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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 学府編

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落とし穴47堀:メイド妻の朝

メイド妻の朝




Side:キルエ




気持ちいい。

私はそんなことを思っていました。

何だろう、これは何が気持ちいのだろう?

よく、分からない。

思考がまとまらない。

今、私はどこに居るのでしょうか?

そんな単純なことですら曖昧です。

でも、今いる場所が、とても心地よく、気持ちよく、不快感など全くないことだけは分かります。

きっと、この場所は、私がいつの日か求めた安住の地なのかもしれません。


ふにっ。


私がそんなことを考えていると、そんな体を触られる感触が伝わってきます。


ふにっ、ふにっ。


体を触られているはずですが、嫌悪感は全くありません。

寧ろ、心地いいです。


「んっ」


その感触で徐々に自分のことを思い出します。

私はキルエ。

そう、キルエ。

ガルツ国のシェーラ王女様に仕える、護衛も兼ねたメイド。

そして今は……。


「……ユキ様の妻でもあります」


そう答えが出て淡い夢から目覚める。

目を開けた瞬間に映るのは、愛しい旦那様。

そして優しく胸に当てられる手。

世界を救うために使わされたユキ様。

メイドという身分である私にも分け隔てなく接してくださり、恐れ多いことにも側室と宣言してもらっております。

既に、子供も1人儲けており、その子供にも旦那様は惜しみない愛情を向けてくださいます。

と、旦那様に見惚れているわけにはいきません。

うかうかしていると、メイドの仕事を取られてしまうのです。

旦那様はとても好ましい、素晴らしいお方ですが、少々人の上に立つべき立場というモノを苦手としており、放っておくと、私をほったらかしに、家の雑務などを始めてしまいます。

なので、私は常に旦那様より早く起きなくては、仕事がなくなってしまうのです。

昨日は、私がユキ様と一夜を過ごす日だったので、思い切り奉仕させていただいて、限界まで体力を使い切らせ、朝は私だけが起きるという作戦に出たのですが、どうやら功を奏したようです。

ということで、すぐにでも着替えて、朝食の準備などを始めるべきですが、その前に、私は布団の中にもぐりこみます。

そして、昨日あれだけ奉仕したのに、今は元気な旦那様を確認します。

私たち妻の間では、朝の奉仕は当然となっています。

普段から無理ばかりし、色欲もそれほどありません。

ですので、こういったところで、ちゃんと私たちがフォローするのです。

無論、嫌々ではありません。

歓んで奉仕させていただいております。

さ、早くしないと旦那様が起きてしまいます。

今日は……気分的にどっちもですね。



「さ、手早く準備をしてしまいましょう」


私は旦那様への朝の奉仕を終えて、着替え、既に調理室、厨房にいます。

朝が忙しいのはどこも同じで、この最新の設備を持った旅館ですら変わりません。

昨日の内に、タイマーセットしておいた炊飯器は既に起動して、ご飯を炊いています。

出来上がりに合わせるように、おかずを作っていかなくてはいけません。

ご飯は炊きたてが美味しいというのは、既にウィードでは常識となっています。

その一番美味しい状態で提供できなくて何がメイドか。

と、私の中のメイド魂が燃え上がります。

いくら旦那様が優しいとはいえ、それに甘えるような、なんちゃってバカメイドとは違うのです。

作るおかずですが、私たちは結構大家族なので、冷蔵庫の中身を見てこれを作ろうなどという思い付きだと材料が足りなくなる場合があります。

なので、基本的に、一週間の献立表に合わせて作ります。

夕食などは、材料の買い出しも可能なので、変更は多々あるのですが、朝は基本的に献立表にのっとって作ります。

本日はご飯を炊いていますので、お味噌汁、卵焼き、焼き鮭の切り身となっています。

一般的な、日本の朝ごはんですね。

一応、ウィードというか、この大陸はパンが主食なので、パンが朝食の時もあります。

旦那様も日本にいたときは、パンを軽く焼いて食べてご出勤という日もあったそうです。

確かに、日本やウィードのように、既に焼成したパンを、直ぐに仕上げて食せるように保存しておける状態で売っているのであれば、それの方が簡単で効率も良いでしょう。

しかし、私というメイドがいる今、そのような手抜き朝食をとらせるわけにはまいりません!!

