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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 神聖国編

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第310堀:話し合い 裏 前編

話し合い 裏 前編




Side:ユキ




「あの、俺たちはどうするんですか?」


アマンダを心配そうに見送ったエオイドがそう口を開く。

まあ、仕方ないよな。

思いっきり敵陣の真中だし。


「ま、とりあえず。エオイドはその顔をどうにかしろ。俺の嫁さんたちもついているし、おまけに魔剣使いのラライナ殿もいる。何かあってもちゃんと戻ってくる」


流石におどおどしすぎなので、エオイドを落ち着かせておかないと、変な行動をおこしそうだ。

こっちがトラブルを起こしましたなんて目も当てられない。


「ユキさんの言う通りだな。落ち着かない表情だから、何か企んでると思われるぞ」

「そんな風に見えますか?」

「「見える」」

「見えますね。ま、アマンダが心配なのはわかりますけど。もっとどしっと構えていればいいですよ」


俺とタイキ君、そしてリーアの言葉でがくっと肩を落とす。


「すみません。でも、下手するとここで戦闘ですよね……」

「だな」

「よく平気でいられますね」

「ピリピリしても相手を警戒させるだけだしな。こういう時は自然体の方がいいんだよ。逆にそっちの方が相手を警戒させないし、向こうの動きもつかみやすいからな」

「そう言うものですか」

「そう言うものだな」


ワイバーンのワイちゃんの監視に残った俺たちは、そんな雑談をして時間を潰していた。

周りには俺たちというか、ワイバーンを見張るように10人ほど兵士が見張っている。

エオイドがピリピリするのは分かるが、お互いに警戒全開じゃ、変な誤解で問題に発展しかねない。

ここは、さっき言ったようにのんびり自然体でいるしかない。

幸い、未だ俺たちドッペルへの干渉行為はない。

向こうは、俺たちの防壁に引っかかっていると見ていいだろう。

さて、どこまで様子を見ているつもりか。

こっちから出向く必要があるか?

そんなことを考えていると、ラライナたちが消えた方向とは別の場所から1人の男が歩いてくる。


「ユキさん、あれ……」

「マジかよ……」


タイキ君もその姿を確認して俺に声をかけてくる。

俺もその姿に唖然とする。


「どう見ても軍服ですよね?」

「ああ。幸いと言ってはなんだが、あの軍服は見覚えがある」

「俺もですよ」


それは、昔の日本の軍服。

第二次世界大戦、その時に着られていた軍服だ。


「時間軸すらズレているみたいだな」

「……召喚って厄介ですね」


全くだ。

相手が完全に、情報統制、洗脳教育で大日本帝国万歳なら、黒幕は目の前に歩いて来ている男の可能性が非常に高い。

誠に残念ながら、この世界の文明、知識レベルは地球に比べて格差がある。

その基準が二次大戦の人でもだ。

階級章をみると少尉。……士官かよ。教育はばっちりだなこりゃ。

そんなことを考えていると、周りの兵士と話して、俺たちの目の前で止まる。

リーアは直ぐに動けるように警戒している。

エオイドはお偉いさんが来たと思って緊張しているみたいだ。


「初めまして。私は、ヒフィー神聖国で、技術開発の所長、それと、ヒフィー殿、いや、ヒフィー神聖女様の参謀を務めている、タイゾウ・モトメだ。君たちには本目泰三と言った方がいいかな? 我が同郷の若者たちよ」


その男は特に堅苦しい敬礼などはせずに、普通に笑いかけて話してきた。

でも、予想通りこっちの人間だったか。

僅かな、この国の軍服がたまたま、二次大戦の日本の軍服と酷似していたと願っていたが、そら都合がよすぎたか。


「日本人……なんですか?」


タイキ君が確認するように言葉を返す。


「うむ。その通りだ。しかし、よかった。話しかけておいて、相手が中の人であれば話し合いにならぬからな。我々はそれだけのことをしている。特に軍人の私ならばな」


……それは大陸への出兵のことか。

確かに、日本人と大陸の人は区別がつきにくい。

万が一、大陸の人だった場合は、今でも残る反日感情で話し合いにならないかもしれない。

ますます、この本目さんが二次大戦の人の可能性が高いな……。


「と、すまないが。君たちの名前をうかがってもいいだろうか?」

「あ、すいません。俺は中里大輝って言います」

「私はユキと呼んでください」

「私のことは、本目、泰三、好きに呼んでくれ。しかし、中里君はいいとして、君のユキという名前は……」

「本名は別です。自分から異世界人と言うのは危険と考えたので、ユキと名乗っています」

「確かにな。それも一つの手段だ。君の本名はいずれ聞ける日が来ることを祈ろう」


名前の隠蔽にも理解を示すか。

……有能すぎじゃね?

