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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 神聖国編

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第306堀:味方の思わぬ動き

味方の思わぬ動き




Side:ユキ




「これが空の世界か。何と素晴らしい……」


俺たちは、予定通りアグウスト8世を連れて王都への帰路へとついている。

だが、これで終わりではない。

というか、これから厄介なことになりかねない。

恐らくは万全の体制を整えたうえで、馬鹿みたいに隊列を整えてくる軍を手ぐすね引いて待ち構え、弾の的にして確実に潰してくるはずだ。

相手にダンジョンマスターがいる。

その状況で、相手のフィールドでやられるというのは、DPになることを意味する。

そうなれば、更に相手の強さが増すわけだ。

軍備だけの強さじゃない。

アグウストがこの戦いに敗北すれば、次にとる手段は、諸外国へ通達して、多方面から攻撃を仕掛けるか、物流の停止を試みるはずだ。

しかし、多方面からの攻撃などは、ヒフィーの自陣で、今まで通りの隊伍を組んで数を頼りにする戦法をとる限り、銃器という兵器を扱うヒフィー相手に勝ち目はない。

正に、一騎当千の活躍を1人1人の兵士がこなす。

そして、物流の締め上げだが、それも初戦でDPが潤沢になっていれば問題にならない。

最悪、DPに余裕がでれば、俺たちと同じように飛龍隊のような航空戦力を用意してくるだろう。

そこまで相手の力が増せば、もう勝ち目もクソもない。

相手は何を目的にこんな行動を起こしたのかは不明で、何とか真意を問いたいが、今の状況だと、話を聞くどころではない。


「陛下、あまり外籠で風に当たられていては体が冷えてしまいます」

「ビクセン、何を言っている。このような世界を見せられて、その世界を感じないわけにはいかない。分かるだろう。本当に私たちは空を飛んでいるのだ。この体を打ち付ける冷たい風は私の熱くなった心を鎮めるのにちょうどいい。なあ、ラライナ。お前もそう思わんか?」


そう言って、王様が話しかけるのは、アグウストの魔剣使いの1人で、王の側近を務める風のラライナ。

奇しくも、ジェシカの上司マーリィと同じ風の魔剣使いだ。

容姿はマロン色の髪を軽くウェーブさせたポニーテールで、身長は160ほど。

体形はスレンダーではあるが胸はでかくもなく、小さすぎるというわけでもない。

多少釣り目なのは、今まで戦場を歩いてきたからだろう。

これに付き従っていたビクセンさんも、大変だったろうな。


「ええ。私もそう思います陛下。空の上の風。私にとって、この経験は更にこの魔剣を使いこなすための運命と言っていいでしょう」

「そうだな。この凍てつく風を身に着け、更なる力を手に入れ、次なる戦に備えてほしい。恐らく、あの武器に対して一番有効な防御方法はお主とその魔剣だ」

「はっ。お任せください。次こそは、完全に敵の攻撃を防ぎきって見せましょう」


そう、実は、銃器や大砲相手に被害が思いのほか少なかったのは、このラライナのおかげだったりした。

風を吹かせて、弾道をそらしたのだ。

直感的に、敵の武器が飛び道具と感じて、風を吹かせたらしい。

その判断は正しい。

射撃で的を外す外的要因の一番は、風だ。

短距離であれば問題ないが、長距離射撃の場合は風で弾が流される。

だから、風の影響がでる500m以上の狙撃は成功しないと言われている。

しかし、世の中には化け物がいるもので、どっかの13とか、白い死神とか、もう信じられないレベルだ。

だってあいつら、拳銃や、マシンガン、つまり狙撃専用の銃でなくても1km以上の敵を撃って当てている。

本人たち曰く、狙って撃つ。

うん。人外に常識は通じないのである。

と、今は人外の話はどうでもいい。


いま大事なのは、アグウストがどのような行動に移るかだ。

今の話を聞く限り、ヒフィー神聖国に攻め込むようだ。

んー、何とかして時間を伸ばせないだろうか……。


「しかし、ラライナ、ビクセン。私は一度、ヒフィー神聖国に使者を立てようと思っている」


おや?