万が一、そのような不摂生な食事で旦那様が倒れてしまわれれば、私は一生を悔やんで生きるでしょう。

まあ、万が一なのですが、実際、旦那様は自分のことにはやる気がなく、逆に周りのためならば労を惜しみません。食事などは特にですね。

毎日、旦那様が調理をしては奥様たちに料理を振る舞うのです。

そう言う意味でも、私が少しでもお手伝いをし、負担を少しでも減らすのです。

さて、そんなことを考えつつ、材料を取り出し終わり、本格的に調理を始めましょう。


「おはようございます。キルエ先輩」


後ろから声がかかります。

振り返ると、そこにはサマンサ様のお付きのメイド、サーサリが立っていました。


「おはようございます。サーサリ。お手伝い願えますか?」

「はい。大丈夫です。お嬢様の髪は整え終わりました」


彼女はこの旅館に住んでいる者たちの中で、特殊な立場と言えるでしょう。

唯一、旦那様の寵愛を賜っていないのですから。

いえ、好き嫌いというより、彼女自身、旦那様が好みのタイプではないというのです。

普通であれば、それを口にすれば処刑されてもおかしくないのですが、その言葉に侮蔑も悪意も存在していないので、皆は納得しております。

私自身は、主に奉仕すべきだと思うのですが、旦那様が特に何も言わず、彼女自身、指定保護、及び忠誠心はしっかり感じますので、特に何か言うことはありません。

無論、仕事も私と同様にできる良いメイドです。

ある意味、度胸があると言っていいでしょう。

で、このように毎日、私や旦那様の料理の手伝いをするので正直ありがたいです。

家事も子守りも人手が増えて楽になりました。

ですが、不思議に思うことが1つだけあります。

それは……。


「サマンサ様の御髪をもう整えられたのですか?」

「はい。慣れですよ。慣れ」


私と、サーサリは料理をしながら、そんな話をします。

基本的に私とサーサリはほぼ同じ時間に起きて、メイドとしての行動を開始しますが、サーサリが遅れてきたことで分かるように、サーサリは今もサマンサ様のお付きとしての役割を果たしています。

いえ、私もシェーラ様のお世話は致しておりますが、最近は旦那様に感化されてか、身の回りのことは自分でてきぱきとこなしてしまうようになりました。

きっと、アスリン様やフィーリア様の姉としての自覚が出てきているのでしょう。

あのお2人とはシェーラ様は時間が許す限り一緒にいるのです。

と、そこはいいのです。

問題は、サマンサ様のあの御髪、満遍なく縦ロールをしており、旦那様曰く全方位ドリルと言っておられました。

ドリルの意味が分かる程度に日本の知識はあるので、最初は噴き出してしまいました。

しかし、あの縦ロールを毎朝手早く整えるのです。サーサリというメイドは。


「確か、魔術の応用と言っていましたね?」

「はい。寝ぼけているお嬢様の御髪を濡らして、その後、暖かい風で髪を縦ロールの状態で乾かすのです」

「……ドライヤーですね」

「ええ、そうですね。でも、温風を手軽に出せるってありがたいですよね。普通にサマンサ様の御髪を整えようとすると、髪香油で髪が痛みますし、あの綺麗な髪が痛むのは、私が嫌ですので」


そう、こっちの大陸も、あのような奇抜な髪形を保つためには、髪香油を以って固めるしかない。

しかし、ウィードのようにお風呂などや、髪を専門にケアするシャンプーなどと言う文化はないので、髪香油を付けたまま寝て、埃などが付きやすいベタベタのままだったりして、非常に髪が痛みます。

あの魔術が衰退している新大陸で、髪を整えるためだけに魔術を使う。

それは、サーサリにとってサマンサ様がどれだけ大事かを物語っているようです。


「よき、主なのですね」

「はい。今の私があるのは、サマンサ様のおかげなのです。ですので、サマンサ様を幸せにしてくれるユキ様の愛人になろうとは思いません。私の分もサマンサ様を愛してほしいのです。あ、以前言った通り、ユキ様はいい男ですが、私のタイプではないので、無理しているとかそんなのはありませんよ?」

