく穏便にことを済ませたいからね」

「……お言葉ですが、ユキ殿は未だこの大陸、世界に来て日が浅いはずです。そのような新人にこの腐った大陸を、魔力枯渇の原因を探ることはできません」

「私もヒフィーに賛成だね。どこまで、ユキ君だっけ? 後輩が知っているかしらないけど、たとえ、私たちが知り得た結果にたどり着いたとしていても、経験が絶対的に足りないとおもう。恐らく私たちの二の舞になると思うよ?」


ユキ君は若い。

確かに、ダンジョンマスターとしての才能はあるのだろう。こんな場所を即席で作り上げるのだから。

でも、あの歳でこんなぐちゃぐちゃの大陸の情勢をどうこうできるとは思えない。

それは、ダンジョンマスターの才能とはまた別。

自分が痛いほど、というか、身をもって知った。


「あー。うん、そこからね。そうねー、まだあなたたちには伝えていないのだけれど。世界にはこの大陸以外に大陸があるのは知っているかしら?」

「え?」

「僕はうっすらとだけど、知っているよ。眉唾な文献からだけどね。まあ、こんな大陸が1つだけ、って言うのも変だろう。世界は広いんだから。それに、タイゾウさんや、ユキ君みたいな人がいる異世界だってあるんだから」

「そう言われれば、そうですね……」


僕の言葉でヒフィーも納得する。

……あれ? なんでルナさんはこの話を今したんだ?


「……まさか」

「うん。察しがよくて助かるわ。ユキは既に、別の大陸の魔力枯渇をほぼ解決して、こっちの大陸に来ているの」

「ええ!? そ、それは本当なのですか!?」

「本当よ。まあ、根本的な解決、つまり原因は分かっていないから、空白地帯、あなたたちがいなくなっていたと思っていた、この大陸にも手を回してもらったのよ」

「えーと、つまり……」

「そう。あんたたちは、実績においてもユキより下なわけ。国との交渉とかその他もろもろもね」

「「……」」


うげ、反論するネタがなくなってしまった。

でも、ヒフィーは口を開いた。


「ユキ殿が私達より優秀なのは分かりました。ですが、すでにことは動き出しています。そして、私たちの大陸の始末は私たちが付けるべきです。ユキ殿はこちらからは手を引いてほかの大陸もあるのでしょうから、そちらに回っていただくというのは?」


駄目だよヒフィー。

道理が通っていない。

そもそも、ルナさんが、この大陸にユキ君をやった理由は……。


「はぁ、ヒフィー。まず、貴女が音信不通になったのが問題なの。それは分かっているのかしら? それで、ユキに手を引けって言うのは、無茶苦茶よ? ま、殆ど失敗の状態で報告するわけにはいかなかったというのもわかるけどね」


そう。私たちが失敗したからだ。

なのに、もう一度と言うのはちょっとね……。

でも、ヒフィーの言っていることは分からないでもない。

結局、この大陸を見ず知らずと言っては失礼だろうけど、よその人間に任せたくはない。

そして、事態は既にもう止まらないところまで来ている。


「それは……分かっています。そして、愚かにも自分もタイゾウ殿を呼び寄せた。ですが、ようやく手が届きそうなのです。どうか……」


うん。

タイゾウさんのおかげで、ようやく目標に手が届きそうなのは事実だ。

いまから手を引くのも……。


「……」


ルナさんが、ヒフィーが懇願して、顔を下げて、風呂の中にツッコんでいる姿を見つめる。

……すっごい変じゃない? シュールだよ!?


「……」


でも、ルナさんは真剣な表情のまま、ヒフィーも風呂に顔をつけたまま動かない。

……やばい。こらえるんだ。笑っちゃいけない。


「……苦しくない?」

「がぼっ!? ルナ様、こっちは真剣なんですよ!!」

「いや、でも、風呂に顔突っ込んで頭下げても、ギャグにしかならないわよ?」


もう我慢の限界だった。

私はよくこらえたと思う。


「うひゃひゃひゃ!! ひー、お腹痛い!!」


風呂の水面をバシバシ叩く。

だめだ、ヒフィーの真面目さがここでミスマッチしまくってる。


「ぶはっ!? 笑わないでください!! こっちは真面目なんです!!」

「ご、ごめん。で、でも……。ぷっ、ぶっ、ぶっはははははは……」


だめ、ツボに入った。

きつい。

死人を笑い死にさせようとするとか、ヒフィー、恐ろしい子!!