話の流れが変わってきたな?


「どうしてでしょうか?」

「そうですな。相手は宣戦を布告したのです。そして、我が軍にも、街にも、国民にも被害が出た。これは、許されざることです」

「確かにな。本当にヒフィー神聖国が戦争を仕掛けたのであれば、許されざることだ。だが、それが他国の工作だとしたらどうだ?」

「他国のですか?」

「うむ。今回の戦は不可解なところが多い。まず、敵がヒフィー神聖国だということだ。あの国とは今まで仲良くやってきた。特にヒフィー神聖女には我が国の重病、重傷者を助けてもらっている。その彼女がわざわざ、人死にが出るような争いを起こすとは思えぬ」

「確かに」


……ふむ、神聖女ねー。

胡散臭いことこの上ないが、今のところ、アグウストの面々からの信頼は厚いみたいだな。


「次に、敵勢が1000にも満たぬところだ。確かに、ヒフィー神聖国から現れ、ヒフィーと名乗った軍勢ではあるが、あまりにも少ない。確かに、驚異的な武器は持っていたが、結局、竜騎士アマンダ殿がいなくても最終的には撤退していたと私は見ている。あの数では、精々私たちがいた砦を占拠するので精一杯なはずだ。大国相手に用意したというには、お粗末すぎる」

「そう言われれば、そうですな……」


うん。

この王様は戦主義ではないみたいだ。

しっかり、今までの情報を集め、精査して判断を下そうとしている。

確かに、誰かが糸を引いて、この戦いを起こそうとしたという可能性はある。


「最後に、使者を立てることにより、本当にヒフィー神聖国が戦をしようとしているのがわかれば、こちらに大義名分ができる。周りの小国も呼びかけに答え、ヒフィー神聖国を攻めるだろう。そして、その場合。ヒフィー神聖女は囚われている可能性が高い。それを救い出し、ヒフィー神聖国を彼女に返すということもできる。どのみち、情報が少なすぎる。他国の陽動の可能性がある以上、下手に軍を動かすのは愚策だ。使者には危険だが、国全体を危険に晒すことはできん」


そう、王様の言う通り、どのみちヒフィーに赴かなければそれは分からないのだ。

こちらもその可能性を考慮しなかったわけではない。

しかし、すぐにアグウストが軍を向けるとなると、俺たちも確認作業をしている暇がなくなるのだ。

いまだ、この戦いは情報戦のさなかにある。

まあ、飛龍隊の高高度偵察の結果、防御陣が築かれていることから、向こうはやる気満々なので、ほぼ間違いなしだとは思う。


「ですが、陛下。その死の危険が高い使者の任を誰に任せるおつもりでしょうか?」

「ふむ。そこが問題だ。まず、想定するべきは、ヒフィーが敵に回っている場合、使者が殺害、捕虜にとられる可能性がある。そうなってもいいように、切り捨ててもいい人材でもあり、尚且つ、自力で脱出できそうな者が好ましいのだが……」


そんな便利な人材がいれば誰も苦労しないわ。

というか、そこまで個人技量があって、国との使者に立てられるほどの人物がすでに切り捨てるのには惜しいな。

というか、敵陣のど真ん中に放り出して、脱出できる人間なんていないと思うが。

どこかの大脱走ですか?


「……僭越ながら、その使者の任。私が引き受けたく思います」

「なっ、ラライナ様。それはなりません!!」


いきなりの宣言にビクセンさんが慌てて止めにかかる。

まあ、大事な戦力だしな。

でも、自力で脱出できる可能性があるとすれば、魔剣使いの彼女だけぐらいだとは思う。

王様も俺と同じ考えのようで、否定することはなく、じっとラライナの目を見返していた。


「……今、この場で決定はできん。が、王都の会議では候補の1人としては上げさせてもらう」

「陛下!?」

「はっ。感謝いたします」

「ビクセン、お主の気持ちも分かるが、彼女はハウゼンの娘でもあるのだ。血なのだよ。だが、結果がどうなるかわからぬが、必ずハウゼン、父にこの話はしてくるのだ。最後になるやもしれん」

