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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 学府編

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第288堀:注意すべきこと

注意すべきこと




Side:ユキ




今日ものんびり空の旅がお仕事で楽です。

昨日は昨日で、おっちゃんのから揚げのルーツも知れたし、いい意味でイベントが多かった。

あー、今日、週一の噂集めに行っているキルエの報告に、変な噂がないことを祈ろう。

殆ど俺たちが出るまでもないのだが、たまーに、デリーユが特務捜査官として強制捜査をすることがあったりする。

大体、裏で悪いことしているから、乗り込んだデリーユに全員ボコボコにされて、トーリたち警察のトップと、庁舎からの情報集めで、嫁さんたちが大忙しになる。

無論、その手のイベントが起きれば俺も雑務を引き受ける事になり、家族の団欒時間が減るので非常にお断りしたい。

しかし、そういうわけにはいかないので、ウィードの住人のためにお仕事をする。

勿論、悪さをしているバカ共に、特に家族団欒を邪魔された嫁さんたちは殺気を浴びせ続けるので、自白にはそう時間がかからない。


「そう言えば、ビクセンさん。ワイバーンはどこで降りたらいいのですか? 流石に王都のど真ん中の王城まで行くのは不味いと思いますが……」


のんびりみかんを剥きながら、ぼーっとしていたが、着陸位置を聞いていなかったので、聞いてみる。

下手すると、これだけで大きなトラブルになりかねないからな。

ワイバーンだ、退治しろー。などと、戦闘になったらシャレにならん。

それ以前に王都の住人がパニックになると思うけどな。


「ああ、そう言えば伝えておりませんでしたな。すみません。どうもまだ空の旅に興奮しているようだ」

「いえ。初めての経験ですから仕方ないですよ。で、どちらに降りたらよいのですか?」


本当に、純真なおっさんだな。

俺が穢れているようでつらい。


「一応、王都の住人にはお触れを出しておりますが、識字率の問題もありますし、王城まで行けばパニックになると上は判断しております。ですから、王都の城壁外周にある兵舎の方へ向かっていただきたい。そこは軍事演習場所にも使われますので、広さも十分、いるのも兵士ですから、連絡は伝わっていますし、問題はないでしょう」


そこら辺の判断は妥当だな。

……さて、横でのんびりフィーリアを膝にのせている竜騎士さんはちゃんと聞いているかな?


「アマンダさん。聞いていましたか?」

「ふぁい?」


訂正、のんびりフィーリアを膝にのせて、せっせとみかんを剥いて口に放り込んでいる竜騎士様だった。


「はぁ、アマンダ。ユキさんがわざわざ、あなたが聞くべき着陸地点を聞いてくれていたのよ。その話聞いていたかしら? それとも王城まで飛んで行って、王都の住人たちにパニックを起こさせたいのかしら?」

「ご、ごめんなさいっ!? えーと、城門まで飛ぶんですよね? ね、エオイド?」

「……アマンダ。流石にそれは駄目だと思うよ。兵舎の方へ行くんだよ。近くになったらビクセンさんが教えてくれるって」

「あ、うん。聞いていましたよ!! 本当ですよ?」


こりゃ、エオイドがしっかりしている分の弊害か?

いつも、エオイドに起こしてもらっていたらしいし。

とりあえず、アマンダはエリスに耳を引っ張られて寒い外で正座させられてお説教されているし、こっちはエオイドと話すか。


「なあ、エオイド君や」

「す、すみません!! アマンダにはちゃんと言い聞かせておきますから!!」

「そこはいいさ。今、エリスから説教されているし。エオイド君。一応、アマンダさんの行動1つで戦争勃発しかねないから、夫であるエオイド君が今みたいにフォローに回るといい。どうせ人間1人で処理できる事には限界があるからな。まあ、できるに越したことはないが」

「そうですな。アマンダ様1人なら心配ですが、夫であるエオイド殿がそうやって常に支えてあげればよいのです。ユキ殿の言うように、自分でできるに越したことはありませんが、竜騎士という立場上、そういう細かいことは、ほかの誰かが引き受けるべきなのです。無論、ユキ殿に聞かれるまで忘れていた私の落ち度もあります」