当時の軍部って石頭だろ。

いや、例外はいるかもしれないけど、自分たちが都合よくそんな人に当たるとは思えんからな。


「あ、あの、ユキさん、タイキさん、この人はお知り合いですか?」

「ん。ああ、同じ国の出身の人だよ。こちら、使者のエオイドです」

「よろしく」

「はい、よろしくお願いします。ユキさんやタイキさんにはお世話になっています」

「そうか。彼らと仲良くしてくれてありがとう」


普通に挨拶を交わす本目さん。


「で、そちらの甲冑を着たお嬢さんは……」

「私の名前はリーアと申します。ユキさんの妻を務めています。どうぞよろしくお願いいたします」


リーアはよどみなく、はっきりと返事をする。


「ほう、既にユキ君は結婚済みか。これは何かしらお祝いを送った方がいいかな?」

「いえ。随分前の話ですし」

「ふむ。それは残念だ。まあ、結婚祝いでなく、ただの知り合いの贈り物ということにしておこう。しかし、結婚しているとなると、君もこちらに来て長いのか?」

「私は2、3年と言ったところですね」

「俺は5年近くですね」

「ふむ。私は8年と言ったところだ。おかげでいい歳のおっさんになってしまったよ。と、すまない。ここで長話をするのは何だな。お茶でも飲める場所へ案内しよう」

「あ、でも……」


エオイドが心配そうにワイちゃんに視線をやる。

まあ、逃げ出すために必須だからな。普通ならここから離れるのは危険と考える。


「心配はいらないよ。戦争になるかもしれないが、今は使者として扱っている。そのような非礼をすることはない。ましてや、私の祖国の人間も使者にいるのだ。そのようなことは私が絶対させない。都合よく、私はここの兵士たちに命令できるぐらいには偉くてね」


本目さんは、兵士たちに振り向き、大きく息を吸い込み、言葉を吐き出す。


「いいか。何があっても決して竜に手を出すな!! この竜は我らの客人のものであり、使者である。そして、我が祖国の友人も来ている。決して非礼が無いようにしろ。いいな!!」

「「「はっ!!」」」


本目さんの指示に、ビシッと敬礼して返事をする兵士たち。


「これで、心配ないと思ってくれないか? なに、万が一があれば私も君たちの味方になろう。その証拠に……」


腰に下げていた、刀をエオイドに差し出す。

軍刀ではなく、刀か、元々しっかりした家の人か?


「えっと?」


エオイドは不思議そうに、とりあえず差し出された刀を受けとる。

意味が分かっていないだろう表情なので、タイキ君が慌てて説明に入る。


「エオイド、その刀絶対落とすなよ。俺たちの国では刀は魂と言われるほど大事な物だ。その魂と言われる刀を預けたってことは、本目さんにとっては絶対に約束を守るって宣言しているようなもんだからな」

「え、ええ!?」


逆に驚いてしまうエオイド君。

うん、実に小心者だな。


「はははっ。そこまで強く言わなくてもいいだろう。確かに刀は大和男の魂だ。だが、故意に落とされたわけでもないのに、怒ることはないし、なにも説明もせずに渡した私も悪いのだ。エオイド君、説明はタイキ君がしてくれた。その預けた刀にかけて、約束を守ろう。信じてくれるかね?」

「はい。で、でもそんな大事な物を……」

「男に二言はない。その刀を返してもらう時は、君たちが無事にここから出る時だ。まあ、だからと言って、ずっと持っているのもつらいだろうから。部屋にいるときには適当に壁にでも置いておくといい」

「わかりました。モトメさんの魂、確かにお預かりします」

「うむ。いい面がまえだ。では、こちらに来てくれ」


そして、本目さんに案内されて、一つの客間に通された。


「さて、何から話したものかな。ああ、今回の戦争云々は、今、会談している所だ、そちらの疑問は、上の話が終わってから改めて話そう。お互いこうやって仲がいいんだ。何かこじれればお互い説得できるかもしれない」

「はい。その時はよろしくお願いします」


……本当に理解がある人だな。

刀をあっさり渡したところといい、器の広い人物だな。


「では、こちらから聞いてもいいですか?」

「ああ。かまわないよ」

「本目さんは、何年にこちらに?」

「ふむ。そうだな。まずはそこからだな。私は昭和19年。西暦でいうならば1944年だな。季節は9月だったか」


……もう敗戦寸前じゃねーか。

無条件降伏まで、既に一年切っている。


「まあ、私としては助かったのだよ。空爆が見事に直撃してね。私の目の前にだ。流石に死んだと思った。が、目を開ければこの国、この世界にいたということだ」

「大変だったんですね」

「……まあな。戦争はいつだって大変だ。しかし、君たちのその反応を見るに、戦争は終わっているようだな」

「はい」


……一体どうやってもう60年以上前の話ですって持ちだせばいい?

それ以前に、日本が負けたって言えねーよ!?

