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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 神聖国編

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落とし穴49堀:しあわせ

しあわせ




Side:ラッツ




今日も今日とて、スーパーラッツの幹部は店舗運営のために、企画作りや発注作業、苦情対策などなど、色々大変なデスクワークをこなしています。

今やスーパーラッツは、ウィードはもとより、大陸一と言われている商会になっています。

まあ、お兄さんの故郷の商品を売っているだけでして、私の才能のおかげかと言われるとノーとしか言えませんが、このスーパーラッツのおかげで、ウィードだけのオリジナルの製品を生み出したり、住人にいい影響を与えています。

ただ、受け取り、恩恵を与ることだけでなく、それから何かを感じ、自ら生み出すことを始めています。

これこそが、私のお兄さんが望んだことでしょう。


最近は、新大陸の事情が色々忙しいことになっていますが、ウィードの仕事もおろそかにしてはいけません。

そろそろ、ウィード建国2年目で各代表の交代時期でもありますし、私も後進の教育に力を入れている所です。

そのおかげで、後進たちに商会を任せて、お兄さんと一緒に新大陸に行ったり、娘たちの面倒を見ているのですが。


「はい。やりなおしですね」

「ええー」


そんなことを考えつつも、提出された書類に目を通して、ダメダメだったので突き返します。

それで、声を上げるのはスーパーラッツの商会での部下の1人。猫人族の子です。

リエルと同じ種族で、思ったより、計算などはできて真面目な性格です。

第一回目にロシュールから連れてこられた奴隷の子で、結構ウィード歴は長いです。


「毎回言っていると思いますが、このスーパーラッツは国営の店です。即ち、予算は国からでるのです」

「わかってますよー。でも、どこがいけないんですか?」

「用途不明なお金があるのはいただけません。エリスは絶対に頷きませんよ?」

「用途不明ってどれですか?」

「ここですよ。ここ」


そうやって示すのは、新商品開発予算。

全体の3割を占めている。


「ちゃんと、新商品開発予算って書いてあるじゃないですか」

「もうちょっと詳細に書きなさいって話です。新商品開発予算の内訳ですね。これじゃ、何にどれだけ使うかが明記されていないので、お金が横流しされても分かりませんよ」

「そんなことするわけないじゃないですか」

「人はいつ魔がさすかわからないもんです。こういうところをきっちりすることによって、そう言うちょっとした魔を防ぐんですよ」

「そういうものですか?」

「そういうものです。代表になると会計とかともぶつかりますから、こういうところはしっかりすることです。代表になるために頑張っているんでしょう?」


そう、この子が次の商会代表候補。

他にも立候補はいるけど、個人的にはこの子が代表になれるといいと思う。

運営や発想は時折光るものが見えるので、この子が代表になるとどうなるのか見てみたいって感じですね。


「ううー。会計とぶつかるのかー。なんかやる気が急に……」

「ヘタってないでお仕事ですよ。ちゃんと内訳を計算して書いてきなさい」

「……はい」


トボトボと机に戻って行って、再び書類を作り始める。

なんだかんだ言って、ちゃんとやるから問題はないんですけどね。

なんというか、一度、私を通すことに慣れているのが問題ですね。

私はトップではなくなるんですよ。

だから、あなたが最後に目を通す大事な立場になるのです。

恐らく、無意識に甘えているのでしょうね。

一緒にいままで仕事をしてきていましたから。

そんなことを考えつつも、書類に目を通してハンコを押したり、変なところがあれば、作った人を呼び出して修正したりの繰り返しです。


ボーン、ボーン、ボーン。


時間は経つのは早いもので、今日のお仕事は終わりの時間です。


「これで定時ですね。後半勤めの皆はついていますか?」


スーパーラッツは夜遅くまで開いているので、夕方から交代の人員がくる。

主に、店内トラブルに対応するためだ。

お店の方もちゃんと交代要員がくるので、朝から働いている人が夜までぶっ通しということはない。

ここら辺は、お兄さんが厳命しているので徹底させている。

お兄さんの故郷では、残業が当たり前で、家に帰って寝るだけの生活って言っていましたからね。

流石にそう言うのは駄目だと思います。

だって、いちゃつく時間がないじゃないですか!!