「とまあ、意識を今みたいに持っているなら大丈夫だろう。何か聞きたいことがあれば聞くといいさ」

「はい。ありがとうございます。で、さっそくですが、ビクセンさんにお聞きしたいことがあるのですが……」

「なんでしょうか? 答えられることでしたら構いませんぞ」

「あの、今回の王都訪問ですが、国王陛下に謁見するようなことになるのでしょうか? その、あまり礼儀を……」


エオイド君はそう言って、視線を説教されているアマンダさんに向ける。

ああ、心配だろうな。

あの子、気に入らないことがあると、公爵であろうが噛みつくからな。

それでサマンサとはいい友達ではあったみたいだが、それがいつも通じるとはかぎらない。


「礼儀程度のことでとやかく言う陛下ではありませんよ。まあ、自国の兵士なら顔をしかめるでしょうが、学生であり庶子の出、そして伝説の竜騎士様だ。そのようなことで、機嫌を損ねる器の方が問題だと言えるでしょう」

「そ、そうですか。よかった……」

「エオイド君。一安心の所悪いけどな、帰ったらちゃんと礼儀を勉強することになると思うぞ。一応、学府の顔だからな」

「望むところです。そうでもしないと、俺は胃が潰れそうです」


……大変だな。


「と、お話しが盛りあがっているところ申し訳ないのですが、その陛下ですが、今回の謁見ではお会いできません。ちょうど地方の視察に行っているところでして。間に合わないので、王女殿下が代わりを務められることになります」

「お姫様が? 王妃や王子でなく?」

「はい。王妃様は、その、色々あって陛下の代わりを務めるのは問題がありまして、王子はまだ騎士学校に通っている年齢でして、ちゃんと騎士学校、そして魔術学府を卒業している姫様が一番妥当だという話になりまして……」


ああ、王妃様がでると、周りが五月蠅いわけだ。政治はいつも大変ですね。

で、お姫様さえいなければ、王子様がでるのだろうが、このお姫様聞くからに厄介そうだな。


「え、お姫様が学府の卒業生ですか?」


そう、エオイドが聞き返した部分が大問題だ。

恐らく、学府の卒業生ということで、ある意味、こちらに対していい手札を切ってきたということだ。

先輩後輩の概念はあるみたいだし、下手すると変な条約結ばれそうだな。

クリーナの師匠が宮廷魔術師顧問だったのが、変なところで災いしたな。

王都に直接繋ぎができるのはありがたいが、厄介な相手が出てきたと思うべきだな。

しかし、何でこの情報が来てなかったのか気になるな。ポープリに連絡を取ってみるか。


「ええ、そうですよ。確か、シングルナンバーまで上り詰めたとか……。おや、ユキ殿どうされましたかな?」

「ちょっと、風に当たってきます」

「そうですか、風邪をひかれぬようほどほどに」

「あ、はい。俺がちゃんと話を聞いていますから。ゆっくりしてきてください」


そんな会話をして、俺は速足で説教をしているエリスの横をすり抜けて、風の音が少ない場所へと移動する。

元シングルナンバーってどういうこと!?

いや、敵じゃないけど、厄介ごとになりそうな予感ビンビンですよ!!


「もしもし、ポープリ聞こえるか」


俺は景色を眺めるふりをして、皆に背を向けつつ、口では連絡をとる。


『んー、なんだい? いまケーキ食べるので忙しんだけど』

『あ、ユキさん。このチーズケーキも美味しいですね』


のほほんとした声が聞こえる。

……完全に餌付けされているな。

やっすい忠誠心と見るべきか、エリスの手腕を褒めるべきか……。

と、そんなことより、お姫様の話を聞かないとな。


「いま、話しても大丈夫そうだな」

『うん。大丈夫だよ。ちゃんと扉はロックしたから』

「なら、ちょっと聞きたいことがある。道中案内役にビクセンさんが来てくれたのは昨日話したよな?」

『ああ、聞いたよ。アグウスト国の魔剣使いの片腕って言われるほどの人が近衛にね。まあ、年齢的に最前線じゃなくて後方に移したんだろうけど。っと、ビクセンが仕えていた魔剣使いの情報かい? でも、彼女はビクセンよりも若くて、未だ国境の警備のはずだけど……』

「ああ、いや。魔剣使いの情報はそこまで欲しくない。どうにでも料理できるから、というか、別にアグウストと戦争するわけでもねーから、変に調べてると要らぬ疑いがかかる」