「ま、コメットが私の代わりに散々笑ってくれたからいいでしょう。で、1つだけ言うわよ。このままじゃ、ユキとぶつかるわよ? ユキは、一応、今の状態を維持して、魔力枯渇を探るつもりらしいから」

「……それなら、排除するまでです。この大陸にも昔は多くのダンジョンマスターがいました。それを、コメットと一緒に排除してきたのです。それと変わりません」


……ユキ君は私利私欲に固まったアホなダンジョンマスターではないと分かっての発言だろうな。

私が現役、生きていた時は、ルナさんがノリで選んだ、ダンジョンマスターが10人ぐらいいたけど、そのほとんどが、私利私欲、というか、何をどうすればいいのかわからないので、とりあえず、国を飲み込む手段を選んだ。

目に見えてDPを回収できるからね。

それを知った私たちは必死に阻止して、表に出ないように、秘密裏にこの大陸を守ってきた。

その結果、生き残ったダンジョンモンスターや、多くの難民がでて、その僅かばかりを私が拾っていたのだ。

結局、協力できない私たち、ダンジョンマスターたちの被害を被ったことには変わりないのだが、守ったというより、罪滅ぼしなのかもしれない。

それが、ピースだったり、のちの聖剣使いの彼女たちだったりするのだが……。


「……まあ、普通ならそれで私も文句は言わないのよね。競い合って、よい結果を導けるように、色々な生き物をダンジョンマスターにしてきた。でも、今回は違うのは分かっているでしょう?」

「……」


……今回はわざわざルナさんが出てきた。

これは異例だ。

私も、生前、彼女がダンジョンマスター同士の争い、主張の違いで出張ることは一切見たことがない。


「ユキはわざわざ、タイゾウと同じ異世界、日本から連れてきたの。もう、現地の生物では解決できないと判断してね。まあ、今も残っているほかの神やダンジョンマスターにやられるならそれまでであきらめがつくんでしょうけど……。ヒフィー、あんたに参戦する権利はないわ。私がそう言うの。それでもユキを排除して、この大陸を自分の手でどうにかしたいかしら?」


ルナさんはそうヒフィーに聞く。

……正直、私には口の出しようがない。

既に死んでいるんだから……。


「……それでもです。この大陸は私たちの手で」

「私に逆らうのも覚悟の上なのね?」

「はい」


ヘタすれば、この場で一気に消されかねないのに、その場しのぎの嘘もつかないで、ヒフィーは馬鹿正直に答える。

嘘をついても、あとで消されるだけだけど。

しばし、2人は見つめ合い、お湯が湧き出る音が響く。



「はぁ、ヒフィーの覚悟はわかったわ」

「それでは!?」

「いいえ。ユキを退かせるわけにはいかないわ。元はと言えば、連絡を絶ったヒフィーが悪い」

「……はい」

「そして、しっかり確認をしなかった私も悪いっちゃ悪い。今回の件にユキの落ち度はないの。だから、私の立ち合いの下、代表を決めて、勝負でもしなさい。落ち度はないユキを納得させなさい。あんたたちに任せても大丈夫だって。これが、私がだせる最大の譲歩ね。まあ、どうせ、どのみちぶつかるユキとの勝負が早まったと思いなさい。この方が被害も少ないし、お互いにいいでしょう。どう? 私の立ち合いがあるから、死ぬこともないわ」


うん。ルナさんの話はいい条件だと思う。

ヒフィー、どうするんだい?


「……わかりました。その話受けさせてもらいます」

「よし。ならさっさと上がりましょう。のぼせてきたわ」


そう言って、ルナさんはさっさと露天風呂から上がって、脱衣所へ向かう。

それを目で追いつつ、ヒフィーは呟く……。


「代表……ですか」

「そうだね。ヒフィーと私、あとは……タイゾウさんは無理かな?」

「それは、無理でしょう。彼を私情で戦わせるわけには……」


だろうね。

今の話を聞けば、どっちが正しいかってのはわかる。

タイゾウさんは、そこら辺の判断を間違うわけないし、2人で頑張るしかないかな。


「こら、さっさと出なさい。あんたたちの汗たっぷりのお風呂なんて勘弁だからね!!」

「あ、はい」


そう言われて、ヒフィーは慌てて上がり、私もそれに続く。


「……そういえば、死体の私が風呂に入って大丈夫なのかな?」


不意にそんなことを思った。

腐敗が進行するとかないよね?



勝負の最中、ギャグにならないように確認しとかなきゃ。





ルナがなんとか被害が少ない手段をもぎ取ってきました。

あとは、ユキたちのバトル。


タイゾウはどうするのか?

ユキたちとともに来るのか? それともヒフィーたちと一緒に戦うのか?



あと、今度からクリスマスとか冬ネタの落とし穴になります。

前回の、小説しか読むことがないと信じて、と書いていましたが、感想に仕事があるからとか言ってる人がいました。


わかってるだろ?

仕事の後、幸せになれるか? って聞いてるんだぜ? げへへへ……


みんな俺と同じだろ?

のんびり小説をみて過ごそうぜ?


さて、げすい話はここまでで、年末です。

お掃除とか、いろいろやることはたまっていませんか?

ですが、慌てず事故などを起こさぬよう気を付けてください。


気が付けば、新大陸に来てから、一年とちょっとです。

大体去年の12月は「ジルバの落日」あたりです。

まだ、書籍化もしておりませんでした。

自分にとっては、いろいろ変化の多い年だった感じです。

まあ、こういう振り返りネタも、番外編みたいなのでやりたいと思っていますので、あと10日。

今年の必勝ダンジョンをお楽しみください。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