仕事漬けとかありえないですね。


「代表、皆ちゃんと来てますよ」

「そうですか。なら夜のお仕事まかせますよ。くれぐれも、店舗からの収益報告が届くのを確認してくださいね」

「「「はい!!」」」

「はい。ではお仕事に取り掛かってください。朝からの人はさっさとどかないと邪魔になりますからね」

「「「はい」」」


そう、わざと机は少なくしており、朝と夕のメンバーがちゃんと入れ替わらないとお仕事にならないようにしてあるのです。

これは残業を防ぐためってやつですね。

と、私もさっさと帰りますかねー。


「またねー」

「うん。また明日ねー」

「今日のご飯ってなに?」

「そうねー。ハンバーグにしようかしら?」

「なあ、飲んでいかねえか?」

「お、いいねぇ」


一歩外に出ると、そんな声があちらこちらから聞こえてくる。

そんな光景を見て私は少し微笑む。


「全く。お兄さんは頑張りすぎですねー」


お兄さん本人は決して、認めようとしませんが、これは明らかに過ぎた施しです。

いえ、悪いとは言いませんが。寧ろお兄さんに惚れ直したと言ってもいいです。

ですけど、おかげで、お兄さんの負担は増える一方です。

ウィードに問題があれば、最悪、切り捨てるなんて言ってますけど、お兄さんはそんなことをするわけがありません。

あの人はそういう人です。

だからこそ、私たちもメロメロなんですが。


街の人たちには明日を憂う表情は無い。

ただ、今日も日が暮れて、明日は何をしようかと考えている顔だ。

奴隷だったり、スラムでごみを漁っていた人たちだったとは思えない。

そればかりか、この大陸で一番裕福な暮らしをしていると言っても間違いとは思いません。


「でも、不思議ですね。最初は、なーんにもなかったのですが」


お兄さんがきて、ダンジョンを作って、私たちがきて、街ができて、国になった。

怒涛だ。

普通ではありえない速度。

なんとなく、その変わりように昔の光景を思い出していた。

帰る道すがら、あの建物はエリスやミリーと揉めたなーとか、あの広場はアスリンとフィーリアの意見が盛りだくさんだったとか……。

ぼーっと、そんなことを思い出して歩いていると気が付けばスーパーラッツの前に立っていた。


「ありゃりゃ、私も未練がましいってところですか?」


ここは、一号店。

つまり、私が初めてお店を持って、自ら店長を務めたお店だ。

何もかも、お兄さんに用意してもらっただけですけどね。

いまでは、基本的に書類仕事でオフィスばかり。たまに新商品の品出しや視察に来るぐらい。

今、お店は夕方なので、人の出入りが激しく、店員も忙しそうだ。

そうそう、初めて妖精族さんたちを相手にしたときはてんてこ舞いでしたっけ。

皆してお店で品出しとか、レジ打ちしてましたね。

調子に乗って、大きい店と大量の品物を扱える場所があるといいって要求したら、これが出てきたんですよね。

当時はお兄さんが異世界の人なんて知らなかったから、せいぜい一軒家ぐらいのお店だと思っていたんですよね。

そしたらこれですよ。

自動ドアに冷暖房完備、そして膨大な広さの店に、大量に冷蔵できる場所があったり、倉庫も広いし、商品の種類は山ほど。

正直、腰を抜かすと思いましたよ。


「ん? ラッツじゃないか。どうしたんだ?」

「あ、本当ですわね。どうされたのですか?」

「……お、重い。サマンサ、手伝って」

「嫌ですわ。自分の分は自分で持つべきです。あと、もっと考えて買うべきですわ」

「……ぐっ、正論」


お店を眺めていると、お兄さんとサマンサ、クリーナが出てきました。


「いえ。私は帰りでなんとなく寄ったのですよ。お兄さんたちは買い物ですか?」

「ああ。今日の晩御飯で材料が足りなくなりそうだから、買ってきてって連絡があってな」


納得ですね。

最近はお兄さんが料理をする機会も減りましたが、こうやって料理のための材料選びなどはやっぱりキルエやサーサリと並んで目利きができるので、よく買い出しに行っています。