『そうだね。知りすぎていると内偵だと思われるし、要らない知識は下手に持たない方がいいか。まあ、魔剣使いのことなんて、お国で聞けば自慢話としてあっさり聞けるだろうから。で、魔剣使いの話じゃないとするとなんだい?』

「ビクセンさんが言うには、王様が地方に視察へ出ていて、代わりにお姫様が俺たちと謁見することになっているんだ」

『えっ? お姫様ってイニスが?』

「イニスっていうのか。元シングルナンバーとか聞いたが、何でこのあたりの情報が来てなかったのか聞きたい」

『うーん。こっちとしては必要ないと思ったんだよ。シングルナンバーとはいえ、在学中、クリーナより低い5位だったしね。まあ、魔術はできる方だけど、ユキ殿たちの足元にも及ばないし、謁見だからね。いきなりアマンダや各国の代表であるユキ殿の傭兵団に手をだすようなことはないと思うんだけど。というか、一々卒業生を報告してたら、各国に最低100人はいるからねー。死ぬよ? こっちとしても卒業生のことはほぼノータッチだし名簿を渡すぐらいしかできないよ』

「ああ、そりゃそうか……」


学府は各国の魔術の才能を持つ者を育てて輩出している。

その有用な利害関係で、学府も資金や物資援助をしてもらえるし、各国も魔剣使いには及ばないものの、相応の戦力をある程度安定して補給できる。

魔術が使える者が少ないとはいえ、各国から集めればそれなりの数がいる。

それを毎年の如く輩出しているのだから、一々卒業生の足跡を追うことや、情報を細かく集めていることはない。時間がかかるし、ほぼ無意味だからな。

ポープリたちにとっては、シングルナンバーですら、毎年出る成績上位者に過ぎないのだ。

貴族のお偉いさんの出は当たり前だし、サマンサの親父さんも教え子だって言ってたから、下手すると、亜人の国を除いた5か国の内に、王様が教え子ですって言っても不思議じゃないな。


『まあ、イニスのことは運よく覚えているよ。お姫様が来るのは珍しいからね。当初はいろいろ大変だったんだよ。護衛の騎士は実力主義の制度に文句はいうわ、決闘相手の生徒を威嚇するわで、そりゃお姫様だから、護衛はそこら辺を心配しないといけないんだろうけど、おかげでこっちが出張って、気に入らないなら学府から出て行って構わないとか、色々揉めたんだよ……』

「……その感じからすると。お姫様は問題児か?」

『いやー全然。どちらかというと、バトル主義。セラリア殿やデリーユ殿のようなタイプだね。だからこそ、護衛は胃が痛かったのだろうさ。昔から兵士と混ざって剣を振っていて、擦り傷、打ち身は当たり前、2年に1回は骨折してたって話だね。まあ、このご時世だ。いつ大規模な戦争が起こっても不思議じゃないし、国境の小競り合いなんて日常茶飯事だ。アグウストの王様がイニス入学時に一緒に来ていた時に容赦はしませんよ?と言ったら快諾はしたんだよ。まあ、いくら容認、快諾してるとはいえ、一緒にいた護衛の騎士は胃が持たなかっただろうね』

「それは……ご愁傷さまだな。で、セラリアやデリーユに似ているのは分かったけど、政治に関してはどうなんだ?」

『そこも問題ないと思うよ。バトルは好きだけど、指揮官としてもちゃんと優秀だよ。上に立つことをしっかり理解しているから、変なことはしないと思う。万が一、馬鹿なことすれば私の名前を出して、ボコボコにしていいから』

「ボコボコって……」

『真面目にそう言うタイプだから、戦場でもないのに絡め手を使ってくることはないってことだよ。問題があるとすればクリーナの師匠の方だよ』

「クリーナの師匠が?」

『うん。一応クリーナと結婚しましたって報告はするんだろう? あの子は卒業生の中でも随一の才能の持ち主でね、実力自体は私には及ばないけど、変に鋭い所があるんだ。言葉は選んだ方がいい。取り込むにしても宮廷魔術師顧問だからね。人相手の交渉も達者さ。まあ、既に爺さんなんだけど』