タイキ君と俺は、お互いに目を見合わせて、冷や汗を流している……。

でも、絶対聞かれる。日本はどうなったのかを。


「……そして、日本は負けたのだな」


だが、俺たちから結果を言うことなく、本目さんからその言葉は紡がれた。


「……なんで、わかったのですか?」

「いや、私は技術士官でね。あー、技術士官というのは、軍が使う兵器の開発をする人の役職でね。私はそこで、色々な兵器開発に携わってきたんだが、その中に通信装置があってね。ラジオよりもより簡略化して、簡単な音を送る機械なんだが、その開発も携わっていて、大本営発表と、実際の戦況が違っていたのは分かっていたのさ。いや、あの状況下で分かっていなかったのはほんの一握りじゃないか? 人々の生活は苦しくなる一方、敵は防衛網を抜けて空爆を都市にしかける。誰が見ても劣勢だったよ」

「その、すみません」


タイキ君は申し訳なさそうに謝る。

俺たちが謝る理由もないのだが、当時、本当に戦い抜いていた人に対して、自分たちから敗戦の言葉を告げられないのは、少し心に残る。


「何も謝る必要はない。あれは負けて当然だった。世界恐慌を、植民地を増やして乗り切る。それは大国だからできたことで、元々の国力が少ない独、伊、は取るべき手段ではなかっただけだ。まあ、米と対立してしまったのが最大の敗因だろうな。日本としては、周りの植民地化した国の独立を促したかったが……。と、今更言っても仕方ないか。で、どうだ? その後の日本は」


驚いた。ここまで、あの二次大戦の状況を当時でしっかり把握していた人がいるとは。

と、いけない。ちゃんとその後の日本。

俺たちが、遥か、とはいいがたいが未来から来たと言わなければ。


「その、本目さん。俺たちは……」

「なんだい?」

「私とタイキ君は平成20年前後、つまり西暦2010年前後でこちらに来たんです」

「ほう。凡そ65年も先、未来からか!! これはすごい!! 流石、魔術と言った見たこともない力がある世界だ。まさか、未来の人間と会えるとはな」


本目さんは、俺たちの言葉に興奮した様子だ。


「信じてくれるんですか?」

「嘘を言う理由もないじゃないか。しかし、1つだけ残念なことがある」

「なんでしょうか?」

「私の家族の安否は君たちに聞いても分かりそうにないな」

「……すみません」

「いや、未来でなくても、当時の荒れようでは、確認もできないだろう。だが、それも些細なことだ。未来を私に聞かせてくれ。あれからどうなったのかを!! 世界の技術はどうなったのかを!! 当時は戦争の道具を作ることで一杯一杯だったからな。二次大戦が終われば、大規模な戦争は終わるはずだ。ならば、もっと技術が違う方向に進化しているはず。それを教えてくれ!! ああ、ダメだな。それでは範囲が広すぎる。何を聞けばいいのだろうか……、ちょっと待ってくれ。考えをまとめる」


そのはしゃぎように、俺たちはもちろん、エオイドもリーアも目を丸くしていた。

……いや、性格には俺はこの手合いは見たことがある。

ザーギスとかナールジアさんと同じ表情だ。

いや、それをぶっちぎって、親友に近いものがあるかもしれない。

俺がそんなことを考えていると、本目さんは考えがまとまったのか、下げていた頭を上げて、こちらをしっかり見つめてくる。


「よし。まずは、私の師たちの名前が後世に残っているか確認をしたい」

「師ですか?」

「ああ。私は軍人の前は大学での研究職でな。その時にお世話になった先生、師たちがいるのだ。戦争で残念ながら、バラバラになってしまったが、かの師たちはきっと世界に名を轟かせる才能を持っていた。アルベルド・アインシュタイン殿ともちょっとだが親交があったのだ……」

「ちょ、ちょっとまってください!! アルベルド・アインシュタインと会ったことあるんですか!?」


タイキ君が待ったをかけた。

うん、タイキ君が待ったをかけてなかったら俺が待ったをかけていたわ。

あの現代物理学の父と呼ばれる天才と親交がちょっとでもあったってどれだけだよ!?


「ほう。その様子だと、アルベルド・アインシュタイン殿の名は、60年以上先の未来でも轟いているみたいだな。記録に残っているかはしらないが、アインシュタイン殿は来日したことがあって、その折に、わが師たちと私たち弟子も、かの天才の講義を拝聴したのだ」


あった。

来日している!!

というか、その当事者に会えるとかすげーよ!!


「まあ、その講義内容は後にしよう。まずは我が師たちの名前に聞き覚えがあるか無いかだ」

「はい」

「どのような名前で?」


一体、どんな人物が出てくる?

アインシュタインの関係だから本多幸太郎教授か? それとも留学していた石原純さんは違うか……。

うっわー、やべ、今まで一番テンション上がってきたかも。

いや、嫁さんとは別枠でね。こう世界の偉人の話を聞けるっていうのは、心から湧きあがるものがあるのですよ。


「一人の名は宇田新太郎、そしてもう一人の名を八木秀次という。研究して特許を取った時の名は電波指向方式だ。どうだ、聞き覚えはないか?」


俺とタイキ君は目を見合わせて驚いていた。

だって、その名前はちょっとでも軍事やアンテナの歴史を知っているなら、知らない人などいないレベルの人物。

通信、アンテナ、レーダーという概念を作り出したと言っても過言ではない。



八木・宇田アンテナ。



それが、本目さんが師と呼ぶ2人が、世界に残した名だった。

これは、今夜は眠れないぜ。






ついに対面する、昔と今。

果たして、この話の行くへは?


それはそうとして、過去の偉人と会ったことがある人がいれば興奮して聞きたくなるよな?



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