女としては、料理で負けるのは悔しくあるのですが、お兄さんなので仕方がありません。

代わりに、あとでおっぱいをあげましょう。胸が張ってきてるので、シャンスたちではつらいのです。


「で、護衛のお2人のお荷物は?」

「ただの私室の買い出しですわ。お菓子とかは美味しいですから」

「その通り」

「で、買いすぎたと」

「……仕方ない。魅力的な物が多すぎる」


目をそらすのはクリーナ。

サマンサはほどほどで片手に持てる量だが、クリーナは両手に買い物袋を膨らませて持っている。

どこかで見た光景ですね。

自分たちも、最初から関わっていましたし、初めての時は、お店のものをたらふく持って帰った記憶があります。

そのあとの妖精族さんも散財してましたよねー。

ウィードへ連れてこられた奴隷の皆も、お金があれば散財していたでしょう。

誰もが通る道ということですか。


「ラッツもほかに用事がないなら一緒に帰るか?」

「ええ。一緒に帰りましょう」


お兄さんの誘いを断るのは、そうそう有り得ません。

仕事も後進たちに押し付けますとも。

成長を促すためですから、何も問題はありません。

ということで、クリーナの両手がふさがっていて、お兄さんの片腕が空いているので腕を絡めます。


「……ラッツ、荷物を」

「嫌です。ちゃんと考えて買うべきでしたね」

「……今日は仕方ない。我慢する」


夕日の中を4人でのんびり歩いて帰ります。

その中、お兄さんが不意に口を開きます。


「なあ、ラッツ。スーパーラッツの代表が終わったあとはどうするんだ?」

「え? それはもちろんお兄さんのお手伝いですよ?」


何を不思議なことを聞くのでしょうか?


「いや。それとは別だ。ラッツは自分のお店を持ちたかっただろう? 国営のお手伝いが終わったなら、普通に申請しておもちゃ屋でも開いたらどうだ?」

「あ」


そう言われて、なにか心がほっこり暖かくなってきます。

うん。これは嬉しいと思っています。


「そう、ですね。でも、いいのでしょうか?」

「いいも悪いも。ラッツのやりたい事だろう? それが原因で、俺と別れたり、娘のことをほったらかしにするわけでもないんだろ?」

「あり得ませんとも!!」


あり得ない。お兄さんと別れるとか、娘をほったらかしとか!!


「なら、自由にやればいいさ。色々無理を強いているからな。ミリーやリエルはお酒や運動で色々発散してるだろうが、ラッツやエリスはあまり自分の希望を言わないからちょっと心配でな。やりたいことがあるなら遠慮しないでやるといい。俺たちもフォローはするからさ」

「お兄さん……」


いえ、正直十分幸せだと言いますか、エリスの場合はお兄さんを食べる事で発散していると言いましょうか……。

というか、そんなこと言うと、押し倒しますよ!!

家に着いたら食べますよ!!



でも、おもちゃ屋さんですか。

うーん。家に帰ったら、お兄さんを食べる前に、構想をまとめておくべきですね。

アスリンにあげたうさぎさんを改良した、うさぎさんマーク2もいますし、あれをメインに……。




本当に、お兄さんといると退屈しないですね。

最高の旦那さんですよ。





前後した理由は、あのゲームが出たせい。

そして、ウィードも色々ありつつも、次のステップへ。

嫁さんたちも、次のしあわせを探しに。

平和が一番や




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