「わかっていますよ。その瞳を見て信じないわけありません」


彼女は言葉こそ砕けているが、その中身は、主であるサマンサ様の幸せが絶対最優先と物語っていた。


「まあ、サマンサ様とユキ様がマンネリにでもなったら、この身を捧げることに躊躇いはありませんが、そう言う心配もなさそうですからね。奥様方の結束はとても強固で、仲が良いですし」

「ですね」


旦那様との夜のことは妻全員で話をしていて、どうやって旦那様を搾りと…、いえ悦ばせるか、既にサマンサ様も交えて日々会議です。研鑽を忘れては、旦那様の妻失格でしょう。


「サマンサ様はお優しいですから、私の幸せも願ってくれています。ということで宣言通り、現在、ウィードでは余裕があるので、男探しですね」

「いい人は見つかりましたか?」

「なはは、それは難しいですね。正直、ダメな男がいいとは言いつつ、ユキ様が輝きすぎて……」

「ああ、それはわかります。旦那様を基準にすると、普通にいい男でも、雑草に見えますから」

「……それは色々フィルターかかっていると思いますけど、まあ概ね同意ですね」


不思議ですね?

旦那様を基準にすれば、ほかのいい男など、ただの雑草にしか見えませんが?

神の使いとおごらず、学があるだけでなく使う知略を持ち、政に通じ、戦場に立てば神算鬼謀で敵を翻弄し、古今無双の力で真っ向からも打ち負けぬ強さ。

しかして、学ぶことを忘れぬ勤勉さ。故郷の研鑽と願いの形である知識を惜しみなく使う度量の広さ。

そして、人々を愛し、家族を愛する。

まさに、完璧!!


「うおっ、なんか悪寒が走ったぞ!? 無茶ぶりに無茶ぶりを重ねられて崇拝された気がする!?」

「何言っているのよ? ほら、もうキルエとサーサリが準備しているわよ?」

「おっと、そうだった。ごめん遅くなった」

「お手伝いにきましたー!!」

「きたのです!!」

「キルエ、サーサリさんお手伝いにきました」


と、噂をすれば、愛しい旦那様と、シェーラ様たちが来ていました。

いつものように、朝食を作るのを手伝いに来たのでしょうが……。


「おっと、残念でした。申し訳ありません。朝食は既に、私とキルエ先輩で作ってしまいました」

「「ええー」」


アスリン様とフィーリア様が不満の声をあげます。

いつ見てもお2人は可愛らしいですね。

シェーラ様とラビリス様も2人を見て微笑んでおられます。


「ですが、これから朝食を宴会場へ運ばなくてはいけません。大量にあるので、よければお手伝い願えますか? アスリン様、フィーリア様?」

「「手伝います!!」」

「はい。ありがとうございます。ではこちらへ……」


サーサリも最初は旦那様やシェーラ様たちが一緒に朝食を作っているのに、驚いていましたが、最近ではすっかり慣れたようです。

今のようにアスリン様やフィーリア様と仲睦まじくして、朝食を一緒に作ったりもします。


「あちゃー、ごめんな。朝食全部任せちゃったな」

「珍しいわよね。私たちがユキを起こしに行ったんだから」

「いえいえ。旦那様もお疲れがたまっていたのです。というか、よければせめて朝食ぐらいは私たちにお任せください」


疲れさせたのは私です。とは言えない。

結局3回もしたのですから。

だって、仕方ないんです。旦那様の表情が可愛いのですから!!


「そうですよ。ユキ様は私たちに任せて、どっしりと構えていてください」


サーサリも話に乗ってそう言うが、旦那様はやはり真面目ですので……。


「忙しい時や疲れている時に任せるのはいいけどさ、これも日課だしな。2人には悪いけど、できうる限り手伝わせてもらうよ。2人と仲良く仕事できるのはここぐらいだからな」