「わかりました」


「さ、難しい話はおわりだ。今は、この空を共に楽しもうではないか」


そう言って、話を切り、再び空を楽しむ王様。

ふむ。

これは考えようによっては、俺たちも一気に敵の中枢に食い込めるチャンスかもしれないな。

情報を集めるのにもいいし、敵の確認もできるかもしれない。

まあ、危険が盛りだくさんだから、送り出すメンバーはじっくり考えないといけないだろうが。

最悪、俺たちのドッペルの制御を奪われる。

最高、敵のトップたちをその場で一網打尽にできる。

どのみち、敵の戦力は測れるから、俺たちにとっては有益だ。

使者の件には割り込む方がいいな。




と、言うわけで、ウィードの会議室に戻って、現在その会議中。


「うーん。その情報が得られるという点は、賛成。アグウストの使者たちは情報を集めて、それを持って帰らないといけないけど、私たちの場合はその場で情報の共有ができるから」

「ですね。それは私もセラリアに賛成ですが。かなり危険度が高いですし、誰を派遣するかという話になります」

「そうですね。更に、この話には、アマンダが必要不可欠でしょう。私たちが協力を申し出れば、竜騎士というネームと機動力を使わない手はないはずです」


セラリア、ラッツ、エリスは使者の件を聞いてウンウン考えている。

リスクとリターンが微妙なのだ。

相手が相手だけに。


「でもさ、ポープリとしては、アマンダを使者に立てていいの? 僕的に一番命の心配があると思うけど」

「だね。ワイちゃんは元々野生だから、DPでの制御には自分が頷かないとだめだからその心配はないし、万が一は1人でも離脱できる。でも、アマンダは……」

「そこまで力がない。へっぽこ」

「カヤ、そこはもっとオブラートに包もうよ」


リエルとトーリ、カヤはこの使者に参加しなければならないであろう、アマンダの心配をしている。

ドッペルの制御が奪われたら、アマンダとエオイドだけになるもんな。

その場合、逃げずに大人しく捕まるのが良いと思うけど。

……見せしめ、力の誇示に殺される可能性もそれなりに高いけどな。


「……私としては、アマンダとエオイドには危険を冒してほしくない」


そりゃそうだろう。


「……でも、この話を断って。話が片付くのか?ということに戻る」


そう。この問題は、先送りにしたところで、解決になるのかというところが大事なのだ。


「……それは無理じゃろうな。アマンダがかかわらない場合、妾たちが使者にくっ付いて行く理由にはならんし。その使者たちが殺されて終わりじゃろう」

「そうね。モメント、あ、食堂で話を聞いた傭兵の名前なんだけど、彼がいうには、ほぼヒフィー神聖国がやる気満々みたいだし。その使者たちが、停戦を成功させるっていうのは都合がよすぎるわね」

「そして、結局、戦線の拡大。それによって最終的にアマンダが竜騎士として駆り出される可能性は高いですね」


デリーユ、ミリー、ルルアも、軒並み、これより悪くなると判断している。

俺もこの意見には賛成。

戦闘が始まってしまえば、潤うのはヒフィー神聖国だ。

後々手を打つ方が難しい。


「で、この新大陸出身の3人はどう思う?」


俺は、ジェシカたちに話を振ってみる。

ジェシカ以外、クリーナ、サマンサは日が浅いから、会議は聞くだけになっているが、案外良い案が出るかもしれない。


「……私としては、危険を冒してでも、今回の使者の件に同行するべきだと思います」

「ん。ジェシカに賛成」

「私もですわ」

「理由を聞いてもいいか?」

「はい。まず、今回の目的はクリーナが推測した通りDPを回収するためです。それを遅らせるのは当然だと思います」

「ん。そして、使者に紛れることで、ヒフィーの目的を私たちが直接探れるところが大きい。今のところ分かっているのは、ヒフィー神聖国が自国に敵を引き込んでDPを回収することと予想しているだけであって、あくまでも推測でしかない。たとえ、DP回収がこの戦争の目的であっても、その先を知らないと戦争を防いだとしても、結局は後手に回る」