……変に鋭いか。

ラビリスみたいな鑑定系スキル持ちの可能性を考えないといけないな。

……ひっかけでもしてみるか。


「……ん。同意。師匠は妙に鋭いときがある」


俺とポープリが話をしていると、後ろからクリーナがやってくる。


「元々私は孤児。1人野垂れ死にそうなところを師匠に拾ってもらった。そして、魔術の才能があるから勉強してみる気はないかと言われて、今に至る」

『なるほどねぇ。あの子が女に興味を持つとは思えなかったからな、クリーナを孫として紹介してきたときは驚いたけど、そう言うことか』

「ん。でも、師匠は間違いなく私にとっては家族」

『……そうか。それならいいよ。というか、入学理由が友達作ってこいだったからね。なるほど。あの子、クリーナに勉強ばかり教えて、友達を作ることや世間の一般常識を教えるの忘れていやがったな。まあ、男手1人だから仕方ないか』

「……恥ずかしい限り。今になれば、友達や世間との繋がりが大事なのはわかる。でも、私にとっては勉強することが師匠への恩返しだと思っていたし、勉強自体が面白い世界だとも思っていたから、それに没頭していた」

『ごめん。クリーナ。そうと分かっていれば無理やり引っ張り出したんだが、友達云々は冗談だと思っていたよ。実際めきめきと実力を伸ばしていったからね……』

「学長が謝ることはない。私も友達なんて不要なものだと思っていた。だけど、毎日学府で過ごすうちに、自分の周りに誰もいないことに気が付いた。そんな時、エオイドと仲良くなろうとして、ユキと結婚できた。大満足」

『なはは。結果的にはいい男と、沢山の友達を手に入れたから問題ないか』

「ん。これは運命」


そう言ってクリーナは俺の腕に抱き着いてくる。

胸はペタンコだが、別に胸の大きい小さいで差別する趣味もないし、慕ってくれるのは嬉しい。

嬉しいね……。まだ無表情に近いが、会った当初に比べて、しっかり変化が分かるようになってきた。

最初あった時に脱ぎたてパンツ渡されたときは、何考えているかわからなくてパニック起こしそうでした。

危うく、俺が変態の烙印を押されそうになったからな。リーアがしっかり話して誤解を解いて、結婚したから……いいのか?

と、そこはどうでもいい。クリーナが来たなら師匠の関連を相談してみよう。


「クリーナ。その師匠と一応結婚報告とある程度の繋ぎが欲しいんだが、それで師匠の勘が鋭いと面倒なことになる可能性がある。そこら辺はどうすればいいと思う?」

「ん。それなら私に任せて。ユキたちのことは簡単に口外できることではないのは重々承知している。まず私が話して、師匠をさっさと指定保護下に入れる。研究熱心な人だから、適当にウィードのエンチャントの杖を持ってきて、その内容を教えるために指定保護が必要と言えば簡単に頷くと思う」

「……研究バカってところか?」

『だね。勘が鋭くても、引き込んでしまえばこっちのモノだし、戦力とか技術力を知って反旗を翻そうなどとは思わないよ』


なるほどな。

まずは、クリーナに交渉を任せつつ、合いの手を入れていく感じで行くか。

最初に上がった、お姫様は特に問題もないと。

面倒な場合は実力行使OKときたもんだ。

……なんか、それとなく嫌な予感がするけど、問題なく終わってほしいな。


「お、見えましたぞ!! あれがアグウストが誇る王都です!!」


ビクセンさんがそう声を上げて、俺とは逆方向のワイちゃんの顔の方へ出ていく。

まだ小さいが、その先に映るのは、中央を城に添えた、円形に広がる大きな街だった。

パッと見た感じ、ジルバ、エナーリアとも劣らない。


「アマンダ様、王都の右手前の方に軍の施設があります。あちらへお願いいたします!!」

「わかりました。ワイちゃんお願い」


ギャース。


ワイちゃんが返事の声を上げて、少し進路が右にずれる。

そこには、塀に囲われた施設があり、グラウンドと思しき場所では、豆粒のようにしか見えないが、人が均等に整列しているから、何かの訓練中だろう。

もうじきこちらに気が付いて、色々準備するんだろうな。


「さて、空の旅は終わりだな」

「ん。楽しかった」


クリーナがそう言ってにっこり笑うのだから、それだけで空の旅の価値はあっただろう。

さてさて、のんびりするのは終わって窮屈なお仕事と行きますかね。





これで、のんびり旅は終わり。

あとはアグウストで滞りなく終わってくれることを祈ろう。

え、終わるよたぶん!!



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