「……そう、言われては、否はありません」

「はぁ、ユキ様。あまりそういうことを言うと、食われますよ? 朝っぱらからしたいのですか?」


サーサリもそう言うが、言われて悪い気はしていないのか、笑顔でそう答えます。


「お兄ちゃんするの?」

「兄様するのですか?」

「あら、するの?」

「その、恥ずかしいですけど。ユキさんが望むのであれば……」


そして、反応するシェーラ様たち。


「いや、しないから。どう考えても遅いと思ったほかの嫁さんたちが来て大事になるから」

「あら、今日1日休みになるだけだと思うわよ?」

「俺が大事になるんだよ。ほら、朝食を運ぶぞ。もう宴会場でお茶を飲んで待ってる嫁さんたちもいるだろうし」


そう言って、旦那様は一番重い、味噌汁の鍋を持っていきます。

それに続いて、シェーラ様たちがおかずを運んでいきます。

私たちは、炊き立てのご飯が詰まっている炊飯器を運んでいきます。


「あ、今日は鮭があるのね。やったー」

「こら。ミリー、喜んでないで手伝いなさい」

「わかってるわよ、エリス。はい、アスリンそっちのお盆持つわ」

「ありがとう。ミリーお姉ちゃん」


宴会場に着くと、のんびりお茶を飲んでいた面々がすぐに配膳の手伝いをしてくれます。

その間に、宴会場に来ていないほかの奥様たちが集まってきます。


「うあー。眠いのじゃ」

「相変わらずですね。もう少し早く寝てはどうですかデリーユ」

「そうはいってもな。ジェシカもあのシリーズのDVDを見れば……」

「その話はあとで聞きますから、私の胸に顔を埋めないでください」

「いい枕なのじゃ。ルルアに続いて2番目もなかなかいい……ぐー」

「胸を枕に寝ないでください!! ユキと子供たち専用なので!!」


そうやって、引きはがそうとしますが、そこは魔王デリーユ様。

力に物を言わせ、ジェシカ様の胸から離れようとはしません。


「今日も、朝から騒がしいわね。ね、サクラ、シャエル」

「「う?」」

「おはようございます。ほら、パパとママたちですよ。スミレちゃん、エリアちゃん」

「「あうー」」

「もうすぐ準備はできそうですね。じゃ、シャンス、ユーユはご飯にしましょうか。ほら、デリーユ、遊んでないでおっぱいあげてください」

「あう!!」

「あうーー!!」


そう言って、最後に入ってくるのは、私たちの宝ともいうべき子供たちと母親たち。

私の実子であるシャエルもセラリア様に抱えられています。

朝は、私は朝食の準備などがあるので、基本的に、ほかの奥様たちに子供たちのお世話を任せています。

仕事が終わっていれば、すぐにシャエルを抱きかかえて、お乳をあげるのですが、そうもいきません。

今は、ちゃんと配膳を済ませなければ。


「おお、可愛いユーユ。ママのおっぱいを沢山飲むと良いぞ」

「まったく。こういう時はしっかり母親ですね」

「まあまあ、私もジェシカのおっぱい好きだし」

「リーアも、ですか」


ユーユ様が必死にデリーユ様のお乳を吸っている横で、ジェシカ様はあきらめたように、為すがままにされています。

まあ、あれだけ大きいと、さぞかし触りがいはあると思います。


「大丈夫よ。シャエルは私のおっぱいを飲ませておくから。準備をお願いするわ」


そうやって子供たちを見つめていたのがセラリア様にはわかったのか、私に声をかけてくださり、サクラ様と一緒にシャエルもセラリア様のお乳を吸っていました。

シャエルは今日も元気がよさそうで何よりです。


「しかし、セラリア。両方のおっぱい飲ませるとか器用だな。いやほかの皆もやっているけど」

「慣れよ。慣れ。あと、案外これってありがたいのよ」

「ありがたいって何が?」

「おっぱいが張るのよ。ミルクを作っているから。片方だけ吸わせていると、片方が辛くてね。あなたは吸ってくれないし」

「そりゃ、吸わんよ」

「そういうことで、子供2人から両方のおっぱいを吸われていると楽なのよ」

「なるほどな」


私もですが、ルルア様は特に乳房が張るようなので、よく同時に2人にお乳をあげています。

そんな様子を見つつ、朝食の準備が終わります。

皆、誰が何かを言うまでもなく、自分の席について、旦那様の言葉を待ちます。


「よし、準備もできたし、食べようか。いただきます」

「「「いただきます」」」


さあ、朝ごはんを食べて、今日も1日メイドのお仕事を頑張りましょう!!




短期間に落とし穴が続きますが、次回もキルエメインの落とし穴です。

しかし、落とし穴という脇道ですが、ある意味伏線になるのでご容赦ください。

伏線を回収するまでは、ウィードの人々の生活を垣間見る回とでも思ってください。

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