「私はお恥ずかしながら、クリーナさんほど思慮したわけではないのですが。私たちが行けば情報を集められることと、そして何より、血が流れるのを最小限にできることです。私たちならば、多少の荒事は問題ないでしょう。だって、これは私たち身内の問題である可能性が高いのですから。私たちが自らどうにかしないといけないと思うのです」


3人の話はもっともだ。

特に、サマンサの言う通り、前任者であるダンジョンマスターが出てきたのだから、そう言う意味では、当事者はアグウストではなく俺と思うべきなんだよな。

……まあ、ほぼ押し付けられた当事者だけどな。


「俺も、その、使者に付いて行くべきだと思います。異世界人。その人なら俺やユキさんなら話が通じる可能性もあるし」


タイキ君も賛成か。

まあ、異世界人というイレギュラーも怖いんだよな。

だから、俺やタイキ君が直接会って話したい。

上手くいけば引き込める可能性がある。


「そうですね。危険を冒す利点はあるように思えます」

「うーん。難しいことは分からないけど、怪我をする人が増えないようにするのは悪いことじゃないと思うな」

「大丈夫なのです。私とナールジアさんが頑張って沢山、たーくさん、防具やお守りを作るのです」


シェーラも賛成か。

アスリンも自分なりに答えをだし、フィーリアはやる気満々だ。


「ふふっ、そうね。幸い、皆、妊娠してはいないのだし、ちょっとのドッペルの怪我ぐらいは大丈夫でしょう。ユキの懸念はそこだものね」


へいへい。

そうですよ。

俺の身一つなら、すぐに単身潜入しているけど、嫁さんが大事なんですよ。


「リーアとキルエはどうだ? どう考えても、俺がその使者の1人としていくことになると思うが……」

「正直、護衛として、勇者として、何よりユキさんの奥さんとしては大反対です」

「ですね。私も旦那様が危険なところに赴くのは、メイドとして、妻として反対です」


2人は反対か。

まあ、しかた……。


「「でも」」


最後まで思考し終える前に、彼女たちの言葉がそれを遮る。


「私が絶対守りますから大丈夫です」

「旦那様が考え抜いた判断に付き従うのが良き妻というもの。どうぞ、私たちを心配することなく、目的を達成してください。私も、今回の判断が間違っているとは思いません。帰るべき場所は必ずお守りいたします」

「はいはい。旦那様。私もこの家は守りますから、どうかやっちゃってください。先輩と一緒にこの場所はまもりますよ!! 必要とあれば、私もサマンサお嬢様と共に使者に赴きます!! っていうか私を忘れていませんか?」


結局、リーアも、キルエも、サーサリも賛成か。

こりゃ、使者に紛れ込むこと決定か。

俺が内心そう決めていると、ナールジアさんが慌てて会議室に入ってきた。


「あ、よかったです。まだ会議をしていたんですね。スティーブたちが捕虜にした魔術師なんですけど、ユキさんとラビリスの言う通り、あの人たちもやっぱりアンデッドみたいです。原理は分かりませんが、よほど高等な魔術で蘇生……ではないですね。死体に術式をかけて使っているようです。まあ、素材というのは悪いかもしれませんが、そうそう良い遺体、つまり魔術に長けている素体がないとあのようなリッチは作れないでしょうけど。例えば、ポープリさんとか、聖剣使いさんたちとか、あとは辛うじて、魔剣使いですかね? あの新大陸の基準でいうならば……」


その言葉で決定的になった。

使者の可能性が高い魔剣使いラライナ。

何かあれば、彼女が真っ先に狙われる可能性が高い。

罠を張れば色々掴めるかもしれない。

逆に使者に付き合わないのであれば、敵の戦力が増える可能性があるわけだ。


さて、メンバーは誰にするべきか。

最大戦力か、それとも最少戦力で臨むべきか?





さて、争うだけでがないのが、国の運営。

しかし、敵のど真ん中。

さあ、どうなることやら。

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